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2012年9月25日 (火)

巡業西コース、2度目の埼玉県

923日 松竹大歌舞伎西コース(川口リリア)
巡業西コース2度目の観劇。1回目は初日の831日、越谷だったから、公演そのものも2度目の埼玉県だ。川口そごうでタイアップなのか、松竹歌舞伎フェアをやっていて(18日~24日)、けっこう人が集まっていた。
この日は新婚の笑野さんがご夫婦でご観劇のようだったが、気がつかなかったぁ。
「歌舞伎のみかた」
猿弥さん、初日は客の反応を探りながら、というところがあったが、さすがに各地をまわり回を重ねたからすっかりリラックスして口もなめらか。と言いたいところだが、しょっちゅうかんで(最後にもかんでいた)、自分でも「今日は調子悪い。おかしいなあ」とぼやいていた。それに、音響が悪くてマイクの声がぶわ~んとなる感じ。幸い私の席はぶわ~んとなる前の音が聞こえてきたから話の内容は聞き取れた。
最初の挨拶が「寒いね~、こっち。愛知(瀬戸)から来たんだけど、ずっと残暑厳しいと言ってきたのに、今日は寒い。明日からまた30度だって? 冗談じゃないよ~」といった調子。そして初日同様、最前列を見て「この辺、みんな知り合いなのよ」。師匠の関係者らしい。
初日は普通に歌舞伎の歴史を述べていたけど、今回はクイズ形式で、「歌舞伎はいつ始まったでしょう?」300年前か400年前か500年前か。客は拍手で答える。300年前、500年前にも拍手が意外とあったが、400年前が一番多かった。
そしてあの面白い自己紹介。普通に現代語調で「市川猿弥でございます。昭和42815日生まれ45歳でございます」と言ったところで客席が笑い出す。猿弥さん、挨拶を止め、私の後ろのほうを指さし(その辺の笑い声が大きかったか、その辺から笑いが起きたのか)「ははは、ってどういう意味? 老けてるってこと? 若いってこと? ここで止められたの初めてよ」とツッコむから又笑いが大きくなる。この後の歌舞伎調での自己紹介も大ウケ。
そして義太夫にのせた「市川猿弥大当りの段」はもう会場爆笑で、まさに大当り。現代語でパチンコに負けた様子を語るのだが、感情が高まったところは歌舞伎調になって演技も盛り上がる。宝くじに当たったと喜んだのも束の間、よくよく見れば…組違い。この「組違い」を竹本幹太夫さんが早口で軽く言い切ったのが可笑しかった。幹太夫さん、その後も嬉しそうにニヤニヤしていたっけ。

「熊谷陣屋」
幕開け、村人たちが暑そうに手拭で首や顔を拭いているのを見て、つい季節は夏かと思ってしまったら、その後桜が見事だと言い合うから、そうだよそうだよ、桜の季節じゃん、バカねえと自分に喝。
奥の襖があいて相模の笑三郎さんが登場すると、あんまり痩せて見えてびっくりした。猿弥さんは、巡業は美味しいものばかりで太ると言っていたが…。きついスケジュールが堪えたのだろうか。
それはさておき、澤瀉屋のこの「熊谷陣屋」は、やっぱり女性の物語のような気がしてきた。初日もそうだったが、熊谷の苦悩、悲しみよりも相模と藤の方の母としての気持ちのほうが強く訴えかけてくるのだ。熊谷の制札の見得の間わなわなとふるえている相模(この時にはもう首が小次郎のものであることに気がついている)。「敦盛の首に相違ない」との義経の言葉に相模は下手で、藤の方は上手でほっと肩を落とす。藤の方はそれなりに安堵しただろうし、相模は夫のしたことが報われたという思いと耐え難い悲しみに耐えという複雑な気持ちだっただろう。熊谷が我が子の首を相模に手渡そうとするとき、相模は首を見ることができない。熊谷の旅支度にそっと寄り添う相模。悲しみと細やかな夫婦愛が胸を打つ。
夫婦を見送る義経が持った首を膝立ちで振り返る笑三郎さんの後ろ姿がはっとするほどきれいだった。
「十六年は一昔。夢であったなあ」は、舞台中央、義経の前で言う(越谷ではなんちゃって花道だったような…)。義経と熊谷の位置には上下があるのだけれど、距離が近すぎて、ちょっと変な気がした。このあと定式幕が引かれ、へたり込むようにして泣く2人は文楽人形のように見えた。戦の音にはっと立ち上がり、そのまま舞台中央からゆっくり引っこんでいく2人。
夫婦2人で引っこむことも女性の物語である印象を強める。熊谷陣屋という物語の本質がどこにあるのかわからなくなってしまったけれど、わが子を斬った熊谷の悲しみは義経が受け止め、相模が分かち合うのだろう。
門之助さんの義経にはすべてを見通した大きさと、何かゆるぎないものが感じられた。その義経が弥陀六を命の恩人であると認めた時の嬉しそうな顔。ここには、これ以上はないという悲しみを抱えた熊谷夫婦がおり、命を救われて源氏の大将となった義経がおり、その義経の命を救ったばかりに平家を滅亡に導こうとしている弥陀六がおり、義経に我が子の命を救われた藤の方がおり…よくできている。
「女伊達」
重い熊谷陣屋から一転、すっきりと楽しんだ。猿三郎、猿四郎の男伊達コンビのカッコよさに見惚れた。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」20分(15001520)、幕間15分、「熊谷陣屋」90分(15351705)、幕間20分、「女伊達」18分(17251743) 
初日に比べ
13分短縮されていた。

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