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2012年8月19日 (日)

八月歌舞伎昼の部「桜姫」

814日 八月大歌舞伎昼の部(新橋演舞場)
「趣向の華」で燃え尽きた感じもあって、せっかく取った昼の部だけどパスしちゃおうか…迷いつつ、暑い中役者さんは一生懸命やっているんだからと、気持ちを奮い立たせ見てきた。でも、食後は相当眠かったです。
「桜姫東文章」
桜姫は私が歌舞伎を見始めた年(平成16年)の7月に玉三郎×段治郎で昼夜で上下に分けて上演されたのを、上だけという中途半端な見方で見た(まだ当時は月に1回昼夜のどちらかしか行かなかったから)。肝心の後半を見ていないのは悔やまれるが、いずれにしても色っぽかったなあと記憶している。その後、コクーン歌舞伎で福助、七之助版をそれぞれ、さらには現代版桜姫なんていうのも見て、それら全部含めると5回目になるのかな。
今回思ったことは、筋を追うという意味では分かりやすかったものの、それぞれの人物の心情が摑みにくく、中途半端な気持ちは否めない。それに、「三囲の場」が唐突すぎて何か変だと思って、前の上演時のプログラムとか筋書きとか見たら、「稲瀬川」「同川下」の場が省略されていたことがわかった。あそこは上演してほしかった気がする…。
発端「江の島稚児ケ淵の場」は、福助さんが稚児に見えなかった。むしろ愛之助さんの清玄のほうが年下に見えた。しかし潔く飛びこむ白菊丸に対し「命は惜しくなかれけど、あな恐ろしい」と躊躇するのは、愛情の深さの違いというよりはそれだけ大人だったからだろうか。
この後人魂が出て、白い鳥が飛び立ち、浅葱幕。松之助さんの「発端から17年が経ったと思ってほしい」との口上があり、浅葱幕が振り落されると、そこは思わず「おお」と感嘆の声をあげてしまうほどあでやかな新清水花見の場。福助さんが頼りなげで美しい。でも、白菊丸のセリフを聞いたときも「あれ?」だった声がここでも「あれthink」。ただ時間が経つにつれ、掠れが治っていつもの福助さんの声に戻った。
いっぽう、称名を唱える愛之助さんの声のよさ。愛之助さんの丁寧なセリフはいつ聞いても気持ちがいい。ただ前述したように、愛之助さんだけでなく人物の心理が今一つつかみにくく、冤罪を受け入れる心境が伝わってこなかった。
海老蔵さんの権助はまったくはまり役で素敵だとは思うけれど、ドキドキするものを感じなくなってしまった自分が寂しいweep
濡れ場はなんかこっちが恥ずかしくなるような感じで、福助さんのエロチックさにもうちょっと品がほしいと思った。それから刺青を権助に見せるときの腕は「男」の腕だったぞ。
桜姫と清玄の人生はここから転落していくわけだが(髪ぼうぼう、髭面の愛之助さんは別人みたいだった)、福助さんの桜姫は運命に受動的に翻弄されている感じで、堕ちても清らかさを失わず芯の強さを感じた七之助さんの桜姫とはずいぶん違うような気がした。どちらがいいとか悪いとかでなく、解釈の違いや役者の違いで変わるもんなんだなあということ。転落した桜姫は福助さんがかなり抑えて演じていて、権助一筋でそんな人生も受け入れる桜姫の愛らしさや哀れさに胸打たれた。
みじめに転落していく清玄と、転落のもとをつくる権助はできたら2役で見たい(段治郎さんとコクーン福助版の橋之助さんは2役だった)。海老ちゃんの清玄なんていうのも興味あるし(「高野聖」を思い出せば十分イケると思う)、愛之助さんの2役もいいと思う。歌江さんがチョイ役で出てきたのは嬉しかった(すぐに殺されちゃったbearing
でも私にとって一番うれしかったのは萬次郎さんの長浦かな。コミカルな演技が下品にならず、萬次郎さんの大らかでユーモラスな持ち味が十分現れて、市蔵さんのワルといいコンビであった。
右近さんと弘太郎さんは形がきれいで、とくに弘太郎さんが花道を走って引っこむ姿がきれいだった。
橘太郎さんはその職業(女衒)の空気を自然と出せる人だと改めて思う。

ところで「山の宿町の場」は「権助住居の場」と一緒になっていた? このあたり非常に眠くて記憶がきわめて不確か。で、お十(笑也)の存在がよくわからなかった。疱瘡で亡くした我が子の回向を残月(市蔵)に頼みにきたのだが、こんなクソ坊主に回向を頼む人もいるものなんだと呆れながらも、お十が死んだ子のかわりにと桜姫の赤ん坊を預かっていくところまではわかった(これは、「岩淵庵室の場」)。その後の赤ん坊をめぐるやりとりが…。海老蔵、右近、笑也のスリーショットを閉じそうになる目で見てにやにやしていたのは多分ここらあたりなんだろう。そんなわけで笑也さん自身は声もきれいでしっとりととてもよかったのに、謎の女性のように見えてしまった。失敗失敗。

そういえば、姫との不義を疑われた清玄が因果をなげくところで序幕が終わり定式幕が引かれると(1220頃)、席を立とうとする客があちらこちらにみられた。大向こうさんが「あと1幕ありますよ。10分ほどの幕が」と大きな声で注意を促し、それでみんな腰を下ろしたり戻ってきたり、なんてことがあった。
<上演時間>発端・序幕・二幕目94分(11001234)、幕間30分、三幕目52分(13041356)、幕間15分、四幕目・大詰47分(14111458

追記:津川雅彦さんが見にいらしてました。そういえば、つい先月、福助さんご出演の「男の花道」を演出されていたんだっけなあ。しかしあの時の津川さん(マキノさん)はいかにも演出家といった風だったけれど、この日はおシャレながらずいぶん感じが違うのでビックリしました。

 

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