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2013年5月20日 (月)

五月歌舞伎座第二部

517日 五月大歌舞伎第二部(歌舞伎座)
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月に張り切り過ぎて、初日・千穐楽を1日通しで見たのがさすがにきつかったから今月は三部とも別の日を取ってはみたけれど、第二部というのはどうにも中途半端な時間で一部にくっつければよかったか、あるいは三部と一緒にすればよかったか、と未だに決めきれないでいる(来月も別々なのだ。8月はどうするか…)。
「伽羅先代萩」
藤十郎さんの政岡はさすがの貫録で、大きい。2人の子どもたちへの愛情が伝わってきた。千松に丁寧に忠義を教えるところでは、教育の重要性・怖さを感じたが、その中に愛情があるからこそ、2人とも空腹に耐え、千松は哀れにも命を失うのだ。政岡の置かれた立場の重大さ、苦しさが胸を打つ。その自分の教えが千松の命を奪うことになるが、それもお家のため、頽れそうになる気持ちと体をぐっと腹に力を入れて堪えている姿は、まさに1人でお家を守る女傑。でありながら、母親の衝撃と悲しみが説明的でなく表現されている。
栄御前のお入りを告げるのは梅丸クン。声変わりの最中なのか、声は少し苦しげであるものの、しっかりと御殿女中を演じていた。こういうちょっとした役にそれなりの存在感を見せたのは大したものである。
栄御前をお迎えすべく、八汐、沖の井、松島が上手襖を開けて入ってくる。千松はすでにこの場にいない。八汐以下3人と政岡、鶴千代は舞台下手で平伏して栄御前を出迎える。栄御前が花道から登場し、二重の上手側で葛桶に腰かける。二重の下手よりでは政岡がしっかり鶴千代を守っている。八汐は平舞台上手に、沖の井、松島は下手に控える。
千松が刺されると、藤十郎さんの政岡は打掛で鶴千代を覆って守るのではなく、素早く鶴千代を上手奥の部屋に押しやる。そして柱に抱きついて鶴千代を守るかのように懐剣に手をやる。一度懐剣の紐がはらりと解け、それを再びきりりと結ぶ。上手にいた栄御前はすっと舞台中央へ移動して、政岡をじっと観察する。沖の井と松島が懐剣に手をかけ、八汐を非難し、政岡をかばう。この一連の動きが舞台に緊張感を与えて見応えがあった。時蔵さんの沖の井が下手に引っこむ時、腑に落ちないものを覚え、きっとした表情で八汐を見据えながら去るのがとてもよかった。扇雀さんの松島も毅然としていてよかった。この2人がこうして下手に引っこむのは鶴千代がすぐに上手の部屋に隠れるのとリンクしていて、藤十郎さんの型らしい。そういえば他の政岡の時には、沖の井が鶴千代を守って二重の上手に引っこむのであったっけ。

梅玉さんの八汐は無表情で、それが冷酷さを表すものだとしても、私にはちょっと物足りない感じがした。
千松(福太郎)も鶴千代(「の~、んば」がかわいい)も子役が上手だった。千松は福太郎になって最初の大きな役だろうか。飯炊きが省略されているから空腹のまま命を落としたことになって、哀れさが増す。
栄御前は本当にマヌケだと思うが、秀太郎さんが演じると風格の中にもかわいいところがあるような気がする。
床下の荒獅子男之助、とにかくカッコよかった。幸四郎さんの仁木弾正はまさにはまり役だと思うが、3回、声を出さずに身体で笑ったのにはちょっとひっかかった。今回の座席は3階一番下手側後列。第一部の3階最前列に比べて、角度的に花道がさらによく見えた。と言ってももちろんせいぜい七三までで、弾正の引っこみは見えない。ここはいつも影で楽しむのだが、今回の影はやや薄いような気がした(場内が意外と明るかったのかしら)。演舞場なら花外、鳥屋前で見たいところ。
「吉田屋」
仁左様ワールド全開である。身勝手でどうしようもないぼんぼんだけれど、憎めない。どころか、その可愛らしさ、愛敬、無垢な心に、このぼんぼんのために何かしてあげたい、何とか役に立ってあげたいとまわりの人に思わせてしまう。ウキウキウキウキ、すねすねすねすね、じゃらじゃらじゃらじゃら、もうその浮き立つような心が微笑ましい。
それに引き換え、玉様の夕霧はどうだろう。伊左衛門の浮き立ちに、むしろ引いているんじゃないかと思うような冷静さ。美しさはため息の出るほど。しかしそれは怜悧な美しさで、アホみたいに舞い上がっている伊左衛門と対照的だ。どことなく陰が感じられて、弾むような喜びが感じられなかったのはなぜだろう。
先月の滝夜叉はあんなに思いが籠っていたのに。玉様は妖怪とかミステリアスなものを持った女性のほうが好きなのかもしれない。
幇間の千之助クンが出色の出来である。間のよさ、表現力、見る者の目を惹きつけて離さない華、うまさがある。これからがますます楽しみだ。
吉田屋主人の彌十郎さん、女房の秀太郎さん、ともに伊左衛門への優しい思い(親のような、しかしそこは商売人という感じもある)が感じられた。
阿波の大尽の秀調さんは、暖簾の中のセリフでなんか一悶着ありそうな予感の中にも本性はお人よしなんだろうなあと思わせた。
手代の寿治郎さんが、上方の廓の空気をたっぷり振りまいてくれて、こういう脇の重要さをここでも見せてくれた。
千松の哀しい最期、重いお芝居の後に、こういう演目を持ってきてくれたおかげで、明るい気持ちになって帰ることができた。
<上演時間>「先代萩」70分(14401550)、幕間20分、「吉田屋」75分(16101725

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
ホント、仁左さま、素敵でしたよね!
素敵だし、芸も素晴らしいし、なんかものすごくかわいいし、
歌舞伎座じゅうが仁左さまの一つ一つにうっとりしちゃいましたもん。。。
四月は舞い上がって、なんだかわけがわからぬまま終わってしまったような気がしますが
團十郎さん、勘三郎さんはじめ、歌舞伎座建て替え中に亡くなられた方たちの
自分の中での存在の大きさみたいなものを感じました。
今月も團十郎さんがいらしたら…と思ってしまいますがweep

でも、こうして大顔合わせ、ていうんですか、
そういうのを見れる幸せも大事にしたいですねconfident

Swingさまも迷われているようですが、
三部制は取り方が微妙ですよね。
続けて見ると頭がパンパンになってしまうし、一部だけだとなんか物足りないですしね。
で、来月は私も初めてバラバラに取ってみました。
どれかニアミスできたら嬉しいですhappy01

投稿: 七子 | 2013年5月21日 (火) 22時25分

七子様
こんばんは。コメントありがとうございます。
河内山のような豪快な悪徳坊主、細川勝元のようなスッキリした二枚目、そしてこの伊左衛門にみる男の可愛らしさ、そのどれもが仁左様なんですもの。本当に素敵な役者さんです。

團十郎さんのこと、同感です!! 大顔合わせであればこそ、勘三郎さんや團十郎さんにもそこにいらしてほしかった。と後ろ向きになってばかりいてもいけないので、七子様がおっしゃるように、幸せだという気持ちでこれからも舞台を見ていきたいと思います。

6月が終わったらひと月おいてまた8月には三部制なんですよね。8月は歌舞伎公演が多いので、できたら1日通しにしたいところですが、4月の経験上、まず無理。ほんと、三部制はどう取ればいいのでしょうね。
来月、もしかしたらニアミスありかもしれませんね~happy01

投稿: SwingingFujisan | 2013年5月22日 (水) 00時37分

こんにちは。

二部、私も行って参りました。大好きな玉之助さんの台詞ではじまってすっごく幸せ。
前の歌舞伎座からのお気に入りの二等席をとったので、栄御前(腰元の芝のぶちゃん♪)や弾正の引っ込みも最後までじっくりと見ることができました。

仁左様の出もしかり。やぱ、あの席いいです!

4月、5月とも一部、二部&三部というとりかたをしたからつぎでした。(一部は終了後に遅めのランチ、二部と三部との間に早めの夕食)

投稿: からつぎ | 2013年5月23日 (木) 19時26分

からつぎ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
そうそう、からつぎ様は玉之助さんを大好きでいらしたんですよね(4年前の「五重塔」の時、玉之助さんについて、この場でからつぎ様とお話しましたっけ)。玉之助さんは本当におっとりと上品でふっくらした優しさがあって、私も大好きです。
「吉田屋」では仁左様を堪能なさいましたか。まさに仁左様の魅力が歌舞伎座中に満ち満ちていましたね。
二等席、今度私も狙ってみようと思います。

3部制の場合は、からつぎ様のように一部、二部・三部というのが行きやすいのかもしれませんね。8月はその方向で考えてみます。

投稿: SwingingFujisan | 2013年5月23日 (木) 21時41分

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