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2012年6月 1日 (金)

5月松竹座千穐楽夜の部

527日 團菊祭五月大歌舞伎千穐楽夜の部(松竹座)
12060101syotikuza 「絵本太功記 尼ケ崎閑居の場」
菊之助さんがここでは立役の武智十次郎。昼の千代といい、梅川といい、この十次郎といい、すべて浄瑠璃で、すべて死にきわめて近い役である。それぞれの「死」との向き合い方は当然違い、しかもここは若武者として死に行く者の凛々しい潔さと同時にはかなさ、美しさが感じられた。鎧姿の菊ちゃんはとても素敵。見た目は染五郎さんの拵えに似ていると思ったが、染五郎さんに感じたような武者人形みたいという印象はなかった。為朝と違って柔らか味があったからかもしれない。いつも、十次郎は初菊をどう思っているのかな、という物足りなさがあるのだが、菊ちゃんの十次郎には初菊に対する愛情が感じられてちょっとほっとした。
十次郎と初菊の関係は、結婚してすぐに夫と別れるという意味では、大星力弥と小浪を思い出す。もっともこっちは手柄も立てず、愛する人の目の前で息絶えるわけだが。
梅枝クンの初菊は1月の俳優祭で見た記憶もまだ残っている。非力で可憐な少女の一途さがいじらしかった。
時様の操は三々九度の酒を注ぐ姿に悲しみが籠っていた。初陣に立つ十次郎を、初菊は切なく、操と皐月は武家の女として悲しみ・つらさを押し隠し冷静に見送っているように見える。しかし十次郎の姿が見えなくなるとたまらず泣き出す2人に祖母・母の情が溢れていて、こちらも悲しくなった。東蔵さんの皐月が全体のバランスをうまく保たせているように見えた。本当に東蔵さんはうまい役者さんだなと思う。胸に太い竹槍が刺さったまま、苦しみに耐えている様子に「弓張月」の武藤太を思い出してしまった。
團十郎さんの光秀はとにかく立派。この大きさ立派さがこの芝居の重厚さには欠かせないと思った。
菊五郎さんの久吉も團十郎さんとは違った大きさがあって、やっぱりこの2人の顔合わせはいいなあとは思うけれど、この演目はまだ私には少し難しい。

「十種香」に少しずつ慣れてきたように、この演目の良さが少しずつでもわかるようになりたい。

「高坏」
海老蔵さんが私には今一つ。う~ん、何か愛敬を無理に出そうとしているふうで、勘三郎さんや勘九郎さんにみられる滲み出る愛敬からくる面白さが感じられなかった。化粧で鋭い目もとろく見え、あの海老ちゃんもこんな顔になるんだと感心したが、正直あまり好みではない。声も不安定になりがち、タップもあまりキレがなく、イマイチ感が強い(海老蔵独り占め感を味わうために花横や最前列を取っていた頃が懐かしい)。
それでも、海老ちゃんがこの役に挑んだ意欲は買いたいし、この演目のもつ大らかさは楽しむことができたのでよしとしよう。
「ゆうれい貸屋」
初めて見るかと思ったら、一度見たことがあった。その時も弥六は三津五郎さん。時々菊五郎さんに似てるかも、なんて思いながら見ていた。いい加減さと調子のよさと、三津五郎さんが生き生きと江戸っ子ぶりを発揮していた。
染次の幽霊の時様、きれいでしっとりと色っぽく、大らかな可笑し味がこの役にぴったり。品を落さないのもいい。前は福助さんだったので、途中で豊志賀とごっちゃになって混乱してしまった。
梅枝クンの一見かわいいお千代は男癖の悪さが可笑しく、三津五郎さんに迫る場面では梅枝クンが2倍にも3倍にも大きく見えて怖さも倍加した。
上方の吉弥さんが江戸のおかみさんの風情を出していた。
見どころである市蔵さんのセリフはほとんど意識を失ってしまい、耳からすり抜けてしまった。でもその後の辰緑さん、玉之助さんの高齢カップル幽霊が成仏できた時は、ほんわかと心が温かくなって、2人に思わず手を合わせたくなった。
暗転の時、蕎麦屋の新十郎さんの声が幕の中でずっと聞こえていて、雰囲気を保ち続けていた。
團蔵さんの役が家主だけというのはちょっと寂しい。
面白い話ではあるが、團菊祭夜の部最後の演目としては少し物足りないかなあという気もしないでもなかった。
<上演時間>「尼ケ崎閑居の」70分(16001710)、幕間30分、「高坏」30分(17401810)、幕間20分、「ゆうれい貸屋」90分(18302000

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