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2013年4月22日 (月)

必見、ラファエロ

417日 ラファエロ展(国立西洋美術館)
13042201raffaello ラファエロは好きとか嫌いとか考えたことはなかったが、誘われたので行ってみた(西美は駅から近いし、ね)。見終わったら、これ必見と思った。
これだけのラファエロが集まった展覧会はそうないとのことで(23点)、かの有名な「大公の聖母」をはじめよく知られた絵画を間近で目にすることが、素描、版画(ラファエロの下絵をもとにしている)等、様々な作品が見られる。「ラファエロと言えば」的な作品が多いが、ラファエロはけっしてそこにとどまる画家ではなかったこともわかる。
ところで、この展覧会がスゴいのは板に描かれた絵が多いことだ。板に描かれた絵というのは輸送が難しいと思われるが、状態も良好、美しいままよくぞ日本へ来てくれたものだ。
展示は時代順に4つの章から成っている。
まずはラファエロと言えばこの自画像、という「自画像」。ラファエロの特徴である長めの首、なで肩をして、優しさが漂う21歳のラファエロである。
Ⅰ 画家への一歩

「父なる神、聖母マリア」は17歳の頃の作品だが、その天才ぶりを遺憾なく発揮して見事である。ラファエロの人物は手の表現がきわめて繊細だが、それはもうこの絵に現れている。神を囲む4人(?)のケルビムがちょっと不気味である。この絵は祭壇画の一部で、1789年地震で建物と共に崩壊してしまった断片なんだそうである。ここに描かれた聖母は同じ祭壇画の別の部分の「天使」と趣を異にしており、天使のほうがラファエロっぽい。
「聖セバスティアヌス」は、三島が好んだような殉教図ではなく、矢を手にしてふっくらと優しい表情をしている。ラファエロの宗教画の多くは教会に飾られるものではなく個人の注文で描かれたものであるため、描かれた聖人や神が生身の人間に近いのだそうである。
Ⅱ フィレンツェのラファエロ
「聖ゲオルギウスと竜」の繊細な躍動感、「大公の聖母」の甘美で優雅な世界、ああラファエロである。「大公の聖母」は、準備素描も展示されているが、素描の段階では画面を楕円形にしようか長方形にしようか迷ったような痕跡がある。聖母自身も油彩のほうは目を下に向けているが、素描では目を上げていて、その違いを見比べるのも興味深い。また、油彩にはもともと背景が描かれていたが、後世の流行りだか何だかで黒く塗りつぶされたそうだ。すごい大胆さだなと呆れるというか、感心するというか…。
「無口な女」はモナリザの影響を受けた作品であるが、私にはやっぱりモナリザのほうが格段にいいと思える。顔の表情など悪くはないのに全体的なバランスから受ける印象のせいなのかなあ。
Ⅲ ローマのラファエロ
ジョルジョ・ギージの版画「アテナイの学堂」はラファエロの原画をエングレーヴィングにしたものである。真ん中のプラトンはダ・ヴィンチ、手前で1人何かを考え込んでいるヘラクレイトスはミケランジェロ。向かって右端にはラファエロ自身も描かれている。哲学者をラファエロと同時代の人物になぞらえているのが面白い。
同じくラファエロの原画をもとにしたエングレーヴィングでマルカントニオ・ライモンディの手になる「パリスの審判」は、右側の3人がまさにマネの「草上の昼食」である(ただし「パリスの審判」では3人とも裸である)。「草上の昼食」のもとになった作品を見られてちょっとテンション上がった。
「ベルナルド・ドヴィーツィ枢機卿の肖像」は良い。それから「友人のいる自画像」もとても良い。こちらを向いているラファエロ、向かって左を見ながら何か言葉を口にしている友人(弟子のジュリオ・ロマーノとされる)。ラファエロは21歳の自画像から35歳になっている。亡くなる2年前である。
この時代のラファエロからは甘美さが消えている感じがする。ラファエロらしい甘美な絵もいいけれど、それが感じられないのが「良い」のかもしれない。フィレンツェ時代の肖像画も人物の内面を描いているのではあろうが、ローマ時代の肖像画のほうが私には何かが感じられてすきである。
「エゼキエルの幻視」はルーベンスを思わせる1枚。というか、ルーベンスのほうが後なのだから。ラファエロがすでにバロックに足を踏み入れていたことに驚いた。
よくぞ、持ってきたという作品が一つ。ラファエロの原寸大下絵による「聖ステパノの殉教」のタペストリーは450×370cmというでか~い織物である。石で打たれる聖ステパノ、石をもつ男たちの太い腕。一見の価値あり。
Ⅳ ラファエロの継承者たち
マルカントニオ・ライモンディのエングレーヴィング「嬰児虐殺」(これもラファエロ原画)を鮮やかな色の皿にしたものがちょっとショック。聖書のお話のひとつだから、向こうではなんでもないことなのかもしれないけれど…。
ジュリオ・ロマーナ「聖家族」、「聖母子」、バルダッサーレ・ペルッツィ「ピエトロ・アッコルティ枢機卿の肖像」等、素人目にもラファエロの影響がみられた。

図録は欲しかったけれどとにかく保管に悩むので買うまいと決めていたら、なんとミニ図録があって、こちらは値段もお手頃(1200円)、詳しい解説はないものの、各章の説明、年表がついていて、ミニサイズでも画集として置いておくのにちょうどいい。即、購入した。小さなセンスのよい紙袋付きなのも嬉しかった。

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コメント

おはようございます。
いろんな美術展を見逃しっぱなしのきびだんごです。
上野も、6日までに東博に行きたいんだけど(チケットがある)、
GW中の旅行も予定してるし、うわぁぁ、という感じです。

こちら「ミニ図録」があるんですねsign03 思わずこれに反応。
かねがね、少し割高でも、ミニ版が欲しいと思ってました。
思わず厚さを測りたくなる充実の図録はもちろんありがたいですが、
持ち帰ることを考えただけでイヤになる軟弱者でして。
最近は余程気に入ったのじゃないと買わなくなりました。
(何かの拍子に昔の図録を見るとまた楽しめるんですが、なかなかね~)

ところで来月、岡山に帰省することになりそうで、
今回は月曜ではないので、大原美術館に行こう!と思ってます。
こんな、故郷でふらっと行きやすい場所にある美術館、っていう存在のありがたみを、
この年になってやっと実感しています。
原田マハ「楽園のカンヴァス」も面白かったです。

投稿: きびだんご | 2013年4月23日 (火) 09時38分

きびだんご様
こんばんは。昨日の朝コメントをいただいたのに、遅くなってごめんなさい。

ミニ図録、どうして今までなかったんでしょうね。美術展の図録はいつの頃からかどんどん立派になって手に重く、財布に重く、ためていると家が沈みそうに重く、というので私も最近はできるだけ買わないようにしています。ミニ図録はヒットですわ~。
もしいらしたらぜひ。
東博は大神社展ですか? 私もこれは見るつもり!! せっかくチケットをお持ちなんですから、ぜひいらしてください。
大原美術館は、私にとっては憧れの場所です。若い頃に1度しか行ったことがないので、きびだんご様が羨ましい。そういえば、ついこの間まで都美でエル・グレコ展をやっていましたね。

「楽園のカンヴァス」は娘が友人から借りて面白かったと言っていました。私もどこかで借りて読みたいと思っています。原田さん、5月26日のNHK日曜美術館で「貴婦人と一角獣」の謎解きに挑戦なさるみたいですよ。このタペスリーも必見です!! 今、都内の美術館にはいい作品がたくさんきていますね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年4月24日 (水) 01時55分

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