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2013年1月27日 (日)

「夢市男達競」千穐楽

127日 「夢市男達競」千穐楽(国立劇場大劇場)
13012701kokuritu 平和を享受しつつ面白い芝居を見に行くことに内心忸怩たるものを感じながら、それでもやっぱりこの芝居の面白さを堪能したのであった。
仕事が又押してきてまだ演舞場夜の部の感想も書いていないが、先にこちらを。前回とだいたい同じなのか少し変わっているのか、よくわからなかったけれど、今回気づいた点のみということで。
ところでNHK BSで2月4日午前1時~5時に夢市と亀治郎の会さよなら公演をやるから、忘れずにね。

★明石志賀之助と仁王仁太夫の御前相撲は明石の勝ち。ただし相撲の場面は演じられず(濡髪vs 放駒と同じ)、勝負付売りという結果を刷った紙が売られる。勝負付売りの橘太郎さん、客に明石と仁王の結果を聞かれて教えちゃったものだから、客はもうそれで十分と肝心の勝負付を買おうとしない。そこで橘太郎さん、売れ残った勝負付を花道脇の客席に撒き始めた。前回見た時に撒いたのはたしか1枚か2枚だったけれど、今日は千穐楽だから気前よくぜ~んぶ撒いていた。そして最後に「遠い人には」と紙飛行機に折った勝負付を2枚、飛ばしていた。どれも私の席には届かなかったけれど、これは欲しかったな。
その橘太郎さんがかぶっていた手拭は国立劇場の手拭。
★市郎兵衛の女房おすまが倅市松の手を引き花道を入ってくると、子分の亀寿さんともらった菓子折りの話になる。近所の人が「空の木とかいう日本一高い塔を見て」きたお土産なんだそうである。「ああ、去年の5月にできてから大層現物が来ているという、あの高い塔でございますね」と亀寿さん。景色を見下ろした様子などは空に居る心地だそうだという女中の言葉に「おらあ、高いところが苦手だからとても行く気にはならねえや」。すると市松が「男のくせに、だらしがねえなぁ」とツッコむ。この市松の大河クンが本当に可愛らしい。大河クン、まだ初舞台前なのだと知り合いにから聞いた(そういえばそうなんだっけ、全然意識していなかった。初舞台では三代目左近を名乗るのだろうか)。
★三浦屋前で市郎兵衛にこてんぱんにやられる杉伴六役の亀蔵さん、刀で着物をずたずたにされると中は半袖短パンジーンズ姿、というのは前回も書いたが、今日は千穐楽バージョンで「ワイルドだろ~」のあとに「明日からはこのナリができないと思うとさびしいぜ~」と笑わせて引っこむ。杉伴六という名前はスギちゃんを意識してつけたのか、たまたま黙阿弥の登場人物の名前にあったのか。
★今回は七福神の踊り、寝ないで見た。弁財天(時蔵)の頭についた小さな鳥居が可愛かった。梅枝・萬太郎兄弟はともにどじょうヒゲ。亀三郎・亀寿兄弟はともに老人役(寿老人と福禄寿)で腰の曲がりとか動きは老人風だったが、白く長いおヒゲの間に見える肌はシワを描いても若さが目立った。


★三浦屋前で人払いをして、市郎兵衛が妹の傾城・薄雲と密談をする。白銀の猫の置物を探しているんだが、どこかで噂を聞いていないかと問う兄・市郎兵衛。聞いたことはないが、旦那さんなら知ってるかもしれないから聞いておきましょうと妹・薄雲。兄が「将軍様(頼朝)のお命に関わる大事の宝」だと教えると薄雲は「おお、それはもしや、あの鼠の」と何か気づいた様子、という場面。薄雲の時様が「おお、それはもしや、あのウサギ…鼠の」と言ってしまった。一瞬、はっとしたが時様はすましているし、私もそのまま聞き流そうとしていたら、なんと菊五郎さんが「うさぎぃ?」とつぶやくではないか。その間が絶妙というか、一瞬自分の中で時様のセリフを反芻してからつぶやいた、というタイミング。多分、客席も私と同様聞き逃すつもりでいたんだろうに、もうたまらず爆笑。可笑しくて可笑しくて、客席はしばらく笑いが止まらない。菊五郎さんもうっすらニヤニヤしている。時様はすましている(わざとやったのかなあ)。それがまた可笑しくて、収拾つかなくなりそうなところへ、三浦屋主人の彦三郎さんが登場してやっと納まった。
★菊ちゃんの新造・胡蝶がかわいい。薄雲の部屋に入る前、猫手で首のあたりをちょちょっとやるのがたまらなくかわいかった。胡蝶は薄雲が可愛がっていた猫・タマの精であるが、死んだら位牌まで作ってくれた薄雲が妖しい男(鼠の術を得た木曽義仲)に夢中になって、胡蝶の忠告も聞き入れない。しつこいと怒られて追い払われた胡蝶=タマの寂しげで悲しい表情が哀れであった。また、薄雲を守ろうとして命を落とした胡蝶に今回も涙が出た。
義仲ネズミの松緑さんと胡蝶タマの菊ちゃんの立ち回りは見応えがあった。おびただしい数の鼠四天(鼠四天はみんな目の周りに黒い丸を描いていた)を1人で追い払い、最後は義仲との一騎打ち。花道での菊ちゃんの海老ぞりは素晴らしかった。タマをやっつけた松緑さんは花道で片脚を軸にくるくるくるくる。これも素晴らしかった。
★頼朝の館がばらばらと崩れ、セリ下がり、屋根に大鼠が現れる。菊五郎さんが手にする白銀の猫から赤いビームが出て義仲も大鼠も倒れると、館は元通りになってセリ上がってくる。崩れ方も直り方も見事な技術だと思った。
★最後の場面に出てくる梅枝クンの刀の柄巻がきれいな色だなと思ったら、裃(胴の部分を除いて)と同じブルーであった。
私の2013年初芝居と1月最後の芝居は国立の「夢市男達競」であった。

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宇都宮市蒲生神社に残る明石志賀之助の手形。

私の手の
2倍はありそう。重ねてみたら、長さは明石の掌だけで私の手全体がおさまる。指の太さも倍以上。親指は3倍くらいか。
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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様も国立にいらっしゃたのですね!お目に掛かれず残念でした。。今度機会がありましたらぜひ...☆彡
週末の宮城は大雪で、石巻から仙台へ向かう高速バスが運休しており(バス停に着いてから知りました)諦めようか迷っていたところ、同じバス停にいたボランティアで県外からいらした方がお友達を呼んで仙石線の通っている松島まで車に便乗させて下さり、無事観劇することができました☆
いつも思います。困っている人がいるとき、自分はその人を手伝えるのか。
ボランティアの方たちのお話を聞いて、地元にいる自分が情けなくなりました。
自分を反省しつつ、お芝居で楽しい気持ちになり元気に帰路につきました。
歌舞伎は半年ぶりでしたが、私でもすんなりと理解できる内容で楽しかったですし、菊之助さんの志賀之助と胡蝶、どちらも観に行ってよかった~と思います♪
時蔵さんのウサギ…のところは2階席から見ていて、1階席のザワザワが納まらないところが面白かったです(^_^;)
BSで放送されるのも楽しみですね!
七福神の舞踊で少し瞼が下がって観ていない部分もあるので。。
1月から歌舞伎を見ることができて幸せでした(*^_^*)

投稿: オレンジスイート | 2013年1月28日 (月) 15時57分

オレンジスイート様
こんばんは。コメントありがとうございます。
そう、そう、オレンジスイート様も千穐楽ご観劇だと伺っていたのにお目にかかれず残念!! 
オレンジスイート様は2階席でしたか。私も幕前と幕間には2階をちょっとうろうろしておりましたのに(私の席は1階でした)。
菊之助さんの志賀之助は意外な役どころでしたが、なかなかだったでしょう。きれいなお相撲さんでしたよね。胡蝶は可憐で哀れでした。同じ役者さんが正反対ともいえる役をこなすのですから素晴らしいですよね。
時蔵さんのうさぎ、ね、今思い出しても可笑しいです。なぜか私の周辺だけがいつまでも笑っていて…。それにつられて堪えるのに必死でした。
七福神は、どうしても瞼が落ちてきますよね。ましてオレンジスイート様は遠くから大変な思いをしていらっしゃったのですから(そうでない私も前回は大半目を瞑っていました)。

大雪の中の遠征、大変でしたね。あの高速バスが運休とは…。先般、こちらも大雪(雪国に比べたらどうということないのでしょうが)を経験したので、どんなに大変かが身を以てわかるような気がします。でも、本当によかったですね、助けてくださる方がいらっしゃって。オレンジスイート様の人徳ですよ。きっとオレンジスイート様もどこかで誰かを助けていらっしゃるんだと思います。ご自分では意識していなくても、きっとどこかで。
こういうご時世ですから、ひとさまに手を差し伸べるのが難しい場面も多々あるでしょう。でも、思わず出た手がお役に立った時は自分自身も嬉しくなります。
お互いが信じ合えてためらうことなく手を差し伸べられる世の中であってほしいですね。
ボランティアの方々、本当に頭が下がります。

1週間後はもう立春ですが、まだまだ寒い日が続くでしょう。どうぞ、お体にお気をつけて。
オレンジスイート様が歌舞伎を楽しんで元気にお帰りになられたとお伺いして、胸が温かくなりました。ありがとうございます。

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月28日 (月) 19時09分

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