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2012年10月27日 (土)

演舞場10月千穐楽夜の部

1025日 芸術祭十月大歌舞伎千穐楽夜の部(新橋演舞場)
9
月は歌舞伎観劇わずか3回、10月は国立と御園座を入れても5回と、寂しい回数ではあるけれど、それが普通なのかも。
「曽我綉俠御所染」
黙阿弥は白浪ものなどは共感を覚えるというか、アウトローたちに思い入れできるのに、「極付幡隨長兵衛」とかこういう変な(と言っては語弊があるけど、そう言うしかない)、後味の悪い作品も書いているなんて…。
この作品は前半の「時鳥殺し」と後半の「御所五郎蔵」に分かれていて、繋がっているのは、五郎蔵と土右衛門が前半の主要人物の1人である浅間巴之丞の家臣だったという点だけのように思われる(「時鳥殺し」は見たことがないので粗筋から想像)。それで、土右衛門がどうして悪役なのか前半に関係するのかと思ったら、社内恋愛の2人(五郎蔵の前身・須崎角弥と皐月)をチクって不義の罪で死罪の危機に陥れたということだけだったみたい(このことは「御所五郎蔵」の中でも触れられている。2人は巴之丞の母親に救われる)。
もちろん、土右衛門は卑劣だし、2人にしてみたら憎い男だけれど、演じる役者によっては意外とカッコよく見えてしまう(中村座の海老蔵がそうだった)のは、五郎蔵という人物にそんなに魅力がないからかもしれない。でも梅玉さんの五郎蔵はとっても魅力的だった。渡り台詞もすかっとしたし、粋で気風はよくても単細胞でどうしようもないおバカの五郎蔵が皐月に愛想尽かしをされて、怒っている五郎蔵の顔が青くなったり赤くなったりしている感じがよくわかる。そこからどんどん悲劇に落ち込んでいく様子がよくわかる。わかるけれど、やっぱり納得いかないし、気分が悪いんだなあ。
松緑さんは悪人というより、皐月愛しさの可愛いオトコに見えたけどなあ。しかし土右衛門が突然妖術を使うっていうのもよくわからない。
2
人の一触即発を収めた幸四郎さん(廓の主人にはあまり見えなかった)、今日は千穐楽だからと、仲裁の言葉の中に入れていた。
逢州(哀れな逢州。高麗蔵さんの位の高さ、大きさが素晴らしい)を皐月と思い込んで殺した五郎蔵はその場で自分の過ちに気づく…と思っていたら、二幕目「五郎蔵内腹切の場」がつく今回は、翌日になってやっと気づくのであった。
取り返しのつかないことをした五郎蔵は自ら腹に刀を突き立て、駆けつけてきた皐月も門口で剃刀を首に当てていた。瀕死の2人が胡弓と尺八を演奏する。「先代萩」で細川に踊らされる外記左衛門を思い出すが、こちらは凄惨な印象を受ける。皐月の芝雀さんは多分本当に胡弓を弾いていた(「阿古屋」へ繋がるのだろうか)。
それにしても芝雀さんは本当に細やかな気持ちを嫌味なく表せる役者さんだと思う。凄惨、無惨な2人の最期だが、一緒にあの世にいけたのはよかったと思えたのは芝雀さんが皐月だったからかもしれない。もっとも「五郎蔵内」は一度見ればもういいかな。それより「時鳥殺し」を見てみたい。こちらも後味わるそうだけど。
五郎蔵の子分たちの亀寿・廣太郎・米吉・廣松の面々。立役の米ちゃんは凛々しく爽やかだが、4人が並ぶとその立ち姿、喧嘩腰など、やはり亀寿さんが一番美しく、一日の長ありというところだった。

「勧進帳」
夜の部は富樫が團十郎、弁慶が幸四郎と、昼の部とは反対の役。
富樫が喋り出したらいきなり声が掠れていてびっくりした。そのせいか、富樫に元気がないような感じがした。声が出ないでセリフが苦しそうなのにはこちらがハラハラしたし、出る範囲では開放音が一際目立って、前半はあまり芝居に集中できなかった。そういうことを差し引いても、團十郎さんもやっぱり富樫ではなくて弁慶役者なのかなと思った。
昼夜を比較してみると、パワーの團十郎弁慶に対し、幸四郎さんは理詰めの弁慶という印象を受けた。花道の出では私の席からは姿は見えず、声だけ聞いていると、低音は心地よい。これで高音が不安定にならなければいいのに。義経を打擲するときの幸四郎さんはいつもちょっとだけ申し訳なさを表現する。だから私はわかりやす過ぎて富樫にもわかってしまうだろっていつも心の中でツッコむ。飛び六方にもっていく最後は幸四郎さんにしてはあっさりしているような気がしたが、私にはこれくらいがよいと思われた(いつもはちょっと思い入れし過ぎな気がする。というのは私の思い過ごしかな)。
昼夜とも今一つぴたっとくるものに欠けた勧進帳だったが、それを補って余りあったのが藤十郎さんの義経。花道は出も引っこみもほとんど見えなかったが、笠を深くかぶってじっと座っているだけで、義経の緊張が伝わってくる。昼夜どちらかでも花道全部を見渡せる席で見たかったなあ。
そうそう、先日の金沢旅行。小松空港から金沢駅へ向かう高速バスの車窓から弁慶と富樫の像が見えた。あっという間だったので確信は持てないが、弁慶は飛び六方の姿勢、富樫は義経一行を見送る姿だったような。テンションあがったなあ。小松は勧進帳の里なのだ。今度は安宅の関へ行きたいものだと、「勧進帳」を見て強く思ったのでした。
<上演時間>「御所五郎蔵」103分(16001743)、幕間40分、「勧進帳」72分(18231935

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