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2013年7月 9日 (火)

7月歌舞伎鑑賞教室

77日 歌舞伎鑑賞教室「芦屋道満大内鑑」(国立劇場大劇場)
13070901kurogo 私にとって歌舞伎鑑賞教室では2度目となる葛の葉。前回は20083月、芝雀さんの葛の葉に対し、種太郎(現・歌昇)の保名という、今思えば同じ一座で活躍する2人だが、種太郎クンは当時十代、ちょっと衝撃的な夫婦であった。
さて、まずは「歌舞伎のみかた」から。
萬太郎クン初の解説は、国立劇場のマスコット「くろごちゃん」とのコンビで。声も滑舌もよく、ゆっくり喋ることを心がけているようで、とてもわかりやすかった(ナレーション向きかも。BSは歌舞伎役者がよくナレーションやってるから、いつかぜひ。それから邦楽ジョッキーなんかもいいかも)。7日は大人の客が多かったが、高校生が多いと反応をみて、多少話し方を変えるらしい。
下手からくろごちゃんが登場し、「歌舞伎のことを教えてくれるお友達を紹介しま~す。萬太郎さ~~ん」と呼ぶと、場内は暗くなり、花道を1匹の白狐が駈けてきてスッポンへ消える。すると今度は浅葱色の着付に細縞の袴をつけた萬太郎クンがスッポンから現れる。
そして早速花道の説明。花道は道にもなり川にもなり空にもなるが、今回は田舎の道である。揚幕のチャリンで人物が出る(実際にチャリンと音をさせ、揚幕を開けてみせた)。
そして定式幕、盆(直径20mはやっぱり大きい!!と毎度ながら感嘆する)、セリ(これが上下すると客席はどよめく)、上手・下手の説明。
上手・床に義太夫が現れ、義太夫は情景などを語るということで「所も阿倍野の芦垣や、間近き住吉天王寺」を演奏。さらには、義太夫は人物の気持ちも語るので、萬太郎クンが義太夫に合わせてミニ演技。
驚き:義太夫「見てびっくり」
笑い:義太夫「こりゃ愉快だと大笑い」
大きな拍手が起こって萬太郎クンがテレるのがかわいい。
次は下手黒御簾の中のBGM。萬太郎クンが狐手をして見せる(ここでは触れなかったが、狐の手は上向きではなく下向きに、しかしユーレイにならないように指をしっかり曲げるのだとか)。
そうこうしているうちに、くろごちゃんが歌舞伎の小道具、それも動物を持ってくる。鯉(まな板の下の紐を引っ張ると、上で鯉がはねる)、猿の操り人形(「近頃河原達引」とか「権三と助十」とかで見る。萬太郎クン、糸が絡まってると言って扱いにくそうだったのが笑いを呼んだ)、鶏(「道明寺」が一番有名か。コケコッコーと鳴かせて、はばたかせて見せてくれた)。ただ、この小道具紹介はそれだけのことで、何に使われているという解説もなく、次の差し金の先の鼠を操る黒衣の説明のために出しただけのような感じで、中途半端。なくてもよかったのではないだろうか。
黒は歌舞伎では見えないということになっている。差し金はくろごちゃんもできるようにならなくちゃと萬太郎クン、「いつやるの。いまでしょ」はちょっとスベってたかな。くろごちゃんは見習いだからと躊躇い、本物の黒衣さんが鼠を巧みに操って見せた。
演目の説明。くろごちゃんがタイムマシンで1100年前の世界へ飛ぶ(葛の葉は1100年前のお話かぁと、数字を出されるとちょっと驚いた)。紙芝居ならぬスクリーン芝居で保名と葛の葉が夫婦になるまでの物語が紹介された。イラストがかわいいし、声もよかったし、面白かった。
最後は萬太郎クンが狐手でくろごちゃんを操り、スッポンへと消える。そして最初とは逆にスッポンから白狐が飛び出してきて、花道揚幕に消えた。
先月とはまったく違って、定石通りの解説ではあったが、初心者にはわかりやすいと思われる丁寧な語りで好感がもてた。
「葛の葉」
贔屓の役者さんが演じるのを見ると力が入るせいか、この役がとても難しいのだということがわかる。狐という異世界の生き物と人間の女性、この2つの間を行き来すること。母親の子に対する愛情と夫への情。狐の振りに関連したさまざまなケレン。そういうものを全部1つの役としてこなし、さらには葛の葉姫という似て非なる人間の姫を2役で演じるのは初役ゆえの難しさだっただろうか。
全体にあっさり系の持ち味なのでやや物足りなさはあるものの、泥だらけになって帰ってきた我が子に対する仕草は、この時はまだ別れがくるものとは知らないのであればこそ普段からの愛情が切ないほどにつよく伝わってきて、その後の展開を思うとすでに哀れさが心の中に催してくる。そして奥座敷での「ああ恥ずかしや、浅ましや」の嘆きには心揺さぶられた。藤十郎さんや芝雀さんがどうだったか覚えていないが、時蔵さんの葛の葉は、夫への思いよりも子供への思いが強いように見えた。
葛の葉姫は正直、ちょっときびしいものがあるかなあと思ったのは、時蔵さんの大らかさがこの姫の困惑には合わないような気がしたから。しかし早替わりは技術の点だけでなく、違う人物を演じるという点でも鮮やかで、その大らかさが葛の葉では気にならず、ただただ寂しげな風情が胸を打った。また、曲書きも見事で(あれって、文字の並びに決まりがあるわけではないみたい)、とくに筆を口に加えて書いた「葛の葉」の文字はとても好き。

「道行」は初めて見た、と思う(これまでの記憶にない)。宗之助・萬太郎との立ち回りなど、明るくて楽しかった。こういうアクティブな女形は演じるほうも楽しいんじゃないかな。
葛の葉があっさり系の時蔵さんなら保名もあっさり系の秀調さん。秀調さんは好きな役者さんの1人だが、全体にセリフに力がなかったせいか、葛の葉が2人いることに対する驚き、葛の葉恋しの思いが強く感じられなかったのが残念。
葛の葉姫の父・信田庄司の家橘さんと母・柵の右之助さんがとてもよかった。家橘さんには家族を思うあたたかさと武士としての気骨が自然に滲み出ていたし、右之助さんも位の高い人の奥方らしい品格の中に母親らしさが感じられた。

13070902mist 多分もう無理とは思うが、学生中心の平日にもう一度見たいな(こんなに暑くなければ気力でスケジュールをカバーするんだけど:ミストが涼しげではあったが、それでも暑い)。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」25分(14301455)、幕間20分、「葛の葉」70分(15151625

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