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2013年4月18日 (木)

ヘラクレスとともに:ミュージアムラボ「古代ギリシアの名作をめぐって」

412日 古代ギリシアの名作をめぐって――人 神々 英雄(ルーヴルDNP
クラークコレクションからDNPへ。
ミュージアムラボ最終の第10回は古代ギリシアの彫像と仮面と陶器。ちなみに6年前のちょうどこの時期、第2回が古代ギリシアの小像タナグラの展示であった。
彫像「休息するヘラクレス」は、ヘレニズムの彫刻家リュシッボスが制作した現存しないオリジナルの模刻で、BC3AD1世紀の作品とされる。ヘラクレスの象徴である棍棒(ネメアのライオンの皮で覆われている)に寄りかかり、後ろに回した右手にはリンゴを持っているはずであった(現在、リンゴは失われて、ヘラクレスの手にはない)。12の功業を成し遂げた後の疲れ切ったヘラクレスの像である。この作品が見事なのは、12の功業のうち最初(ネメアのライオンを倒した)と最後(ヘスペリデスの園のリンゴを手に入れた)が描かれることによって彼の軌跡がわかること、そしてたいがい戦っている姿で表され、ヘラクレスと言えば勇ましい英雄というイメージの彼にもこういう疲労の「時」があったこと、そしてそれはすなわち12の功業がいかに難行であったかを私たちに思わせることだと思う。と、まあそれはヘラクレスの物語というバックを知るから思えることだけど(美術作品はバックがわかると本当に面白いのだ)。
「赤像式萼(がく)形クラテル」はギリシア陶器の傑作と言われている。クラテルとは葡萄酒を水で割るのに用いられた容器だそうで、この作品BC515BC510年頃のもの。当時の最も優れた陶器画家エウフロニウスが描いたヘラクレスは、ここでは巨人アンタイオスを倒している。徐々に弱っていくアンタイオスの表情、力なくだらりと垂れさがった腕、戦う身体、この時代にこんな見事な表現力をもつ画家がいたことに感銘を受けた。クラテルの反対側には、この戦いとは全く趣を異にした音楽コンクールの模様が描かれているのが面白い。赤像式というのは、図の輪郭を描いたらその外側は黒く塗りつぶし、内側を描線で描くという技法だそうで、そういう方法はスゴいとしか言えない。
「赤像式杯」はエウフロニウスが陶器画家から陶工となって作ったものだそうだ。ポセイドンの息子テセウスの功業が描かれている。
「ディオニュソスの仮面」はBC450BC400年頃のもので、テラコッタ製。顔につけるのではなく吊り下げられていたものらしい。
鑑賞システムでは、「ギリシアの神々を見分ける」コーナーが、子どもの頃に読んだギリシア神話を思い出させて楽しい。タッチパネル上の神の画像に触れると、その神の解説がわかるというもの。
「シュンポジオンへようこそ」は、陶器画に描かれた人々による宴会の中へ私たちも入り込んで、彼らの語り合いなどを聞ける。
「ヘラクレス 描かれた神話」の12の功業を辿るタッチパネルも興味深い。順番通りにタッチしないと、それは順番が違っているというようなメッセージが出てきて、功業と功業がラインで結ばれれば順番通りだとわかる。ヘラクレスが狂気に陥って我が子を手にかけたという話は記憶になかったから驚いた。ギリシア神話の世界はなんと人間的であることか。
13041801dnp 最後は、「男性の裸像 完璧を求めて」。休息するヘラクレスの彫像の隣でアバターとなってヘラクレスの身体を操作し、色々なポーズをさせるお楽しみ体験型システム。バックをいくつかの中から選び、ポーズを取る。バックの選択などはすべて腕の動きで指示をする。慣れないうちはうまくいかなかったが、慣れると面白い。私はハルク・ホーガン風ポーズをしてみたけれど、そのままヘラクレスに反映させるのは難しかった。

ミュージアムラボは第1回からすべての展示を見ているが、ルーヴルからくる作品がどれも素晴らしいものであること、1つの作品をじっくり色々な角度から鑑賞できること、体験型の鑑賞システムが必ず用意されていて作品に対する関心度がさらにアップすること、そして鑑賞システムがその都度進化して、技術の進歩の速さ確かさを実感できたことがこの7年の総括的感想。
なお、2014年から第3期ミュージアムラボが始まるらしい(第1期と2期はどこで分かれていたんだろう)。どういう形に進化していくのか、それも楽しみである。

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