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2012年7月14日 (土)

明快な謎解きが面白い「毛抜」

712日 第82回歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎のみかた」(国立劇場大劇場)
「歌舞伎のみかた」ではざわつきが気になった客席。本編の出だしもやっぱりざわざわ。とくに数馬と秀太郎の諍いで数馬が若菜に「のかっしゃれ」と言ったらなぜかざわつきが大きくなった。察するに、若菜が先のりき弥さんだとわかったから? 「歌舞伎のみかた」でりき弥さんと宗之助さんの役をはっきり紹介しておいたほうがよかったのかなと思った。芝居が始まってこんなにうるさいのは初めて。
ところがざわつきが納まると今度はおとなし過ぎ? 宗之助さんがスクリーンの中から、「面白いと思ったら遠慮なく拍手してください」って言ったのに、拍手は幕開きと引っこみだけ。それなら芝居を知っている大人の観客が手を叩けばいいと思いつつしそびれて、でもここは、というところで拍手したら私1人。挫けた。大人も何となく拍手しそびれていたのかもしれない。
弾正・愛之助、巻絹・秀太郎、小原万兵衛・市蔵、小野春道・友右衛門、秦民部・秀調、八剣玄蕃・錦吾、秦秀太郎・高麗蔵と芸達者な役者揃いなのに、出にも引っこみにも見得にも拍手が起きないなんて…。いや、拍手がなくても、せめて可笑しいところでは笑ってほしい。本当に無反応って雰囲気で(寝ている子も多かった)、錦の前の髪が逆立っても、デッカイ毛抜きが出てきてもそれが立っても反応なし。「面目次第もござりませぬ」にも反応なし。と言って、ひどくしら~っとした空気かというとそうでもなく…でも役者さんの気持ちを思ってはらはらしてしまった。
大向こうも全然かからず寂しいと思っていたら、毛抜きが立って弾正見得、というところでやっと1人「っつしまやっ」とかける人が。その一瞬、3階の女子高生たちが一斉にびくっとしてそちらを振り返ったのが可笑しかった。
磁石のからくりを見破る頭のよい弾正が色好み、それも男でも女でも美形だと見るとすぐにちょっかいを出す。そのギャップが大らかで、明るい愛敬があって、それに何より愛之助さんはセリフが丁寧ではっきりしていてよい。愛之助さんの演技はいつも丁寧だが、今回は客の大半が初めて歌舞伎を見るかもしれない高校生だということを意識して、より丁寧な気がした。イントネーションやセリフ回しは團十郎さんの教えを受けたことがはっきりわかる。錦之助さんの時もそうだったな、と思い出した。セリフや動きが明快だから、謎解きが非常に面白い。何度も見ているのに面白い(高校生には面白くなかったのかなあ)。
その謎解きをさらに面白くしているのが市蔵さんの万兵衛。弾正との駆け引きの呼吸が実によく、愛敬のある悪役ぶりがシブくて楽しい(涙を装うところなんて可笑しくて思わず吹き出したのは私1人…)。そういえば、帰りに市蔵さんに出会ったけど、もう化粧落として着替えてお帰りなの?とビックリした(あんまり早いから本当に市蔵さんだったかどうだか自信がないけど、多分そう)。
秀太郎さんの巻絹、出番はちょっとだけど、上品な色気と愛らしさが見事。先月の静御前に続いて、秀太郎さんのスゴさを見たような気がした。高校生、びびびびび~にも反応がなかったな。
亀ちゃんや浅草メンバーがよく言うように、役者は拍手でエネルギーをもらう、そのエネルギーを客席に返す、「舞台と客席のキャッチボール」がこの日は全然成り立っていなくて、それでも一生懸命エネルギーを客席に放っていた愛之助さんをはじめとする役者さんたちに、最後は大きな拍手が送られて「よかった」と安堵したのであった。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」30分(14301500)、幕間20分、「毛抜き」70分(15201630

 

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コメント

おはようございます。鑑賞教室は、ほんと「時の運」だなぁ、と読みながらつくづく思いました。
というのも、私は8日の2回目に行ったのですが(「あぜくら」では×マークがついてて日曜なのになぜ、と思いましたが、チャレンジしたらいい席が出ました)、客席もすごく盛り上がってました。宗之助さんの解説の時に、仕込み?と思うような「紀伊國屋!」が左右からかかり、解説からしてそうですから、あとは推して知るべし。
日曜だから、小学生のお子さん連れもあちこちにいまして、私のすぐ後ろの子なんて、「毛抜」の面白いところで2、3回、ケラケラっと楽しそうに笑ってました。こういう時って、舞台の上も客席も、いい雰囲気なんですよね。(亀ちゃん、もとい新・猿之助の言う一期一会を感じました)

そうそう、私はいつだったか国立でちょうど亀蔵さんと帰りが一緒になったことがありますよ。フツーのおじさん姿(失礼!)で駅まで足早に歩いてらして、舞台とのギャップが印象的でしたっけ。

投稿: きびだんご | 2012年7月14日 (土) 10時13分

きびだんご様
こんにちは。ええ、本当に「時の運」ですね。それは役者さんが一番わかっていらっしゃっるのかもしれませんね。こんな日もあれば、きびだんご様がいらした日のように大盛り上がりの日もある。客のほうもそう割り切るしかありませんが(はい、一期一会ですね)、やっぱり盛り上がる日に見たかったな。

小学生が笑う、っていいですよね。この子が大人になったらきっと歌舞伎を見に通ってくれると想像して微笑ましくなります。

亀蔵さん、私も以前町でお見かけしたことがあります。その時もフツーのおじさん姿でしたが、お顔のインパクトですぐにわかりました(えへ、私も失礼!)。
市蔵さんは老け役が多いのですが、素顔はとてもお若くてスポーティな感じでした。よっぽどサインをおねだりしようかなあと思ったのですが…。

投稿: SwingingFujisan | 2012年7月14日 (土) 15時19分

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