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2012年12月 2日 (日)

明治座11月花形歌舞伎①:人材豊富な澤瀉屋の「傾城反魂香」

1127日 十一月花形歌舞伎千穐楽昼の部(明治座)
もう演舞場も12月の幕が開いたなれど、11月の分を先にしないとケジメがつかないので、まず明治座から。
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年半ぶりの明治座歌舞伎。今回は時間が取れず、千穐楽の昼夜通し1回のみ。まあ、全部の演目、少なくとも1度ずつは見ているから。でも、昼夜とも花道の全然見えない席で、チケットが来た時からかなりヘコんでいた。演舞場と同じく花道用モニターがあったし(画面はよくないけど)予想より悪くはなかったものの、マナー違反の客もいて…。
「傾城反魂香」

三越劇場で一度通しを見て、なるほど、虎はこうやって生まれたのか、とか雅楽之助がなぜ突然土佐将監の家に現れたのかとか、物語の流れがよくわかったのが面白かった。しかしその後「土佐将監館」は何回も上演されているのに、通しでの上演は結局あれ以来5年ぶり。今回も澤瀉屋らしいテンポのよさで飽きることなく面白く見た。
喜昇さんの藤袴がとても可愛らしい。顔はおかめみたいだけれど品のいい三枚目で、喜昇さんの芸の幅の広さを感じた。銀杏の前の策略に使われて可哀想とちょっと同情したら、本人はそれをどうとも思っていないどころか姫のお役に立てて喜んでいるようなところもあったからいいのか。
銀杏の前は笑野さん。前回春猿さんが演じた役で、美貌の笑野さんの実力がここでも発揮された。藤袴を装っている時は腰元らしさの中にもおっとりとした様子が姫としての本性を窺わせる。しっとりと大人の女の雰囲気を漂わせ、儚げなのに積極的なのが赤姫らしい。そういえばお2人ともこの度名題適任と認められたのだったが、近いうちに名題披露をするのだろうか。
猿四郎さんの不破入道が堂々と大きな悪役で圧倒された。欣也さんの長谷部雲谷とともに悪役の魅力を見せてくれた。
二枚目の絵師といったらなんとなくつっころばしを想像するが、狩野元信はそうではない。そこそこ強いんである。しかも自分の肩を食い破って血汐を襖に吹きつけて虎の絵を描くという精神力の強さももっている。門之助さんのこういう役は好きだ。元信が虎の絵を描き進めていくと、その見事さに客席からどよめきが湧き、描き終わった時には拍手!! 亀ちゃんファン(が多かったと思う)はノリがいいのだ。
絵から抜け出した虎がまた見事。ユーモラスに悪人どもと立ち回る。にじり足、バック、後ろ脚立ち、見得等々、澤瀉屋の動物らしく、愛敬たっぷり、華やかで巧みな動きが観客を楽しませる。虎に視線は集中するが、いっぽうで虎と呼吸を合わせる猿四郎さんの立ち回りも見事。それに、この不破入道も案外勇敢で強いのだ。

「土佐将監館」では、思わぬところで客席からくすくす笑いが起きていた。将監が竹藪の中の虎を見るために「懐中のメガネ取りいだし」との義太夫に笑い、実際に将監がメガネを出したら又笑い。まあ、この笑いは微笑ましいけれど、手水鉢をすり抜けた絵を見たおとくが驚きのあまり腰をぬかし、手招きするようにお尻で又平ににじり寄るところ、2人でよたよたと手水鉢に近づくところ、おとくが又平にその奇跡を教えるところ(手水鉢の後ろに又平を連れて行き「ここに描きやんしたな」と確認するのに、又平は頷いてさっさと元に戻ろうとする。2回ほどそれを繰返し、最後におとくの指を目で追う)等々の笑いは、舞台の2人に対してちょっと痛ましさを感じた。
純朴な又平の役は、やり過ぎると間が抜けてしまい、大変難しいと思ったのは、右近さんもややそういう点が見えて、それで笑いが起きたのかもしれない、という気がしないでもないからだ。でも、思うように言葉の出ない悔しさには胸が痛んだ。最後、立派な衣裳に身を包んだ又平、かっこよかった。
おとくの笑也さんは、姉さん女房のように又平を慈しむ様子がこれまた痛ましい。時に又平の怒りを買い、打ち据えられても又平への愛情は変わらない。笑也さんのいいところは大らかな明るさだと思った。
たしか平成中村座で見た時は澤瀉屋の型だったと思うが、本家のほうは修理之助(こちらも名題認証された猿紫さんが初々しく好演。澤瀉屋は本当に人材豊富)が虎を消す奇跡を又平夫婦は目の前で見ていないし、将監館には北の方もいる。北の方は猿三郎さんで、5年前は延夫の名で同じ北の方を演じていた。北の方は又平夫婦を気にかけながらも、絵で手柄を立ててみせろという夫の願い(又平夫婦には吃音を言い訳にしていてはいけない、自分にはそれを理由に甘やかしてはいけないと諌める気持ち)を慮って敢えてかばわない、という心が見えた。

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