« オセローの代替公演は花形歌舞伎 | トップページ | 羽子板の中の歌舞伎 »

2013年1月10日 (木)

やっと初芝居:「夢市男達競」

110日 「夢市男達競」(国立劇場大劇場)
13011001kokuritu 今年の初芝居。仕事がまだまだ溜まっていて、故に睡眠不足で頭痛プラス眠くて眠くて、自分で取った安い席なら初芝居だろうが菊五郎劇団の楽しみな復活狂言だろうがパスしていたかもしれない(去年の1227日に渋谷で芝居納めをしてからこの8日に成田に行くまで1度も電車に乗らなかったので出不精が身についてしまったこともあるかも)。でも、行ったらやっぱり面白かった!! 歌舞伎が好きだと改めて思った!!
というわけで、今アツいうちに感想を書かないと又いつになるかわからないので、箇条書きにて簡単に。
★物語の縦糸は簡単に言ってしまえば、頼朝の守り神である白銀の猫(西行が猫)を巡って、鎌倉方を滅ぼそうとする頼豪・義仲合体側とそれを阻止しようとする市郎兵衛側の争いである。黙阿弥の原作をだいぶ整理したり手を加えたりしたそうだが、よくまとまっていてわかりやすく、面白かった。舞台も大がかりで、巨大な鼠が出てきたり屋台崩しがあったりして目からも楽しめる。
今年の「こいつぁ春から」は
2日の放送だったから国立は初日前。テレビではもうやらないのかな。
★幕開き、第一声はなんと萬太郎クン(源頼家)。若いながら上に立つ者の品位がある。声がいい。
★梅枝クンは今回立役のみ。瑞々しく凛々しく、たおやかな女形とはまったく別の梅枝クンで、義経・静を右近クンとダブルキャストでやったときは梅枝クンはやっぱり女形の役者だと思ったのに、今回の大江家家臣飯島半七郎は兼ねる役者の素質を見せていた。
★團蔵さんの悪役(北条家十役神崎伝内)の憎々しさはもう身についているが、この人の憎らしさというのはただの憎らしさではなく、その役の人間がどうしてそんなに憎らしくなったかを考えさせられるような気がした(つまり憎らしさが「深い」)。
★左團次さんは菊五郎劇団の初春狂言に初参加だったんだぁ。いつも菊五郎劇団で見慣れているものだから、初参加と知った時にはびっくり。はじめは姿を見せない頼豪の声が流れてきたとき、地の底から聞こえてくるようでおどろおどろしさがとてもよかった。そういえば国立では頼豪阿闍梨を2度見ている。平成1710月「貞操花鳥羽恋塚」と、平成191月「梅初春五十三驛」。どちらも鼠の術が記憶に残っている。左團次さんは後に頼朝役でも出てきて、大きさが感じられた。
★松緑さんは木曽義仲・仁王仁太夫・大江広元の3役。どの役もカッコよかった。顔が小さいのに衣裳や鬘に負けていないのはさすがだといつも思う。義仲の醸し出す陰影が意外によくて、3月の「暗闇の丑松」が俄然楽しみになってきた。
★菊ちゃんの相撲取り!! 明石志賀之助が期待以上によかった。肉襦袢もよく似合い、太く低い声と菊ちゃん本来のきれいな声が感情によってコントロールされるのがいい。動きもゆったりと相撲取りらしく大きい。濡髪みたいに右の頬に黒子がついていた。そうして考えてみると、菊ちゃんは「引窓」の南方十次兵衛もお早も濡髪もできるに違いない。すごいな。
★菊ちゃんの明石が仁王に御前相撲で勝ち、羽織を拝領する。その背中に「日下開山」なんとかと文字が仰々しく書いてあり、客席から笑胃が起こった。
★菊ちゃんといえば、「旭輝黄金鯱」で見事な肉体を見せたし、あの体に肉をつけたら立派な相撲取りになるのに不思議はないのだが、その後のネコの玉(三浦屋新造胡蝶)ではほっそりとしなやかで、あんないい体をしていて体の使い分けが実に上手だと感心した。仕草はかわいいし、玉が命を懸けて傾城薄雲を守るいじらしさに思わずほろりときて、うっすら涙が滲んだ。海老ぞりが素晴らしかった(五幕目「三浦屋台所の場」)。

★明石の弟子の相撲取り・朝霧の亀三郎さんが軽妙にコミカルな味を出しつつ、相撲取りらしさもちゃんと見せている。
★明石と仁王が争っているところへ行司役の田之助さんが割って入る。田之助さんの相撲好きは有名だし、なんてったって横綱審議委員でもある。その田之助さんが行司役とは嬉しい。田之助さんは最近動きの少ない役が多かったように思うが、今回はそこそこ動きもあるし、セリフもとてもよかった。
★この後、浅葱幕が下りてきたら菊ちゃんの腰にひっかかり、菊ちゃんが手でおろすという小さなハプニングがあった。た。
★菊五郎さんはやっぱり、こういう粋な役(市郎兵衛)がサイコウ!! かっこいいし、華がある。まさに菊五郎さんにぴったりの役だ。
★この芝居には例のごとく、色々な芝居のパロディが鏤められているが、花水橋の袂の場面はまさにあのパロディで、菊五郎さんが亀蔵さん(伴六)を使って、「この道筋をまっすぐ行くと、こんなイヤな色の塀がある」とか、その先へ行くと「こんな電波塔が立っている」とか、料亭までの道を明石に教える。
★時さまは市郎兵衛の女房おすまと傾城薄雲。菊五郎さんとの夫婦役はいつもの通り見ていて微笑ましく安心していられる空気が流れる。傾城薄雲は珍しく松緑さんと恋人役。きれいだったし、妖術でたぶらかされたとはいえ義仲を好きになる女心がなんかかわいかった。
★松緑さんの息子の大河クンが可愛い!! 幡隨長兵衛の倅・長松とか、め組の喧嘩の辰五郎倅・又八とか、そのラインだろう。さかんに客のあたたかい笑いを誘い、大拍手を受けていた。
★四幕目の所作事「旭鞆絵夢浮宝船」は七福神の目出度い踊りだったんだろうに、ほぼお昼寝タイムになってしまった。大ゼリから毘沙門天(義仲)・松緑、弁財天(巴)・時蔵、寿老人・亀三郎、福禄寿・亀寿、布袋・亀蔵、恵比寿・梅枝、大黒天・萬太郎が乗った宝船がセリ上がってくる。寿老人は名前を見なければ亀三郎さんってわからなかった。梅枝クンの恵比寿がかっこいい(恵比寿ってあんなだったっけ?)。亀蔵さんの布袋が見た目もコミカルでちょっと目が離せなかった(寝ていたくせにね)。途中で毘沙門と弁天がそれぞれ下手・上手に引っこんで、最後に宝船に残ったのは5人だけ。宝船が上手へ姿を消すと、毘沙門と弁天は義仲・巴となって再び現れる。
★五幕目の「三浦屋格子先の場」では市郎が伴六に一太刀浴びせると、伴六の衣裳がぱらっと落ち、伴六は一瞬にしてスギちゃんに変身。12月の「御摂勧進帳」ではCOWCOWの当たり前体操をやっていた亀蔵さん、今月は「ワイルドだろ~」。
★彦三郎、萬次郎、権十郎の
3兄弟がそれぞれの持ち味を出していて、出番が短いのが残念であった。
★「三浦屋台所の場」は、大道具小道具を巨大にして、猫(菊之助)と鼠(松緑)の立ち回りを見せる。トムとジェリー? 鼠側には仲間がいっぱいいて(鼠四天なのだ、初めて聞く)、重ねられた大きな台を存分に利用した音羽屋チームの立ち回りは見応えがあった。巨大なとっくり、すり鉢、甕などを使った菊ちゃんのパーカッション演奏も楽しい。三味線のミッキーマウスマーチもオツなもの。

★市郎兵衛が義仲をついに倒す。それは白銀の猫を義仲に向けると、猫の目から赤いビームが発射されてそれが槍となって義仲に刺さるのだが、白銀の猫は遠くから見る限りではややしょぼい。それがそんな強力な力をもっているとは、と驚いた。この時義仲は巨大な鼠の上にいるのだが、鼠も砕けてしまう。
★大詰「鎌倉御所の場」では、左團次さんを中心に、菊五郎・菊之助、松緑・大河、時蔵・梅枝・萬太郎と3組の親子が揃うのが個人的には嬉しい。手拭撒きは私は2階の上のほうだったので飛んでは来ないが、花道から亀三郎さんが2階に向けて投げるのを見て楽しんだ。何しろ、手拭撒き最大の楽しみは亀三郎さんの遠投だから。
★プログラムの「出演者のことば」の写真がモノクロで、あれ?と思ったら、「塩原太助」、「鬼一法眼三略巻」もすでにモノクロなのだった。

簡単に、のつもりが又長くなってしまった。終わり。

<上演時間>序幕・二幕目45分(12001245)、幕間35分、三幕目30分(13201350)、幕間20分、四幕目30分(14101440)、幕間15分、五幕目・大詰70分(14551605


|

« オセローの代替公演は花形歌舞伎 | トップページ | 羽子板の中の歌舞伎 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

SwingingFujisan様の記事、楽しみにしておりました。そしてやっぱり、SwingigFujisan様の記事を読みながら舞台を思い出して、楽しさが蘇ってまいりました。
そういえば、梅枝丈、今回は立役のみ、でしたね。宝船の場面でのおひげがかわいかったです(笑)。
忙中、ご自愛くださいませ。

投稿: はなみずき | 2013年1月11日 (金) 07時28分

はなみずき様
おはようございます。コメントとお気遣いありがとうございます。
期待どおり本当に楽しい舞台でしたね。
菊之助さんが今年も新たな境地を開いてくれそうな予感がします。
その下の、梅枝クンをはじめとする世代の成長も楽しみです。
こうしてはなみずき様とお話ししていると、仕事を忘れて早くまた見たくなってしまいましたわcoldsweats01
はなみずき様もお風邪など召されませぬようお気を付けくださいね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月11日 (金) 10時30分

お初にお目にかかります
歌舞伎模型の爺!!と申します
ブログ読ませていただきました
細かな洞察力にお見それいたしました(笑)
澤瀉歌舞伎が好きなんですが、菊五郎軍団の楽しさいっぱいの底力に思い切り楽しませていただきました
また、記事を読み隅から隅までずぃ~~と蘇ってきました(笑)
儂ゃ~歌舞伎模型でこの舞台の楽しさを表現しております
まだまだ3場面しかできておりませんがお暇な時に見てやってくださいませ(^^;
今後ともよろしゅう御願い奉りま~す

投稿: 爺!! | 2013年1月11日 (金) 12時06分

爺!!様
はじめまして。
はなみずき様のところで爺!!様のお名前は拝見しておりました。こちらへもご訪問くださり、またコメントをありがとうございます。
早速、爺!!様の作品を拝見しました。いやあ、もう「お見事っ!!」という言葉しか出ません。まさに<再現>ですね。楽しませていただきました。ありがとうございます。

菊五郎劇団の初春公演は本当に楽しいですよねえ。私も澤瀉屋の歌舞伎が大好きです(あっちもこっちも好きで、結局選べなくて都内は全座見ることが多いのです)なのですが、やはり1年の幕開けは菊五郎劇団です。

こちらこそ、今後ともご贔屓のほど請い願いあ~げ奉りまする(^-^)

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月11日 (金) 21時22分

おはようございます。
国立劇場は今週見にゆきます。大変楽しみです。
ところで、演舞場の夜の部、木曜日に見てきました。「逆櫓」「七段目」と重い狂言が続いて疲れますが、幸四郎の樋口が、いつもどおり立派です。時代物の諸役の中では、幸四郎に良く合う役柄でしょう。英雄役ですが、小さい子供を持つ若さが感じられます。「逆櫓」という芝居、「千本桜 大物浦」の原型の芝居(二作品の初演は7年違い)と言われますが、構成が本当に良く似ていますね。梅玉が出てくると、途端に大顔合わせ、大歌舞伎になります。梅玉さすがです。
そして「七段目」、吉右衛門(二代目松緑に良く似た明るい闊達さがあります。「いがみの権太」でも感じました。)、芝雀の息の合った名演技につきます。この二人の息の摘んだからみの場面、周りの観客が消え、二人だけの濃密な空間が出現したような気がしました。昼の「ども又」でも同様な感覚でした。吉右衛門の円熟(健康状態も良いのでしょうか)、芝雀の立女形としての腕の上達、今後が期待されます。

投稿: レオン・パパ | 2013年1月12日 (土) 11時42分

レオン・パパ様
こんにちは。コメントありがとうございます。
菊五郎劇団の国立はいつも肩の凝らない、何も考えずに楽しめるお芝居なので初春にぴったりですね。ただ、そういう中にもそれぞれの役者さんの個性や芸のうまさなどが光るので何度も見に行きたくなってしまいます。
演舞場は昼も夜もこれからですが、国立とはまったく違った趣の、確かに重そうな狂言ですね。樋口は私の中では吉右衛門さんなんですが、レオン・パパ様の幸四郎評を拝読して楽しみになりました。
芝雀×吉右衛門コンビは、タイプは違いますがある意味時蔵×菊五郎コンビに通じるものがあるでしょうか。吉右衛門さんも芝雀さんも健康に留意して、ますますの円熟味を見せてほしいですね。

4月からの出費を考え、今月のリピートは国立だけにしました。2月3月の遠征も躊躇中ですwobbly

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月12日 (土) 13時32分

SwingingFujisan様 お久しぶりです(*^_^*)
新年のご挨拶にお伺いもせず失礼致しましたm(_ _)m
今年もよろしくお願いします!

初芝居は国立でしたか!
箇条書きでも詳しく書かれていて、楽しく読ませて頂きました♪
もう!あまりの観たさに、千穐楽のチケットをポチッとしてしまいました(^_^;)
私の初芝居は未定で、4月のヘンリー四世にしようかと思っていましたが、
久しぶりに1月の国立になりました!
寒いと外出が億劫で家に篭りがちになりますが、
好きなもののためなら動けるようです(笑)
先月12月は、仙台で日の浦姫物語と小林賢太郎プロデュース公演を観に行きました。
今年はどんなお芝居に出会えるか、とても楽しみです☆

寒い日が続きますが、ご自愛下さい(*^_^*)

投稿: オレンジスイート | 2013年1月12日 (土) 19時25分

オレンジスイート様
こんばんは。コメントありがとうございます!!
こちらこそ、ご挨拶もせずごめんなさい。今年もよろしくお願いいたします。

オレンジスイート様が千穐楽をポチッとは、なんて嬉しいことでしょう!! 好きなもののためなら動ける--それって、生きていくうえでとっても大事なことだと思います。だから嬉しいんですhappy01
菊之助さんの相撲取り、絶対お気に召されると思いますよ。そしていじらしい猫ちゃんも。ああ、早くオレンジスイート様にご覧になっていただきたいわ~。

日の浦姫は私も見ましたが、最後、母と子が本当に母と子になった時には感動しました。仙台でも色々なお芝居がかかっているようで、被災された方々のお心が少しでも慰められるといいなと思います。

4月の「ヘンリー4世」、私も見に行きますよ~。舞台で初めて見る松坂桃李クンが楽しみです。

今年は歌舞伎座の杮落しもあるし、充実した1年になりそうな予感…オレンジスイート様にとっても充実した1年でありますように。

石巻は寒いでしょう。お体には十分お気を付けくださいね。今日、安倍さんが石巻を訪れたということで、1日も早く復興なることを期待しています。

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月12日 (土) 22時43分

今晩は。今日、国立見てきました。2年ぶりに菊五郎劇団の正月公演、楽しく観劇しました。肩の凝らない初芝居、緩ーい雰囲気ですが悪くはありません。菊五郎劇団恒例の復活狂言、猿之助系の復活狂言とはことなり、意図的にのんびりした感じがします。どの役ももそれぞれの役者にあって違和感がないのも、いつもどおりです。菊五郎の貫録はともかく、菊之助のこれぞ「花形」の諸役の輝きはまさに今だけのものだと(数年後にこの若さの輝きを感じることはひょっとして難しいかもしれません)痛切に感じました。

投稿: レオン・パパ | 2013年1月13日 (日) 21時16分

レオン・パパ様
こんばんは。ご覧になって早速のコメント、ありがとうございます!!
初春の復活狂言は、やはりお正月だからこそみんなに笑ってのんびり楽しんでほしいという意図のようです。見せる側は1から作るようなもので大変だけれど、作り上げていく楽しさもたくさんあるとか。「旭輝黄金鯱」以外は毎回それっきりで終わってしまっていてもったいないので、ぜひ再演してほしいと思っています。
菊之助さん、まさに輝いていましたね!! 年齢は残酷なものですが、今年、年男の菊之助さん、輝けるときに思いっきり輝いて、そして徐々に円熟へと進化していってくれるでしょう。歌舞伎を見始めたのは遅い私ですが、菊之助さんのような華も力もある若手を見ることができるのは幸せだと思います。

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月13日 (日) 22時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« オセローの代替公演は花形歌舞伎 | トップページ | 羽子板の中の歌舞伎 »