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2012年7月10日 (火)

やっぱり歌舞伎は面白い:2年ぶりの巡業東コース

79日 松竹大歌舞伎巡業東コース(練馬文化会館)
初日の江戸川は亀ちゃんの巡業で一度行って、アクセスがいまいちだったので今回パス。かわりに近松座へ行くつもりが「桜の園」になっちゃって、結局近松座は断念(亀鶴さ~heart04ん)。
そういえば練馬も亀ちゃんの巡業で来たような気がするな(2008年、亀ちゃんの巡業は前橋も含めて3度も行ったのだ。前橋は遠かったshock 前橋駅も遠く、駅からも遠かった。そして暑かったsweat01)。練馬はアクセスがいいし音響もよい。

それに、私が通っていた小中高は西武線沿線からの通学が多く、そういう意味でも馴染んでいるsmile 
今回の東コースは「義経千本桜」から忠信の3本を通しで。若手のダブルキャストといった試みもあって2度行くことにしている。そのうちの第1回。お客がよ~く入っていた。そして幕間に豆菓子が飛ぶように売れていた(売り場前は人が二重三重、押すな押すな)。
「鳥居前」
今回は義経が尾上右近、静御前が梅枝、忠信は松緑という配役。右近クンと梅枝クンは後半役が入れ替わるが、私は右近クンは立役、梅枝クンは女形のほうが好きである。梅枝クンが登場して最初のセリフ、「わが君さまか」に義経恋しさが溢れていて、その一言を聞いただけで泣きそうになってしまった。梅枝クンの儚げな可憐さは、天性のものだろう。ある時すっと消えそうでいてしっかりとした存在感があるのがいい。
弁慶の権十郎さんは全身で嘆いていて、静ならずとも義経に命乞いしたくなる。許されると「坊主頭をなでまわし」安堵する弁慶だが、あの頭は坊主頭なのかぁ。後に笹目忠太も「くりくり頭の武蔵坊」と言うからあれで坊主頭なんだろうが。
義経の4人の家来の中では亀三郎さんのうまさが光っていた。
萬太郎クンは笹目忠太には少し若すぎるかな。こちらも天性のユーモラスな感じが意外と活きていなかった。
松緑さんからは舞台が狭くて窮屈そうな感じを受けた。いや、ご本人はそう思っていないだろうが、見ている私にはそう感じられたということである。引っこみは狐と人間の間をいったりきたりするメリハリがあった。
この「鳥居前」では亀三郎・亀寿兄弟、梅枝・萬太郎兄弟、菊市郎・菊史郎兄弟、そして亀兄弟と権十郎さんは叔父甥、なんか面白い。
「道行初音旅」
ここの忠信・静は菊五郎・時蔵コンビ。
なんちゃって花道から白い衣裳の時様が現れた途端、その上品なハッと息を呑むような美しさに客席がどよめく。あちこちから「きれい…」という声が聞こえてきた。白の衣裳は菊五郎さんと相談して決めたそうだが、ばっちり正解。清楚で赤より若々しく見えると思った。
静が鼓を打つと場内が闇に包まれる。再び明るくなった舞台、なんちゃって花道に忠信が。もうそこに菊五郎さんがいるだけで、花が咲いたみたい。存在感の大きさ、わくわくする役者ぶりに思わず涙がにじみ出た。
菊・時コンビはだ~い好き。毎回言うようだが、長年連れ添った夫婦のような、ことばに出さずとも互いにわかり合っている空気、それでいて狎れあいにならない新鮮さがいつもある。この2人を見ていると胸がきゅんきゅんしっぱなしになる。
そしてベテランの大きさ、味わい。先月の藤十郎・秀太郎コンビの大きさに圧倒されたが、ここでも菊五郎・時蔵コンビの深い味わいに、若手はまだまだと実感する。もちろんそれは当たり前のことなんだけど、若手の「鳥居前」と「四の切」の間に入って、しっとりとした大人の関係がぐっと胸に残る(でも、菊五郎さんがなんとなく可愛いの)。
この道行を見ていると、鼓が静にとっても忠信にとっても大切なものであることがよっくわかる。「道行」が演じられる意味はそこにあるんじゃないか、とふと思ったりした。
團蔵さんの逸見藤太,飄々とした可笑し味にベテランらしさが見える。
最後は菊五郎さんの低めのコースを狙ったナイスな笠投げ、團蔵さんのナイスキャッチで盛り上がった。

「川連法眼館」
先月、派手なケレン味たっぷりの澤瀉屋バージョンを見たから、音羽屋型に退屈したりしはしないかという心配だったけれど、とんでもない!! 物語をじっくり楽しみ、実に面白かった。澤瀉屋型、音羽屋型、それぞれの良さを日を置かずに目にできたのはありがたい。
 初役という菊ちゃんの忠信、本物のほうは凛々しく美しい。狐は、顔があんまりお父さんにそっくりで、なんか妙に不思議な気がして仕方なかった。菊ちゃんが菊五郎さんに似ているのは前から何度もそう思っていたのに、どうもこの狐さんだけは不思議なんだなぁ。
しかし、女形の大役を初役でも見事にこなす菊ちゃんにして、この狐はやや難しいのかなと思った。セリフははっきりしていて亀ちゃんより聞き取りやすい(狐ことばに笑いが何度も起きたのは巡業だから仕方ない)。だから、菊ちゃんが親への思いを語ると、ぽろっと涙が出る。でも動きがイマイチ。菊ちゃんの身体能力の高さは本水の中で金鯱と暴れ回った立ち回りや弁天小僧なんかで実証されているのに、なんとなく動きが重い。瞬発力とか小回りに動きの重さが出るのかも。これからの進化に期待したい。
鼓を賜って喜ぶ場面はかなりカットで、ほとんどすぐに荒法師登場となった(それとも、いつもそんなものだったかな。いやもっと鼓とたわむれて喜びを爆発させていたよな)。
そのかわりにというか、法眼と飛鳥の葛藤場面があった。松太郎さんの法眼、菊三呂さんの飛鳥は、なかなかよくて、安心して見ていられた。
右近クンの義経は「鳥居前」よりいいような気がした。はじめ幕内で法眼に声をかけた時、その声が菊ちゃんにすごく似ていて、「あれ、なんで菊ちゃんが」と一瞬思ったほどだった。「鳥居前」では気づかなかったが、あんまり似ているから、ちょっとの間目をつむって聞いていたら、本当に菊ちゃんがいるみたいだった。
そうそう、「(狐の)出があるよっ」でだまされた人がたくさんいた。最近、演舞場なんかでは騙される人も少なくなってきたと思うけど、今日は揚幕の奥ではしてやったり、だろうな。
ああ、歌舞伎は面白い、やっぱりやめられないと満足しつつ、また去年中止になった巡業が今年は無事に行われているのがしみじみありがたいと思いつつ帰路についた今日の巡業観劇だった。
<上演時間>「鳥居前」40分(13001340)、幕間25分、「道行」48分(14051453)、幕間20分、「川連法眼館」75分(15131628

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コメント

おはようございます。私はお先に江戸川で昼夜見てきました。初めて行きましたが確かにちょっと不便ですね。船堀駅から行くルートが楽なので、それにしました。
練馬では「笠ナイスキャッチ」でしたのね。江戸川・昼は取れず、夜はなんと客席(それもセンターより上手寄り。9列あたりかな)まで飛んできました。このくらいトンデモナイ方が面白いかも、と思うくらい。
感想は・・・ほぼ同じですねぇ。どちらかというと、菊ちゃん狐バージョンが楽しみだったんですが、実際には鳥居前の方が好きでした。
そうそう、菊ちゃん狐の時、菊五郎さんとそっくり、と思いました。何かそういう部分が強調されるんでしょうか。右近くんは私も立役が好きです。りりしい若武者とかね。顔の輪郭のせいかしら。声が菊ちゃんと似ているとはあまり感じなかったんですが、台詞回しそっくり、と思いながら見てたからかしら。次回はそのあたり注目(注耳?)して・・・あ~ダメだ、次に見る時は静御前です。

投稿: きびだんご | 2012年7月10日 (火) 09時55分

きびだんご様
こんにちは。
船堀駅なんていうテがあったんですね。私は新小岩からバスに乗りました。遠かったけれど、文化センターは緑に包まれ、親水公園みたいになっていたし、近所には小松菜産土神を祀った神社もあったし、割と記憶に残っています。

忠信の笠、激しく飛んだのですねsmile 菊五郎さん、かわいいなあ。低めのコースを狙ったのは江戸川の経験を踏まえてのことかもしれませんね。でもそういうハプニングもお芝居の楽しみのうちですね。

菊ちゃんが正面を向くたびに、二回りくらい大きくなった菊五郎さんがいるみたいで、そっちが気になってしまってcoldsweats01 それと亀ちゃんの狐を見た後だったからか、体がヤケに大きく見えました。いずれにしても激しい動きが多いですから、過酷な日程の中で無事に千穐楽を迎えてほしいですね。
右近クンの立役はいいですよね。顔はどちらかというと濃い目なのにスッキリと凛々しく見えます。声は静御前でも似ているかもしれませんよ。私も次回はダブルの役が全部かわるので、静の右近クンの声に注意してみようと思っています。

投稿: SwingingFujisan | 2012年7月10日 (火) 13時19分

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