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2012年12月20日 (木)

南座、顔見世・勘九郎襲名昼の部①

129日 東西顔見世大歌舞伎昼の部(南座)
ホテルを近くに取っていても、やはり10時半の開演は私には早い。
外は雪交じりの寒さだが、中は暖かく、コートもコインロッカーに預けた。
「佐々木高綱」
どうも「高時」と混乱してしまう。「高綱」は初見です。
高時(我當)は石橋山の合戦の折、罪もない馬士を斬り捨てたことがあった。その罪滅ぼしに馬士の遺児・子之介(愛之助)を探し出して馬飼いとして自分に奉公させ、毎月馬士の命日には門前を通る僧侶を招き供養している。今日は智山という僧侶(彌十郎)が回向をすることになった。高綱は智山にかつての罪について語る。子之介は高綱を恨むことなく熱心に馬の世話をしているが、それは自分の気持ちに人の誠を感じているからではないかと高綱は言う。
その高綱が、石橋山の合戦で「日本の半分を与える」とした頼朝が約束を守らないと頼朝に対する怒りと恨みを口にする。
かつて犯した罪への高綱の悔恨と罪滅ぼし、頼朝に対する恨み。人間なら誰しももちそうな自己の中での葛藤。我當さんの真摯で温かい声、泣き節(と私が勝手に名付けている)が高綱の誠を巧むことなく表現している。頼朝に対する激昂でさえ、そこには人の誠が失われていることへの悲しみが感じられて、よいのである。
愛之助さんは哀れさが愛おしい。哀れさというのは語弊があるかもしれない。なんと言うのかな、親をいきなり殺されて、その敵に雇われて、しかし恨みもしないで誠実に仕える、本当はスキあらば敵を殺すつもりで雇われたのに、恨みが消えていく心の変化がわかる。そこに美しさがあってそれが哀れに通じるような気がするのだ。涙が出そうなほどいい子で、本当に愛おしい。
彌十郎さんがまたいい。俗世間とは一線を画して、高綱に対しても何かを説こうというのではなく、自然に何かを伝えている、いや、高綱が自然に智山から何かを受け取れるような、そういう冷静な態度がよい。
この供養の日、子之介の姉・おみの(孝太郎)がやってくる。おみのは高綱に対する恨みに凝り固まり、恨みを捨てた弟を「不孝者」と罵り、自ら仇討をしようとする。
そこへ出家を決意した高綱がやってくる。斬りかかるおみの。「ここにも悟れぬ人があるのう」とおみのに言い、高綱は智山を馬に乗せると自分は轡を取って、2人で花道を去っていく。それでもまだ高綱に飛びかかろうとするおみのは仇討が果たせず号泣する。困惑する子之介。高綱と智山を見送る人々。
孝太郎さん1人がエキセントリックな印象だが、おみのの気持ちを考えれば当然かもしれないとはいえ、この人1人に後味の悪さを感じた。
この芝居はセリフ劇と言っていいだろうか。家来と高綱、高綱と智山、高綱と甥(長くなるので省いたが、高綱の兄の子・定重、進之介)、定重と高綱の娘・薄衣(新悟、声がきれい)、子之介とおみの、それぞれの会話が、状況や心理を語る。役者さんのセリフがはっきりしていたし、なかなか面白く聞くことができた。

「梶原平三誉石切」
團十郎さんの梶原がなんとも絵になる。大きさと華やかさ、明るい大らかさ。決してうまいとは思わないのだけれど、細かいことなどどうでもいい、もうその存在そのものが稀有で、そこにいるだけでいい、なんて気になってしまう。石切りは正面を向いて切り、2つに割れた手水鉢の間から前に出てくる。
大庭はこれまで悪役のように思っていたけれど、決してそうではないことが今回わかった。たとえば、二つ胴を試す時に死罪となる囚人が1人しかいないとわかると、「目利きのために殺さなくていい囚人を殺すわけにはいかない」なんて言うのだ。ちょっと感心してしまった(これまで、そういうセリフを聞き逃していたんだわ)。左團次さんは團十郎さんに対抗する大きさはあったものの、ちょっとあっさりしすぎているような気がした。
俣野の男女蔵さんは声が高くないのが難点だが、荒々しい若さが悪くない。目利きを頼むときの愛嬌もよかった。
剣菱呑助の市蔵さんがうまさを見せた。酒尽くしは銘柄を入れるよりもたとえば「富士見(不死身)酒」のような掛詞が多かったように思う。
彌十郎さんの六郎太夫はここでも老け役だが、それがよく身についていて、安心して見ていられる。團十郎さんとの息もよく合っていた。
七之助さんの梢は死んだと思った父親に縋って「ととさん、どうしょう、どうしょう」と泣くところが現実に重なり、勘三郎さんも六郎太夫みたいにひょいと起き上ってくれたら…と思わずにいられなかった。それに、梢役の七之助さんの顔がこれまで感じたことがないほど勘三郎さんに似ていて、切なくなった。

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