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2013年5月30日 (木)

歌舞伎を堪能した五月千穐楽

529日 五月大歌舞伎千穐楽第三部(歌舞伎座)
「石切梶原」約1時間20分、「二人道成寺」約1時間10分、歌舞伎を堪能した。
面白かった!! 出かける前まで体調不良の影響が残っていてちょっと不安であったが、歌舞伎が終わったらすっかり元気になっちゃったみたい。
「梶原平三誉石切」
去年12月、團十郎さん最後の役であった梶原を見てから5カ月、又梶原?と思いながらも、見れば面白い。この芝居がだんだん好きになってきた。
吉右衛門さんの梶原は明るく大きくて、カッコいい。ヒーローだと思った。刀をあらためる際、左膝に立てて鞘を上に抜いていく。しばし眺めた後、左の袖に横にして、刀身を返してしっかり見入る。その仕草が実にカッコいいのである。
二つ胴はすぱっと斬るのではなく、六郎太夫の縄目に当たるまでじりじりと気をつけて刀を入れていく。すぱっと斬ったほうが見栄えはいいが、芝居としての一貫性があって納得がいく。
大庭たちが去った後、望みが断たれて絶望し自害すると言い出す六郎太夫(歌六)、必死で止める梢(芝雀)、大庭たちが十分遠くへ離れたかどうかを見やりながら、手ぶりで「待て待て」と抑える梶原。大庭たちとの距離への心配、六郎太夫への心配り、吉右衛門さんの間合いがいい。
面白かったのは、手水鉢を斬る時に、まだ事情がわかっていない六郎太夫と梢の手を引いて手水鉢の前へ連れ出し、六郎太夫と梢の位置を定める場面。これから始まるショーを一番見やすい位置に導いているのかと思ったら、手水鉢の水面に映る親子の姿を二つ胴に見立てるために測っていたようだ。なるほど。ちょっとユーモラスで温かい空気が漂い、3人の「沼津」を思い出させて、播磨屋の座組みの味に酔った。
手水鉢を切るのは、正面を向いて切る團十郎さんとは違って後ろ向きになり、切り口に紫色(?)の布を置いていた。切った直後は何事も起こらず、23秒してから少しずつ手水鉢が真ん中から2つに分かれ、どうと倒れる。二つ胴と同じく派手さはないが、ドラマチック。
配役発表で菊五郎さんが大庭と知って、へ~とびっくりしたが、大庭という大名の格の高さを強く感じさせて、さすがの大きさである。こういうストーリーではつい善悪の図式を立てがちな私だが、大庭は敵役ではあっても悪役では決してない。梶原折り紙つきの名刀であるからちゃんと言い値(300両)で買うつもりで金を渡しかけているし、試し斬りを弟・俣野が提案した時にも誰を斬るかについて慎重な態度を見せるし。そんな風に好意的に見ているうちに、もしかしたら梶原の企みを見抜いているんじゃないかなんてとんでもないことを想像したのは(ありえないありえない)、菊五郎→富樫の印象からか。
又五郎さんの俣野は好きだ。やんちゃで、試し斬りで出しゃばって梶原に叱られる時など愛敬もあり、敵役としての「べりべりと」した調子が敵役であっても心地よいのは、演技の行儀が良いからだろう。
彌十郎さんの剣菱呑助は身体が大きいだけに、ひときわ哀れ。でもあんなデッカい身体が乗せられたら小柄な歌六さんはつぶされそう(実際に乗せられる吞助は人形だから)。

歌六さんと芝雀さん、「沼津」の時には明らかに父娘だったが、ここでは時々、「あれ、夫婦だったっけ」という錯覚に陥ることが時々あった。父娘の間に通う情愛の深さは切ないが、沼津と違ってハッピーエンドなのがこの芝居の気持ちよさを倍加した。

「二人道成寺」
玉三郎さんはやはり「ただ者でない女」が好きなのだ。
菊之助さんの輝くような花子、玉三郎さんの時に陰になり時に光を放つ花子、夢の世界だった。
玉三郎さんの身体は自然に踊りに馴染んでいる。自然に動いている。もう玉三郎さんがリードして菊之助さんがそれについていくという印象はなく、また菊之助さんにとくに不自然さを覚えるわけではないのだが、見比べると玉三郎さんの自然さには敵っていないような気がした。玉三郎さんが花子を踊っているのではなく、玉三郎さんの中に花子がいる、そう思った。若い身体を必要とするであろう動きは、無理しないで菊之助さんに任せている。その点だけを取り上げれば、玉三郎さんの衰えを感じないわけにはいかないが、それを補って余りあるだけの自然な動きに私は魅了された。
「恋の手習」は玉三郎さんがしっとりと踊り、菊之助さんがそこに加わる。
玉三郎さんがしばしば見せるちょっと険しい表情はドキドキするほど魅力的(この顔、大好き)。それに対し、ふっくらと優しい顔つきながら無表情に近い菊之助さんが好対照で、2人で1人、1人で2人、鐘への恨みの表裏が見えるようだった。
2人で1人、1人で2人――玉三郎さんと菊之助さんが頬と頬を寄せ、胸と胸を寄せ…姉妹のようにも見えるが、なんという妖しい美しさ。圧倒される。2人に男性性は一切感じない、それでも花子を演じているのは玉三郎と菊之助という男性である。それが不思議でならない…。
所化では断然、梅丸クンから目が離せなかった。上品なかわいらしさは群を抜いている。
舞尽くしは虎之介くん。最年少ということで、みんながにやにやしながら見守っていたのが微笑ましかった。虎ちゃん、顔を舞台中央に向けて花子の舞を熱心に見つめていた。
手拭撒きは3階だから客観的に眺めた。遠投の亀三郎さんが今月は南座でこちらにいないのが残念(2階東桟敷席にはたくさん飛んで、盛り上がっていた)。
<上演時間>「石切梶原」79分(18001919)、幕間30分、「二人道成寺」68分(19492057

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