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2013年1月21日 (月)

久々の海老蔵オーラ満喫、浅草歌舞伎③:極付幡随長兵衛

118日 新春浅草歌舞伎第1部(浅草公会堂)
「極付幡随長兵衛」
恐らく多くの人が好きではない、あるいは嫌いという演目の最たるものだろう。私もこの演目は嫌いで、仁左様だろうが菊五郎さんだろうが、誰がやったって水野はイヤなヤツであり、たまらない理不尽さに後味悪く、正月からこんなの見せられるのかとガッカリな気分であった。
ところが、である。何がどうしてなのか全然わからないのだけど、意外と面白かったし、理不尽は理不尽、水野は相変わらずイヤなヤツであるにもかかわらず、そんなに後味の悪さを感じなかったのである。
まず、長兵衛が通路から登場して正面を向いた途端、どきっとした。そのカッコよさというかオーラに胸を鷲づかみにされた。こんな長兵衛、見たことない。吉右衛門さんや團十郎さんなら長兵衛という人物の大きさなんだろうが、海老蔵・長兵衛はアウトローの暗い空気を漂わせていて、それがなんとも魅力的(海老ちゃんで「暗闇の丑松」を見たいゾ)。「花川戸の長兵衛と申すケチな野郎でございます」と名乗った時のちょっと人を小バカにしたような目は、侍ヅラして理不尽に威張り腐っている旗本奴を相手にすればそんな目をしたくなるだろう。「芝居を見に来ているうちはこの首はやられねえ」と坂田金左衛門(松之助)に啖呵を切る目は鋭く光り野性的でぞくぞくする。とにかくカッコいいのである。水野宅で手の内を見せろと強制され刀を待つ間の目もよい。目で魅せる長兵衛と言おうか。
そんな長兵衛だから、卑劣な殺され方をしても「花と散った」と見えたのかもしれない。
一方の水野の愛之助さん、水野は水野だけれど妙に爽やかで、海老蔵さんの激しさとはまたちょっと違った味わいの激しさを秘めた人物のように感じた。激しさと激しさがぶつかって、覚悟を決めていた元武士は恨みに燃える現武士の策略を見抜きつつ男の美学を貫いた。
ここでも若い2人にベテランの右之助さん(近藤登之助)、松之助さんが加わることで舞台にコクが出た(そういえば、ラスト、「殺すも惜しい」と水野が長兵衛を讃えると近藤が「え?」と返す。ここで客席から笑いが起こったがなぜ?)
舞台番の新十郎さんもよく透る声で、らしさがあった。
子分の中では松也クン(出尻清兵衛)が一番。人のよさと同時にへこたれない打たれ強さみたいなものをコミカルに表現していた。長兵衛の息子の子役ちゃん(めちゃくちゃ可愛かった)とのコンビネーションもよく、なごんだ。
孝太郎さんのお時が相当よかった。きれいだったし、町奴の親分の女房という雰囲気が出ていて、死にに行く夫の身支度をし、見送る妻もまた覚悟を決めているという芯の強さにけっこう感動した。
唐犬の亀鶴さん、ここでも出番は短いが、長兵衛に後を任される唐犬という人物の大きさが感じられた。
芝居の順序として戻るが、劇中劇「公平法問諍」も面白かった。ここはいつもあまり印象に残らない(邪魔をされた後の劇中劇役者たちは面白いんだけど、劇中劇そのものはよく眠くなった)のに、こんなに面白かったのか。おっとりの吉弥さん(頼義)、橘三郎さん(慢容上人)の滲み出る可笑しさ、市蔵さん(公平)の単純さ、達者なベテランたちの芸を楽しんだ。この芝居って劇中劇だけのものなのかしら。邪魔が入って中断されるこの芝居、全体を通して見てみたいのだけど。
<上演時間>「お年玉ご挨拶」10分(11001110)、「対面」45分(11101155)、幕間25分、「幡随長兵衛」100分(12201400

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コメント

そうですかあ。
毎年正月の浅草は寒くて辛いので、今回はパスする予定だったんですが、考え直そうかしら。
ありがとうございます^^

投稿: urasimaru | 2013年1月21日 (月) 12時22分

urasimaru様
はい、私はそう感じました。海老蔵さんが座頭として神妙に頑張っていると思います。
第2部だったらそんなに寒くないかも。終演も早いですし。「毛谷村」も「勧進帳」もよかったし、口上で睨んでもらったのが嬉しかったです。

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月21日 (月) 19時09分

このお芝居、お好きでない方が多いですが…私は割りと好きなんですよ。確かに後味は良くないですが、見所いっぱいなので!!劇中劇も良いですよね。舞台番の雰囲気も好きです(о´∀`о) 浅草、どちらの部も良かったです!長すぎすちょうど良くて楽しめました(*^^*)

投稿: aki | 2013年1月21日 (月) 23時46分

わたしの知人が、「あれでは喧嘩を止めに出たのではなく、(喧嘩を)買いに出たようだった」といっておりましたが、それには思わず笑ってしまいました
でも、予想していたよりずっと良かったと思います
実際に父親になったことで、子別れも実感が伴っていたように見えました
江戸初期の男伊達(町奴)には、こうした戦国時代の名残りの荒々しさがあったのだろうと思わせる凄みがありました

確かに「書き物」が役に合うので、暗闇の丑松はよいかもしれませんね

投稿: うかれ坊主 | 2013年1月22日 (火) 00時28分

aki様
こんばんは。
まあ、aki様はこのお芝居お好きでしたか。確かに見どころいっぱいで、後味の悪さを除けばそれなりに面白いのですが…。でも、今回初めて私も、このお芝居もしかしたらそんなにイヤじゃないかもと思いました。明治の時代に作られた演目ですが、江戸の人々の気持ちを現代感覚で量ってはいけないのでしょうね。

馴染んできた去年までの浅草歌舞伎とは趣を異にする今年の浅草ですが、見てよかったと思いました。
上演時間もちょうどいいですよね。第2部が終わってもまだ町が動いているし(浅草って意外と早く「夜」になっちゃうんですもの)。

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月22日 (火) 01時02分

うかれ坊主様
はは、ほんと、喧嘩を買いに出たようなものでしたね。長兵衛は吉右衛門さんや團十郎さんから大人物というイメージでしたが、一種ゴロツキである町奴の面が海老蔵さんには現れていましたね。
子別れの場面は私もそう思いました。いい意味で予想を裏切られた長兵衛でした。
丑松、ぜひ海老蔵さんで見たいです。

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月22日 (火) 01時14分

こんにちは。
浅草、一部の三等とりました♪
ありがとうございます。

投稿: urasimaru | 2013年1月22日 (火) 11時21分

urasimaru様
こんばんは。
ぜひぜひ楽しんでいただけますよう!!

投稿: SwingingFujisan | 2013年1月22日 (火) 20時44分

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