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2012年7月18日 (水)

間近で名作品を鑑賞、愛おしさが込み上げてくる「真珠の首飾りの少女」:ベルリン国立美術館展

713日 ベルリン国立美術館展(国立西洋美術館)
12071804seibi 2時間ドラマのタイトルみたいになってしまったかしらcoldsweats01
こちらの「少女」のほうが先に来日したのだけど、しかも初来日だというのに都美の「少女」に人気を譲ってしまった感があった(混雑時期はすでに過ぎた?)。おかげで、様々な作品を間近で見ることができた。しかし、やはりハシゴはきつい。100点以上の作品であるうえに、小さい彫刻もかなりあって、相当くたびれてしまい、けっこう駆け足的に
なってしまったのが悔やまれる。ベルリ
ンの展示作品は私にとっては馴染みのない作家のものが多く、それも駆け足の一因だったが、よく考えれば馴染みがないからこそじっくり見てくるべきなのである。上野のこの
2つはハシゴせずに再見したいものだ。
展示は絵画・彫刻部門と素描部門に分かれており、絵画・彫刻部門は15世紀から18世紀まで5章の構成になっている。
第一章 15世紀:宗教と日常生活
エルミタージュは16世紀ルネサンスから20世紀アヴァンギャルドへと時代進行していたが、こちらはルネサンス以前の作品が見られる。ただ、「宗教の作品かぁ」感が湧いてくる。日本人の生活には宗教があまり感じられないとは言うが、考えてみれば日本だって昔は仏教画や仏像彫刻などがたくさんあったわけだし、日常生活に仏教信仰は浸透していたはずだ。宗教の作品かぁと敬遠することはないのである。
様々なレリーフを見ていると、素材が気になってくる。15世紀は木材彫刻がけこうあって、菩提樹、胡桃、樫、それぞれの違いがなんとなくわかってくる。私の好みは菩提樹材。素材のやわらかさがそのまま自然に伝わってくるから。しかし胡桃や樫のような堅い木は堅い木で、よくこういう表現ができるものだと感心する。
第二章 1516世紀:魅惑の肖像画
たしかに魅惑の肖像画である。「コジモ・デ・メディチの肖像」(ヴェロッキオの工房、大理石)、「マルティン・ルターの肖像」(クラーナハ・父の工房、油彩。初来日)なんて、名前を聞いただけで歴史が甦り、興味が湧くではないか。
「ノールドウェイクの聖ヒエロニムス」(オランダの画家、油彩)は私がもっていたヒエロニムスのイメージとは全然違う。若くたくましく堅固な意志が顔に満ち溢れ、一度見たら忘れられないようなインパクトがある。
「ヤーコプ・ムッフェルの肖像」(デューラー、油彩)は肌感とか着ている物の質感がきわめて写実的。これなど、間近で見られる恩恵をたっぷり受けたと言っていい。
第三章 16世紀:マニエリスムの身体
マニエリスムとは、ルネサンス後半からバロックにかけての時期に登場した様式で、細長く伸びた人体表現、様々な方向へのねじれや回転を見せる動きが特徴だそうである。
「ルクレティア」(クラーナハ・父、油彩?)は、人妻であるルクレティアがローマ王の息子に凌辱されたうえ、自害を迫られる。男はウソをついて、彼女が奴隷とみだらな行為をしているところを取り押さえて殺したことにするつもりであった。彼女の無実は夫と父親が見抜いたが、恥辱に堪え切れなかった彼女は短剣で胸を刺し貫く。この絵画は短剣が胸に立てられたところを描いた作品である。貞節な女性の身体は男性鑑賞者の目にはエロティックに映る。これは鑑賞者がローマ王の息子と共犯関係にあることを示すそうだが、女性の私から見ても確かに美しい。そしてその体は第三章に展示されている種々の彫像のようである。ここでの絵画はこの1点のみ。彫刻の展示作品数が多いのでちょっと駆け足。

第四章 17世紀:絵画の黄金時代
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世紀はやっぱりオランダ絵画なんだねえ。ということで、いよいよ「真珠の首飾りの少女」登場。魅力的である。実に魅力的。絵の中央は白い壁になっていて少女はやや遠くに横向きで鏡を見つめているにもかかわらず、間近にこちらを振り向いている耳飾りの少女に劣らぬ、いやそれ以上かもしれぬ魅力である。真珠の小さな粒の輝き、中国陶磁器の輝き、白い壁に当たる光、そういうものすべての魅力のうえに、少女の視線が惹きつける。耳飾りの少女が「好きだぁ!!」なら、首飾りの少女は愛おしさに胸がきゅんとなる、と言ったらいいだろうか。こんな絵をきわめて間近で見られるのである!! 絶対見逃すテはない!!
レンブラント「ミネルヴァ」。こちらも初来日。暗い部屋、斜めにこちらに向けた若い女性の顔が光の中に浮かび上がっている。赤いマントに当たる光、ミネルヴァの後方にあるメドゥーサの楯の光、レンブラントの光と影が見事。
レンブラント派「黄金の兜の男」。兜の金色が素晴らしい。
こういう光を描いた作品は正面から見ると照明に邪魔されることがあるので、適宜動いて光を十分感じられる位置で見ることが必要だと思う。そういう意味でも、人の少ない西美は自分の位置で絵を楽しむことができてよかった。
第五章 18世紀:啓蒙の近代へ
「バテシバ」(セバスティアーノ・リッチ、油彩)、「ジュリエット・レカミエ夫人の胸像」(シナール、テラコッタ)が印象的。「死んだ雉と獲物袋」(シャルダン、油彩)はロココ時代とは言いながら私が知っているロココ調絵画とは大きく異なって、この時代にこういう絵画があったのかと驚いた。
華麗なロココ調の作品は展示されておらず、かわりにというか、大きなタペスリーが2点かかっていた。これは西美の所蔵品らしいが、華やかな絵を織り込んだ見事な作品であり、どうやって作ったのかと目を近づけてみてもわかるわけがない。だいぶ疲れたので急いで素描部門へ。
第六章 魅惑のイタリアルネサンスルネサンス・素描
以前、芸大美術館で素描展を見たときも素描の素晴らしさに目を開かれた思いがしたが、素描に必要な画材の展示などもあって、駆け足がもったいなかった。
この展覧会のサブタイトルは「学べるヨーロッパ美術の400年」だが、素描の章が本当に学べる作品群かもしれない。

絵画だけでなく彫刻が多いことからか、壁に掛けるだけでなく展示スペースの中央にケースを置いて展示されている作品が多かった。そういう展示の仕方は順路に迷うのであんまり好きじゃなかったのだけど、こういうほうが鑑賞者の波をうまく振り分けることができていいのかもしれないと思った。
西美は庭も見どころ↓
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