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2012年8月31日 (金)

第18回稚魚の会歌舞伎会合同公演A班

826日 第18回稚魚の会歌舞伎会合同公演千穐楽A班(国立劇場小劇場)
レポがすっかり遅くなってしまった。
夜の部は途中で帰られた方もけっこういたみたいで、「身替座禅」になると空席があちこちに目立ったのはちょっと残念。
帰り際、今回の公演のポスターを配っていたのでいただいてきた。
「尼ケ崎閑居」
光秀:猿琉、十次郎:笑野、初菊:春之助、操:玉朗、皐月:松寿、佐藤正清:茂之助、真柴久吉:獅二郎
A
班の十次郎は笑野さん!! ついこの間、亀治郎の会で<大人の女の魅力>に俄然注目度アップした笑野さんが今度は立役でご出演。瓜実形の顔が上品で若々しくて、なんという美形。B班のみどりさんに比べると鎧が重たげな感じだが、お2人とも、父親の信念を信じ、父とともにその信念に向かって進んでいくのだ、戦うのだという積極的な強さが見えた。それだけに、途中で命を落とさねばならなかった若者の哀れが際立った。
メッセージは「いつもは女形。立役で何か今後の役に立つことがあるように」。
春之助さんは笑野さんより体が大きいのとやや年上に見えたのとで、2人のバランスがあまりよくないような気がした。しかし東京新聞の取材で「初菊は動きの少ない我慢のお役ですが、こちらの心理がお客様に伝わるようにできれば」「師匠(魁春)の口癖は人に気を使え。演技にも通じる教え」と語っているように、演技は丁寧で気持ちが伝わってきた。
猿琉さんは姿も声も堂々として武者人形を思わせる立派な光秀であった。怪我をして気を失った十次郎に気付け薬を飲ませる。すぐに正気を取り戻した十次郎に「ててじゃ、ててじゃ」と声をかけると十次郎が「父上」と返す。この場面の2人の心の通いに泣けた。
猿琉さんは東京新聞によると、鳶職で腰を痛め偶然この世界に飛び込んだのだとか。研修所卒業後もなじめず、舞台を見ることさえ苦痛だったのが26歳で猿之助(現・猿翁)の一門に加わってぐんぐん好きになったのだそうだ。「光秀は車にたとえれば4トントラック。どっしりと大きな存在感を出せれば」と語っている。出ていた、大きな存在感。
松寿さんはとくに孫に対する感情がこぼれるところに胸打たれた。孫への思いは、光秀に対して怒っていても我が子への愛情に通じるものがあるのではないだろうか。
ところで、このお芝居で操は本当は皐月側なんだろうか、それとも光秀側なんだろうか、といつも考えるのだが、玉朗さんの操からは本心は光秀を理解して応援しているものの、姑の気持ちも斟酌して付き従っている様子が窺えた。ほっそりとお綺麗で、初菊をやってもいいのではないかしらと思った。

獅二郎さんのイヤホンは猿琉さんによるインタビュー形式。「出たくて出たくて仕方なかったこの会に今回初めて出ることになった」(そうなんだぁ。初めてだったんだぁ)。「重い役なので責任重大。勉強するだけでも大変。旅僧として出てきたときにちらっと久吉とわかる雰囲気を出したい」と言う獅二郎さんに猿琉さんが「ウインクするの? 投げキッス?」と茶化す。「後で久吉で出てくる時の雰囲気との違いを感じ取ってもらえるようにしたい」と言う獅二郎さん。ちょっと緊張もみられたが、ほぼ目的は達成されていたと思うし、久吉には大きさが見えた。
全体にA班のほうがドラマチックに感じた本年3回目というか4回目というか(AB合わせて1回とすれば3回目)の太十だった。

「道行恋苧環」

お三輪:竹蝶、求女:京三郎、橘姫:伊助
私が京三郎さんを知ったのは6年前初めて見た第12回合同公演「願絲縁苧環」のお三輪。「道行」を改作した演目だそうで、多分自分としても初めて見た「妹背山」じゃないかな(「妹背山」は子供の頃に見たような記憶もあるけど、定かではない)。その時のお三輪さんが今回は妹背山の求女を演じる。京三郎さんのイヤホンメッセージ。「どちらの役も実生活で経験がない。イケメンでもなく女性に言い寄られたこともない(そうですかぁ~?)。白髪の老女でもないし、ましてや息子に竹槍で刺されるなんてこともない。本当に難しい。師匠たちの偉大さがあらためてわかる」。女性に言い寄られたことがないとおっしゃるが、なかなかのイケメンでこれなら2人に迫られるのもわかるわかる。
華奢な京三郎さんに対し伊助さんがやたら大きく見えてはじめはバランス悪いと思ったが、ここに小柄な竹蝶さんが入ったら不思議なことにバランスの悪さが消えたというか、全然気にならなくなった。伊助さんのクドキはおっとりと迫り、竹蝶さんのクドキは里の娘らしいおきゃんな感じで必死にいじらしく迫る。
伊助さんのイヤホンメッセージは「亡くなった師匠(鐵之助)に紀伊国屋の女形を1から教わった。今回も見てくれているだろうから叱られないようにつとめる」。竹蝶さんは猫ランキング。20位から1位までを途中端折って発表。ベストワンはアビシニアンだそう。って、公演に全然関係ない話じゃん。そういう話をしている竹蝶さんは、素顔の写真や役のイメージとは全然違う。
「身替座禅」

山蔭右京:左字郎、玉の井:音之助、太郎冠者:京純、千枝:京珠、小枝:春希
左字郎×音之助コンビは典型的な右京×玉の井コンビだと予想していたが、意外にもB班の吉六さんのほうが尻に敷かれている感じが強かった。太郎冠者の京純さんは徳松さんより音之助さんのほうを怖がっているように見えた。太郎冠者や右京を脅す仕草は確かに大きくて怖いけれど、音之助さんの玉の井もとっても可愛らしくて、しかも自分の思いを旦那様がわかってくれないという気持ちがよく表れていて可哀想になってしまった。
音之助さんのイヤホンコメント「勘祖先生はじめ講師の先生方にたくさんパワーをいただいた。暑さを吹き飛ばす爽やかな芝居を見せたい」。
左字郎さんは酔って花道を戻るときの「うぃ~っ」がちょっとリアルで、自分が飲み過ぎた時の戻しそうな胃を思い出してしまった。左字郎さんの場合、芝居というより動き(舞踊的要素)で見せる感じだっただろうか。衣裳は天王寺屋さんが着ていらしたものだそう。
左字郎さんのイヤホンコメント「歩くのが大好き。1時間2時間、平気で歩ける。歩きながらお稽古を兼ねて芝居のセリフを小声で言う。最初はいいが、だんだん声が大きくなりフリもついて、すれ違った子連れのお母さんに冷たい目で見られる」。熱心な左字郎さんの愉快なエピソードでした。
千枝、小枝の2人は京珠さんが「春希とは初めて一緒の舞台。2人で1役みたいなものだし、姉妹のように見えるといい。お行儀よく腰元らしくしたい」と言ってたように、本当に姉妹のようで愛らしかった。京珠さんのコメント続く「8月で30歳になった。20歳の年に歌舞伎と出会い10年が経った。人間的にも役者としても成長したい」。
春希クンのコメント「AB両班に出て緊張しているが、皆様にたくさん会えると思って精進している」。はいっ、たくさん会えて嬉しいかったです。

この夏の歌舞伎はこれで終わり、と思いきや、まだあるのだ。


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