« 名題適任証授与式 | トップページ | 10月御園座昼の部② »

2012年10月20日 (土)

10月御園座昼の部①

1017日 六代目中村勘九郎襲名披露・顔見世昼の部(御園座)
12102001misonoza_2 朝、JRが止まるといけないと用心してちょっと早く出過ぎた。おかげでのぞみの自由席、好きなところを選べた。
名古屋駅では気がつかなかったが、伏見で降りたらもう雨。面倒なので傘はささずに招きを見上げ、幟に目を遣り、中へ入る。満員御礼の立札が出ていたが、実際は満席とまではいっていない。でも、久しぶりに熱心な拍手、劇場に響く拍手を聞いたような気がする(御園座の天井の高さも響きをよくしている)。
しかし御園座のチケットは高い。私は3等席だったが新幹線往復+昼夜料金でも1等席の昼夜料金よりはるかに安いのだ。しかも3等席最前列は他の劇場と違って手すりが全然目に入らず、花道も七三は十分視野のうち、とても見やすかった。
「八重桐廓噺 嫗山姥」
初めて見たのは4年前、三代目時蔵五十回追善、もちろんその時も八重桐は時さまであった。
紙衣を着た八重桐が花道から登場したとき、私が時さまを好きなのは、ストレートに「歌舞伎」を感じる役者だからなんじゃないかと思った。きれいで古風で色気があって。
澤瀉姫(長くなるから、説明は省略)の館の前を通りかかった元傾城の八重桐は塀の中から聞こえる唄にふと耳を傾け、今は行方知れずの夫・源七と自分しか知らないはずの唄だったから「おや」と訝る。塀の中に入って確かめたい、その手段を思いつくあたりは大らかなユーモアのようなものも感じられて微笑ましかった。
中に入ると、やっぱりいたいた、源七が。と言ってもまさかそこに夫がいると予想していたわけではなく、互いに互いの顔を見て「しぇっ」とびっくりするのである。夫は父の敵討ちのため八重桐の許を去ったのに、こんなところで暢気に唄など歌っている。カチンときた八重桐は、澤瀉姫に請われるまま身の上話を始める。語るのは傾城時代、廓で朋輩と源七を取り合った様子なのだが、ここはセリフはほとんどなく、義太夫に合わせて動きで語る。正直、義太夫が語っている内容がよく聞き取れず、イヤホンを借りればよかったとちょっと悔やんだ(全部見たことのある演目だから、いいか、と思ってしまったのだ)けれど、踊りとも違う、動きが語るってすごい。手の動き、わからなくてもわかるんである。
八重桐の話を陰で聞いていた源七は当てこすりを怒るが、父の仇は源七の妹・糸萩が既に討ったと聞いて愕然とする。源七も源七なりに仇を探していたのだ。仇討のつらさは色々な演目で見ているが、きっと源七もつらかったに違いない。色々遣り取りがあって、源七はわが身の不甲斐なさに突然腹を切る。そして驚き嘆く八重桐に、我が魂をそなたの体内に宿らせ神通力を与えると言って己れの臓物を八重桐の口に含ませると源七の魂が八重桐の体内に入るのだった。
さあ、それからの八重桐はスーパーウーマンとなって澤瀉姫を奪おうとする太田十郎たちをやっつける。毛谷村のお園を思い出す(私が最初に時さまファンになったのがお園であった)。重い手水鉢を持ち上げぶん投げたり敵を蹴散らしたり、声に迫力を含んだりする女武道、そこには品があり、女性らしさも失われていない。ぶっ返りの白い衣裳が映える。お家の芸である八重桐、これからも時々見たいものです。ちなみに、八重桐はこの後子供を産むがそれが金太郎、坂田金時である。

糸萩の梅枝クンは大人の中に入るといかにも若い。「頼朝の死」の侍女・音羽のほうが孝太郎さんの小周防よりも年長に見えたのに。考えるに、音羽は侍女とはいえ小周防をリードする役、糸萩は源七との年齢差はどれくらいかわからないけれども少なくとも妹であるから、なんだろうか。若い子とは若いけれど、黒の衣裳がしっとり且つきりっと似合っていた。義太夫にもしっかりのっていて、ますます可能性を感じる役者である、と思った。梅枝クンもいずれ八重桐をやるんだろうが、私はそれまで生きていないだろう。
源七の扇雀さん、莨屋の拵えで花道から登場した時、一瞬翫雀さんかと思った。腰元・お歌の亀蔵さんの「よい男だの。私の贔屓の中村扇雀に似ている」とお約束のセリフに客席大ウケで拍手。源七が莨を吸えば女にモテるようになると太田十郎に次々煙管を渡し、そのテにのった太田が莨に酔って(?)目を回す場面が楽しい。
太田十郎の彌十郎さんは大きな体の凄みと愛敬の入り混じった悪役ぶりが面白かった。莨尽くしには客席から拍手が湧いた。最後は「はよ、せーらむらいと」でシメると義太夫も「せーらむらいと、と呼ばわった」と応じて思わず笑った。
澤瀉姫の新悟クンは声がきれいで、姫らしさが備わっている。
お歌の亀蔵さん、よかった!! 意外と女形が似合うし、声は多少は作っているのだろうが、無理なく普通な感じだったし、わざわざコミカルに演じるわけでなし、それなのにそこはかとない可笑し味がある。で、それにプラスしてちょっと寂しげな感じを受けたのはなんだろう。その寂しげな感じがまたよかったんだわ。
ああ面白かった。

|
|

« 名題適任証授与式 | トップページ | 10月御園座昼の部② »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 名題適任証授与式 | トップページ | 10月御園座昼の部② »