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2012年7月

2012年7月31日 (火)

澤瀉屋襲名公演千秋楽夜の部②:口上、黒塚、楼門五三桐

729日 七月大歌舞伎千穐楽夜の部(新橋演舞場)
「口上」
團十郎さん、初日には亀ちゃんと共演したパリ公演を昭和19年と言ってしまったが、今日はちゃんと平成になっていた。前回と同様、フランス語での口上体験をユーモラスに語った(自分はカタカナを一生懸命に覚えてお経のように唱えただけなのに、フランス人が勝手にわかってくれて笑ってくれたという不思議体験をした。フランス人にウケた猿之助さんのフランス語は自分には何のことかさっぱりわからないかった)。以下、初日とほぼ同様。猿翁さんとは「勧進帳」「大杯」などでご一緒した(「大杯」は知らない。見たい)。段四郎さんとは同年輩で遊び仲間だった。中車さんとはこれを機会にもっと共演したい。團子さんは千穐楽まで立派に勤め上げたことにただただ感心する。
海老蔵さんも初日と同様、猿翁さんへの敬愛の気持ち、亀ちゃんとはロンドン・アムス公演(平成20年だった)で「かさね」を一緒に踊ったこと、ライオンキングの話、亀ちゃんの猿之助・猿翁・スーパー歌舞伎に対する思いを聞いていたので1カ月間アツい気持ちでいた。中車さんはステキな方、同じ市川家として一緒に精進するのでよろしく。團子さんは肝の据わった子である。頼もしい後輩が入ってくれてうれしい。有言実行を(猿翁のおじいさまより~、って挨拶に対して)。
猿之助さんは、市川家に縁のある「猿」という名を汚すことなく、いずれは歌舞伎を支える屋台骨の1つになりたい。
中車さんが、松竹や諸先輩や関係者等のおかげでと襲名の御礼を述べる言葉の中で「何より市川御宗家のお許しをいただきまして」と言った時に、胸にぐっとくるものを感じた(多分、初日の挨拶でもそこに一番何かを感じたんだと思う)。歌舞伎の舞台に初めてお目見えした私は生涯かけて精進する。親子で無事に千穐楽を迎えることができ、明日からまた精進する。
團子ちゃんは、しっかり歌舞伎口調で「あ~げたてまつります」とやって客席から大きな拍手(初日も歌舞伎口調になっていたと思うけど、さらにしっかりしてきた感じ)。中車さんも歌舞伎口調はできるかもしれないけど、テレくささがあるかも。子供は大したものだと感心した。

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2012年7月30日 (月)

澤瀉屋襲名公演千秋楽夜の部①:興奮のカーテンコールと考えさせられた最後の将軍

729日 七月大歌舞伎千穐楽夜の部(新橋演舞場)
昼夜通しで千穐楽を楽しむ予定はやはり無謀であり、体力・体調を考慮して夜の部だけに。初日と千穐楽、芝居の善し悪し(自分が感じた善し悪し)は様々だったが、両方とも夜の部に行けてよかった!!
先に熱狂、興奮のカーテンコールを。
1回目はふつうのカーテンコール(初日から連日続いていたのかな)。
千穐楽だもの、もちろん1回で客が許すわけがない。
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回目。3回目。4回目。何度幕が開いただろう。これで終わりかと客席の外へ出たら、また中が騒がしくなってきたのが聞こえた。すぐに戻ると又幕が開くところであった。全部で7回くらい? もう途中から回数なんてわかんなくなっちゃったのよhappy02
2
度目だった? 澤瀉屋全員が呼ばれて。3度目だった? 亀ちゃん、いえ猿之助さんが花道から羽織袴姿で登場しheart04客席さらにヒートアップ。初日のカテコで猿之助は出ないのかぁ、と思っていたからこれは嬉しい登場であった。
そして4度目? 上手の女形3人から1人ずつ前に出てご挨拶。笑也さんが投げキッスをして場内、大興奮。この時、團子ちゃんは丁寧にお辞儀をした後、猿翁さんのように両手を広げて御挨拶。おじいさまに「ボクもやっていい?」と直前にお伺いを立てていたようにも見えたけど、なかなか大した子だと、これを見ても思った。
猿翁さんも中車さんに支えられて
23歩と前に出て、投げキッスの大盤振舞い。場内はすでに総立ち。私は1階最後列だったから背伸びしながらコーフンしていた。
亀ちゃんが持ってきたcameraで團子ちゃんが猿翁さんを写す(中車さんとの2ショットなんかも写していたと思う)。平成中村座状態だ、なんてsmile
最後に定式幕が閉まる時、彌十郎さんだったかな(遠いのとコーフンでお顔よくわからず。位置的に彌十郎さんだったかなと)、前に出ていた猿翁さんが幕にぶつからないよう、腰を屈め手を添えてかばっていたのが印象的だった。
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カ月間、みなさん本当にお疲れ様でした!! そしてありがとう!! 

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2012年7月29日 (日)

10月演舞場は勧進帳ダブルキャスト

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まだまだ引退できません、焼きそば屋

昨日は恒例、町会の祭りで、高齢の私は恒例の焼きそば屋担当。
12072901maturi先週涼しさを経験した後の猛暑でずっと体調が悪かったから体がもつかと不安だったが、遮光ネットと時折ほっとするような風と水分補給(アルコール補給ではないcoldsweats01
)と飲む補液(OS-1)のおかげで、1日乗り切った。
しかし、ほんと疲れた。自分の顔がゲッソリしてるのが鏡を見なくてもわかるってほど
shock
モーレツに疲れることを予想して、今日の「ヤマトタケル」のチケットを友人にあげておいてよかった。
年々体がキツくなって、そろそろ焼きそば引退したいなあとは思うけれど、近所なのに年に1回この時しか顔を合わせない人に会える楽しみで、来年も又、と約束してしまったのであった。
今朝、ばかに早く目が覚めて(外の空気が焼きそばくさかったsmile)、昨日見逃したオリンピック競技を見た。よくやった!メダルあり、ちょっと残念なメダルあり。やっぱりスポーツ観戦はやめられん。
そういえば、開会式の録画を一部見て、イギリスのおとぎ話にちょっと心躍ったのでした(ピーターパン!! メリー・ポピンズ!! チキチキバンバン!! アリス、101匹わんちゃん−−ハリポタは未読未見。おとぎ話じゃないけど、ミスター・ビーンの存在を忘れていたことを思い出した)。


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2012年7月28日 (土)

思い出はビートルズとともに

オリンピックの開会式、一番見たかったのが、ポールだと言ったら怒られちゃうかなcoldsweats01
おじいさんになったポールはカッコよく、Hey Judeとともにビートルズを初めて聞いたときの衝撃、興奮、ビートルズにまつわる様々な過去を思い出させてくれたheart04  ビートルズ世代なのだ、私は。
ほとんど関心のなかったオリンピックだけど、女子サッカーも男子サッカーもやっぱり見ずにはいられなかった。
さあ、これから毎日盛り上がるかなwink

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2012年7月27日 (金)

夕顔転じて、あんまりな名前

12072701hekusokazura
いつの頃からか、庭のサツキにツルが巻きつくようになった。
植木屋さんに聞いたら「夕顔」だというから、へ~と思ってそこそこ大事にしていたら、この夏初めて花を咲かせた。
白い小さなかわいい花。
でも、これ、どう見たって夕顔じゃないんじゃない? ということでネットで調べたら、なんと「ヘクソカズラ」
あんまりな名前じゃないshock
葉や茎に悪臭があるところからこの名がついたらしいが、私はこれまでそんなくさいにおいを感じたことがない。
ちょっとショックな名前だけど、この花は古くからあったようで、「かわらふじに延ひおほとれる屎葛(くそかづら)絶ゆることなく宮仕えせむ」という高宮王(残念ながら奈良時代の歌人としか)の歌が万葉集に収載されている。カワラフジ(=サイカチ)にまとわりついて茂るヘクソカズラのようにいつまでも宮仕えしよう、という意味でしょうか。
また「屁糞葛も花盛り」という諺もあるんですって。イヤなにおいがあってあまり好かれないヘクソカズラでも愛らしい花をつける時期があるように、不器量な娘でも年頃になればそれなりに魅力がある、という意味だそうだ。やっぱり、あんまりな…bearing
ちなみに実は乾燥させてしもやけやあかぎれなどの民間外用薬として用いられたりするらしい。うちのも花が終わったら実をつけるのかな。ためしに乾燥させてみようかな(ナマの実はすっごくくさいらしい)。

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2012年7月26日 (木)

「出会い」:東北へルーヴルからのメッセージ

720日 ルーヴル美術館からのメッセージ「出会い」(宮城県美術館)
12072601museedemiyagi 宮城県美術館は静かなたたずまいで胸いっぱいに空気を吸って気持ち良い、そんな感じであった。午前9時半の開館直後だというのに、訪れる人がけっこう多い。ここではメインの展示がアンドリュー・ワイエスなのだけれど、私が見る限り訪れた人たちの多くはルーヴル展へ足を運んでいた。
展示は第1章「聖なる対話」、第2章「聖なる愛、世俗の愛」、第3章「三美神」に分かれている。作品は普段ルーヴルに展示してあっても見逃してしまいそうな比較的地味な印象ではあったものの、見ているうちにとても愛おしさが湧いてきて、タイトルに相応しいいいセレクションだと思った。解説も丁寧でわかりやすく23点をたっぷり時間をかけて見ることができた。
「聖なる対話」では、古代エジプト(BC12791213頃)、古代ギリシア(BC 470~460頃)の石碑から17世紀イタリア絵画に至るまで、聖職者の祭服を留める装飾品、受胎告知のデッサンなど、神と人間との関係が表された作品が7点展示されている。
「聖なる愛、世俗の愛」は、母性愛、夫婦・恋人、友情のテーマに分かれ、「母性愛」ではBC2000年旧ギルス(現在のイラク)で出土したテラコッタのレリーフ、古代エジプト(BC660530頃)の石像などが、その時代から変わらぬ母の愛を見せている。「夫婦・恋人」では恋人たちを描いたキプロスの盃がユニークで面白い。イスラム文化とキリスト教文化の融合がみられるのはやはりかの地の特徴であろう。17世紀オランダ絵画(やっぱり17世紀はオランダなのねえ)からはヘラルト・テル・ボルフの「粋なお誘い、若い女性に言い寄る兵士」。当時のオランダ風俗画らしく、金で買える愛への戒めが込められている。
「友情」で面白かったのは、16世紀のイタリア陶器。握手をする手だけが描かれた深皿と水盤である。こういう題材の食器があるとは知らなかった。マケドニアの埋葬用の石碑(BC400頃)にも握手の場面が彫られており、胸に迫るものを感じる。ジョゼフ=マリ・ヴィアンの「三人の男の肖像」はなかなか印象的な絵である。
「三美神」はその名のとおり美しい。とくに私が感銘を受けたのは首から上と足首のやや上からが欠けている大理石の「三美神」像(AD130頃)。真ん中の美神は後ろ向きで、前を向いた2人の胸に手をまわしている。33様のスタイル、ポーズがとても自然に美、喜び、豊穣(3人が象徴するもの)を表しているように見えた。
ルーヴルからの作品に加えて、宮城県立美術館のコレクションの中から、北川民次「家族写真」、伊藤快彦「宮参り」が展示されていた。どちらもインパクトのある作品で、「家族写真」には堅い意志のようなものが感じられ、「宮参り」には子供の誕生を喜び成長を願う家族の一瞬が切り取られて描かれているように思った。

この後、美術館のコレクションをさっと見て歩いた。青騎士展を見逃してずっと残念に思っていたが、ここでカンペンドンクの「郊外の農民」を見て、もしやと隣に目をやったらカンディンスキーが4点も展示されていたのであった。日本画、洋画、いい絵をたっぷり、静かに見られて、東京で人人人の有名展覧会ばかり見ているとなかなかわからない美術館の良さというものを味わった。リサーチ不足で庭を見なかったのが心残り。野外彫刻がたくさん展示されてるんですって。でも「蛇に注意」とかいう看板がたくさん出ているらしくshockそれは私にはムリかも~wobbly

ルーヴル展は
22日で終わり、28日からは福島県立美術館へと場を移す(~917日)。いわゆる目玉という作品はないけれど、一見の価値があると思うのでお近くの方はぜひ。

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2012年7月25日 (水)

ダブルキャスト2組目で千本桜を楽しむ

719日 松竹大歌舞伎(東京エレクトロンホール)
12072501jungyo やっと歌舞伎の感想を。
東京エレクトロンホールは先日見た練馬に比べ舞台も大きいし、袖についた花道がなんちゃってというほどなんちゃってではなく、ある程度の長さがあった。
今回のキャストは、うまい具合に前回と逆であった(80%くらいは狙っていたんだけどね)。
「鳥居前」の義経が梅枝クン、静が右近クン。笹目忠太が亀寿さんで亀井六郎が萬太郎クン。そして忠信が菊ちゃん!!
菊ちゃんの荒事は初めて見たかしら…。まず、体が大きい!と思った。荒事の衣裳が大きく見せる部分もあるだろうが、菊ちゃん自身の大きさなんではないだろうか。あの体で女形を作るのだから、大変だなあ。菊ちゃんは動きも大きく、堂々たる忠信であった。筋書きには三津五郎さんに教わると出ていたが、綿祖は團十郎さんに通じる大きさ、大らかさを感じた。それでいて、荒事にはやややわらかくふっくらした印象だったが、それが欠点だとは思わない。菊ちゃんの個性であって、不思議な魅力を醸し出していて、私は好き。
梅枝クンの義経は右近クンに比べてやわらかい感じがした。静にしてもそうだが、梅枝クンには「悲しみ」が似合う。右近クンの静もなかなかよかったが、好みとしてはやっぱり義経かな。忠太は亀寿さんだろう。萬太郎クンの亀井六郎は忠太より若さが気にならず、よかったと思う。こうした若手のダブルキャストは、演じるほうにも勉強になるだろうし、見ているほうも違いがわかって興味深い(そういえば、2年前の巡業も「棒しばり」が松緑×菊之助のダブルだったっけ)。
「道行」の感想は前回とあまり変わらず。若手の初々しい味わいもいいけれど、ベテランの自然な色気と濃厚な味わい(う~ん、濃厚っていうのはちょっと表現が違うな、うまい言葉が今みつからない)が心地よい。最後の笠投げは團蔵さんに届かず、2人手前の花四天(みどりさん、だったかなと思う)がキャッチし、團蔵さんへ。千本桜の道行って、そんなに好きでもなかったけれど、今回2度見て、考えが変わったような気がする。
「川連法眼館」は、前夜の寝不足のたたりがきてしまったうえ、まわりでもけっこうそういう人がみられて、ちょっと緊張感が緩んだか…。だから目に入り記憶に残っている範囲で。松緑さんの狐はけっこう身軽なんじゃないかなという期待ほどの軽さを感じなかったが、欄干渡りや海老反りなどに、客席がどよめくのが楽しかった。そうそう、「出があるよっ」では大いに盛り上がった。正面に既に狐が登場しているのに、まだ花道のほうに目をやっている人もいて、隣に促されたり周囲の空気で舞台に目を移して驚いたりして。そういう空気の中にいると、最近全然だまされなくなった自分がちょっとつまらない気もしてくる。狐ことばに対する笑いはほとんど起きなかったように思う(ただ、ここのところの記憶はかなり薄い)。
浅草も見たいのだけど、Web松竹では空席なしだし、暑さに体力自信なしだし…。

ところで、仙台、1000円という席もあったのね。

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2012年7月24日 (火)

仙台・石巻紀行③:日和山公園で

720日 石巻から仙台へ
川を離れ、山へ向かう。ものすごい傾斜の坂である。自転車を押し、ひたすらのぼる。汗がにじむ。自転車が重い。そうでなくたってくじけそうな坂、何度引き返そうと思ったことか。そのたびに、津波にあった人々のことを考えて自分を励ます。10歩登っては一息つきふ~ふ~いっていたら、通りがかりのオジサンが「大変だねえ」と声をかけてくれた。まだ先は長いのかときいたら、もう少し先へ行くと下りになるということだったが、気の毒そうな表情がまだちょっとありそうなことを物語っていた。
気合いを入れてなんとか天辺らしきところに着いた。木陰の小さな展望台みたいなところから下を見てみるが、石巻一望という風景ではない。ここって本当に日和山公園?
12072401isinomaki そこへ、地元の女性が通りかかったのできいてみると、日和山公園はもっと先だのこと。先には神社があった(鹿嶋御児神社)。自転車を止め、お参りしていると、先ほどの女性と再び一緒になった。毎日散歩がてらお参りに来ているそうで、案内役を買って出てくださった。ありがたくお願いして女性について歩いた。ちょうど北上川が太平洋に注ぐところが真下に見える。まさに石巻は北上河口の町なのであった。「そこまで家がびっしり建っていたのに、全部なくなってしまった」。
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いくつかのポイントに津波前の写真が展示されていて、今との違いがはっきりわかる(上の写真がかつての光景。下が現在)。海岸の人たちはすぐに逃げたが、山の12072404debris_3 中腹の人たちはここまで来ないだろうということで逃げ遅れた人が多かったのだそうだ。ああ、あの日、あの瞬間まで普通 に生活していた人たちが家を失い、命をなくし、心に傷を負い…と思うと、また涙が出てどうしていいかわからなくなってしまった。

海沿いには堆く積まれたガレキの山がいくつもある。お墓も少しずつ直しているがまだまだ倒 れたままの墓石は多い。重機があちこちで活躍している。オレンジスイート様もそういう現場のどこかで汗を流していらっしゃるんだろうなと思う。
12072405sandbank 河口の中州には自由の女神像があった。民間人
が趣味で建てたのだが、一部欠損 したものの津 波にも頑張って残ったそうだ。その向こうにあるさっき見た白いドーム型の建物が萬画館であることも、この女性から教わった。
川沿い、海沿いの一定地域は居住禁止になって公園か何かに生まれ変わるようだ。

日和山公園では日が差してきて穏やかな海がきらきら光り、船が一隻、白く美しい筋を引いて滑っていく。長閑、とさえ思った。その海が牙 をむいた恐ろしい光景は想像もできない。その一方で脳のどこかにあの映像がフラッシュバックしてくる。 
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案内してくれた女性は淡々と「復興はまだまだだわね。いつになるんだか」と諦め口調ではあったが、決して希望を捨てているのではなく、現実をきっちり受け止めて少しずつ先へ進んでいこうという印象を受けた。確かにあの恐ろしい体験をしてこの爪跡を毎日見ていては、現実を受け止め受け入れるしかないだろう(女性のお宅は高台にあって津波被害はなかったそうだ)。逆に旅行者である私のほうが現実を受け止めきれずにいるような気がした。

 
帰りにまたあの急坂を下るのかと覚悟したら、別のもっと緩やかな坂を教えると言って案内してくださった。途中、日本製紙の煙が白く上がっているのが見えた。雇用の問題もあり、津波後もここで営業を続けてくれてありがたいと呟く女性。

ここが仮設住宅と教えられ、わざわざその敷地に立ち入るのは憚られたから道路からほんの一画を目にしたら、それだけで胸が痛んだ。
12072408marche 住吉神社に寄るつもりだと言ったら道を教えてくださったが、意外と時間がなくてせっかくだけれど、パスせざるをえなくなってしまった。そのかわり、と言ってはなんだが、復興マルシェに寄ってお土産をいくつか買った(さっき海遊館21でもお土産買った)。ひどくのどが渇いて、できたらナマ一杯ぐっとやりたいところだったが、一応軽車両運転中なんで手持ちのぬるいお茶で。
2
時間で自転車を返し、再び海遊館21で営業中のお寿司屋さんがないかきいたら、今はどこのすし屋も夜の仕込み中だとか。時間が中途半端になっちゃったからなあ。朝食やめておけば早くおなかがすいたのにな。石巻でお寿司を食べるのももう一つの目的だったのでとても残念。タクシーなら効率よく回れてお寿司も食べられたのかもしれないけれど、それではあの女性との出会いはなかったに違いない。まさに一期一会。別れ際の話の中でほぼ同年配とわかり、より親近感が湧いた出会いだった。

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2012年7月23日 (月)

仙台・石巻紀行②:石巻へ

720日 仙台から石巻へ
今日はあちこち動くからと、普段食べない朝食を近所のコンビニで買って食べたら食べ過ぎてしまった。
チェックアウト後、徒歩で宮城県立美術館へ。前日町歩きをして方角だけは確かめておいたので難なく到着。ホテルからゆっくり歩いて20分弱――東京なら歩き疲れてうんざりするところだけど、旅先だからか、あるいは緑の下を歩く心地よさか、朝は寒さもあまり感じることがなかった。
美術展の感想は後ほど。
12072301bus 美術館前からバスで仙台駅へ。本当はレトロなるーぷるバスに乗りたかったのだけど、時間がうまく合わなくて断念(昨日タクシーから見た時は「るーぶるバス」に見えて、へ~、仙台とルーヴルって何か関係あるのか、なんて早とちりしてしまった)。駅前のバス停で石巻へ向かう高速バスを待つ。電車の仙石線は海岸部分がまだ不通状態で(12本、臨時列車が走るようになったみたい。前面復旧はなんと2015年だそうだ)、仙台⇔石巻間は高速バスを利用するのは一番便利なのだ。発車まで20分ほどあったがもう20人くらい並んでいてビックリした。待っている間寒くて寒くて、1本遅らせて上着を買おうかとずいぶん考えたが、次のバスは40分後になるからただただ寒さに耐えた。
仙台駅は高速バスの始発ではなく、県庁市役所前→商工会議所前と経由してくるため、座れなかったらどうしようなんて心配したりして。でも無事に座れて一安心。補助席を使うほどの混雑ぶりでもう一度ビックリした。駅周辺を抜けるまではけっこう渋滞していたが、三陸道は気持ちよくすいすい。こちらも気持ちよく睡眠。あ~あ、景色もなんにも見ないうちに石巻に着いてしまった。
石巻で最初に止まるのはイオン石巻、そして蛇田歩道橋、石巻駅前で、終点は石巻専修大学。今は買い物の車がたくさん止まっているイオンの駐車場には一時期、避難された方々が車を置いてその中で生活していたそうである。そしてイオンは食料や生活用品の提供をしたりして避難民の生活を支えていたのだ。その光景をバスの中で思う。
ほぼ時刻表どおり石巻駅で降りる。料金800円は降車の際に支払う。往復だと1500円になるが、もしかしたら女川まで行きたいかも、と思って往復にはしなかった(結局、女川どころか石巻だってちょっとしか見てこられなかった。しかも、女川終点・始発の高速バスは11本しかなかった)。
石巻は仙台よりずっと暖かい。これなら上着なしでも大丈夫。
12072302station
駅舎がメルヘンチック。そうか、石森章太郎ワールドなのだ、ここは。マンガロー12072303station ドではサイボーグ009のメンバーや仮面ライダーなどのフィギュアが迎えてくれて、何年か前に訪れた境港の水木しげるワールドを思い出す。
線路には奥の細道号が止まっている。一休みするのに程よい丸いベンチがいくつかあって、女子高生が数人きゃぴきゃぴ騒いでいる。その姿にほっとするものを感じる。彼女たちみんながあの地震と津波で心に傷を負ったに違いない。しかしこうやって高校生らしくお喋りして笑い合って、そういう生活を再び送っている12072304figure 姿を目にして嬉しかった。
多くの観光施設が津波被害から復興しておらず閉館中。だからとにかく日和山公園(石巻で一番高いところ、石巻が一望できる)を目指すつもりでいた。でもまずは観光情報センターの「海遊館21」で12時間の観光コースを推薦してもらおうということで尋ねると、タクシーで1時間観光というのがあると教えてくれた。また、本日の目的地である日和山へのルートを尋ねると、徒歩では難しいかも、とのこと。では、やっぱりタクシーにするか…。まずは荷物を駅のコインロッカーに預けてトイレへ。するとトイレの隣にレンタカー屋があり、レンタカーにちょっと心が動く(道がわからないので不安だけど)。しかしそこに「レンタサイクル」の文字が。これだ!! 早速借りる(2時間500円)。自転車は電動なんだけど電池が入っていない。だから重い。重いけど車輪が大きいので意外と苦ではない。
12072305floodedline 自転車にしたのはある意味正解(タクシー使わなくて申し訳ない)。ふと気になったところですぐに止まることができたから。駅前に「津波浸水深ここまで」という表示があった。腰の高さくらいまでだろうか。駅の周辺では津波被害をあまり実感することはなかったし、この時はまだ地理がよくわかっていなかったので、ああこの高さまで津波が押し寄せたのかと自分の腰にさわってみたりした程度だったのだが、冷水を浴びせかけられるような思いをするのはもう少し先のことである。
途中、商店街の復興イベントをやっていた。若者が太鼓をたたき、笛を吹き、地元の人が楽しそうに聞いていた。私もちょっとだけ演奏を聞いて、復興に向けて町を鼓舞している若者たちの姿に心の中でエールを送り、再び日和山を目指す。道がよくわからないので、歩いている人に時々尋ねてだいたいの方向を頭に入れた。
少し北上川のほうに近づくと、「観慶丸商店」という素敵にレトロなタイル貼りの12072306kankeimaru 建物があった。しかし1階部分がベニヤで囲われている。「津波っ」と思ったら胸がドキドキしてその被害を実感するのが急に怖くなり、そばへ寄って見ることができなくなってしまった。陶器を中心とした小さな百貨店のようなお店だったそうだが、建物の見事さはかなり有名らしい。現実に目をそむける悪いクセが出た。きちんと見てくればよかった。
北上川沿いの道路に出てまっすぐ進む。破壊されたままになっている家や建物に胸が抉られる思いがする。自転車をこぎながら、涙が出てくる。私が今走っている道路を津波が襲ったのだ。この道路沿いには家がたくさんあって、みんな普通に生活していたんだろうに。こわごわ川に近づいてみる。川岸は工事中。中州にある白いドーム型の建物も工事中。この建物が石森萬画館であることを後で知る。

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2012年7月22日 (日)

仙台・石巻紀行①:嬉しかったこと

719日 仙台で
前夜、あまりの暑さに1時間ほど寝たところで目が覚め、その後私としたことがどうしても寝つかれない。仕方なく起きて録画を見たりしているうちに空が白んでくる。5時過ぎにやっと少しうとうとして7時に起きる。これは、歌舞伎、完全に寝るな…。シャワーを浴びた後はできるだけ汗をかかないように用心して、それでもちょっと動くと汗ばむ。
新幹線は仙台行のやまびこだったので約1時間45分、安心して爆睡した。仙台駅のペデストリアンデッキに出たとたん、さわっとした風が吹き抜け、その心地よさにホッとする思いがした。
12072201hall 早速、東京エレクトロンホール宮城へ。地下鉄を使うつもりだったが、意外と時間がなかったのと、初めてのところで迷う不安もあったので、タクシーで行く。運転手さんに「涼しいですね」と言ったら、そうでもないようで、地元の方にとってはこの気温も暑いのだとわかった(当然かもね)。
宮城なのになんで東京エレクトロンホール? ここの正式名称は宮城県民会館で、ネーミングライツ導入によりこの名で呼ばれるようになったそうだ。そういうことだったのか。
この建物は、去年の地震でこのあたりでは最大のダメージを受けたそうだ。その様子はHP(→ココにも出ていたが、それを知ると、こんなに立派に復旧して再び歌舞伎公演などが行われるようになったということに大いに感銘を受ける。2年ぶりの歌舞伎公演が嬉しくてたまらないかのように、松竹大歌舞伎の提灯がずらりとかけられ、お客さんの数も多く大盛況。こういう盛り上がった雰囲気の中で歌舞伎を見られると思ったら私も嬉しくなった。
そして、この日最大の嬉しかったことは、オレンジスイート様にお目にかかれたこと!!
オレンジスイート様は華奢で愛くるしく、しっかり地に足をつけて明るく前向きに頑張っていらっしゃる素敵なお嬢さんでした。頑張ると言っても無理して遮二無二というのではなく、ちゃんとご自分でペース配分を考え、楽しみは楽しみとして生活にメリハリをつけていらっしゃる――歌舞伎鑑賞もその一つですね――、私などはるかに年長なのに見習わなくてはと頭が下がると同時に、応援すべき私のほうが勇気づけられました。わずかな時間でしたが、本当に貴重で愛おしい時間でした。

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2012年7月21日 (土)

玉さま、人間国宝に

仙台、石巻から帰ってきて、2日留守にした整理などを終え、今歌舞伎サイトを見たら、玉三郎さんが人間国宝に認定されたというニュースを目にした。
梨園の出身でないうえ、小児麻痺というハンデもあった。
凡人の及ぶ努力・研鑚ではないことは重々承知だが、そういう努力が実を結んだということに勇気づけられる。
そして、私は守田勘弥という役者の眼力を見事だと思うのである。

玉さま、おめでとうございます!!

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2012年7月20日 (金)

石巻へ

今、仙台から石巻へ向かう三陸道を走る高速バスの中です。
昨日、仙台駅に降り立った瞬間の涼しさーー前夜暑さのあまりほとんど寝られなかった私は涼風にビックリすると同時に嬉しかったのですが、そのあとは寒くてbearing かなり涼しい格好で来ちゃって失敗coldsweats02
時刻表ではあと15分ほどで石巻駅に着く予定。

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2012年7月19日 (木)

アイメイクは薄めに:笑いと涙の「男の花道」

717日 「男の花道」(ル テアトル銀座)
劇場に着いたらロビーに津川雅彦さんがいた。普通に「おお」くらいに思っていたら、この芝居、津川さんの演出だったのね。マキノ雅彦演出っていうのはわかっていたのに、私の中でマキノ=マキノノゾミになっちゃっていたのだ、全然名前が違うのにバカだね。
この芝居、何度も泣いた。
さて、舞台には「加賀屋歌右衛門丈江」と染め抜かれた大きな幕がかかっている(これは芝居小屋の看板らしいというのが後の玄碩のセリフから察しられた)。歌舞伎以外の演劇にしては珍しく時間通りに開演となった。宇崎竜童の歌が流れる。思いっきり歌謡曲で、この曲に合わせて舞台で舞踊でも披露されそうな、なんだか大衆演劇を思わせる。嫌いじゃない、こういうの。少しずつ暗くなり、歌が終わると真っ暗になる。すると。「♪花のほかには松ばかり~♪」の曲が聞こえてきて、ああ道成寺だと思っていると、照明が入り、白拍子姿の福助さんが舞う。福助さんは特別好きというわけじゃないのに、心が高鳴って目が離せない。やっぱり歌舞伎役者さんをこういう場面で見ると興奮するんだわ。福助さんは女形の男性役者という感じ(もちろん、そういう役なんだし、ご本人もそうなんだけど、男性の面がやや強く感じられたのだ)。
大坂で大人気の加賀屋歌右衛門は、中村座の座元・勘三郎の要請を受け、江戸へ下ることにする。しかし歌右衛門の目は徐々に見えなくなりつつあった。
目が見えないのをひた隠し、足探りで手拭掛けを見つけて手拭を掛ける姿――人気看板役者としての風格の陰に不安が見えて哀れに思った(もう、少しじんときている)。
その隠した失明の危機をズバッと見抜く医師・土生玄碩。「歌右衛門は大したものだ。目が見えないのにあれだけの踊りができるとは! 歌右衛門の目を治せるのはおれだけだ」。玄碩がその場を追い払われるのは当然のことだ。しかしその無神経さ、マイペースぶりは憎めない。梅雀さんが実にうまい!! 持ち味の愛敬で生き生きと玄碩その人になっている。玄碩という人は医術に夢中で金は眼中にない。
歌右衛門の失明寸前の状況がついに一座の者にも隠しおおせなくなる。歌右衛門の目を治したくて江戸下りの一座を追いかけてきた玄碩は金谷宿でついに治療を依頼される。ところがお礼にいくらでも払うと言われた途端、ヘソを曲げてしまい断固治療を拒否する。治したくてしょうがないくせに…師匠のすべてを知り尽くした弟子の藤堂嘉助がうまくあしらって、師匠の気持ちをひっくり返す。ここは思わず客席から拍手が湧いた。嘉助の風間俊介クンがまたいい。素直で大らかで師匠を心から敬愛していて何があっても師匠を支え、人物としちゃあ師匠よりデカいんじゃないかという感じがイヤ味なく自然に滲み出ている。
嘉助の機転で気持ちを変えた玄碩が歌右衛門の診察に現れた瞬間、泣きそうになった。そして玄碩と歌右衛門が各々の気持ちを語り、互いに信じ合う決意を交わすともう我慢できない。涙がこぼれた。
手術から包帯が取れるまでの10日間、玄碩を信じて受けた手術であっても歌右衛門はやはり不安にとらわれる。その歌右衛門の痛みや不安を福助さんが舞うように表現する。
10
日後、手術は成功し、歌右衛門の目は再び見えるようになる。光を感じて喜ぶ歌右衛門。それは、身体的に光が見えただけでなく、精神的にも闇が開けたような感覚で感動的であった。2人の強い信頼が実った瞬間だった。しかし2人だけになった時、2人の口から本心が語られる。玄碩は歌右衛門のことよりも自分の医術だけを考えていたと。歌右衛門は信じたと言いながら少しでも疑ったことを。互いに自分を恥じながら、2人はあらためて強い信頼で結ばれるのであった。

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2012年7月18日 (水)

間近で名作品を鑑賞、愛おしさが込み上げてくる「真珠の首飾りの少女」:ベルリン国立美術館展

713日 ベルリン国立美術館展(国立西洋美術館)
12071804seibi 2時間ドラマのタイトルみたいになってしまったかしらcoldsweats01
こちらの「少女」のほうが先に来日したのだけど、しかも初来日だというのに都美の「少女」に人気を譲ってしまった感があった(混雑時期はすでに過ぎた?)。おかげで、様々な作品を間近で見ることができた。しかし、やはりハシゴはきつい。100点以上の作品であるうえに、小さい彫刻もかなりあって、相当くたびれてしまい、けっこう駆け足的に
なってしまったのが悔やまれる。ベルリ
ンの展示作品は私にとっては馴染みのない作家のものが多く、それも駆け足の一因だったが、よく考えれば馴染みがないからこそじっくり見てくるべきなのである。上野のこの
2つはハシゴせずに再見したいものだ。
展示は絵画・彫刻部門と素描部門に分かれており、絵画・彫刻部門は15世紀から18世紀まで5章の構成になっている。
第一章 15世紀:宗教と日常生活
エルミタージュは16世紀ルネサンスから20世紀アヴァンギャルドへと時代進行していたが、こちらはルネサンス以前の作品が見られる。ただ、「宗教の作品かぁ」感が湧いてくる。日本人の生活には宗教があまり感じられないとは言うが、考えてみれば日本だって昔は仏教画や仏像彫刻などがたくさんあったわけだし、日常生活に仏教信仰は浸透していたはずだ。宗教の作品かぁと敬遠することはないのである。
様々なレリーフを見ていると、素材が気になってくる。15世紀は木材彫刻がけこうあって、菩提樹、胡桃、樫、それぞれの違いがなんとなくわかってくる。私の好みは菩提樹材。素材のやわらかさがそのまま自然に伝わってくるから。しかし胡桃や樫のような堅い木は堅い木で、よくこういう表現ができるものだと感心する。
第二章 1516世紀:魅惑の肖像画
たしかに魅惑の肖像画である。「コジモ・デ・メディチの肖像」(ヴェロッキオの工房、大理石)、「マルティン・ルターの肖像」(クラーナハ・父の工房、油彩。初来日)なんて、名前を聞いただけで歴史が甦り、興味が湧くではないか。
「ノールドウェイクの聖ヒエロニムス」(オランダの画家、油彩)は私がもっていたヒエロニムスのイメージとは全然違う。若くたくましく堅固な意志が顔に満ち溢れ、一度見たら忘れられないようなインパクトがある。
「ヤーコプ・ムッフェルの肖像」(デューラー、油彩)は肌感とか着ている物の質感がきわめて写実的。これなど、間近で見られる恩恵をたっぷり受けたと言っていい。
第三章 16世紀:マニエリスムの身体
マニエリスムとは、ルネサンス後半からバロックにかけての時期に登場した様式で、細長く伸びた人体表現、様々な方向へのねじれや回転を見せる動きが特徴だそうである。
「ルクレティア」(クラーナハ・父、油彩?)は、人妻であるルクレティアがローマ王の息子に凌辱されたうえ、自害を迫られる。男はウソをついて、彼女が奴隷とみだらな行為をしているところを取り押さえて殺したことにするつもりであった。彼女の無実は夫と父親が見抜いたが、恥辱に堪え切れなかった彼女は短剣で胸を刺し貫く。この絵画は短剣が胸に立てられたところを描いた作品である。貞節な女性の身体は男性鑑賞者の目にはエロティックに映る。これは鑑賞者がローマ王の息子と共犯関係にあることを示すそうだが、女性の私から見ても確かに美しい。そしてその体は第三章に展示されている種々の彫像のようである。ここでの絵画はこの1点のみ。彫刻の展示作品数が多いのでちょっと駆け足。

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2012年7月17日 (火)

48点で目は充実、心は大満足:マウリッツハイス美術館展

713日 マウリッツハイス美術館展(東京都美術館)
12071702tobi フェルメール3点を見るなら夏休み前、それも朝イチで、と決意して苦手な朝を何とか克服し上野へ。都美と西美、はしごをするのだがどちらを先に見るか。
①都美は新装オープン、しかも「世界で一番有名な少女」が来ているのだから絶対混むに決まっている。それに都美のほうが西美より展覧会の日が浅い分、混むだろう→大正解good 見終わって出て来たら、入場30分待ちになっていたshock
②上野駅から遠いのは都美。西美で疲れた足を都美に向けるより、帰り道にある西美を訪れたほうがいいだろう。
というわけで、まず都美へ。噴水はまだ工事中であったが、あのセンターのスペースを挟んで西美側にpark side caféが、都美側にスタバができていた。両方ともテラス席があって、一息つくのによさそう。
さて、都美へ着いたのはオープンの10分後、940分。並ばずに入れたのはいいけれど、意外と人が多くてビックリ。今回の客層はマチマチ(子供はほとんどいなかった)。
展示は、美術館の歴史風景画歴史画(物語画)肖像画と「トローニー」静物画風俗画6章で構成されている。今回は予習なしなんでよほど音声ガイドを借りようかと思ったが、ひたすら絵を覚えて復習することにした。
マウリッツハイス、畏るべしである。とにかく所蔵作品の質が高い。目玉はフェルメールであっても、レンブラントが充実しているし(フェルメールに隠れてしまっているが、当然こちらも目玉であって然るべき)、ルーベンス、ヴァン・ダイク、ファン・ホントホルスト、デ・ホーホなど私が名を知っている画家だけでなく知らなかった画家の作品も、み~んないいんである。
美術館の歴史
ヨーハン・ゲオルク・ツィーゼニスの鮮やかな「オラニエ公ヴィレム5世の肖像」「ソフィア・ヴィルヘルミナ公妃の肖像」、ヴェイナンツの美しい「マウリッツハイスの景観」、アントーン・フランソワ・ヘイリヘルスの「マウリッツハイスの『レンブラントの間』、1884年」を見れば、いつかはマウリッツハイスを訪れたいという気持ちが高まる。
風景画
オランダの風景画でいつも目につくのは雲である。全部が全部じゃないだろうし、オランダでない絵画だって雲がたくさん描かれているのかもしれないけれど、オランダの風景画を見るとなんとなく「雲が多い」と思うのである。その中でヤン・ボトの「イタリア風の風景」は岩山、山道を歩くロバと人、木々が印象的である。
歴史画(物語画)
わかって見れば一番面白いジャンルの絵画。予習なしなので解説をしっかり読む。
ヤン・ブリューゲル(父)とヘンドリック・ファン・バーレンの合作「四季の精から贈り物を受けるケレスと、それを取り巻く果実の花輪」(あ~、長ったらしい題名だ。オランダは人名もややこしいのに)。これ、「すごい」としか言いようがない。ディテールがすごいのだ。
ルーベンスの「聖母被昇天(下絵)」は習作と言われてみれば確かにそうであるが、それにしても素晴らしい。
「レンブラント「スザンナ」「シメオンの賛歌」が魅力的。そのレンブラントの「シメオンの賛歌」の隣にアーレント・デ・ヘルデルの「シメオンの賛歌」もあって、こちらも絵の中の感情が伝わるようである。「真珠の耳飾り」へ行く前に、ここにもフェルメールがある。
「ディアナとニンフたち」。フェルメールと気づかない人が多いのか、意外とここはすいていて、ゆっくり見ることができた。フェルメールの室内画とはずいぶん違うようでもあり、共通点もあるようであり。ふんわりした感じ。
この歴史画は以上の6点のみの展示であるが、それでこんなに充実しているとは!!

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2012年7月16日 (月)

歴史上の出来事だってそこに生きていた人たちがいる:「ヘンリー6世III」「リチャード3世」

815日 子供のためのシェイクスピア「ヘンリー6世Ⅲ」「リチャード3世」(あうるすぽっと)
日程上やむを得ず通しにしたのだけど、昼夜の間が2時間もあると知ってそれぞれ別の日にすべきだったと後悔したものの(風があんなに強くなければ、外で時間つぶせたのに)、夜の部の「リチャード3世」が始まったら、やっぱり通しにしてよかったと、現金なもの。というのも、ばら戦争の発端から始まり、リチャードの陰謀でヘンリー6世が死を遂げるまでの物語の盛り上がりがそのまま心を盛り上げているうちに次が見られたから。

2008
年の「シンベリン」以来私が見てきたこのシリーズは「マクベス」を除いて喜劇、ロマンス劇であり、こんな激しい戦闘シーンがあるのは初めて。正直ビックリした。役者さんは今回が一番体力を消耗しているのではないだろうか。そして山崎清介さんのこんなに狂気に走った姿は初めて。穏やかで静かな哲学者風の人だという印象が強かったんだもの。山崎さんは体調不良で初日の14日夜と15日昼が休演とHPに出ていたので、こんな激しい舞台では15日夜の部大丈夫なのかなと心配したけれど、思いっきりリチャードになって暴れていた。
2
回の代役は新国立劇場出身の長本批呂士さんで、両方見られたのはそれはそれでよかったかも。長本さんのリチャードはイアーゴーのような感じがした(この人のイアーゴーを見てみたいと思った)。長本さんのイアーゴー、山崎さんの狂気は役者による違いなのか、時の経過につれてリチャードの狂気部分が強くなっていったのかはわからない。
狂気――醜い左手は山崎さんお得意の人形の形を成していて、リチャードが人形である左手との会話によって自分の心の醜さ、狭さを十分認識していることを考えると、狂気に捉われざるを得なかったのかもしれない。左手との会話部分は山崎さんに一日の長があるのはやむを得まい。この左手人形を、リチャードを殺したリッチモンド(=テューダー朝を開くヘンリー7世)がリチャードから切り取り自分の物として受け継いだときには、100年戦争、30年戦争と1世紀以上に亘り血を流したイギリスにせっかく平和が訪れた…のではなかったのか、という含みを感じてちょっとゾっとした。
脚本はよくできていて、複雑きわまりない人物相関、それも1人の役者が複数の役をやり、それも今Aだった人が一瞬後にはBになっていたり、今ランカスターの臣下だった黒ずくめの集団が一瞬後にはヨーク側についていたり、10人で役名があるだけでも30人以上もの人物を演じなければならない制約を実にうまくこわして、この人物が誰か、ストーリー展開がどうなっているのか「わからないっ」ってことは全然なかった。
しかししまいにはリチャードが幼い子供も含めて次から次へと人を殺すことに気持ちが悪くなってしまった。最初から最後まで殺し合い血塗られたこの話をまともに見せられたらつらくなるところだが、山崎さんは笑いもふんだんに盛り込んで、暗く沈まないようにしている。「ヘンリー6世」では権力争いはよくあること、「たとえば高崎山のサルは…」と論じ始めたランカスター側に「サルにたとえるとはなにごと」とあきれるヨーク側。ここは笑えた。またウォリックが「ちゃんちゃらおかしい」と言ったら、「ちゃんちゃら」が舞台上で大受けして、「ちゃんちゃらの意味は?」としつこくツッコむ2人の黒ずくめ。それから「リチャード3世」ではヘンリー6世の王妃だったマーガレットが落ちぶれて拡声器でヨーク家を呪っていたり、いっぱい笑いがあって、挙げきれない(その分、シェイクスピアらしいセリフがだいぶカットされたのかも。でも私にはその辺はよくわからない)。そういう可笑しさのほかにも、ウォリックが何度も寝返ったり、エドワードのアンに対する求婚といった人間心理としての面白さにも笑った。
その一方で、ロンドン塔に幽閉され羊飼いの生活を羨むヘンリー6世が哀れであった。

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2012年7月15日 (日)

ちっともお目にかかれない1000系

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演舞場に行くたびに乗っている銀座線。
それなのにこの1000系に出くわしたのはこれまでにわずか2度。
上は6月29日。
下は5月6日の初対面時。突然のことだったのでカメラの準備が遅れたうえ、なんかアガったというかアセったというかcoldsweats01
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2012年7月14日 (土)

明快な謎解きが面白い「毛抜」

712日 第82回歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎のみかた」(国立劇場大劇場)
「歌舞伎のみかた」ではざわつきが気になった客席。本編の出だしもやっぱりざわざわ。とくに数馬と秀太郎の諍いで数馬が若菜に「のかっしゃれ」と言ったらなぜかざわつきが大きくなった。察するに、若菜が先のりき弥さんだとわかったから? 「歌舞伎のみかた」でりき弥さんと宗之助さんの役をはっきり紹介しておいたほうがよかったのかなと思った。芝居が始まってこんなにうるさいのは初めて。
ところがざわつきが納まると今度はおとなし過ぎ? 宗之助さんがスクリーンの中から、「面白いと思ったら遠慮なく拍手してください」って言ったのに、拍手は幕開きと引っこみだけ。それなら芝居を知っている大人の観客が手を叩けばいいと思いつつしそびれて、でもここは、というところで拍手したら私1人。挫けた。大人も何となく拍手しそびれていたのかもしれない。
弾正・愛之助、巻絹・秀太郎、小原万兵衛・市蔵、小野春道・友右衛門、秦民部・秀調、八剣玄蕃・錦吾、秦秀太郎・高麗蔵と芸達者な役者揃いなのに、出にも引っこみにも見得にも拍手が起きないなんて…。いや、拍手がなくても、せめて可笑しいところでは笑ってほしい。本当に無反応って雰囲気で(寝ている子も多かった)、錦の前の髪が逆立っても、デッカイ毛抜きが出てきてもそれが立っても反応なし。「面目次第もござりませぬ」にも反応なし。と言って、ひどくしら~っとした空気かというとそうでもなく…でも役者さんの気持ちを思ってはらはらしてしまった。
大向こうも全然かからず寂しいと思っていたら、毛抜きが立って弾正見得、というところでやっと1人「っつしまやっ」とかける人が。その一瞬、3階の女子高生たちが一斉にびくっとしてそちらを振り返ったのが可笑しかった。
磁石のからくりを見破る頭のよい弾正が色好み、それも男でも女でも美形だと見るとすぐにちょっかいを出す。そのギャップが大らかで、明るい愛敬があって、それに何より愛之助さんはセリフが丁寧ではっきりしていてよい。愛之助さんの演技はいつも丁寧だが、今回は客の大半が初めて歌舞伎を見るかもしれない高校生だということを意識して、より丁寧な気がした。イントネーションやセリフ回しは團十郎さんの教えを受けたことがはっきりわかる。錦之助さんの時もそうだったな、と思い出した。セリフや動きが明快だから、謎解きが非常に面白い。何度も見ているのに面白い(高校生には面白くなかったのかなあ)。
その謎解きをさらに面白くしているのが市蔵さんの万兵衛。弾正との駆け引きの呼吸が実によく、愛敬のある悪役ぶりがシブくて楽しい(涙を装うところなんて可笑しくて思わず吹き出したのは私1人…)。そういえば、帰りに市蔵さんに出会ったけど、もう化粧落として着替えてお帰りなの?とビックリした(あんまり早いから本当に市蔵さんだったかどうだか自信がないけど、多分そう)。
秀太郎さんの巻絹、出番はちょっとだけど、上品な色気と愛らしさが見事。先月の静御前に続いて、秀太郎さんのスゴさを見たような気がした。高校生、びびびびび~にも反応がなかったな。
亀ちゃんや浅草メンバーがよく言うように、役者は拍手でエネルギーをもらう、そのエネルギーを客席に返す、「舞台と客席のキャッチボール」がこの日は全然成り立っていなくて、それでも一生懸命エネルギーを客席に放っていた愛之助さんをはじめとする役者さんたちに、最後は大きな拍手が送られて「よかった」と安堵したのであった。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」30分(14301500)、幕間20分、「毛抜き」70分(15201630

 

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2012年7月13日 (金)

知っていても楽しい「歌舞伎のみかた」

712日 第82回歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎のみかた」(国立劇場大劇場)
120713kokuritu 開演5分前、緞帳が上がって定式幕になると、「ひゅぅ~」という歓声と拍手が起こり、おお今日の高校生は期待できるね、と思ったら…。そこから又べちゃべちゃ始まったのはいい、まだ開演前なんだから。ところが、場内暗くなり、バタバタに合わせて宗之助さんが花道を走って登場し、七三で見得を切ってもまだあちこちでべちゃべちゃやっている。宗之助さんはかまわず花道の説明をして、もう一度見得を見せたが、まだうるさい。話が始まってるのにこんなにおしゃべりが止まないのは初めてかも。
定式幕が開くとやっとおとなしくなったが、それでもまだざわついた空気が漂う。今まで何回も鑑賞教室は見てきたけれど、始まってるのにこんなうるさいのは初めて。今日だけのことであってほしいものだ。
説明は進み、黒御簾が演奏を始めると、「くろごちゃん」が舞台奥にかかった幕から客席の様子を見るかのようにそっと顔だけ出し、一度引っこむと今度は体全体現して舞台中央へ。宗之助さんはくろごちゃんに「誰?」ときいて知らない風を装っていたが、ここは知り合い同士のほうが自然なんじゃないかな。
くろごちゃんは黒衣の役割を説明するように促されるが「見習いだからうまく役割説明できない」と辞退し、かわりに裃後見が出てきた。裃後見は差し金で蝶を飛ばし、くろごちゃんがそれをつかまえようとして追いかけるのが高校生たちにウケていた。くろごちゃんは裃後見について差し金の練習をすると言って2人揃って上手へ引っこんでいった。黒衣の説明としてはちょっと物足りないかな。
今度は女形の拵えの実演である。
りき弥さんが浴衣姿で現れる。首まで白く塗ってあるが、ここから先は舞台で、というわけ。下手側に鏡台を置いて化粧するのであるが、それではよく見えないというのでカメラが現場を撮影し、舞台スクリーンに映し出すという手法。これはなかなかよかった。
まずはびんつけ油を顔全体にのばす。おしろいが汗で落ちないようにするためだ。

練りおしろいを塗る。大きめの刷毛で潔くぱっと塗る。三塗りくらいで顔全体塗れたのではなかっただろうか。あまりの思い切りのよい塗り方に客席がちょっとどよめいた。

練りおしろいの上から粉おしろいをはたく。これは光るのを抑えるため。りき弥さん、どちらの頬だったか、練りおしろいが一筋だけ塗られていないところがあった。粉おしろいでそれは塗りつぶされたのだが、単純に練りおしろいの塗り落しなのか、あるいは何か理由があるのか。

目の上からこめかみにかけて紅をぼかして刷く。それだけでぐっと女性らしくなった。その後目の縁に紅、口紅を塗る。そして眉(え~と、紅と眉、どっちが先だったっけ?)。眉は一番神経を使うところだからと、宗之助さんも高校生たちが騒がないように気を遣っていた(眉一つで印象が変わるのは普通に女性としても同じだからね)。りき弥さんは眉を剃っているのだそうだが、剃らずに化粧で潰す人もいるというお話。

化粧が終わると着付け。衣裳さんは若い方のようにお見受けしたが、慣れた手つきで素早くきれいに着せ付ける。宗之助さんがお腰の説明をする(昔は今のような下着をつけていないから、お腰が下着になった)。帯はセパレート型。きれいに帯を結ぶのは難しく、また時間がかかるので歌舞伎では昔からこれを使っているとのこと(私も、若い頃浴衣の帯はセパレートでしたわ。差し込み部分がプラスチックですぐに壊れちゃったけど。歌舞伎の帯の差し込み部分は木でできているんだとか)。

次は鬘。これもカメラで。鬘の芯は銅なので重い、りき弥さんの鬘は約1kgだそうだ。

さあ、これで終わりと思ったら、まだ手が残っていた。りき弥さん本人が素早く手と腕におしろいを塗る。りき弥さんは手にはびんつけを塗らないそうだ(塗る人もいる)。
拵えは手際よく早く仕上がった。全部できてせっかく女の姿になったのに、おやおや、りき弥さんの歩き方ったら、それは男のままでしょ。もっと女らしくしたほうが…と訝し気に見ていたら、宗之助さんがちゃんとツッコンでくれた。
しかしこれも台本のうちで、ここで女形の体の形の作り方指導。膝を合わせ内股に、肩甲骨をぎゅっと両側から寄せて肩を落とす。高校生たちにもやらせていたが、みんなきつがっていた。私も家で時々やってみるんだけど、絶対うまくいかない。女形の役者さんって膝にも負担がかかるだろうし、ほんと大変だなといつも思う。
さて、りき弥さんと宗之助さんが肩甲骨を寄せて肩を落とすと、本当になで肩になるのだ。この作り方はこれまでに鑑賞教室で何度も見ているのだが、いまいちなで肩になり具合がわからないでいた。今回は「おお、こんなに違うものか」と感心した。

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2012年7月12日 (木)

絵は背景を知ってみると面白い:あと5日「エルミタージュ美術館展」

625日 エルミタージュ美術館展(国立新美術館)
チケットをいただいたので行ってきました。なかなか感想が書けず、今頃になってしまった。
最近、美術は感性で見るものではない、と思っているので(しかも、私にはそんな感性もないし)、予習してから行った。予習をすると、美術展は実に楽しめる。特に西洋文化はベースに宗教があるから、それがわからない私にはとくに宗教画なんてほとんど面白くない。その点、印象派はわかりやすい(もっとも、印象派こそ感性が必要なのかもしれない)。わかりやすいけれども、背景にある物語を知ってイコノロジー的な情報が与えられた宗教画と比べると後者のほうが面白いと思うのである(もちろん、それは宗教画に限らない)。ただ、音声ガイドはそこに人がたまっちゃうのであんまり借りないようにしている。
さて、この展覧会は16世紀から始まる5章に分かれていて、絵画の流れを時代を追って見るようになっている。以下、「ぶらぶら」で予習した内容のウケウリも含めて。
1章 16世紀 ルネサンス:人間の世紀
ティツィアーノ「祝福するキリスト」。右手が祝福を表す指の形をして左手に水晶玉を持っている。水晶玉は世界を表し、キリストが世界を祝福しているのだそうだ。同じような表現のキリスト像をダ・ヴィンチも描いているが、フィレンツェ派(ダ・ヴィンチなど)に比べてヴェネツィア派(ティツィアーノなど)の人間的なのだそうだ。ティツィアーノのキリストもやや斜めを向いて、目を右に向け、そこにある何かにふと目をやったような、ちょっとした動きを感じさせ、確かに親しみやすさを覚える。
ダ・ヴィンチ派「裸婦」。モナリザをヌードにしたといった絵だが、なんとも奇妙な気持ちになる。あまりいい出来とも思えないし、表情が品性に欠けるような気もする。
2章 17世紀 バロック:黄金の世紀
ヴァン・ダイク「自画像」。洗練された二枚目の青年紳士に見える。ヴァン・ダイクはこの時代、オランダにはどうにも超えられない巨匠ルーベンスがいたためイギリスへ渡った。当時のイギリスでは画家はまだ育っていなくて、ヴァン・ダイクは実力もあったからチャールズ1世の宮廷画家として成功した。画家が自分をある程度理想化して描くのは、注文主に対するアピールの意味もあって、やはり注文する側も素敵な紳士、あるいは美女に描いてほしいと思うようなのある(ロココ時代のヴィジェ=ルブランもそうである)。ただ、自画像と実物があまりかけ離れていては誇大広告になるから、実際のヴァン・ダイクもヴィジェ=ルブランもハンサムであり美人であったらしい。
ファン・ホントホルスト「幼少期のキリスト」。ラ・トゥールの「大工ヨセフ」(ルーヴル所蔵)を思い出す。前者は1620年頃、後者は1640年頃のである作品である。「大工ヨセフ」のほうはキリストの運命を暗示するような作品であったが、こちらはキリストの「救い」を表現しているようだ。
3章 18世紀 ロココと新古典派:革命の世紀
光と影のオランダ美術も好きだが、ロココの優美でやわらかな画調がその後にくるとなにかほっとする。
ユベール「ヴォルテールの朝」。 ズボンをはこうとしながら(脱ごうとしているのかな?)口述筆記かなにかさせているヴォルテール。目覚めてすぐ何かを思いついて書き取らせているに違いな い。凡人の私など、思いついたことがあっても、着替えてからなんてやってるからすぐに忘れる。片足立ちになってズボンに脚を通しながら手振りで何かを伝え ているその姿に自然と愛敬が滲み出て、私は好きだ。
ブロンプトン「エカテリーナ2世の肖像」。「ぶらぶら」で解説をしていた中野京子さんが、ヴィジェ=ルブランにエカテリーナの肖像を描かせたかったと残念がっていた。マリー=アントワネットのお気に入りであった彼女がエカテリーナを描いたらどんな肖像画になったのか、ほんと見てみたかった。ロシアに亡命中の「自画像」も実に美しい。あ、横道に逸れた。
今はヴィジェ=ルブランの話ではなくブロンプトンの「エカテリーナ」。一通りな感じでインパクトは弱い。中野さんによれば、エ カテリーナはドイツ人で、ロシアに嫁に来て夫を殺害し、自分が皇帝になった。つまりロシア人でない人間が順当でない手続きによってロシア人皇帝に取って代 わった。それをロシア人に認めさせてしまったのがすごい!と(日本では家重の時代にあたり、たとえばポルトガル人が家重と結婚して家重を殺し自分が将軍に なったようなものだという)。しかも、大帝と呼ばれるのはピョートルとエカテリーナの2人だけなんだって。そういう凄さがこの絵からはあまり感じられない。それは画家の力量不足なのか、エカテリーナ自身の希望なのか。それにしてももう少しインパクトがあってもいいかなと思う。


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2012年7月11日 (水)

膝のせクッションでリラックス

行きつけの美容院ではクッションを貸してくれる。
丸くて適度に堅い厚さ10㎝くらいはありそうなクッションだが、これは背中やお尻のためのものではない。膝にのせるんである。
これが意外と気持ちいい。ただ手をクッションの上に置くだけでも楽だし、本を読んでいても何となく落ち着く。
いつも、なんでクッションを載せるだけでこんなに違うのかなあと不思議がりながら美容院での時間を過ごす。先月持参の「海辺のカフカ」はその後読了し、今月は「日本の女帝の物語」(橋本治)を読み始めた。平安時代以前の複雑な系図に頭を混乱させながら、来月もこの本読んでたらマズいから(別に誰も気にしちゃいないとは思うけれど)、せっせと読み進めようと思う(美容院の雑誌はぶっとい私の指には重すぎて、あまり手に取らないようにしている)。
帰路、カーラジオで「パンダが残念」とか聞いたから、家に着いて早速ネットで調べたら死んじゃったんだね。かわいそうに。

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2012年7月10日 (火)

やっぱり歌舞伎は面白い:2年ぶりの巡業東コース

79日 松竹大歌舞伎巡業東コース(練馬文化会館)
初日の江戸川は亀ちゃんの巡業で一度行って、アクセスがいまいちだったので今回パス。かわりに近松座へ行くつもりが「桜の園」になっちゃって、結局近松座は断念(亀鶴さ~heart04ん)。
そういえば練馬も亀ちゃんの巡業で来たような気がするな(2008年、亀ちゃんの巡業は前橋も含めて3度も行ったのだ。前橋は遠かったshock 前橋駅も遠く、駅からも遠かった。そして暑かったsweat01)。練馬はアクセスがいいし音響もよい。

それに、私が通っていた小中高は西武線沿線からの通学が多く、そういう意味でも馴染んでいるsmile 
今回の東コースは「義経千本桜」から忠信の3本を通しで。若手のダブルキャストといった試みもあって2度行くことにしている。そのうちの第1回。お客がよ~く入っていた。そして幕間に豆菓子が飛ぶように売れていた(売り場前は人が二重三重、押すな押すな)。
「鳥居前」
今回は義経が尾上右近、静御前が梅枝、忠信は松緑という配役。右近クンと梅枝クンは後半役が入れ替わるが、私は右近クンは立役、梅枝クンは女形のほうが好きである。梅枝クンが登場して最初のセリフ、「わが君さまか」に義経恋しさが溢れていて、その一言を聞いただけで泣きそうになってしまった。梅枝クンの儚げな可憐さは、天性のものだろう。ある時すっと消えそうでいてしっかりとした存在感があるのがいい。
弁慶の権十郎さんは全身で嘆いていて、静ならずとも義経に命乞いしたくなる。許されると「坊主頭をなでまわし」安堵する弁慶だが、あの頭は坊主頭なのかぁ。後に笹目忠太も「くりくり頭の武蔵坊」と言うからあれで坊主頭なんだろうが。
義経の4人の家来の中では亀三郎さんのうまさが光っていた。
萬太郎クンは笹目忠太には少し若すぎるかな。こちらも天性のユーモラスな感じが意外と活きていなかった。
松緑さんからは舞台が狭くて窮屈そうな感じを受けた。いや、ご本人はそう思っていないだろうが、見ている私にはそう感じられたということである。引っこみは狐と人間の間をいったりきたりするメリハリがあった。
この「鳥居前」では亀三郎・亀寿兄弟、梅枝・萬太郎兄弟、菊市郎・菊史郎兄弟、そして亀兄弟と権十郎さんは叔父甥、なんか面白い。
「道行初音旅」
ここの忠信・静は菊五郎・時蔵コンビ。
なんちゃって花道から白い衣裳の時様が現れた途端、その上品なハッと息を呑むような美しさに客席がどよめく。あちこちから「きれい…」という声が聞こえてきた。白の衣裳は菊五郎さんと相談して決めたそうだが、ばっちり正解。清楚で赤より若々しく見えると思った。
静が鼓を打つと場内が闇に包まれる。再び明るくなった舞台、なんちゃって花道に忠信が。もうそこに菊五郎さんがいるだけで、花が咲いたみたい。存在感の大きさ、わくわくする役者ぶりに思わず涙がにじみ出た。
菊・時コンビはだ~い好き。毎回言うようだが、長年連れ添った夫婦のような、ことばに出さずとも互いにわかり合っている空気、それでいて狎れあいにならない新鮮さがいつもある。この2人を見ていると胸がきゅんきゅんしっぱなしになる。
そしてベテランの大きさ、味わい。先月の藤十郎・秀太郎コンビの大きさに圧倒されたが、ここでも菊五郎・時蔵コンビの深い味わいに、若手はまだまだと実感する。もちろんそれは当たり前のことなんだけど、若手の「鳥居前」と「四の切」の間に入って、しっとりとした大人の関係がぐっと胸に残る(でも、菊五郎さんがなんとなく可愛いの)。
この道行を見ていると、鼓が静にとっても忠信にとっても大切なものであることがよっくわかる。「道行」が演じられる意味はそこにあるんじゃないか、とふと思ったりした。
團蔵さんの逸見藤太,飄々とした可笑し味にベテランらしさが見える。
最後は菊五郎さんの低めのコースを狙ったナイスな笠投げ、團蔵さんのナイスキャッチで盛り上がった。

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2012年7月 9日 (月)

又また花道が見えない

今日は8月歌舞伎の発売日。
6月7月に全力投球しちゃったから8月はかなり気が抜けてしまって、はじめはパスしようかと思っていたくらい。
それがこの前も書いたように、海老ちゃんの口上を聞いて「伊達の十役」はやっぱり見ようと思い直した。で、チケットはかなり余裕で探せたけれど、どの座席にするかその場になって悩み、うろうろ3Aと3Bの左右をいったりきたりしているうちに、だんだんコスパのいい席が減ってきて焦りだし、結局のところ、また花道の見えない席を選んでしまった。宙乗り狙いっていうか…。1度見てるから宙乗りより花道優先すればよかったかな。でもあの時は花道脇の席と2階で見たし。まっ、いいかという気持ちと失敗したかなという気持ちが半々。
昼の部はマイ指定席bleah復活。

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2012年7月 8日 (日)

涙の「ヤマトタケル」

76日 七月大歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
そういえば、7月も昼の部に口上があったんだっけと思い出したのは、幕が開いてから。
「口上」
白装束の猿之助、黒装束の中車の2人が舞台中央で平伏している。
猿之助さんは自分の襲名の挨拶の後、「香川照之が立役の大名跡・市川中車を九代目として名乗ることになった」と紹介する。
中車さんは一通りの挨拶の後、「隣にいる頼もしき従弟。これからご覧いただく『ヤマトタケル』では私が父、猿之助が息子を演じるが、これからは猿之助を父とも師とも仰ぎ精進する」と、先月同様の決意を述べた。
再び猿之助さんが口を開き、尊敬する福山雅治さんから祝い幕をいただいた。「曾祖父、祖父、私の隈取を3つ重ねたらこれまでにないものができた。各々が各々の名に心血を注いで新たな色を付け加える、それが襲名の意義ではないか」(だいぶ端折ったけれど、そういうことだったと思う)。「歌舞伎はライブ。録画しておける映像は見ようが見まいがずっと残る。歌舞伎は、この客でこの舞台というのは1回しかない。だから客に参加してほしい。と言っても舞台で芝居をするのではない。声援がほしい。大向こうは役者の糧となる。客の声援でエネルギーをもらい、それを客に返す」というようなことを熱弁した。
「ヤマトタケル」
このメンバーでの2回目だというのに、何度も泣けて泣けて…。感想も前回とダブるかもしれないけど…。
中車さんは先月、帝としての大きさが足りないように思ったが、ずいぶん大きくなったと思った。こっちの慣れもあるかもしれないが、帝としての1カ月が中車さんを成長させたのではないだろうか。
熊襲を倒し、蝦夷を倒してのヤマトタケルの勝ち誇った喜び溢れる顔には、大和一の勇者となっただけでなく父に許してもらえる期待感が切々と感じられて、熊襲や蝦夷の尊い世界を「米と鉄の武器」で強引に奪った憾みも薄れる。それに、古いものにしがみついていたから滅びたのだ、新しいものを取り入れなくてはならないというヤマトタケルのセリフは、まさに先ほどの口上の通り、澤瀉屋の精神そのものを表していて、より感動が高まった。
しかし、何度も言うようだが油断、相手を甘くみる心がタケルの命を奪った。あのタケルにして驕りからは逃れられなかったのかと残念でならない。
熊襲の猿弥さんが実に大きく潔くカッコよい。熊襲でも蝦夷でも兄弟を失って嘆く様に涙を誘われた。カーテンコールでは蝦夷の扮装で猿四郎さんと体を後ろに反らし足を高く上げた歩き方で出てくるが、これもカッコいいのだ。
ヤマトタケルの望郷の念、「帰りたい」「帰りたい」に涙ぼろぼろ。どうして帝はこんなにも純粋なタケルの心を理解してあげなかったのだろう。死んで初めて失ったものの大きさがわかったのだろうか。帝の言葉を「生きているうちに聞かせたかった」とのタケヒコの嘆きにまた涙(右近さんのタケヒコがタケルを陰日向に支えている姿にも涙)。
初めて「ヤマトタケル」を見た時、カーテンコールは観客にとってカタルシスのようなものであると思った。生きて父から温かい言葉をかけられることのなかったタケルの頭上に父帝の手が置かれる。それは、高く飛翔したタケルの魂に満足した私の心を現実的に満足させるものであった。
あ~、何度でも見たい「ヤマトタケル」。すでに2回見て、あと1度見るのだが、全部3階左側席。宙乗りはよく見えるけれど花道が全然見えない。別の席でも見てみたいな。
<上演時間>第一幕70分(11001210)、幕間30分、第二幕65分(12401345)、幕間20分、第三幕80分(14051325

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2012年7月 7日 (土)

千穐楽がうらやましい「天日坊」

72日 「天日坊」(シアターコクーン)
多忙でなかなか感想が書けないでいるうちに千穐楽になってしまった。いいないいな、千穐楽。追加公演とか期待したけど、そうそううまくいくもんじゃないわなと諦め。
しかし黙阿弥のアウトローっていうのは本当に魅力的だ。河内山、直侍、三人吉三、白浪五人男、そして天日坊は4人組。気のいいばあさんを殺してしまった法策はワルい。殺し金を奪う地雷太郎も人丸お六も赤星大八もそれぞれ大義があるとはいえ、ひどくワルい。だけども、彼らの思いが生き生きと表現されていて、ぐんぐん彼らの世界に入り込んでいく私。
でも、正直言うと、法策がお三ばあさん殺しに至る場面で、ついつい目を閉じてしまった、気が付いたら法策がおばあさんを絞めようとしていた。何しろユーロ2012決勝の日だったんだもん、と言い訳するが、法策のこの心境、一番肝心のところでしょう、最後までうやむやしたものが残ったけれど、それでも断然面白かった。
クドカンが誰も見たことがないという黙阿弥の芝居を実に上手に料理していて、現代的な味付けをしつつ黙阿弥の世界をきちんと表現していた。だれだれ実はだれだれ、だったり、化け猫だの、若い北条時貞の恋だの、頼朝のご落胤に化けようとしたら実は木曽義仲のご落胤だったり、けっこう話は複雑に絡み合っていると思うのだけど、それをわかりやすく見せて、ナンセンスな笑いの中にも悲しみを感じる。
亀蔵さんのお三ばあさん、出から笑わせてもらった。こういうおばあさんだから萬次郎さんだろうと思ったら声が亀蔵さんだったから、自分の勝手な思い込みにも笑った。
その萬次郎さんのお公家さんも可笑しく哀れであった。つまり、自分の意志で何かをできない哀れさというか。最後、自分だけ助かろうとして法策の怒りを買い殺されてしまったのは当然の報いとはいえ、私はこの人にこそ「俺は誰だぁ」な感じを受けたな。
七之助さんは両性具有的な魅力があった。色で迷わせ冷酷に殺す。「小笠原騒動」のお大の方、「椿説弓張月」の白縫姫でも冷酷で残忍な女性を演じた七之助さんならではの冷たい魅力が素敵だった。
でももっと魅力的だったのは勘九郎さん。とにかく体による表現が見事。時に弱々しく、時に力強く、鍛えられた肉体の動きがとてもきれいで、それは立ち回りに限らず、それぞれの場面における気持ちを表しているように思えた。
でも、その勘九郎さんと同じ舞台に並んだら私が目を離せなくなってしまったのは獅童さん。平場最前列を取った甲斐があった。上手側であったが、バッチリ獅童さんが目の前に。もうハートビーム全開で見つめてしまったわ。獅童はヘタだとでも何とでも言うがいい。いや、私もそう思うことがあるよ。でも、それを超越してカッコいいのだ。亀蔵さんの大八が倒れ、七之助さんのお六が倒れ、獅童さんもついに倒れ、舞台には勘九郎さん1人が捕手に囲まれた。
そうしたら今度はやっぱり勘九郎さんの魅力に目が釘付け。行儀のよい動き、と言って小さくまとまった動きではない、大きく思い切り暴れてそれでいて行儀のよさを感じる。
最後にネコを抱いてこちらを振り返った勘九郎さんにぞくぞくきた。
巳之助クンの北条時貞がピュアなユーモアをもってなかなかよかった。「江戸の青空」の徳三郎をちょっと思い出すような…。恋仲である高窓太夫の新悟クンは決して美形ではないが、やはりピュアで儚げで一生懸命生きている感じが好もしい。
白井晃さん、近藤公園さん、真那湖敬二さんという歌舞伎外の役者さんが加わったのが新鮮かつ渋い味を加えていた。
橘太郎さんがいて嬉しかった。
串田さんが描いた背景幕が小屋の雰囲気を出していた。
トランペットによる音楽が哀愁を含んで舞台を盛り上げた。最後はトランぺッター6人が私のすぐ脇で演奏。しかもエレキとドラム、パーカッションも上手側に黒御簾みたいにして演奏されていたから(すぐそばで聞いているのに、音が大きすぎるということもなく自然に舞台にとけこんでいた)とても贅沢な気分だった。
お尻が相当痛くて二幕目は色々な姿勢を試みたが、楽しくってエキサイトしたなあ。
<上演時間>第一幕80分(13001420)、幕間20分、第二幕105分(14401625

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2012年7月 6日 (金)

七月歌舞伎初日夜の部②

74日 七月大歌舞伎夜の部初日(新橋演舞場)
「黒塚」
猿翁さんのは見たことがないが、右近さんで見た。亀ちゃんでも見たような気がしていたら、あれは何年前だったか三響会で「安達原」を能と歌舞伎の両方でやったときに亀ちゃんが歌舞伎の「安達原」をやったのだった。
猿之助さんの岩手はうまい。踊りの技術は確かだしきれいだし、物語性を強く感じる。ただ、才気が邪魔をするのかどうかわからないけれど、悲しみがやや薄いような気がした。岩手は夫に裏切られ、そしてまた阿闍梨一行に裏切られるのである。その悲しみは如何ばかりであったか。私は、右近さんの岩手のほうに悲しみや哀れさをより覚えたように思う。朴訥とした感じがよかったのだろうか。だがそれでもなお猿之助さんの岩手は魅力的。鬼女の本性を現してからも猿之助さんはきれいだった。女形が鬼の隈取と扮装をすると何か違和感があるものだが、猿之助さんにはそれはなく、彼が女形一本の役者ではなくあったことをあらためて思ったのであった。
團十郎さんの阿闍梨祐慶は大きく包まれるような空気があった。大和坊の門之助さん、讃岐坊の右近さん、強力の猿弥さん、みんな適役だった。
「楼門五三桐」
これはもうここで触れなくてもいいかなというくらいテレビでも何度も一部が放送されたし、歌舞伎美人にもレポが出ているし…でも、触れないわけにはいかない。
花道に久吉家来がどどどっと出てきた。なんと、彌十郎さんを先頭に門之助、右近、猿弥、月乃助、弘太郎の面々ではないか。これは猿翁の特別バージョンということだ。花道での渡り台詞。「(久吉公)八年ぶりの~」と右近さん。渡り台詞がはじめのうちよく聞こえなかったのだが、この言葉で、猿翁登場目出度しのセリフらしいとわかる。一同が舞台へ移り、満開の桜の中の南禅寺を遥かに望む幕の中に消えると、浅葱幕に変わる。そして浅葱幕が振り落されると、そこは南禅寺の山門である。
百日鬘・金襴褞袍の姿の海老蔵・五右衛門が「絶景かな、絶景かな~」とあたりを見回している。海老ちゃん、化粧があまりきれいじゃない。凄みはあるが、なんだか薄汚い感じでちょっとガッカリ。でも、海老蔵オーラ復活である。少なくとも私は海老蔵オーラを受け止めた。
やがて山門がセリ上がり、それとともに下からは高合引に腰かけた真柴久吉がセリ上がってくる。ただでさえ気持ちが盛り上がる場面ですもの、もう久吉の頭巾が見えた瞬間から胸が高鳴る。子供の時はともかく、本格的に歌舞伎を見るようになってから初めて目にするお芝居の猿翁さんである!! 拍手拍手拍手。猿翁さんの後ろには黒衣さんが控えて猿翁さんを支えている。
「石川や 浜の真砂は尽きるとも」の名台詞が猿翁さんの口からしっかり出る。途中聞きづらい箇所はあったものの、見事なセリフ回しである(拍手で時々セリフがかき消される)。五右衛門がエイッと投げた小柄も見事に柄杓で受け止める。
猿翁さんはだいぶ痩せられてもちろんお病気の陰が残っているのではあるが、その気魄溢れる姿からは山門の上で睨みをきかせる海老蔵オーラ以上のオーラを受ける。

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七月歌舞伎初日夜の部①

74日 七月大歌舞伎夜の部初日(新橋演舞場)
夜の部は「黒塚」の老婆以外、女形は出てこない(よね)。男の演目が並んだのね、と後で初日を反芻していて気が付いた(「楼門五三桐」で澤瀉屋の女形が3人並んだ時はコーフンしていてそこまで思いが至らなかった)。
「将軍江戸を去る」
2008
4月に一度見ているが、そんなに面白いとは思わず、またそんなに好きな芝居ではなかった。実際、自分でもブログにさほど感動していない旨を書いている。だから201012月の国立劇場へは行かなかった。
ところが、今回は真山青果のセリフに酔い、山岡鉄太郎の熱い思いに涙し、将軍慶喜の人物・苦悩も納得できるような気がした。
歴史を知っている現代人には彰義隊のアセり、鉄太郎をどうしても通してはいけない気持ちがわからないではない。しかし早くも鉄太郎と同化してしまった(鉄太郎役が中車さんだからだねえ、きっと)私は、鉄太郎と同じくじりじりじりじりして手に汗握る思い。天野八郎の月乃助さんが堂々と大きく、固い意志が見て取れる。
そこへ登場した高橋伊勢守(海老蔵)。ちょっと陰鬱な印象をもったが、山岡を通すようその場を強引におさめる力のようなものが感じられ、私はけっこう好きだと思った。高橋伊勢守に命じられてもやはり山岡の行く手を阻む彰義隊。今度は山岡が強引に通る。
そして大慈院の場。蒼白のやつれた表情で何かを思う團十郎さんの将軍慶喜が素晴らしくいい。そうそう流れるようなセリフではない中に、なまじ英明であるがために鬱屈した思い、揺れる心が切々と伝わってくる。綱豊卿が一瞬我を忘れかけて激怒したように、慶喜も思わず山岡を手にかけようかという瞬間がある。その時の大きさと品に圧倒されてしまった。敵前逃亡までしてまさに落ち目とはいえ、将軍は将軍である。
大きな大きな團十郎さんに怖じず立ち向かい必死で説得する鉄太郎の言葉に籠る真実に私は何度も身を乗り出しそうになって聞き入った。ただ中車さんの難点はやはり声であろう。のどに無理がたまっているのか割れているのが時として耳障りで、決して聞き取れないセリフではないのだが、やや疲れを覚える。それでも私は鉄太郎に思い入れた。真山青果の思いが中車さんを通して私にもひしひしと伝わってくる。尊王と勤王の違い、「戦争は残酷です」という言葉、慶喜を動かすこれらの言葉に私も動かされた。もう一つ残念なのは山岡がほとんど客席に横顔しか見せていないことで、中車ファンとしては物足りなさがあった。
とはいえ、物語の流れも登場人物の気持ちもよくわかり、感動的な芝居であったことは間違いない。

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2012年7月 5日 (木)

大感謝祭! 亀治郎の会さよなら公演

12070501kamejiro

後援会からは演目についてのお知らせも来ていたのだけど、公表されるまではと控えていました。昨日、演舞場にチラシが置いてあったので。
こちらでも「黒塚」をやるという噂があったけれど、それは実現しなかったようで。

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2012年7月 4日 (水)

強力は猿弥さん、他公演情報3つ

なかなか発表にならなかった「黒塚」の強力。
予想通り、猿弥さんであった(と、HPに発表されている)。

段四郎さんはやっぱり体調が整わなかったのかな。夏だし、ご無理なさらないほうがいいだろう。とはいえ、猿弥さんもいつだったか、休演されたことがあるし、襲名公演はみなさん、特別に大変だと思うので、お体を大事に1カ月いいお芝居を見せてください。

とまあ、私にとっては秀山祭の演目・配役発表(→ココ)より
eyeなのでしたcoldsweats02

もう一つ公演情報を。
来年3月、團十郎・海老蔵で「オセロー」がsign03 見る見る、絶対見ます!!
詳細は→ココ

続々と公演情報が。
明治座11月は澤瀉屋の公演(詳細は→ココ)。右近・笑也コンビの「傾城反魂香」、亀ちゃん当たり役の「蜘蛛絲梓弦」、そして博多座まで追っかけた「天竺徳兵衛」
sign03
中車さんの出演は今のところないみたいだけど、明治座の歌舞伎公演はいつかあるだろうと期待していたのでうれしいheart04 

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2012年7月 3日 (火)

わかりやすく面白かった「三谷版 桜の園」

630日 「三谷版 桜の園」(パルコ劇場)
なんだって土曜日の渋谷を取ってしまったのだろう。多分、歌舞伎の千穐楽に絶対当たらない日を選んだんだと思う。しかもこの日に取ってしまったために近松座の巡業順を諦めなくてはならなくなってしまった。
さて、一般演劇はどうせ開演時間には始まらないしと分厚いチラシの山に目を通していると、5分ほど前に青木さやかが燕尾服姿で舞台に現れた。ああ、そういえばお笑いから青木さやかと藤井クンが出てるんだったわね。
「私は演劇の世界では新人なので前説をやれと言われました。『桜の園』は喜劇です。喜劇と言ってもほんわかほんわかほんわかでもなくて、ズコッとする大笑いの喜劇でもありません」と始まり、開演までまだ時間があるから「歌います」。「♪桜の園~ガンガン倒れる桜の木~♪」(ほんと、芝居の最後のほうでガンガン倒す音が聞こえてきた)「♪私の役はシャルロット、主役です~♪」すかさず「冗談です」。ちなみに歌はAKB48の「ヘビーローテーション」の替え歌らしい。AKBにも最近の歌にもまったく関心のない私は後でヘビロテの曲を聞いて「ああ、聞いたことのある曲だわ」と思ったくらいだから、ヘビロテであることには全く気づかなかった。
歌の後、「開演まであと5分ほどある、上演時間は約2時間1016秒。だからトイレに行くなら今のうち。びっくりするほど近くにあるから間に合わないと心配しないで」。そしてプログラムを取り出して「心を込めて作りました。おススメは10ページの三谷さんの演出ノートと、私のインタビュー」。
青木さんは女芸人としてあんまり好きじゃなかったのだけれど、案外好感がもてた。
この後、ロシア語のアナウンスが流れる。「スパイシーバ」だけわかったから、ご観劇ありがとうみたいなことを言っているのかなと思ったら、その後三谷さんの通訳が一文ずつ入った。内容はだいたい注意事項。それで終わらず、ロシア語でピロシキがどうこう、イクラがどうこう言っている。「ピロシキには焼きピロシキと揚げピロシキがあります」「ロシア語でイクラは魚卵のこと。赤いイクラはサケの卵、黒いイクラはキャビアのこと」だそう。三谷さんらしいと言えばらしいが…。
前置きが長くなった。
さて、「桜の園」は原作も読んでいないし、芝居も見たことがない。唯一の知識は没落地主の話で、私の中ではラネーフスカヤ夫人と言えば東山千栄子ということくらい。そのラネーフスカヤ夫人は今回は浅丘ルリ子。東山千栄子のイメージとは全然違うけれど、この芝居を見てしまったら、もうラネーフスカヤ夫人は浅丘ルリ子でしかなくなってしまったから怖い。
現実に対する認識がまったくなくて、地主としてのプライドは凛としてもっていて、全然金がないのに大盤振舞いをする。周りは弱り切っているのになぜかこの人を守ってあげずにはいられない。現実との乖離が喜劇と言えば喜劇なのだが、浅丘さんならではの愛らしさ、またその底に限りない悲しみが感じられて、圧倒された。
しかしそれ以上に圧倒されたのはワーリャの神野美鈴。自分の存在というものに対する鬱屈した気持ちがこれ以上ないほど繊細に表現されて、体が震えるような感動を覚えた。神野さんのお芝居は数少ないながらいくつか見ているが、今までで一番印象的・感動的だったかも。
この2人がしっとりした演技を見せるが(ここにガーエフの藤木孝を加えたいが、藤木さんは、しっとりというよりはおっとりした演技かな)、あとはいつも誰かが走っていて叫んでいるような…。
という部分も大きく変わろうとしている世界、「桜の園」を象徴しているのかもしれない。


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2012年7月 2日 (月)

スペイン圧勝、強い強い

11時に寝て3時半に起きるつもりが、仕事が終わったのが3時。キックオフまであと45分起きているのはつらいから、4時まで寝ることにした。最初の15分は録画で見よう。
4時にアラームで飛び起き、テレビのスイッチを入れたほぼ直後。息を呑むようなシルバのゴールsoccer(これ、今大会のベストゴールじゃないだろうか。もっとも素晴らしいシュートを目にするたび、ベストゴールだって思うんだけど)
その瞬間、目がシャキッeye そしてイタリアへの浮気心はどこへやら、スペインサッカーの魅力に私の心はわしづかみされるheart02
その一方でイタリアの逆襲を期待する。本当はイタリアが先制したほうが試合は面白くなるんだもの。
しかし追加点はスペイン、アルバの強烈なsoccer
120分戦ったとはいえ中3日のスペインに対しイタリアは中2日。また不運な予想外のアクシデントもあり、残り30分を10人で戦わざるを得なかったイタリア。思うような試合ができなかっただろうし、最後は戦意喪失的なところもあった。GKブフォンも4点も取られてショックだろう。途中出場のディ・ナターレが2度のチャンスに決めていたら・・・。ま、たらればは禁句。
でも、イタリアがここまでめちゃくちゃ面白い試合を見せてくれたことは忘れられない。陳腐な言い方だが、イタリアは必ずやこの傷を2年後のワールドカップへのバネとするだろう。
そして、まさに無敵艦隊スペインsign03 ユーロ史上初の2連覇、ワールドカップ優勝に続く3連覇。今大会わずか1失点。本当に強い。文句なしの世界チャンピオンだ。キックオフ時間が遅くてつらかったけど(決勝なんて現地時間の午後9時近いキックオフ)、本当に楽しい何日間かであった。
4年後のユーロはフランスで行われる。健康に生きていられたら見に行きた〜いsign03

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2012年7月 1日 (日)

海老化

元々腰痛持ちなんだけど、昨日から痛みがひどくなって、まっすぐに立っていられない。昨日は左の膝の痛みも激しくて、杖がほし~い、なんて思ったほど。
慌ててストレッチしたりしているが、最近すっかり運動をサボっているツケがきたかな(NHKのテレビ体操の録画、3月のいつからかたまりっぱな
coldsweats02)。

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