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2012年12月 8日 (土)

12月演舞場昼の部:大らかで楽しい「御摂勧進帳」①

この記事は125日にアップしたのですが、その後勘三郎さんの突然の訃報が入り、削除しました。こんな気持ちの時にどうしようかとずいぶん迷ったのですが、いつまで悲しんでいても前に進めないし、歌舞伎をこよなく愛し、賑やかなことが好きだった勘三郎さんだから、楽しかった歌舞伎の感想で、おこがましいながら私なりに勘三郎さんへのご供養としたいと思います(なお、感想は5日にアップしたものそのままです)。
12
3日 十二月大歌舞伎初日昼の部(演舞場)
12120501countdown 昼はもっと先に、1度しか見ない予定でいた。そうしたら初日に昼の部がすごくよかったと聞き、矢も盾もたまらず、早速Web松竹を探したら、3階正面が空いていたので即ゲット。本当は歌舞伎なんて見てる場合じゃないんだけどね。仕事どうするんだ!!
「通し狂言 御摂勧進帳」
一幕目 山城国石清水八幡宮の場――暫――
まずは馬に乗ったなまず隈の稲毛入道(亀三郎)、義経の妻岩手姫を連れ出そうとしている。それを阻止しようとする一本隈の荒若衆の鷲尾三郎(亀寿)。もみ合ううち、亀寿さんが馬の尻尾を引っ張ったら、尻尾が抜けてしまうというハプニングが。入道の手下の1人が立ち回りをしながらさっと拾ってさっと馬の腹の下に滑らせ、黒衣が片づける。亀寿さんはいつもの美声と違ってちょっと声に掠れが感じられたけれど、大丈夫そう。
場面は変わって石清水八幡宮境内。橘太郎さんの悪役ぶりが快調で、小柄な役者さんなのにとても大きく見えた。
本家「暫」の腹出しにかわって、こちらは公家4人(秀調、右之助、亀蔵、菊市郎)。秀調さんの隈が「大入」という文字になっていたりして、みんなどことなく奇怪な顔をしている。その中で右之助さんの顔が一番奇怪だったが、声といい喋り方といい一番公家風だった。
悪の親分・是明君(彦三郎)が登場するといよいよ「暫」らしくなる。是明君は義経が平家討伐の際に持ち帰った朝日の宝剣を奪っていて、そのために義経は頼朝から謀反の疑いをかけられている。おまけに是明君は義経の妻・岩手姫(菊史郎)に横恋慕しているのである。公家悪の彦三郎さんに大きさと力があって非常にいい。是明君の命令で善人側が首を刎ねられようする寸前、「しばらく」の声が。松緑さんにしては低い声で呼びかけている。低いと不気味な感じはするが、私は高い声のほうが盛り上がるような気がして好き。
いよいよ鎌倉権五郎ならぬ熊井太郎が姿を現す。太郎の鬢は権五郎の車鬢と違って板鬢(イヤホンガイド)。袖には三升ではなく松緑さんの家紋の四ツ輪が染め抜かれていた。松緑さんの太郎はとても大らか。セリフは松緑節というか、下から徐々に上にあげていくようなメロディーで、それが気になる時もあるのだが、今回は悪くなかった。
つらねが終わると、4人の公家が次々に太郎に挑む。

まずは秀調さん。太郎に「シャレ者」だと衣裳を褒められ気を良くして「新装なった三越の別誂え」と自慢するが、敵うわけもなう。次の右之助さんもすごすごと引き下がる。
すると亀蔵さんが菊市郎さんに「2人で行こう」と誘う。菊市郎さんはローラ風に、ふくらませたほっぺに指で輪をつくって「オッケー」。ここからはやりたい放題。亀蔵さんが笏に何かしている。菊史郎さんが覗きこむと、「今、つぶやいているところ。『熊井太郎を引き立てている、なう』」。さらには2人で「当たり前体操」まで始める始末。「♪右足出して♪左足出せば逃げれる。♪あたりまえ~♪」
歌舞伎はそのときどきに流行っているギャグなどを取り入れるが、「あたりまえ体操」が出てくるとは思わなかった。本家COWCOWの「あたりまえ体操」はあんまり面白いと思わないのだけど、亀蔵・菊市郎コンビにはかなり笑った。ずいぶんメジャーになったものだと、COWCOWに教えてあげたくなっちゃった(もっとも、何のことだかわかってない人もけっこういたみたいだったけど)。
2
人も結局は熊井にビビり。
そして鯰の稲毛入道こと亀三郎さん。「松緑のあにい」。「幼馴染の亀三郎。言うこと聞いてやりたいが」であえなく入道も引き下がる。
次は女鯰若菜の松也クン。声も仕草もきれい。松也クンは先月の扱いがちょっと…だったから、こうやって女形としての実力が発揮されると嬉しい。「どなたかと思ったら紀尾井町のにいさん。寒いのによくござんしたな」。ここは一応女鯰も引き下がる。
熊井が本舞台に移り、衣裳を整える。熊井の衣裳は65kgあるそうで、後見さんも大変。正面を向いた松緑さんは隈取りの中の顔が意外に幼げに見え、それが絵になる。荒事の稚気にも合う。腰高なのはちょっと気になるものの、「お、海老蔵より好きかも」なんて思ってしまった。
義経側のスパイであった若菜が音羽丸(萬太郎)に宝剣を持って来させるクン。萬太郎クンは若い勢いがあり、声もよくて、もう少し体が大きければ荒事に合うかも(体を大きく見せるやり方は工夫できるだろう)。
宝剣の戻った喜びに加え、松緑さんが「とくに今月は巳太郎師匠の襲名で」ともうひとつの喜びを披露する。松緑さんの音頭で、客も三三七拍子の一本締めに加わり、お祝いする。それを見て亀三郎さんも三三七拍子をやったら橘太郎さんに怒られていた。
お約束の一太刀での首切りもあり、大らかでバカバカしい「暫」のパロディはミーハー観劇者にとって本当に楽しかった。これを見に来てよかったと思った。

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。
ここ数日、中村屋ショックからなかなか立ち上がれませんが。歌舞伎好きとして、新時代を展望して前向きに観劇してゆくしかないのでしょう。NHKで追悼番組やるようで、一応録画(我が家はいまだVHS)はしますが、暫くしてから見た方がいいのかなとも思います。
演舞場の昼の部、初日に見てきました。三場のなかでは、「芋洗い」が一番面白かったです。「暫」、松緑よくやっていますが、元禄見得などで、どうしても腰高で形の悪さがあります。中幕の所作事、だらだらとして、ややまとまりがないのですが、菊之助の美しさ、梅枝の成長ぶりで魅せました。最後の「芋洗い」、三津五郎、それほど愛嬌があるとも思えませんが、舞踊の上手い人だけにびしびしと決まる形の良さ(特に腰をぐっと落とした元禄見得が抜群)が大変結構でした。どの場面も菊五郎劇団のアンサンブルの良さが気持ちの良い出来だったと思います。

投稿: レオン・パパ | 2012年12月 9日 (日) 07時42分

追加のコメントです。
今朝の日経新聞に野田秀樹の中村屋の追悼文が掲載されていました。まさに慟哭の手記ですが、冒頭に「中村屋の棺の中に、来春、杮落しを迎える新しい歌舞伎座の舞台のその切れ端が入れられた。彼の亡骸の足が、まだ踏んだことのない、真新しい舞台を踏んでいる。」との記述があり新たな涙を誘われました。

投稿: レオン・パパ | 2012年12月 9日 (日) 08時34分

レオン・パパ様
おはようございます。
歌舞伎ファンなら誰もがショックからなかなか立ち直れないと思います。映像を見るたび、信じられない、どうしてという思いが次々と押し寄せてきます。でも前向きに観劇していくしかないこと、私もそう思います。
松緑さんは確かに腰高ですが、とくに顔が気に入りました。
踊りは正直言うと途中少々眠くなり、4人の総踊りで持ち直しました。
三津五郎さんの形、きれいでしたね。歌舞伎の基本は日本舞踊だと教えてくれるような感じがしました。

投稿: SwingingFujisan | 2012年12月 9日 (日) 08時34分

レオン・パパ様
勘三郎さんの棺のお話に、私も泣きました。ただただ泣きました。
でも、新しい舞台を勘三郎さんが踏めなかった無念、悔しさが増す一方で、心が少し慰められたような気もします。教えてくださってありがとうございます。

投稿: SwingingFujisan | 2012年12月 9日 (日) 08時41分

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