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2012年7月13日 (金)

知っていても楽しい「歌舞伎のみかた」

712日 第82回歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎のみかた」(国立劇場大劇場)
120713kokuritu 開演5分前、緞帳が上がって定式幕になると、「ひゅぅ~」という歓声と拍手が起こり、おお今日の高校生は期待できるね、と思ったら…。そこから又べちゃべちゃ始まったのはいい、まだ開演前なんだから。ところが、場内暗くなり、バタバタに合わせて宗之助さんが花道を走って登場し、七三で見得を切ってもまだあちこちでべちゃべちゃやっている。宗之助さんはかまわず花道の説明をして、もう一度見得を見せたが、まだうるさい。話が始まってるのにこんなにおしゃべりが止まないのは初めてかも。
定式幕が開くとやっとおとなしくなったが、それでもまだざわついた空気が漂う。今まで何回も鑑賞教室は見てきたけれど、始まってるのにこんなうるさいのは初めて。今日だけのことであってほしいものだ。
説明は進み、黒御簾が演奏を始めると、「くろごちゃん」が舞台奥にかかった幕から客席の様子を見るかのようにそっと顔だけ出し、一度引っこむと今度は体全体現して舞台中央へ。宗之助さんはくろごちゃんに「誰?」ときいて知らない風を装っていたが、ここは知り合い同士のほうが自然なんじゃないかな。
くろごちゃんは黒衣の役割を説明するように促されるが「見習いだからうまく役割説明できない」と辞退し、かわりに裃後見が出てきた。裃後見は差し金で蝶を飛ばし、くろごちゃんがそれをつかまえようとして追いかけるのが高校生たちにウケていた。くろごちゃんは裃後見について差し金の練習をすると言って2人揃って上手へ引っこんでいった。黒衣の説明としてはちょっと物足りないかな。
今度は女形の拵えの実演である。
りき弥さんが浴衣姿で現れる。首まで白く塗ってあるが、ここから先は舞台で、というわけ。下手側に鏡台を置いて化粧するのであるが、それではよく見えないというのでカメラが現場を撮影し、舞台スクリーンに映し出すという手法。これはなかなかよかった。
まずはびんつけ油を顔全体にのばす。おしろいが汗で落ちないようにするためだ。

練りおしろいを塗る。大きめの刷毛で潔くぱっと塗る。三塗りくらいで顔全体塗れたのではなかっただろうか。あまりの思い切りのよい塗り方に客席がちょっとどよめいた。

練りおしろいの上から粉おしろいをはたく。これは光るのを抑えるため。りき弥さん、どちらの頬だったか、練りおしろいが一筋だけ塗られていないところがあった。粉おしろいでそれは塗りつぶされたのだが、単純に練りおしろいの塗り落しなのか、あるいは何か理由があるのか。

目の上からこめかみにかけて紅をぼかして刷く。それだけでぐっと女性らしくなった。その後目の縁に紅、口紅を塗る。そして眉(え~と、紅と眉、どっちが先だったっけ?)。眉は一番神経を使うところだからと、宗之助さんも高校生たちが騒がないように気を遣っていた(眉一つで印象が変わるのは普通に女性としても同じだからね)。りき弥さんは眉を剃っているのだそうだが、剃らずに化粧で潰す人もいるというお話。

化粧が終わると着付け。衣裳さんは若い方のようにお見受けしたが、慣れた手つきで素早くきれいに着せ付ける。宗之助さんがお腰の説明をする(昔は今のような下着をつけていないから、お腰が下着になった)。帯はセパレート型。きれいに帯を結ぶのは難しく、また時間がかかるので歌舞伎では昔からこれを使っているとのこと(私も、若い頃浴衣の帯はセパレートでしたわ。差し込み部分がプラスチックですぐに壊れちゃったけど。歌舞伎の帯の差し込み部分は木でできているんだとか)。

次は鬘。これもカメラで。鬘の芯は銅なので重い、りき弥さんの鬘は約1kgだそうだ。

さあ、これで終わりと思ったら、まだ手が残っていた。りき弥さん本人が素早く手と腕におしろいを塗る。りき弥さんは手にはびんつけを塗らないそうだ(塗る人もいる)。
拵えは手際よく早く仕上がった。全部できてせっかく女の姿になったのに、おやおや、りき弥さんの歩き方ったら、それは男のままでしょ。もっと女らしくしたほうが…と訝し気に見ていたら、宗之助さんがちゃんとツッコンでくれた。
しかしこれも台本のうちで、ここで女形の体の形の作り方指導。膝を合わせ内股に、肩甲骨をぎゅっと両側から寄せて肩を落とす。高校生たちにもやらせていたが、みんなきつがっていた。私も家で時々やってみるんだけど、絶対うまくいかない。女形の役者さんって膝にも負担がかかるだろうし、ほんと大変だなといつも思う。
さて、りき弥さんと宗之助さんが肩甲骨を寄せて肩を落とすと、本当になで肩になるのだ。この作り方はこれまでに鑑賞教室で何度も見ているのだが、いまいちなで肩になり具合がわからないでいた。今回は「おお、こんなに違うものか」と感心した。

なで肩になったりき弥さん、もう男ではない。女の声で小野家の窮状を訴える。詳しい説明は春風からと言って宗之助の手を引いて上手へ引っこんでいった。
するとスクリーンにいつものイラストによる春風さんが出てきて、宗之助さんと春風の会話で小野家の事情が説明される。宗之助さん自身はもちろん自身の声だし、春風の声も宗之助さん(この後のお芝居で春風役だから)。
宗之助さんが珍しくスクリーンの中から挨拶をして終わったのは、お芝居の拵えの時間を考えてのことだろう。
歌舞伎のみかたは、同じような説明であっても、毎回面白い。とくに今回は女形の拵えに焦点を当てたのがよかった。化粧は松也クンのを別のイベントで見ているのだが、やっぱり何度見ても面白い。第78回から観客に近い世代の若手による親しみやすい解説が続いており(78回:壱太郎・隼人、79回:壱太郎、80回松也、81回廣太郎)、それはそれで楽しいが、私が見始めてから恐らく一番登場回数の多い宗之助さんの解説は、さすがに上手。しっとりやわらかく落ち着いてとてもよかった。

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コメント

 パイロットがよく使う手で、学校名を紹介してはどうでしょう。ツカミがよくならないですかね。今月の宗之助は、先月の関西での解説役から連続しているはずですし、解説はピカ一ですから、もったいないですよ。意識して気持ち早口で進めた前半は、後半が一人二役(だから姿を見せられない)だからだって、気が付いた子が少しでもいるといいんですけどね。
 久しぶりに、いい「毛抜」でしたね。

投稿: Good Luck ! | 2012年7月13日 (金) 17時00分

Good Luck !様
コメントありがとうございます。
学校名を紹介するというのは、お喋りがどうこうという問題とは別に、いいかもしれませんね。生徒たちのツカミと同時に、こちらも親しみを覚えそうな気がします。
宗之助さんの解説、話も上手だったし、ポイントを押さえてわかりやすかったし。出だしはともかく、あとはみんな楽しく聞いてくれていたと思いたいです。一人二役はどの程度気づいてくれたでしょうね。このスクリーンの解説も楽しみました。
「毛抜き」そのものも、とてもよくて楽しく拝見しました。

投稿: SwingingFujisan | 2012年7月13日 (金) 19時16分

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