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2012年5月24日 (木)

「女殺油地獄」再見:弱い人間の浅ましさ、浮世絵のような美しさ

521日 「女殺油地獄」(新橋演舞場)
友人が行かれなくなったからと回ってきたチケット。演舞場昼の部はリピートの予定がなかったから本来なら喜んで、というところだったが、この日は夕方から中村座の試演会。メインで寝てしまっては(だって「十種香」だもの)元も子もないから、「西郷と豚姫」を諦めて「紅葉狩」から行くつもりでいた。
ところが、そんな時に限って金環食というこの先生きている間には見られないイベントがあり、そのため苦手な早起きをしたために、ついには「紅葉狩」まで断念。本当は初日にほとんど意識を失っていた「紅葉狩」こそ再見したかったのに。
というわけで、結局これだけに絞っての観劇となった。
初日に比べて、与兵衛には仁左様の色が濃く感じられた。でも、といって愛之助さんがミニ仁左衛門かというと決してそうではない。これは立派に愛之助の与兵衛であると思った初日の感想が変わることはなかった。
まさかこんなことになるとは誰もが考えていないうららかな春の徳庵堤。その中で能天気な不良少年の起こすちょっとした出来事が、先を知っているこちらには転落の予兆のように思える。
与兵衛の家庭内暴力に、河内屋の人々の心の葛藤がくっきりと浮き彫りになる。歌六さん、秀太郎さん、亀鶴さん、米吉クンがそれぞれに与兵衛に対する気持ちを的確に表現していたと思う。
豊嶋屋の場面では今回は油で滑るところに笑いは起きなかったが、おさわが夫に隠して持ってきた金包みを落すと客席がちょっと笑った。
愛之助さんは油で滑りながら決めるときの姿勢がとても美しく、脚の開き具合、表情、まるで浮世絵を見ているようであった。お吉が倒れているのを見てハッと我に返り、大変なことをしてしまったという恐怖心、しかしもう後戻りはできない。お吉に斬りつけている時は正気を失っていたかもしれないが、金という目的は忘れていない。息を詰めて成り行きを見守っていたこちらに、弱い人間の浅ましさが悲しいほど伝わってくる。
犬の遠吠えにビクっと怯える与兵衛。客席から上がった声は笑い声のようでもあり、与兵衛に同化して思わず出てしまった声のようでもあり。多分後者だろう。でも愛之助さんが花道で身をぶるっと震わせるたび、周囲の客席が飛び散る油を恐れてわ~っとなるのはちょっと…な感じがした。
幼い子供2人を思いながら無残に斬られていくお吉が哀れで涙が出た。福助さんは徳庵堤でのセリフが少し上滑りするように聞こえてきたが、全体的にはしっとりとした商家の奥さんらしい雰囲気が感じられてともてよかった。


開演が2分ほど遅れたので心配したが終演も5分弱遅れ、東銀座まで走った走った。都営浅草線が一番早いかなと思ったのだけど、演舞場からだと浅草線のホームは遠くて、しかも階段を上り下りしなくてはならず、汗をかきかき息を切らせ、事前に計画してあった時間の電車に何とか間に合った。浅草線は浅草でも中村座から一番遠いからねえ。私は劇場には遅くも15分前には着いていたいので、こうやってアセるのだ。
う~ん「紅葉狩」は惜しいことをしたなあ。

 

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