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2012年5月11日 (金)

中村座昼の部

510日 平成中村座昼の部(平成中村座)
12051101nakamuraza 「め組の喧嘩」の途中から大荒れの凄い雷雨になって、傘を持参し忘れた私はどうやって帰ろうかしらと思案したけれど、終演時には状況も変わっているだろう…案の定、外に出たら雨はまだ降っていたものの、シャトルバスを待つ間ちょっと濡れただけですんだ。中村座の売店ではビニール傘も売っていたから、もっとひどい雨だったら買ったかも。
いつも、こういう天候の時は外にある大道具はどうなっちゃうんだろうと心配していたが、置き場にシートをかぶせたのか、大道具は濡れていなかったみたい。こういう天候のことも配慮して大道具の管理がされているんだろうなあ。
「十種香」
開幕前に上手、下手の定式幕の裾で香が焚かれ、香りが漂う。香炉は幕が開く直前に引っこめられた。
正直、この芝居は何度見ても、私には未だかなりの上級編。少しずつわかったような気になってきてはいるけれど、セリフや動きが少なく型で押し通す芝居だからちょっと気を緩めると難しさが襲ってくる。それと、八重垣姫の気持ちは単純な乙女心だからわかるのだけど(七之助さんは愛らしく、心が震えるような勝頼恋しさが出ていたと思う)、勝頼と濡衣の気持ちが「十種香」だけではいまひとつわからないこともある。なるべく浄瑠璃を聞くようにしていたんだけどね。愛太夫の浄瑠璃はよかった。(7年前に国立で通しで見た時の記憶はなぜか道行が一番残っている。当時の筋書きを見てすこ~しずつ記憶が甦ると、濡衣の感情についてなるほどという気もしないでもない)
勝頼の扇雀さんは衣裳も似合っていて若々しい。でも、後に勘九郎さんが濡衣で出てきたのを見たら、逆の配役のほうがよかったんじゃないか、という気持ちもした。勘九郎さんははじめのうち少し声が出しづらそうに感じたが、実際のところはどうだったのかしら。

 橘太郎さんの白須賀六郎がメリハリある動きでとてもよかった。橘太郎さんとは気づかず、こんないい動きをする役者さんはどなただろう、なんて思っていたのは不覚。
原小文治(亀蔵)をこの後送り出し、謙信(彌十郎)を中心に濡衣、八重垣姫が揃って幕。勘九郎さんと七之助さんは楽屋へダッシュ。彌十郎さんは上の衣裳を脱いで桜席に軽く目礼して引っこむ。私はまだこの後があると錯覚していたら、今回「奥庭」はなかったのね。いや、ないことはわかっていたのに、なんとなくあれ、もう終わっちゃったの、という感じがしたから。
「弥生の花浅草祭」
開幕直前、小屋全体が闇に包まれた。その中で幕が開き、常盤津が奏でられる。明るくなると、神功皇后(勘九郎)と武内宿禰(染五郎)の山車人形が動き出す。宿禰は赤ん坊を抱く老人であるが、染五郎さんの顔に皺はない。
2
人は戦の様子などを舞って背景の裏側に引っこみ、そのままそこで鬘を替え、衣裳を脱ぐ。すると、「三社祭」の衣裳が下から出てきた。宿禰に皺がなかったのはこのため。「三社祭」の踊りは大好き。しかもタイムリーにこの時期見られるなんて嬉しいではないか。舟を下りて舞う漁師2人。やがて2人は善玉と悪玉に取り憑かれ。それぞれ善、悪のお面をつけての激しい踊りは体力を消耗するだろうが、見ているほうは楽しい。善玉(勘九郎)が舟で舞台上手へ去ると1人残った悪玉(染五郎)は通りかかった通人(勘九郎)と踊る。そして今度は悪玉が花道を去り、野暮ったい国侍(染五郎)がやってきて、通人とともに踊る。2人が舞い終わると浅葱幕が下りてくる。染五郎さんと勘九郎さんは浅葱幕の後ろで「石橋」の獅子の化粧、衣裳に変える。その間、舞台では大薩摩が演奏される。桜席の奥のほうだと染・勘の変身過程が見えるのだが、私は同じ桜席でも浅葱幕の外側で残念ながらそれは見えなかった。獅子への変身とともに舞台も「石橋」の演奏仕様に整えられる。

浅葱幕が振り落されると、獅子がセリ上がる。白毛は染五郎さん、赤毛は勘九郎さん。獅子の踊りは勇壮で、毛振りもきれい。最後のほうの毛振りのスピードときたらハンパじゃなかった。染五郎さんのほうがモーレツに振って勘九郎さんがそれに合わせていたように見えた。染ちゃんのモーレツな毛振りを見ると、いつだったか幸四郎さんと連獅子を踊った時に幸四郎さんに構わず猛スピードで振っていたことを思い出す。
「神功皇后と武内宿禰」「三社祭」「通人・野暮大臣」「石橋」と4題の踊りはイキがよくて本当に楽しかった。
染五郎さんはこれだけ激しい動きをして、このあと演舞場で為朝で、大変なのねえ。
「め組の喧嘩」
12051102nakamuraza 「島崎楼」の広間に並べられた御膳、四ツ車大八(橋之助)の鯛がすっごく大きい。力士を抱えている留守居役の2人の膳に並べられた鯛の23倍はありそう。下っ端力士の膳には鯛はのっていない。なんていうのが興味深かった。
鳶の連中はみんなカッコいい。中でも、島崎楼で障子を倒されて啖呵を切る勘九郎さんの鯔背でカッコいいこと!! 錦之助さんもいいオトコで素敵だった。珍しく菊十郎さんが中村座に登場してこちらも江戸っ子のカッコよさを見せる(夜の部でもカツオ売りとして出演しているのが嬉しい)。若手ではおもちゃの文次の萬太郎クン。童顔ながら鳶の粋が感じられた(喧嘩している時、楽しそうだったな)。
勘三郎さんは辰五郎初役だそう。菊五郎さんの粋とはちょっと違った、やや泥臭さのようなものが混じっているように見えた。それはそれで味があっていい。一応島崎楼での喧嘩を止めに入り、しかし出入り屋敷の侍の手前なにもかもぐっと我慢せざるを得ない悔しさがじりじりとこちらにも伝わってくる。今回、「焚出喜三郎内の場」がついて、もちろんこれは初めて見るのだけど、特別にこの場がなくてもいいような気がしないでもない。ただ、「八ツ山下の場」で喜三郎が拾った辰五郎の煙草入れの件がここで解決したのはスッキリ。また梅玉さんの喜三郎の穏やかな大きさがはっきりわかるのもここの場ではないだろうか(印章としては最後の梯子倒しだけのほうが強いかもしれないけれど)。
喜三郎に別れを告げ、悔しさを押し隠して自宅に戻る辰五郎だが、勘三郎さんは菊五郎さんより深刻さが表に出ているようで、何か胸に秘めている様子がこれでは周囲にわかってしまうのではないかなと思った。でも本心を打ち明けてからの素早い判断と行動は親分らしくてカッコよかった。ただ、大勢の鳶の中に混じると意外と存在感が薄くなってしまったような…。
女房お仲役の扇雀さんが江戸の女の小粋な色気を感じさせる。喜三郎宅の外でそっと立ち聞きする後ろ姿がよかった。
倅役の子役ちゃん、演技もしっかりしていたし、めちゃめちゃ可愛かった。あれでは辰五郎も別れがさぞ辛かろう。
鳶が水盃を交わした後、一度幕がしまり、裏方さんは舞台上の水と塩をモップと箒ちりとりで大急ぎで拭き取る。
狭い小屋での喧嘩は迫力たっぷり。通路も使って暴れ回る。ハシゴなしの屋根駆け上がり、力士の橋吾さんと鳶の松太朗さん(? 違ったらごめんなさい。とてもイケメン)の立ち回りもたっぷり楽しんだ。前回演舞場で音羽屋のを見た時は橘太郎さんがこの立ち回りをやっていたんでしたっけ。その橘太郎さん、今回も鳶でご出演。そう目立つ役ではないのだけど、存在感がある。
二幕目「神明社内芝居前の場」でお仲と息子又八、おもちゃの文次が花道から現れる頃、雷がゴロゴロいいだし、強烈な雨が降ってきた。風も強く、小屋が揺れる。しばらくの間、客がそっちに気を取られ、またセリフも雷鳴や雨音で聞き取りづらかったこともあって、全体に集中力が途切れたのは気の毒だった。この場で茶屋娘の梅之さんがとっても可愛かった。梅之さんは最後の場面では師匠の後ろで震えて提灯だか何だかもっていた(師匠が怖くて震えてたんじゃないよ~bleah そういうお役なの)。
家事と喧嘩は江戸の華と言うけれど、本当に江戸っ子は血の気が多い。それはメンツを大事にするということに繋がるんだろう。鳶、力士双方のメンツがぶつかるこの芝居はテンション上がるな、やっぱり。
最後にもう一つ。手拭が飛んできました
scissors 手拭撒きがあるなんて全然知らなかったので、一瞬何が始まったのかと茫然としていたらすぐそばにぽ~んと。どなたが投げてくださったのかしら。予期していなかったからすっごく嬉しかったhappy01
<上演時間>「十種香」57分(11001157)、幕間20分、「弥生の花浅草祭」45分(12171302)、幕間25分、「め組の喧嘩」128分(13271535
12051103tenugui


追記:11月~5月までのプログラムの「中村座NEWS」ページの右下にある引換券を6枚所定の用紙に貼り付けて筋書き売り場に持っていくと、筋書きが全部入るボックスがもらえるらしい。この次、持っていこう~っと。

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