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2012年7月 8日 (日)

涙の「ヤマトタケル」

76日 七月大歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
そういえば、7月も昼の部に口上があったんだっけと思い出したのは、幕が開いてから。
「口上」
白装束の猿之助、黒装束の中車の2人が舞台中央で平伏している。
猿之助さんは自分の襲名の挨拶の後、「香川照之が立役の大名跡・市川中車を九代目として名乗ることになった」と紹介する。
中車さんは一通りの挨拶の後、「隣にいる頼もしき従弟。これからご覧いただく『ヤマトタケル』では私が父、猿之助が息子を演じるが、これからは猿之助を父とも師とも仰ぎ精進する」と、先月同様の決意を述べた。
再び猿之助さんが口を開き、尊敬する福山雅治さんから祝い幕をいただいた。「曾祖父、祖父、私の隈取を3つ重ねたらこれまでにないものができた。各々が各々の名に心血を注いで新たな色を付け加える、それが襲名の意義ではないか」(だいぶ端折ったけれど、そういうことだったと思う)。「歌舞伎はライブ。録画しておける映像は見ようが見まいがずっと残る。歌舞伎は、この客でこの舞台というのは1回しかない。だから客に参加してほしい。と言っても舞台で芝居をするのではない。声援がほしい。大向こうは役者の糧となる。客の声援でエネルギーをもらい、それを客に返す」というようなことを熱弁した。
「ヤマトタケル」
このメンバーでの2回目だというのに、何度も泣けて泣けて…。感想も前回とダブるかもしれないけど…。
中車さんは先月、帝としての大きさが足りないように思ったが、ずいぶん大きくなったと思った。こっちの慣れもあるかもしれないが、帝としての1カ月が中車さんを成長させたのではないだろうか。
熊襲を倒し、蝦夷を倒してのヤマトタケルの勝ち誇った喜び溢れる顔には、大和一の勇者となっただけでなく父に許してもらえる期待感が切々と感じられて、熊襲や蝦夷の尊い世界を「米と鉄の武器」で強引に奪った憾みも薄れる。それに、古いものにしがみついていたから滅びたのだ、新しいものを取り入れなくてはならないというヤマトタケルのセリフは、まさに先ほどの口上の通り、澤瀉屋の精神そのものを表していて、より感動が高まった。
しかし、何度も言うようだが油断、相手を甘くみる心がタケルの命を奪った。あのタケルにして驕りからは逃れられなかったのかと残念でならない。
熊襲の猿弥さんが実に大きく潔くカッコよい。熊襲でも蝦夷でも兄弟を失って嘆く様に涙を誘われた。カーテンコールでは蝦夷の扮装で猿四郎さんと体を後ろに反らし足を高く上げた歩き方で出てくるが、これもカッコいいのだ。
ヤマトタケルの望郷の念、「帰りたい」「帰りたい」に涙ぼろぼろ。どうして帝はこんなにも純粋なタケルの心を理解してあげなかったのだろう。死んで初めて失ったものの大きさがわかったのだろうか。帝の言葉を「生きているうちに聞かせたかった」とのタケヒコの嘆きにまた涙(右近さんのタケヒコがタケルを陰日向に支えている姿にも涙)。
初めて「ヤマトタケル」を見た時、カーテンコールは観客にとってカタルシスのようなものであると思った。生きて父から温かい言葉をかけられることのなかったタケルの頭上に父帝の手が置かれる。それは、高く飛翔したタケルの魂に満足した私の心を現実的に満足させるものであった。
あ~、何度でも見たい「ヤマトタケル」。すでに2回見て、あと1度見るのだが、全部3階左側席。宙乗りはよく見えるけれど花道が全然見えない。別の席でも見てみたいな。
<上演時間>第一幕70分(11001210)、幕間30分、第二幕65分(12401345)、幕間20分、第三幕80分(14051325

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コメント

こんばんは、ひじきです。

ご無沙汰しておりました。
ヤマトタケル、今月後半に観に行きます。
この感想を読んで・・・早く観たい観たい観たいよ〜ん。
仕事やらお盆やらの忙しい日々も、
その先に楽しみがあるので頑張るぞー。
先月か今月のどちらかを観ればいいや・・なんて思っていたのですが、
先月の始めの頃でも観ていたら、お芝居がどう変わっていったかがわかって、きっと面白かったですよねぇ。
観に行けばよかったなぁ。
実は、ヤマトタケルは初演を父親に連れられて観に行っているのですが・・・・よく覚えてません・・・
あの時の私に会いに行って、ちゃんと観るのよ!と言いたいデス。
そうしたら、猿翁さんと猿之助さんのヤマトタケルの違いとかもわかって、それもまた面白かったですよねぇ。

投稿: ひじき | 2012年7月 8日 (日) 22時09分

ひじき様
こんばんは。
コメントありがとうございます。
ヤマトタケルは、私も2カ月のうち1回見ればいいや、とはじめは思っていたのです。ポイント稼ぎで6月も7月も取ったのですが、これが意外にもとてもよくて、心理描写も立ち回りの華やかさも素晴らしく心に響きました。
ひじき様は猿翁さんのヤマトタケル、しかも初演をご覧になっていらっしゃるんですねえ。あまりよく覚えていらっしゃらないとしても羨ましいです。
今度のはきっと強く印象に残ることと、期待しております。
お忙しい日々に梅雨時の鬱陶しい気候も加わりますから、お体にお気をつけてくださいね。

投稿: SwingingFujisan | 2012年7月 8日 (日) 22時53分

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