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2012年12月 9日 (日)

12月演舞場昼の部:荒唐無稽さが楽しい「御摂勧進帳」②

123日 十二月大歌舞伎初日昼の部(演舞場)
二幕目 越前国気比明神境内の場――色手綱恋関札――

二幕目は舞踊劇。義経が出るっていうから相手は静かと思ったら大違い。
義経は京都で通った女が20何人もいたらしい。落ち延びるときに付いてきた女が11人。静もその1人であったとか。びっくりですわ。
ここでちょっとお勉強。江戸時代、踊りは長唄で女形がやっていたが、やがて浄瑠璃が入るようになると芝居仕立てになって立役も加わった。この舞踊劇ははじめ富本節だったが、富本がすたれたため、昭和43年復活の折に清元で新たに作曲されたのだそうだ(以上、イヤホンから)。
浅葱幕の前に喜昇・徳松・京三郎の村娘たちが色々噂話をして、やがて祭りの踊りの稽古をしながら退場する。そんなのどかな光景のあと、浅葱幕が振り落されると、そこは福井県気比明神の入口である。大ゼリから鷲尾三郎(亀寿)、女馬子(梅枝)、義経(菊之助)がセリ上がってくる。義経は馬に乗り、その手綱を女馬子が引いている。鬘のせいか、梅枝クンの面長が目立って、3代目にますます似ていると思う。馬はいつも見る色とは違って亜麻色というんだろうか、栗毛よりもっと明るい色をしていた。初めて見る色。
義経は笹竜胆の模様の入った藤色の着付けに紅葉を散らした袴と、優雅な出で立ちである。菊ちゃんが美しい。「馬上では裾から風が入って寒い。馬を下りたい」と言う義経に鷲尾が手を貸そうとすると、なんと義経は「女馬子に抱かれて下りたい」とのたまうのである。20人だの11人だの言われているわけだ。
女馬子は義経の名前を知っていて恋心を抱いている様子。それを怪しむ鷲尾は女に街道筋の名所を尋ねる。そこへやってきた鹿島の事触れ、実は義経の家来・お厩の喜三太(松緑)。途中ちょっと眠くなったが、4人の総踊りが目を楽しませる。しばらくすると稲毛入道が「四の切」の荒法師みたいな恰好でやってくる。義経たちと入道たちの立ち回りの間に女馬子は衣服を変え、藤原秀衡の娘・忍の前であることが明らかになる。幼い頃に義経と結婚の約束をしたとかで、義経をここまで迎えにきたのであった。忍の前は馬に乗り(ひゅぅ~、お姫様姿の梅枝クンが馬に乗ってるなんて!! 時さまも馬に乗ったことはないらしいぞよ)彼女の操る馬に入道たちは翻弄される。奥州育ちは馬が得意なのだ。義経も鞍馬にいるときは馬なんていなかったから乗れなかったが、奥州の秀衡のところで馬を習い、ひよどり越えに成功したのだとか。
敵を蹴散らした一行は、今度は忍の前が馬上の人となり、義経がその馬を引いて落ち延びていくのであった(藤色の上だけ脱いだ菊ちゃんのピンクの衣裳が菊ちゃんの美貌を映えさせる)。
追手に追われていながら、忍の前の気持ちを受け入れてにやついている義経(妻の岩手姫は是明君の横恋慕をきっぱりと撥ねつけたのにね)。なんとも大らかな逃避行ではないか。

第三幕 加賀国安宅関の場――芋洗い勧進帳――
ここで又お勉強。江戸時代「はしかの命定め、疱瘡の器量定め」といって、とにかく疱瘡は嫌われていた(佐野次郎左衛門の顔を見ればわかるというもの)。当時疱瘡は「イモ」と言われていて、疱瘡の神が持ってくるものと思われていた。「芋洗い」というのは疱瘡の神を洗う芝居ということだそうだ。こっちのほうが歌舞伎十八番の「勧進帳」より古いんだってことは知らなかったのか忘れていたのか。
さて去年の1月に橋之助さんで見た「芋洗い勧進帳」、少しずつ記憶が甦ってきた。関守には捌き役(富樫左衛門:菊五郎)と敵役(斎藤次祐家)の2人がいること、弁慶が荒事の扮装であること、義経に従う家来は四天王じゃなくて弁慶を除いて6人いること(鷲尾三郎も一行の中にいる。鷲尾だけが「御摂勧進帳」3幕のすべてに登場する)、弁慶が縛られてわんわん泣くこと、その怪力で番卒の首を次々に引っこ抜いて、巨大な天水桶で洗うこと等々。
弁慶と番卒との立ち回りは、蘭平ほどではないが、ちょっと思い出すほど三津五郎さん大奮闘。そして形がきれい。見ていて心地よい。形にプラスしてこの芝居での弁慶の精神もしっかり表現されていたから、荒唐無稽なのに違和感なく勧進帳の面白さが伝わってくる。
引っこ抜かれたたくさんの首は運藤太、鈍藤太の2人(三津之助さんと辰緑さん、どっちがどっちだったか)が「エコな掃除」として箒と熊手でコミカルにかき集め、玉入れよろしく天水桶に投げ込む。その後、この2人の首も抜かれてしまうのだけど。
最後は天水桶の上に乗った三津五郎さんが「大役務めた御礼申し上げまする。只今より吉例芋洗いをお見せいたします」と言って天水桶の中をかき回して終わる。
感想は前半飛ばし過ぎて疲れたので、再見の折にまた。
出口の見えない閉塞感に捉われている昨今、1年の締めくくりにこういう大らかな芝居で笑えるのは幸せだ。夜の部ももちろんよかったのだが、そういう意味では昼の部が楽しくて、仕事放り出して見に行った価値があった、と自分に言い聞かせているのであります。
<上演時間>「暫」55分(11001155)、幕間35分、「色手綱恋の関札」5112301321)、幕間25分、「芋洗い勧進帳」55分(13461441

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