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2012年5月29日 (火)

中村座追加公演:本当にこれで最後なんだ

528日 平成中村座五月追加公演(平成中村座)
12052901nakamuraza 松竹座の前にこちらを。紅葉の11月から始まり、桜の4月を経て、今日は紫陽花がきれいで目をひかれた。
「十種香」
奥の襖が開いて扇雀さんの勝頼が出てきたとたん、その若々しさ美しさに胸がドキっとした。前回見た時は、扇雀さんと勘九郎さんの役が逆でもよかったんじゃないかと思ったのに、今日はコロっとその考えをあらためた。勘九郎さんの濡衣も姫を立てながらもきっちり交換条件は出す、そのうえで姫の気持ちを知って暖かく見守る姉のような目がよかった。七之助さんはあどけなさと恋に恋する乙女の一途さが可憐であった。
前日、松竹座の「ゆうれい貸屋」で「身内にち~んと鉦を叩かれると成仏しなくちゃならない」と時さまが言っていたので、八重垣姫と濡衣がち~んとやるたびにそれを思い出して不謹慎にも笑い出しそうになってしまった。しかも濡衣は夫を偲びながら「さぞ未来は迷っているであろう。成仏してたもれ」とか言ってるから、「大丈夫、あなたが叩いた鉦で成仏なさいます」と心の中でしょうもないことを考えたりして。
閑話休題。
橘太郎さんの若武者らしい動き、亀蔵さんの年長者らしい動き、彌十郎さんの重厚な存在。それまでの恋の緊張が急転男社会の緊張に替わって動きも激しくなるのが面白い。こちらの体調がよければ、やっとそれなりにこの芝居を楽しめるようになってきたみたい。
「弥生の花浅草祭」
開幕前、武内宿禰の扮装をした染五郎さんが早々と舞台に現れて、板の具合を確かめたり動きの確認をしていた。1カ月同じ役をやってきて、最後の最後にまだこうして念を入れている染五郎さん、素敵。音がないとヒップポップみたいな動きに見えたが、本番が始まると宿禰の踊りであった。勘九郎さんの神功皇后の拵え(主に鬘)にハイウォーのQちゃんを思い出しちゃったと言ったら怒られるかな。
染五郎さんと勘九郎さんの2人は背景の裏で三社祭の扮装に替え、楽しい踊りが始まる。仮面をかぶって踊るのは大変なことだと改めて思った。顔は汗びっしょりだろうし、視野も狭くなるだろうし。それでも2人は思い切り盛り上げてくれる。そして善玉が去り悪玉だけになると、染・悪玉はコサックダンスやヒゲダンス、ムーンウォークまで披露して大受け。手招きで通人を呼び寄せ、「あそこを開けるとスカイツリーが見えるんだよね」という感じで手振りをしていたからこのタイミングで開けてくれるのかなと思ったけど、そうではなかった。
通人・野暮大臣が終わると、いよいよ石橋。前回は浅葱幕に遮られて見えなかった隈取と衣装替え。今回も見えない席だったけれど、座席の後ろに立って覗いてみた。ナマの化粧風景は初めて見た。スタッフが扇風機をあてたり団扇でがんがん煽いだりしている。勘九郎さんは上半身脱いで、染五郎さんは襦袢か何かをつけたまま。大薩摩が終わる頃、2人の拵えもできて、2人はいったんセリ下がる。
毛振りはすごかった。数えていなかったけれど軽く100回くらいはいったんじゃないかしら。勘九郎さんの振るスピードがハンパじゃない。染五郎さんはそれについていけなくなり大丈夫か?と思ったら最後巻き返して猛スピードで振っていた。しかし勘九郎さんの毛振りはこれだけスピードが上がってもぶれないのがすごい。
ふと気が付くと、ハンディカメラを手にカメラマンが撮影していて、中村屋密着の取材かなと思った。それからフィナーレでふと目に入ったのだけど、舞台の下で撮影していた男性、あれは篠山紀信さんじゃなかったかしら。お顔が見えないので髪型からだけの印象だけど。

「め組の喧嘩」
開幕前、島崎抱え役の春希クンが自分がつく客の膳の箸の位置などを丁寧に直していた。ほんのり色っぽくて可愛らしかった。
喧嘩のもととなる島崎楼での発端は、最初から身分違いの理不尽さが浮き彫りになる。勘九郎さんの江戸っ子らしい啖呵がカッコいい。しかし身分違いを楯に謝りもしない力士たち。鳶の悔しさ、怒りにこちらも手を握り締める。身分違いの鳶がここで揉め事を起こしては勝ち目はない。辰五郎が感情を押し殺して場を鎮めるのはさすがである。
場は飛んで、二幕目芝居小屋前。梅之さんが幕内に現れた途端、江戸の茶店の空気が感じられた。梅之さんは美形でも可愛らしいといったタイプではないように思っていたが、この茶屋女の可愛いこと。こういう雰囲気が自然と出せるのは素晴らしいと思う。ここでは亀蔵さんの九龍山がセリフの出を間違えて、幕が閉まってから橋之助さんに「間違えちゃった、ごめん」という感じで謝っている様子だった。橋之助さんは笑いながら肩で亀蔵さんをどついていた。
三幕目の焚出し喜三郎内の場の前、梅之さんはもう化粧も落し浴衣姿で師匠の世話をしていた。お弟子さんたちは自分の出番と師匠の世話があるから大変。ここの場は前回見た時は、なくてもいいような気がしたのだが、今回じっくり見ると、このあと喜三郎が辰五郎たちのことを心にかけて奔走したんだろうなあと喜三郎の胸の内がこちらの胸にもしみこんできて、なかなかいい場面だと思った。梅玉さんの懐の大きさが感じられた。
辰五郎内の場では、倅の又八の可愛らしさが客の心を和ませる。「あいよ」の返事も尻端折りも、自分がいっぱしの鳶気分でいるからなんだろう。島崎楼の場で鳶仲間の錦之助さんや男女蔵さんが座る時に裾端折りをしているのを見て、子役だと裾端折りが愛らしく目立つが、大人がやってることだったんじゃない、と今頃になって気づいた次第。
意気地がないと責め立てるお仲と又八と水盃をひそかに交わした辰五郎。勘三郎さんの表情はとても穏やかで胸に迫るものがあった。そして辰五郎が三行半をお仲に投げつけた時、その心情を思ったら泣けてしょうがなかった。
さあ、ここから急転直下、喧嘩の準備が小気味よく始まる。縋りつく又八を涙ながらに突き放し、神明町へ。わくわくする。
しばらく前から小屋が揺れるほどの風が吹いていたが、橋吾さんといてうさんの一騎打ちの頃、大粒の雨音が聞こえてきた。しかしそんな音もかき消すような力士と鳶の喧嘩。昨日のエントリーでも触れたが、彌十郎さんが力士として特別出演。やっぱり貫録ある。そこへ染五郎さん、七之助さんが現れ彌十郎さんと戦っていると、扇雀さんも鳶姿になって駆け付ける。今まで気風のいいおかみさんだった扇雀さんの鳶姿がサマになっていて実にカッコいい。彌十郎さんは国生クン(いつの間にかそこにいた。気づかずごめん)に縄をかけられ、4人に引っ立てられながら花道を去る。
鳶の1人が怪我をして倒れると仲間が戸板を持ち出してきてけが人をのせる。その乱暴な扱いに客席笑う。連中が舞台袖に入ろうとする頃、客席からもっと大きな笑いが起こった。私のところからは見えなかったが、戸板からけが人を落しちゃったのかもしれない。
お楽しみの屋根のぼり。萬太郎クンも身軽に駆け上がっていて拍手。萬太郎クンは先月も激しい立ち回りを演じたが、一見おとなしそうなのになかなかの動きである(でも、何と言っても声がいいよねえ)。鳶が屋根の上から投げる瓦は客席にも達し、みんなきゃあきゃあ大喜び。
大興奮で見守る中、梅玉さんがハシゴを背にして上から割って入り、ここでも客席は歓声を上げる。双方を何とか押しとどめたところで、神輿の登場となり、あとは興奮の坩堝と化した中村座。その状況は昨日のエントリーで。
これで本当に最後となった今回の中村座。この公演を見られて本当に幸せでした。

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コメント

こんばんは。

興奮さめやらぬ連日のレポ、ありがとうございました。楽しかったですね♪

Fujisan様の疑問に関して少し。
獅子へのお化粧、拵えの間もずっとカメラは勘九郎さんを撮っていたので(染五郎さんのことは撮っていませんでした)、中村屋密着だと思います。隈取するところを見られるとは思っていなかったので、すっごく得をした気分になりました。
篠山紀信さんは右列の竹席の横で最初は撮ってらして、そのあと松席のほうへ降りてらしたと思います。

フィナーレで「立役やりたぁい!」と叫んだ七くんに「うん、見たいぞ!」と思ったからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2012年5月29日 (火) 23時26分

からつぎ様
こんばんは。コメントと情報ありがとうございます。
からつぎ様がもしかしたらお近くにいらっしゃるんだろうなあと思いながら席に着いておりました。

そういえば、カメラはずっと勘九郎さんに向けられていましたっけ。密着取材かなと思いつつ、なるほどこうやって密着しているのか、とそれを間近に目にしたのも興味深いことでした。
隈取は歌舞伎の解説など映像で見ることはあるのですが、なかなか実際には見られませんものね(あっ、1回、團蔵さんのを見たことがありますが、それも解説の一部としてであって、こういうシチュエーションでは初めてです)。
篠山さんは先般、勘九郎写真集を出されましたが、引き続き撮り続けていらっしゃるんですね。私は相当終わりに近くなってから気が付いたというボンヤリです。
七之助さんの鳶姿も鯔背でしたね。

投稿: SwingingFujisan | 2012年5月30日 (水) 00時32分

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