« 澤瀉屋襲名公演千秋楽夜の部②:口上、黒塚、楼門五三桐 | トップページ | 暑中お見舞い申し上げます »

2012年8月 1日 (水)

知らなかった--筋書きの文字に感銘を受ける

録画しておいた「和風総本家 日本を支える人々~下町編」を見ていた。最後に紹介されたのは川崎市在住、伏木進さん、81歳。白い紙を取り出し、鉛筆で何本も線を引く。やがて鉛筆によるマス目がたくさんできる。
次に木箱から硯を取り出す。龍が刻まれた立派な蓋のついた硯だ。丁寧に墨をすると、それをスプーンで小皿に取り出す。
細い筆に墨をふくめ、マス目に文字を書いていく。ゆっくり、同じ線を何度もなぞる。通常、書道では同じ線はなぞっちゃいけないんじゃなかったっけ…ここで伏木さんが何者かまだわからない私は未熟者
12080101sujigaki 紙に書かれたのはなんと「團十郎」「海老蔵」の文字。おお、勘亭流か。
6
時間かけて出来上がったのは、筋書きの演目紹介ページ(番付)の演目名。下の出演者のところがまだ空白。恥を忍んで言うが、これって、こんなふうに手書きされていたのか、知らなかった。
番組では演舞場の筋書き売り場が映し出されている。
伏木さんは歌舞伎文字の第一人者なんだそうだ。37年前、伏木さんは川崎の市場で包装用品を販売していた。字が下手くそで字を書くのが大嫌い。伝票に書く文字の汚さに読めないと客からよく怒られた。そんなある日、家の表札の文字が消えかかってきたので、新しく作ることにした。文字に興味をもつようになり、色々な本を集めて勘亭流に出会い、魅せられる。そして当時の第一人者、保坂光亭に弟子入りし、17年後に最高峰である奥伝を許され、壽亭(じゅてい)と名乗るようになった。
急いで筋書きを手にしてみると、ちゃんと「勘亭流 壽亭筆」と署名があり、その下に「伏木」の印が押してある。ちなみに、筋書きの奥付に勘亭流も紹介されている。今までそういうところまで気づかなかったなあ。
そういえば、6月と7月では書き手が違うということを以前、猿三郎さんのブログで12080102sujigaki 読んだような気がする。ということで、早速見比べてみると、6月は鈴木文字亭さんで、確かに文字が異なる(「ヤマトタケル」の文字が一番わかりやすいかな)。ついでに6月御園座の筋書きを見たら、こちらも壽亭さんだった。
面白いねえ。これからは番付ページを念入りに見ることにしよう。もちろん、表紙や中扉、舞台写真に入る文字も。
「大嫌いだった書の世界なのに、これ以上素晴らしい文字の世界はないことを身を以て体験した。人間はわからないものだ」としみじみ語る伏木さん。
12080103sujigaki_3 81
歳の伏木さんが勘亭流の世界に飛び込んだのは44歳。まったく異なる世界に入る勇気に感銘を受けるとともに、中車さんのことが頭を過ぎった。17年で奥伝というのは早いのかどうかわからないが(私には早い!と思える)、中車さんも17年後には歌舞伎の世界でも名優と言われるようになっていることを期待しているよ、なんて思っていたら、「ヤマトタケル」の2場面が数秒写ってわずか数秒でも興奮した。
ちなみに、勘亭流の文字が丸みを帯びているのは初日から千穐楽まで円満興行ができますようにという願いが、太い文字 なのは空白が少ない→空席が少ないとい う思いが込められているそうだ。
確かに文字は面白い。

|

« 澤瀉屋襲名公演千秋楽夜の部②:口上、黒塚、楼門五三桐 | トップページ | 暑中お見舞い申し上げます »

歌舞伎ミーハー日記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1083822/46537187

この記事へのトラックバック一覧です: 知らなかった--筋書きの文字に感銘を受ける:

« 澤瀉屋襲名公演千秋楽夜の部②:口上、黒塚、楼門五三桐 | トップページ | 暑中お見舞い申し上げます »