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2012年12月 2日 (日)

明治座11月花形歌舞伎②:浅草を思い出して泣きそうになった「蜘蛛絲梓弦」

「蜘蛛絲梓弦」
初見は2006年浅草、スッポンも盆もない浅草の舞台で、それにもかかわらず斬新な蜘蛛モノに度胆を抜かれたものだが、残念ながらこの時はまだブログを始めておらず、自分としての記録が残っていない。2度目は20082月博多座、3度目は2009年松竹座、そして今回が4度目となる。間に2010年御園座公演もあったから、この演目は猿之助さんにとってとりわけ大事な芝居の1つになっているのだろう。
舞台はタイムリーに、紅葉いっぱい(これまではどうだったんだろう、自分ではそこまで書いていなかった)。坂田金時・亀鶴、碓井貞光・男女蔵、そして童・薬売り・番頭新造・座頭と次々と猿之助が現れるこの3ショット!! 浅草を思い出して泣きそうになった。これまでの浅草がどれだけ新年の楽しみだったのか、浅草ではもうあの空気は味わえないのか。今年の千穐楽カーテンコールからは、来年は愛之助さんと亀鶴さんあたりを中心に若手がまた集結するんじゃないかと期待していたんだけどな。まだ見ないうちから言うべきじゃないと思ったから、演目と配役が決まったときには黙っていたけど、この3ショットを見たら、ちょっとグチりたくなってきた。
童のスッポンからの登場、これはモニターで見るしかない。あどけない悪戯っぽさの中に何とも言えない怪しさがあって、早くもそのあやかしの空気に捉われて童とともに踊る金時と貞光。あ~、楽しいっ。薬売りは常盤津の見台の中から飛び出してきて、思わず「うわぁ」と声が出た。天井から、振り分け型の大きな薬箱が下りてきて、それを担いだ薬売りは早々に引っこみ、引っこんだかと思うと花道から番頭新造が現れる。早い早い、この早替りはまさに「アッという間」。カメちゃん、全速力で走っていたんだろうな。番頭新造は下手側の襖返しで引っこむ。薬売りと番頭新造の時には長唄と鳴物が入ったが、番頭新造が姿を消すと、襖が閉められ長唄・鳴物も姿を消す。
だまされて妖怪を取り逃がしてばかりの2人は「いずれもさま、面目次第もござりませぬ」と客席に向かって平謝りだが、まだまだだまされるのだよ。
舞台は薄暗くなり、金時と貞光が居眠りをしていると、正面階段の中から座頭が飛び出す。「四の切」の狐といっしょだ。私はよく聞こえなかったが、恐らく花道揚幕でチャリンの音がして、狐同様、出をだましていたんじゃないかしら。お国名物・仙台浄瑠璃を2人に所望された座頭のカメちゃんは、浄瑠璃に合わせてエアー三味線、エアー語り。これがまた楽しい。しかし、この座頭も妖怪が化けたものである。座頭の衣裳の下には蜘蛛の糸の衣裳をつけている。館の座敷に上がった座頭は、ここで初めて糸を投げる。投げながら階段下へ飛び降り、最後は御簾内の火鉢の中へ。座頭の消えたあとには煙が立ち上る。
御簾が閉じられると、その前にシマシマの蜘蛛が糸を伝っておりてくる。下まで降りると再び上へ。そして御簾が上がり、頼光(門之助)の隣には蜘蛛の糸の衣裳をまとった傾城薄雲が。薄雲を妖怪と悟った頼光は外へ出る。薄雲が糸を投げる、その糸が頼光にかかる。とても美しい場面だった。騒ぎに気付いた卜部季武(米吉)、渡辺綱(猿弥)が駆け付ける。米ちゃんの立役、声も太く凛々しく瑞々しい。卜部の化粧をした米ちゃんの顔が、なんと、段治郎さんじゃなかった月乃助さんに似ているように見えた。
蜘蛛の精を追って頼光・季武・綱が花道を去ると、蜘蛛の糸が一面に描かれた幕が舞台を覆う。そして大薩摩。大薩摩は、いつもワクワクさせてくれる。戦闘態勢の頼光一行が再び花道に現れ、「いざ、蜘蛛の巣を断ち切らん」と頼光が刀を振って幕が落ち、舞台中央に蜘蛛の精、蜘蛛四天が8人(足の数ですね)現れる。
ラスト、平井保昌(右近)の力強い押し戻しも楽しい。「四代目市川猿之助によく似た化け物め」。頼光たちに刺された蜘蛛は、最後は三段で糸を投げる。猿之助さんの後ろで後見も糸を投げ、飛び交う糸、糸、糸。そして舞台にも雨のように糸が降り、興奮は頂点に達する。
テンポのいい進行、客を飽きさせないケレン、視覚的な美しさ、猿之助の踊りの巧みさ(踊りに余裕が見えて感心した)、門之助の気品、男女蔵・亀鶴の行儀のよいコミカルさと武士らしさ等々、4度目でも楽しさ、興奮度は変わらない。
<上演時間>「傾城反魂香」序幕45分(11001145)、幕間30分、二幕目90分(12151345)、幕間25分、「蜘蛛絲」65分(14101515

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コメント

こんばんは。
私も中旬ごろに明治座に行きましたが、3人並んでいるところがあまりにもしっくりきているので、
つい過去に見た回を思い出してしまいました。
2008年の博多、2009年の松竹座は浅草メンバーでのこの演目の上演が本当に楽しくて、
松竹座で見たときはあまりの興奮状態から買ったお土産を席に置いてくるという失態を・・・catface
2008年の浅草が私の初歌舞伎でしたが、翌月にはもう博多まで飛んでいくくらい好きになっていたのも
あのときの浅草メンバーの魅力がものすごかったからでしょうね。
いや、決して今年の浅草メンバーがダメだとか言ってるわけではないんですけど(歌昇くんや米吉くんたち大好きですし)、
でもなんとなく寂しいな…と思っていたところに来年の報が…。
あぁもうすみません、グダグダと…coldsweats02

1月は国立と演舞場を楽しんで、2月の遠征のために力を温存することにします!

投稿: あねご | 2012年12月 4日 (火) 01時20分

あねご様
おはようございます。コメントありがとうございます。
ね、ね、あの頃の浅草メンバー、とくに2008年は私にとってもサイコーでした!!(お土産忘れちゃうくらいのコーフン、わかりますよ~!! ああ、ほんと楽しかったですよねえ) そこから少しずつメンバーが抜けたり変わったりして、それでも浅草歌舞伎のコンセプトと魅力は変わらなかったのに…。浅草ファンの1人としてあねご様とまったく同感です。
それでも今年のメンバーがこれからも浅草歌舞伎を盛り立てていくのかなと思ったら…。浅草歌舞伎は今後どうなるのでしょうね。

2月は愛之助さんの「GOEMON」ですね。私はどうするかなあ。あねご様のレポで仮想観劇ってことになるかも(^-^;

投稿: SwingingFujisan | 2012年12月 4日 (火) 09時05分

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