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2013年7月

2013年7月31日 (水)

これだから歌舞伎はやめられない:巡業中央コース

729日 松竹大歌舞伎巡業中央コース(越谷サンシティホール)
ほぼ満席の状況にちょっとびっくり。今年は東コースも大入り続きらしく、歌舞伎があちこちで待たれているのはうれしい。そして私はやっぱり歌舞伎が好きだ、やめられないと強く思った。
「番町皿屋敷」
青山播磨というと、私の中では梅玉さんだろうか。吉右衛門さんの播磨はどうなんだろう…とやや危惧はあったが、それはすぐさま吹き飛んだ。吉右衛門さんがとても若々しくて素敵だったんだもの。麹町山王下の町奴との喧嘩の場面は周囲が騒がしくて(始まってるのに、あちこちから話し声が聞こえる。それもかなり長い間。そういうのも含めて巡業なのかもねえ)、セリフがよく聞き取れないこともあり、ちょっとノリ損ねたが、青山家の場はぐいぐいと展開に引き込まれていった。
芝雀さんのお菊が女心を余すところなく見せていて感心した。殿さまの愛情を信じたくはあっても、身分が違うゆえの不安が一抹の疑いとなってお菊に皿を割らせる。青山播磨から見れば浅はかとしか言いようがないのだろうし、お菊にしても播磨の真情を知れば愚かなことをしたと悔いたかもしれない。しかし、あの時のお菊を浅はかだ愚かだとは責められない、そう思わせる心の揺れが細やかな演技の中に感じられたのだ。
吉右衛門さんの播磨は、お菊が皿を割ってしまったと聞いてもそれが粗相である限り、お菊へ向ける目は限りなくやさしい。お菊といっしょにいる時間の心の穏やかさ、あたたかさ、幸せ感がやさしくお菊を包んでいて、こちらまで幸せになる。吉右衛門という大きな役者の演じる播磨の中に、「小さな幸せ」を感じる。でも、こちらは真実を知っている。この先の展開もわかっている。それなのに、どきどきはらはらして2人を見守る。
吉右衛門さんの播磨は、真実を知ってとても悲しそうだった。悲しみがまず播磨を襲い、やがて悔しさ、怒りが込み上げてくる。播磨のセリフには真情が籠っていて胸に迫った。いくら愛していても、いや愛しているからこそ斬らねばならぬ。奴権次(吉之助)が必死で止めたってダメなのだ。あの時の吉右衛門さん、ステキだった。
男の真の愛情を知り、満足して死んでいく女は幸せかもしれない。朋輩のお仙が見ていなかったら粗相ですんだだろう。でもお菊は一生、自らのしたことを心の奥に抱えて苦しんだに違いない。そういう意味でも、ここで死んでいくお菊は幸せなんだと思った。いっぽうで、一生の恋を失った男はこれからどうやって生きて行くのだろう。その答えがラストの喧嘩に飛び出していく姿であるわけだ。悲しい話だ。
そういう感動に反して余計なことだが、吉右衛門さんに押さえつけられている間、芝雀さんは頭を舞台につけずに横になっている。かなり苦しい体勢だろうに、長時間そうやっているのは筋力あるなあ。歌舞伎の場合、横になったり仰向けになる時頭をつけないことが多いように思う。だからいつも、役者さんの筋力に感心していたのだ。
「口上」
下手から歌六、種之助、歌昇、又五郎、吉右衛門、錦之助、隼人、米吉、芝雀と並んでいる。芝雀さんだけ女形の扮装。
吉右衛門:このたび中村歌昇が三代目として中村又五郎を襲名した。隣に控えているのは又五郎さんの長男種太郎であるが、父の前名を四代目として襲名した。又五郎、歌昇は播磨屋にとって大事な名前。又五郎が復活したのは私としても嬉しい。末永くご贔屓お引き立てを。
錦之助:親戚の1人として襲名は嬉しい。ここに列座するものみな、吉右衛門さんの親戚(客席笑)。今後とも三代目又五郎さん、四代目歌昇さんをご贔屓お引き立てよろしく。
隼人:親戚の1人としてこんな嬉しいことはない。心よりお祝い申し上げる。
米吉:叔父にあたる又五郎、従兄の歌昇の襲名は親族の1人として嬉しい。私も精いっぱい精進する。
芝雀:襲名、お喜び申し上げる。又五郎さんとは同い年なので親しくしている。歌昇さんとは播磨屋の舞台でご一緒している。真面目な好青年である。
歌六:弟又五郎、甥歌昇の襲名披露を演舞場を皮切りに名古屋、京都、金丸座、大阪と行い、このたびご当地でご披露する。亡くなった先代又五郎さんは大変お世話になった大恩人である。吉右衛門さんのおかげで弟がその名を名乗るのはありがたい。
種之助:父又五郎、兄歌昇の襲名披露に列座させていただくのは諸先輩、皆様方のおかげです。
歌昇:襲名はこの上ない喜び。なおいっそう芸道に精進する。
又五郎:当地にて三代目又五郎の襲名ご披露をさせていただく運びとなった。松竹、関係者、吉右衛門さん、諸先輩方のおかげである。芸道に精進する。
吉右衛門:連獅子の紹介をして、「親獅子は又五郎さん、仔獅子は歌昇さん、間狂言は種太郎さんと米吉さん、親子兄弟親類での狂言です」。
確かに言われてみれば、親族で固められた巡業で、出演者が「親族、親類」を強調するたびに客席からは暖かい笑いが湧いていた。
ずっと1人で播磨屋を守ってきた吉右衛門さんがどんなに嬉しいかと思って胸が熱くなった。皿屋敷の時はわからなかったが口上の吉右衛門さん、少し痩せたように見えた。

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2013年7月30日 (火)

2度見たって引き込まれた「四谷怪談」

728日 七月花形歌舞伎千穐楽夜の部(歌舞伎座)
13073001sensyuraku 何度も見ている「東海道四谷怪談」だし、今月2度目だし、それでもやっぱり面白かった。ぐいぐい引き込まれた。感想は初見の時とほとんど変わらない。なので、初見の感想と一部重なるところはあるかもしれないが、一応今回新たに思ったことを中心に。
私は人がいじめられるのは嫌いだ、見たくない。お岩さんが伊右衛門にDVを受ける場面もとても嫌だった。ところが今回はなぜかそう思わなかった。あまりのひどさに身体を硬直させながら、それでも見るのはイヤではなかった。不思議なことにお岩さんを哀れと思う気持ちもほとんど湧いてこなかった。哀れというのは自分がお岩さんを客観的に見ているから湧いてくる感情かもしれない。今回は伊右衛門のDVを受けるみじめさも、毒薬と知らずに伊藤家に向かってあんなに感謝した自分が恥ずかしいと身をよじるお岩さんの悔しさと怒りも自分のものとして閉じ込め、お岩さんと一緒に爆発させたんだと思う。
蛍狩の場はとても美しかったが、伊右衛門がお岩さんにした仕打ちを悔いているように思えて、それはそれでお岩さんのためにちょっと慰められる気はしないでもないけれど、伊右衛門側のストーリーとしては残念な気がした。伊右衛門には徹底的に残忍酷薄でいてほしいのだもの。
伊藤家は狂っている。冷徹に狂っている。その狂気が伊右衛門の狂気と呼応したのだと思った。はじめ歯牙にもかけなかったお梅の恋慕をああいう形で受け入れたのは伊右衛門の残忍酷薄の奥に伊藤家の狂気に通じるものがあったのではないだろうか。
菊之助さんのお岩はきれいだった。顔の半分が醜くふくれてもきれいだった。しかし鉄漿を塗り始めてから顔が変わってきた。怖かった。それは外見的な怖さというよりも鉄漿を塗っているうちにお岩さんにも狂気が宿ったような気がしたからだと思う(何もかも狂気で片付けるつもりは全然ないのよ)。
登場人物の性格、生き方を色々考えさせられるのは、それだけ役者がその人物になっているからだろう。
それにしてもひどいと思うのは、伊藤家の誰もお岩さんにした行為を悔いていないことだ。お梅の母(萬次郎)も乳母(歌女之丞:デキる秘書みたいな感じで面白かった)も伊右衛門憎しであって、お岩さんのことはまったく頭にない。もちろん、伊右衛門がお梅(右近)と伊藤喜兵衛(團蔵)を殺した理由は知らないから伊右衛門を恨むだけしかないのは理屈かもしれないけれど、自分たちがしたことの報いだってちょっとくらいは思ってもいいんじゃないかなあ。
市蔵さんの宅悦が秀逸だった。弱い立場で直接非難はできなくても伊右衛門がひどい人だということはわかっている。お岩さんに同情を寄せつつ、でも怖い。怖いけれど気の毒でならない。宅悦はある意味観客の気持ちを代表しているのではないだろうか。
「四谷怪談」にはやっぱり三角屋敷が必要だと、あらためて思った。これがないと直助権兵衛の存在が中途半端に感じられる。そして、凡人が覗き込むことができないほど深い「四谷怪談」の世界には三角屋敷がほしい。
ラスト、与茂七(菊ちゃんの立役も本当にステキ)が伊右衛門に一太刀浴びせたところで「本日はこれぎり」になるのだが、千穐楽は染五郎さんが「千穐楽までかく賑々しくお集まりいただき」とお礼を述べ、「歌舞伎座が新しくなってから初めての花形歌舞伎である」「松緑さん、愛之助さん、菊之助さん、みんな歌舞伎を支える力になる覚悟でいる」というようなことを語って、菊ちゃんと2人で「まず当月はこれぎり~」。
前日の疲れが取れずに、よほどパスしようかとも迷ったのであったが、やっぱりそれはできない。途中で頭痛薬をのみ最後まで見ることができてよかった。
追記:そうそう、ちょっと面白いと思ったのは、伊右衛門が傘張りしていたこと。あの伊右衛門にして、一応、仕事をしようという気持ちはあったのか、ってね。

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2013年7月29日 (月)

明治座11月花形歌舞伎

七子様からいただいた情報で、明治座11月の公演詳細を知りました→演目と配役はココ
澤瀉屋と獅童さん、松也クン、門之助さん、秀太郎さんの一座。
2年前に日本青年館に見に行った「瞼の母」が再び獅童×秀太郎でかかる。

獅童×松也の「権三と助十」にもわくわく。おかんが笑也さんだってhappy02
他の演目も
楽しみ楽しみsign03
重い刃傷の歌舞伎座に対し、明治座の人情に泣いたり笑ったりさせてもらおう。

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2013年7月27日 (土)

雷雨で締めくくった今年の祭り

今日は朝から恒例、町会のお祭りで焼きそば屋さん。
年々こっちも年を取るから体力的にきつい。
それでも何とか、最後の焼きそばをパックにつめたところで、なんと雷雨。
あっという間の土砂降りで、風通しのいいテントの頭上にたまった雨を男の人がつっついて流すのだけど、外に流れずそのまま下にドシャっと落ちてきてずぶ濡れ。昼間は汗で暑かったのに、夜は雨で寒いくらい。
売上計算も片付けも男性に任せて女性は雷の合間を縫って帰宅。
それでも何とか無事にお祭りを終えることができてよかった。朝から降ったら明日に延期という予定だったけど、明日だったらお手伝いできなかったし。

とにかくめちゃくちゃ疲れたので今日はもう引き上げます。
コメントをくださった方、ごめんなさい。お返事は明日、ということでお許しください。

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2013年7月26日 (金)

歌舞伎座10・11・12月公演発表

10月、11月、12月と一気に歌舞伎座のラインナップが発表になった。
10月は「義経千本桜」→ココ
11月と12月は「仮名手本忠臣蔵」→ココココ

11月と12月が同じ演目なので見間違えたかと思ったら、11月は大御所たちで、12月は幸四郎・玉三郎・三津五郎に若手をぶつけてという配役になっていた。
楽しみではありますが、正直、3カ月間重い気も…。体力つけておこう。

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2013年7月25日 (木)

2人のプリンスの魅力に酔う:「二都物語」

724日 「二都物語」(帝国劇場)
なんとお恥ずかしいことに、帝国劇場で芝居を見るのは初めて。私にとっての帝劇の思い出は芝居ではなく映画館だったのだ、ずっと。でも帝劇で見た映画は「チコと鮫」くらいらしい。「チコと鮫」を知っている人もほとんどいないだろうが、帝劇が映画館だったことがあることを知っている人も今はあまりいないだろうなあ。
そして「二都物語」のようなタイプの日本のミュージカルを見るのも多分初めて。昔はミュージカル映画が大好きだったけれど、日本人が外国人役をやるミュージカルはなんとなく喰わず嫌いでいたのだ。少しずつ日本のミュージカルを見るようになって、ついにここにたどり着いた感じ。見てよかった!! 演目にもよるだろうけれど、ミュージカルにはまる人の気持ちがわかるような気がした。
「二都物語」はこれも恥ずかしながら原作を読んでいない。だからほとんど予備知識なしで見た。
もともと「二都物語」を見たいと思ったのは大好きな浦井健治クンが出るから。ところが、だ。私はこの芝居で井上芳雄クンの魅力にすっかり捉われてしまった。「組曲 虐殺」での井上クンはとても魅力的だった。でも私は井上クンの魅力を半分もわかっていなかった、とシドニー・カートンを見て初めてわかった。時にその魅力は浦井超えをしそうなくらい。
一つにはシドニー・カートンという役によるところが大きい、と言えるかもしれない。でも、酒びたりで自堕落で生きることに意味を見出していないカートンを野太い声で演じながら、その中にはたしかにプリンス井上の繊細でやさしい神経が垣間見える。カートンは本来そういう人間であったのに、何かのきっかけで生きることの喜びも目的も見失ってしまった、そう想像させられる。彼がチャールズの身替りになったのは崇高な自己犠牲の精神ではなく、ルーシーへの愛によって生きることの意味を見出した結果なのだと思う。カートンのルーシーへの愛は形としては実らなかったけれど、チャールズとルーシーの娘である小さなルーシーになつかれ、触れあっているうちに彼は生きていることの喜びをかみしめていたであろう。カートンの決意は愛するルーシーを不幸にしたくないからというよりは、小さなルーシーからパパを奪ってはいけないという切羽詰った思いからではなかっただろうか。それはママ・ルーシーの幸せを守ることでもあるわけだから、結局はルーシーへの愛に回帰するのだろうけれど。ギロチンは彼にとって生きる喜びの頂点だったのかもしれない。貴族の館で雇われていたというだけでギロチンにかけられるお針子の手をカートンが握りしめている間、私も自分の手を強く握りしめていた。
そういうカートンという人間像を太く繊細に歌い上げる井上クンに心が震えた。男気のカッコよさ(カートン自身はそんなこと意識していないだろう)、恋する男のピュアさ、愛する人の幸せを願う真実、カートン役は井上クンにぴったりで、演技と歌とすべてに魅惑された。秋にはこまつ座の「イーハトーボの劇列車」に出演予定。楽しみだ。
さて、いっぽうの浦井クン。井上クンの魅力が浦井超えしそうだと言いながら、浦井クンの魅力は初めて見たチャーリー・ゴードン(「アルジャーノンに花束を」)以来右肩上がりlovely 今回のチャールズ・ダーニーは貴族らしい品の良さに加えて清く正しく真っ直ぐ、真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐに突っ走るキャラは浦井クンにぴったり。役どころとしてはカートンに比べやや損をしている気もしないではないが、そこは浦井クンの人間としての可愛らしさを伴ったピュアさが、この人を支えてあげたいという周囲の心を引っ張り出すのである。心ならずも残忍冷酷なサン・テヴレモンド公爵を叔父にもち、それとは知らずに叔父を敵とするドクター・マネットの娘ルーシーと恋におち、結婚する。後に彼は自分の出自をドクターに打ち明けようとしたが、ドクターは聞く必要はないと耳を貸さず、さらにはその出自ゆえに命のピンチに陥ったチャールズを救おうとさえする。サン・テヴレモンドの一族を皆殺しにしてやるとかつて書き綴ったドクターの気持ちを180度変えてしまえる男、そして恋敵として憎まれることなくむしろ愛される男(カートンは多分、チャールズのことも愛していたに違いない)は、こちらもプリンス浦井クン以外にいない。久々にときめいちゃったheart04

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2013年7月24日 (水)

顔面激突

今朝、ふと目が覚め、外が明るかったので時間も確かめず起きようとベッドから下り12歩あるいたら、床に置いてあったバッグの持ち手に足がひっかかり、たたらを踏んでそのまま飛んでった先が柱の角。左顔面激突。
事態のショックと痛みのためベッドに倒れ込み、しばらくして時計を見るとまだ5時過ぎ。無理して起きることなかった…。
左頬がじんじんしている。鏡を見たら腫れてきている。そうだ、と保冷剤をタオルに包んで頬に当てた。うとうとしながら二度寝。頬の痛みは薄らいだし、腫れも大したことなくなったような気がする。
ところが、顔を洗おうと左頬に手を当てたら痛くて飛び上がった。マスクをかけたらちょうど上端にあたるところに内出血もしている。さほど目立たなかった涙袋の下の腫れは、時間が経つにつれ青くふくらんできた。頭はぶつけてないけど、脳みそが激しく揺さぶられた気がするから大丈夫かなあ。
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8年前、自宅の廊下ですべって激しく転倒し、やっぱり顔面を床に激突させ、右頬が激しく腫れて右目の下が骨折していたということがあった(今回も又骨折していたらシャレにならないね)。あの時はなぜすべったか理由が未だにわからない。今回は動線に物を置かないように、ということを忘れていた自分に原因がある(去年の9月に右足小指を骨折した時の教訓が生きていない)。
なんか、ガックリしているうちに4年前の父を思い出した。早朝、夢うつつに唸り声とともに「弱ったな、困ったな」という細い声が聞こえる。しばらく放置しておいたがいつまでも声がやまないので仕方なく隣の父の寝室を見に行くと、畳の上に腰を落した父がいて、その周囲は血の海。事の重大さにいっぺんに目が覚めた。高齢の父はトイレに行こうとしてバランスを崩し、ひっくり返ってその際に手の甲を大きく切ったのだった(皮膚が薄くなっていて、怪我しやすい)。日曜日だったので当番医を探して傷を縫ってもらい、無事に回復もしたのだけど、あの時父は眠っている私を起こすのを遠慮して大声で呼ばなかったのだ。そんな思い出に私は又後悔の海に放り出されるのだ。時間を戻したいよ。

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2013年7月23日 (火)

心底楽しめた澤瀉屋の巡業③:「川連法眼館」

721日 松竹大歌舞伎巡業東コース(北とぴあ)
口上が終わると定式幕が引かれ始め、それに伴い襲名の祝幕が隠れ始めた。ところが、定式幕が4分の1くらい引かれたところで祝幕と定式幕の間がちらっとあいて、大道具さんたちが働く舞台が少し見えてしまった。座席に残っていた客がおお、という感じでどよめく。すると、定式幕が引き戻され、再び祝幕が姿を現した。ところが(再び、ところが、です)今度は下手のほうがかなりあいてしまい、又舞台の一部があらわに。こちらとしてはちょっと得した気分。もちろん、その後すぐに祝幕がきちんと舞台を覆ったけれど。演舞場では祝幕を見られる時間が短かったから、こうやって口上前後の幕間にかけられていたのは嬉しい。
「川連法眼館」
「四の切」は去年の6月猿之助襲名公演(演舞場)と引き続き7月音羽屋巡業で見て以来か。
法眼(寿猿)と飛鳥(猿紫)夫妻は板付き。年の差50歳のなんとフレッシュな夫婦であることよ。違和感なかったなあ。
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人目の忠信到着を告げる侍はなんと欣弥さん。贅沢な配役だ。
梅玉さんの義経が登場すると、なんか空気が変わったような気がした。まさに義経の品格、風格のなせる業だ。義経はあまり感情を露わにしない役だと思うが、「だまれ忠信」のあたりではかなり強い怒りが感じられた。まだ本当のことを知る前だから、信頼していた家来に裏切られて許せない思いと静への愛情が爆発したようだった。
門之助さんの静御前が素晴らしくよかった。義経に会えた嬉しさの中に、これまで会えなくて辛かった、切なかった、という気持ちを全身で表していたし、狐の話を聞いている時の表情が豊かなのだ。慈愛に溢れた表情は、狐への憐れみというよりは、狐と一緒になって悲しんでいる。義経が鼓を狐に与えた時には狐と一緒になって喜んでいる。本当に狐を愛おしそうに見ている。この静がいればこそ、狐の思いが観客によく伝わるというものだ、と思った。
花道のある劇場と違って、「出があるよ」の声はすぐ近くで聞こえたから(座席が前方だった)、反射的に袖花道(って言うの? なんちゃって花道は何て言うの?)の方に目をやってしまったが、正面の忠信の出もちゃんと見えた。狐言葉は伸ばすところは何でもなかったが、早口で一息に言うところで笑いが起きていた。やっぱり、そうなっちゃうのかな。
「その鼓は私が親、私はその鼓の子でございます」のセリフが胸にじ~~んと響く。猿之助さんには狐の動きがよく似合う。
狐と忠信の早替りに客席どよめく。膝での回転、海老ぞり、欄間抜け(ちょっとスムーズでなかったような)、荒法師との愉快な立ち回り、亀ちゃんの身体能力、見せ場の数々に客席は大いに盛り上がった。
最後は宙乗りはできないので音羽屋型と同じ木に登って終わる。巡業だからとわかっていながら、でも最初に下手にワイヤーがあるかどうかを確かめてしまったよ。
大向こうも盛大にかかり、見ごたえのある公演だった。近場の王子なので昼夜通しで見たかったけれどそうもいかず、はじめは入り待ちするくらいの勢いでいたのに黄色いトラックを見ることさえなく、大急ぎでの劇場往復で終わった。
<上演時間>「毛抜」65分(12301335)、幕間25分、「口上」15分(14001415)、幕間25分、「四の切」70分(14401550
実際は5分ほど早く終わった。

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2013年7月22日 (月)

心底楽しめた澤瀉屋の巡業②:寿猿さんにぐっときた口上

721日 松竹大歌舞伎巡業東コース(北とぴあ)
この公演は四代目猿之助襲名披露公演でもあるから、口上を楽しみにしていた。
祝幕は昨年演舞場で見たのとは違い、「四代目猿之助丈江」と1人の名前のみ(そりゃそうか)。祝幕をこんな近くで見たのは初めてだ(演舞場では席が遠かったから)。幕が開くと、おもだかの花が描かれた襖の前に、上手から右近、寿猿、笑三郎、門之助、梅玉、猿之助、猿弥、弘太郎、春猿、笑也と並んでいる。女形の拵えをしているのは門之助さん、笑三郎さん、春猿さん。春猿さんと笑三郎さんは浅葱色の裃で、梅玉さんは鼠小紋(?)。その他の人は團十郎茶。
梅玉:公演来場のお礼に続き、ここに控える市川亀治郎さんは昨年6月演舞場にて一門にとって大きな名前である猿之助を襲名した。各地で披露した後巡業でも披露している。初代以来、進取の気象に富む家柄である。二代目は新歌舞伎を問い入れ、三代目はご存知のようにスーパー歌舞伎を作り古典の発掘にも力を注いだ。四代目は子供の頃より才能豊かなことは知っていたが、一緒になることはなかった。三代目との共演があっても亀治郎さんとはなかった。今年3月名古屋で初めて競演した。次代の歌舞伎のリーダーとなって新しい風を吹き込んでくれるだろう。精進のうえ、代々以上の役者になられるよう。
門之助:四代目猿之助さん初お目見え、初舞台から共演している。書画骨董の趣味を持ち、先日放送された「何でも鑑定団」では高額が出た。その壺より羨ましいのはお客様を喜ばせるツボである。
笑三郎:千穐楽まで本興行が盛況でありますように。
寿猿:故猿翁・段四郎師匠の門弟として、現猿翁が團子から、段四郎が亀治郎から襲名した公演に出ている。あれから50年、この席に列座できるのは誠に嬉しい。(感無量といった感じで力強く述べられた寿猿さんの口上は短いながら澤瀉屋に対する思いが溢れていて、ぐっと胸にくるものがあった)。
右近:幼少のみぎりより一緒の亀治郎さんが四代目として襲名。一門、心を一つにして澤瀉屋のために力を尽くす。
笑也:澤瀉屋を末永くご贔屓お引き立てよろしく。
春猿:おめでたい席に列座できることはありがたく、芸道に精進する。
弘太郎:めでたい口上の席に先輩方と列座できるのはありがたい。
猿弥:澤瀉屋にとり新しき門出の舞台に出られるのはありがたい。
猿之助:長年名乗ってきた亀治郎を改め四代目猿之助を襲名した。ご当地にてご披露申し上げる。福山雅治さんより祝い幕を頂戴した。曾祖父、祖父、伯父、自分4人の隈取が重ねられたユニークな祝い幕である。先祖代々が命をかけて継いできた名前に新しい命を吹き込むのが襲名だと思う。精進する。
梅玉:市川猿之助さんはもとより、澤瀉屋をお引き立てくださるとともに歌舞伎をご愛顧くださりますよう、隅から隅までずい~と御願いあげ奉りまする。

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2013年7月21日 (日)

心底楽しめた澤瀉屋の巡業①:「毛抜」

721日 松竹大歌舞伎巡業東コース(北とぴあ)
ほぼ満席と思われる大盛況の北とぴあ。そしてその満席の会場大盛り上がりで、楽しかったぁと満足して帰れる猿之助襲名披露公演であった。
定式幕の下手側に祝い幕をぎゅっと結ばれて出番を待っているのが巡業らしい。
「毛抜」
幕開き、悪人側・八剣数馬(弘太郎)と善人側・秦秀太郎(春猿)の果し合い。2人のアツさがリアルで、こんなに迫真ある争いはこれまで何回も見てきた「毛抜」の中で一番かも。いや、この場面だけではない。澤瀉屋の「毛抜」はどの登場人物もその人物を生き生きとリアルに生きられていて、わかりやすく非常に面白い。
中で、欣弥さんの八剣玄蕃はモーレツにインパクトあった。大きな声、激しい口調、使者(粂寺弾正)に取り入ろうとする下心、自分で取り仕切ろうとする強引さ、その存在感たるや、これもこれまでで一番だ。最後まで見て、この玄蕃あってこそ、弾正のヒーローぶりが際立つのだと思った。
猿弥さんの小野春道は見慣れぬ役で違和感を禁じ得なかった。大きさは十分あるのだが、いかんせんちょっと若いかなあ。
笑也さんの春風は難しい役だと思うが、おっとりした若さと毅然とした部分がみられた。
猿三郎さんは困惑と冷静の秦民部という感じだが(困惑は猿三郎さんが、じゃなくて、秦民部にとって困惑する出来事が次々起こる)、声が爽やかなのが民部らしくていい。
喜昇さん(腰元若菜)はお家のため、姫のためという心が見えた。
笑野さんの錦の前はとても上品。ただのお姫様ではなく姫も人間であるという心が伝わって好感がもてた。久々に見た笑野さんはやっぱりステキだ。澤瀉屋の中で重要な存在になってきているのが感じられて嬉しい。
右近さんの弾正は大らかでイヤみのないユーモラスな明るさがぴったり。秀太郎や巻絹にちょっかいを出すのも(明るいセクハラ)、大きな毛抜でヒゲを抜くのも客席の笑いを誘って楽しい。それでいて、ちゃんと磁石のトリックに気が付く鋭さ、ニセ万兵衛をやりこめる機転のよさ、八剣玄蕃を仕留める厳しさ、そうした弾正の人となりが自然に出ていた。
春猿さんの秀太郎、笑三郎さんの巻絹には、ともに古風さと現代的な空気を感じた。
ニセ万兵衛の猿四郎さんのワルぶりもいい。大きな声で強請りをかける態度は本当にワルそう。こんな男の妹と春風が恋仲だったのかとか、こんな男が弾正が地獄の閻魔さまに書いた手紙を読めるのかとか、疑問に思うが、この男は万兵衛ではなく、玄蕃の手下。弾正にやり込められて目を白黒させて慌てる様子がおかしい。
このニセ万兵衛、実は石原瀬平が弾正に殺された時の玄蕃の怒りは凄まじかった。悪事がバレそうになったときのじりじりした表情が印象的。
そしてついに玄蕃も弾正の手にかかる。この時、弾正が槍で玄蕃の首を落し、欣弥さんはよろよろと上手へ引っこみ、落ちた首が舞台に残るのだが、その瞬間、客席は大笑い。この笑いは私にもわかる。
弾正の引っこみは下手のなんちゃって花道から舞台に戻り、必要な距離を確保してあらためて引っこみに入る。楽しんだ観客の大きな拍手に送られて気持ちよさそうに引っこむ右近・弾正はステキだった。

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2013年7月19日 (金)

2度見たって面白くて感動:「再岩藤」再見

718日 七月花形歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
初日に見た昼の部の再見。けっこう記憶が薄れている部分があって、あらためて記憶力の後退を認識しました。以下、初日の感想と重なるかもしれないが、発端から大詰まで順に気づいた点を箇条書きで。
・菊之助さんのお柳の方は初日にはあまり悪女っぽさを感じなかったが、今回はワルい面が垣間見えた。当主・多賀大領(染五郎)に色気たっぷりに甘えながら、ちょっと顔をそむけた時にはイヤな顔をする。これは愛する夫(悪人望月弾正・愛之助)がいるのに夫のために自分を犠牲にして耐えてきたつらいおつとめも、大領を殺す計画によってもうじきしなくてすむ、という大詰のお柳の嬉しいセリフの伏線となっている。
・又助(松緑)がだまされたためにお柳の方と間違って奥方・梅の方(壱太郎)を殺害した後、川に飛び込む。すると川辺の風景が変わるので又助が泳いでどこかの岸に上がったとわかるのだが、又助自身が泳ぐ場面はなく、初日はなぜか、同じ岸に上がったような印象を受けた。今回は泳いだのだということがはっきりわかった。
・壱太郎クン、顔が小さい!!
・染五郎さんの安田帯刀がいい。多賀大領がニンかもしれないが、私は安田帯刀に大きさと思慮深さを感じて好きだ。
・岩藤の骨が捨てられている寂しい場所で寺の住職と近所の人が立話をする場面。住職さえ気味悪がってその場をさっさと逃げ出そうとする。それがいかにもその辺のちょっと俗っぽい住職といった感じで面白い。高僧ならそんな態度は取るまいに。
・尾上の菊之助さんが花道から登場するとどよめきが。お柳の方はさほどきれいに思わなかったが、尾上はとても美しく、多くの客が息を飲んだんだと思う。ただ、この時の尾上はまだお初であるような感じを受けた。
・初日は月命日だと聞いたように思ったが、この日が初代尾上と岩藤の祥月命日であった(よくよく考えれば、いや考えなくても祥月命日なのは当然だよね)。
・骨寄せのテンポは初日よりよくなっていたと思う。客席、人魂が浮かび上がったら笑いが起きた。
・愛之助・菊之助・染五郎・松也・松江・亀寿のだんまりでは、お約束通り朝日の弥陀が手から手へと渡るが、大事なものは懐にしまっておきましょうね、と言いたくなる(それを言ったら、だんまりじゃなくなっちゃうか)。
・岩藤のふわふわ、手に持った傘だけが吊られているように見えた。松緑さんの身体はどうなっていたの? 宙乗りの移動距離はビックリするほど少しだった。初日は悠然と舞台中央あたりから上手へたっぷり移動したと思っていたのに、今回はあっという間。この時の岩藤はとても愛敬があって、あんまり悪人扱いされるのが気の毒みたいだった。
・右近クンの花園姫に一度「おもだかや」と声がかかったような。で、一瞬空気が凍りついたような気がした。右近違いだから(聞き違いだったらお許しを)。引っこむ時にはちゃんと「おとわや」の声がかかってほっとした。右近クン、可憐だった。
・盲目ゆえにいじめられる志賀市(玉太郎)、その悔しさが痛いほど伝わってきて、涙が出た。いじめられた弟をいたわる兄・又助の愛情にも泣かされた。
2人が帰宅すると、おつゆ(梅枝)は兄の足は洗ってあげるが弟はそのまま家にあげる。でも、弟はいじめっ子にゲタを取られて足が泥だらけのはずなんだけどな…これは初日にもちょっと疑問に思った。
・玉太郎クンが初日よりさらに進化していて、いじらしさに泣ける。目の見えない志賀市が腕を前に出して探り歩きすると客席が笑うのが納得いかない。
・玉太郎クンは目を瞑ったまま琴を弾いているのだろうか。だとしたら素晴らしい。でも目を開いていたとしても素晴らしい。

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2013年7月18日 (木)

深くて面白い子供のための「ジュリアス・シーザー」

 

716日 子供のためのシェイクスピア「ジュリアス・シーザー」(あうるすぽっと)
千穐楽だったんだ、ってことは開演前の歌の後の山崎さんの一言で認識。
今回の出演者は8人の男優と紅一点の伊沢磨紀さん。さいたまのオールメールシリーズに肉迫(?)と思ったのは、伊沢さんの役がシーザーの妻・キャルパーニア以外は、シーザー暗殺メンバーのトレポーニアス、ブルータスの召使ルーシャスと男性で、ブルータスの妻・ポーシャ役が男優である山本悠生さんだったから。ま、伊沢さんが男性役をやるのはべつに珍しくはないのだけど。
そういえばシェイクスピアのシーザーは初めて見る(多分)、ということに初めて気がついた。
前半はシーザー暗殺を企てるキャシアス(河内大和)、キャスカ(戸谷昌弘)、ディーシャス(北川響)、メテラス(山本悠生)、リゲーリアス(若松力)、トレポーニアスがブルータス(チョウヨンホ)を仲間に引き入れようとする計画、凱旋したシーザー(山崎清介)の様子、占い師の予言などがテンポよく展開する。ところが、私は暗殺班の誰が誰だかよくわからなくなってしまって、しかも1人の役者さんが何人もの役をやるものだから、ちょっとついていけない部分があった。カタカナ名前に弱くなってきたのは老化現象だ、絶対。
途中のギャグで子供にはわからなかっただろうが老化現象観客だからこそよ~くわかったのが一つ。ポンペイのことを民衆に思い出させるのに山崎さんが「帽子ひとつでナポレオンになっちゃう人」とたとえたのがそれ。「それは凡平」「知らね~な」で笑えた人は少なかったかも(この日の観客はかなり年齢層が高そうだったけど。帽子ひとつでナポレオンになる早野凡平さんは好きだったので、ここで名前が出て嬉しかった)。
さて、シーザーが殺されるあたりからやっとこちらのエンジンが回り始め、舞台も俄然面白くなってきた。ブルータスがシーザーを殺した理由を演説し混乱する民衆の心を惹きつける。しかしその後にアントニー(若松力)がシーザーへの追悼演説をするが、アントニーはシーザー暗殺に理解を示すふりをして、ブルータスたちを非難しないと約束しておきながら、言葉巧みに民衆の心を逆転させて焚き付ける。この時、なんとブルータスはその場を離れてしまっていて、この圧巻の演説を聞いていないのだ。このアントニー、汚い。シーザーがすべての市民に遺産を残していると群衆を喜ばせておきながら、裏では遺産分与額を減らそうとしている。でも爽やかな若松さんが演じるとあまりいやらしく見えない。それでいて、肚に何かもっている深さは感じる。
ブルータスたちはアントニーとオクテーヴィアス(北川響)に追われる身となる。その陣内でシーザーの亡霊が現れたりキャシアスとブルータスが一触即発状態になったり、戦況不利な中キャシアスが今日は誕生日で自分は誕生日に死ぬことになると自ら予言したり(戸谷さんのキャスカが河内さんに向かって「ハッ ピ バッ ス デイ」とそっと歌い出すのが可笑しかった)しながら、やがて激しい戦闘となり、誤った情報に絶望したキャシアスは自害、ブルータスも召使にもたせた剣に身を投げ出す壮絶な最期。

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2013年7月16日 (火)

面白くて哀しい「ドレッサー」

710日「ドレッサー」(世田谷パブリックシアター)
観劇からもう1週間も経ってしまったのには、公私ともに忙しかったこともあるが、わ~っという昂揚感がなかったからでもあるかもしれない。面白かったし十分楽しめたんだけど、なんとなく冷めてるっていうか…。
大泉洋出演、三谷幸喜演出だから見ようっていう気になった「ドレッサー」、初見なのでこれまでの公演とはもちろん比較できない。でも、座長・三津田健×ノーマン・平幹二郎、三國連太郎×加藤健一、三國連太郎×柄本明、平幹二郎×西村雅彦、渡辺哲×小宮孝泰なんていう歴代出演者の名前を見ると、演出家も違うわけだし55様の「ドレッサー」だったんだろうなと思う。
時代は1942年、場所はイギリス。ドイツの空襲に怯えながらもシェイクスピア劇の上演を続ける一座。自分が平和ボケしているせいか、戦時下であるという緊迫感はあまり感じず、時々劇場を襲う爆撃音で思い出す程度だった。
大泉洋さんは、付き人(ドレッサー)役としてぴったりだと思ったし、さりげない面白さがあったけれど、あの軽い感じがノーマンでありながら大泉洋なんだよなあという気がした。近所から時々派手な笑い声が聞こえてきて、私も笑いはしたものの、そこまで可笑しいかなあ…。ノーマンはゲイらしい。腰つきとか柔らかい物腰に確かに「あれ?」と感じないこともなかった。でもほとんど気づかず後で知ったのは自分がニブいせいもあるだろうけど、そこはとくに強調されていなかったと思う。
しかし、座長に対するノーマンの複雑に屈折した感情は伝わってきた。座長のすべてを知っていて、座長の身の回りのことはすべて自分でなければダメだという自負心、いや自負心というより座長に対する支配心かもしれない。ひたすら自分を捨てて座長に仕えてきたノーマンだけど、その心の奥に座長を支配しているという意識はなかっただろうか。支配しているという表現は語弊があるかも。独占欲といったほうがいいかもしれない(独占欲には支配心が含まれるんじゃない?)。座長には妻がいて、やっぱり座長のことは何でも知っていると自負している(多分)舞台監督がいて、その中で「自分が一番」だというノーマンの気持ちはよくわかるような気がする。それなのに、座長は自分を何とも思っていなかった(ノーマンという名がここで生きてくる)ことが座長の死の際にわかる。独り相撲の可笑しさ哀しさ、愛憎相交わるノーマンの感情がはっきり見えた。しかしノーマンは座長にとってただのドレッサーだったのか、それとも空気のような存在だったのか。ただのドレッサーだったと思う方がノーマンの気持ちに入り込めそうな気が私にはする。
座長はまさにリア王だ。橋爪功さんは老優の不安をリアルに演じ、周囲の人たちを振り回す身勝手さもなんとなく愛敬があって、ノーマンにしても妻にしても憎みながらも彼のそばにいたいという気にさせるのがわかるようだった。小柄で不安におびえている座長はみすぼらしかったのに、衣裳を着ていざ舞台に立ったら大きく見える、実際に橋爪さんのリア王を見てみたい。
妻の秋山菜津子さん、舞台監督の銀粉蝶さん、それぞれが複雑な思いを抱えながら座長と接している。舞台監督が座長から指輪をもらって一度は返したのに、亡くなった座長の指からそれを再び抜き取る女心が面白かった。
平岩紙ちゃんの舞台は初めて見た。秋山、銀粉蝶という力量ある女優さんの中で頑張っていたし、座長がちょっかいを出したくなる可愛らしさ、そしてあわよくば座長の愛人にでもなろうかというようなしたたかさもあって(それはノーマンが許さない)なかなか面白かった。
浅野和之さんのあまり使えない老優、梶原善さんの共産主義に傾倒している役者はもったいないほど少ない。紙ちゃんも含めて3人の出番は、座長の楽屋の壁を半分に切って見せるようにしている廊下を忙しく行ったり来たりするのが多分一番多い。そしてそれぞれが座長と絡むシーンが少しある。そのわずかな時間で個性と存在感、そして役の人物をしっかり見せていたのはさすがであった。
補助椅子、立ち見がいっぱいで、そうしてみるとよくこのチケット取れたなとらためて嬉しかった。
<上演時間>第一幕67分(13301437)、休憩15分、第二幕73分(14521605

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2013年7月15日 (月)

私のカサブランカ

13071501casablanca
5月のはじめに「カサブランカ」という名前と値段に惹かれて買ったなんかの芽(↓)、なんだかわからないで育てていたら百合だった(↑)。
13071502casablanca_2 さっさと調べればいいのに、土の上に出てきちゃった根(↓)をどうしたらいいのかと、ネットで調べて百合だとわかったのだ。土の量を増やして根を隠し、追肥をしたりしながら成長を楽しみにしていた。
蕾をつけ始めたのが6月10日ごろ。それから蕾はどんどん大きくなるものの、一向に開こうとしないので、蕾のまま枯れちゃうんじゃないかと心配になった。
そうしたら、昨日第1号の花が開いたではないか。
蕾がすっごい大きかったから、開いた花もかなりの頭デッカチで、迫力たっぷりだけど深くお辞儀しちゃって13071503casablanca_3 いる。で、花の首(?)を持ち上げて紐で支柱にゆるく結んだ。そ して今朝、第2号が開花!!
 嬉しいものです、育てた花が咲くって。蕾はあと1つ。ちゃんと咲いてくれるかな。

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2013年7月13日 (土)

菊ちゃん、12月にはパパに

菊之助さん、瓔子さん夫妻におめでたい話題が!!
12月に瓔子さんが出産予定だそうだ。
現在安定期に入っているとのことだが、歌舞伎座に行くたび瓔子さんをお見かけしながらまったく気がつかなかった。
無事に元気な赤ちゃんが生まれますよう。

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2013年7月12日 (金)

来年1月国立は「三千両初春駒曳」

わ~いup
初春のお楽しみ、国立劇場の公演がもう発表になった→ココ
一瞬、暑さが吹っ飛んだwink


よく見たら、終演時間まで出ていてビックリ
coldsweats01 でも早くからわかるのは有難い。

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2013年7月11日 (木)

ぴんとこな第1回に猿之助さん出演

18日に始まる「ぴんとこな」(TBS、21時から。第1回は2時間3分SPだって)の第1回に猿之助さんが出演する。
今後も歌舞伎役者が出演するようであるけれど、第1回が猿之助さんということは、玉森クンと「信長のシェフ」で一緒だった縁かしら?
2時間ドラマでは日本舞踊や能のお家騒動をめぐるものが時々あって、次期家元役の俳優の踊りって本当にそれにふさわしいのかどうかよくわからないんだけど、「ぴんとこな」も正直こわいものがある。でもジャニーズの子たちは器用だから、期待しよう。もっとも私は連続ドラマを見続けることができるかどうか…。

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2013年7月10日 (水)

七月花形歌舞伎夜の部

78日 七月花形歌舞伎夜の部「東海道四谷怪談」(歌舞伎座)
今までで一番冷酷残忍な伊右衛門であった。そのDVの凄まじさたるや、鬼でもひるむであろうというほどである。
なぜ、伊右衛門はそんなにひどい仕打ちをするのだろう。「四谷怪談」を見るたび、どうも釈然としないでいた。根っから残忍であることには違いない。お岩の父・四谷左門を平然と殺害するのだから(それを言ったら直助も同じ、いや殺害した人の顔の皮を剥ぐなど、もっと残忍。でも人間性は伊右衛門とは違うと思う)。しかし、それだけではあるまい。
菊之助さんのお岩さんを見て、ふと、伊右衛門にとって大事だったのはお岩さんの美しさだけだったんじゃないかと思えてきた。美しくないお岩さん(産後の肥立ちが悪くて美しさに翳りが見えただけでなく、辛気臭いのだろう)は伊右衛門にとって何の価値もない。元々残忍酷薄なタチの伊右衛門であれば、無価値のモノをどう扱おうが知ったことではないのである。身勝手きわまりない伊右衛門は、恐らくなぜお岩さんが化けて出るのかなんて考えもしなかっただろう。お岩さんに恨まれているとわかったとしても、そこまでされることに納得していないだろう。
お岩さんは変貌した後の顔のほうがインパクトが強いので私たちはお岩さんが元は美人だったということになかなか思いが至らない。でも、菊之助さんのお岩さんがそれをはっきり教えてくれた。
お岩さんの哀れさには、これまでにも何度も胸を衝かれてきたが、今回みたいに泣かされたのも初めてだ。産後の肥立ちの悪さによほど苦しんでいたのであろう。それだけでも哀れでならないのに、伊藤家からもらった薬を信じ込んで粉の一つもこぼさぬよう残さぬよう丁寧に丁寧に口にするお岩さん。何度も何度も伊藤家に礼を言うお岩さん。それが実は毒薬であることを知った時、「(さんざん礼を言ったのは)今に思えば恥ずかしい」と身を捩るお岩さん。その胸の怒りの熱さは私の胸の怒りの熱さでもあり、あまりのことに泣けて泣けて。
伊右衛門が金に換えるためにお岩の着ているものから赤ん坊の小袖、蚊帳まで持ち出すとき、蚊帳を持っていかれては坊やが眠れないとしがみつき、つつつと引っ張られるお岩さんに客席から笑いが起きていたが、こんな状況にどうして笑えるのか私にはわからない。
菊之助さんのお岩さんの怒りはこれまでに見た中で一番強かったかも。恨みというより主体的な怒りである。そういう意味では現代的なお岩さんだと思ったが、私は大いに共感を覚えた。菊ちゃん、顔もこわかった。この時ばかりは体つきも男っぽく見えてしまった。
隠亡堀はいつも気持ち悪い。伊藤家の乳母も母親もそこで亡くなり、ゴミやら直助権兵衛が拾う髪の毛のついた櫛やらが落ちている、そんな気持ち悪い堀で伊右衛門が魚を釣りあげるのが本当に気持ち悪い。
ここの場面では松緑・染五郎・菊之助の3人が尻端折りでだんまり。松緑さんの脚が一番きれい、と思った。菊ちゃんは、小仏小平、お岩、佐藤与茂七の3役早替わり。

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2013年7月 9日 (火)

7月歌舞伎鑑賞教室

77日 歌舞伎鑑賞教室「芦屋道満大内鑑」(国立劇場大劇場)
13070901kurogo 私にとって歌舞伎鑑賞教室では2度目となる葛の葉。前回は20083月、芝雀さんの葛の葉に対し、種太郎(現・歌昇)の保名という、今思えば同じ一座で活躍する2人だが、種太郎クンは当時十代、ちょっと衝撃的な夫婦であった。
さて、まずは「歌舞伎のみかた」から。
萬太郎クン初の解説は、国立劇場のマスコット「くろごちゃん」とのコンビで。声も滑舌もよく、ゆっくり喋ることを心がけているようで、とてもわかりやすかった(ナレーション向きかも。BSは歌舞伎役者がよくナレーションやってるから、いつかぜひ。それから邦楽ジョッキーなんかもいいかも)。7日は大人の客が多かったが、高校生が多いと反応をみて、多少話し方を変えるらしい。
下手からくろごちゃんが登場し、「歌舞伎のことを教えてくれるお友達を紹介しま~す。萬太郎さ~~ん」と呼ぶと、場内は暗くなり、花道を1匹の白狐が駈けてきてスッポンへ消える。すると今度は浅葱色の着付に細縞の袴をつけた萬太郎クンがスッポンから現れる。
そして早速花道の説明。花道は道にもなり川にもなり空にもなるが、今回は田舎の道である。揚幕のチャリンで人物が出る(実際にチャリンと音をさせ、揚幕を開けてみせた)。
そして定式幕、盆(直径20mはやっぱり大きい!!と毎度ながら感嘆する)、セリ(これが上下すると客席はどよめく)、上手・下手の説明。
上手・床に義太夫が現れ、義太夫は情景などを語るということで「所も阿倍野の芦垣や、間近き住吉天王寺」を演奏。さらには、義太夫は人物の気持ちも語るので、萬太郎クンが義太夫に合わせてミニ演技。
驚き:義太夫「見てびっくり」
笑い:義太夫「こりゃ愉快だと大笑い」
大きな拍手が起こって萬太郎クンがテレるのがかわいい。
次は下手黒御簾の中のBGM。萬太郎クンが狐手をして見せる(ここでは触れなかったが、狐の手は上向きではなく下向きに、しかしユーレイにならないように指をしっかり曲げるのだとか)。
そうこうしているうちに、くろごちゃんが歌舞伎の小道具、それも動物を持ってくる。鯉(まな板の下の紐を引っ張ると、上で鯉がはねる)、猿の操り人形(「近頃河原達引」とか「権三と助十」とかで見る。萬太郎クン、糸が絡まってると言って扱いにくそうだったのが笑いを呼んだ)、鶏(「道明寺」が一番有名か。コケコッコーと鳴かせて、はばたかせて見せてくれた)。ただ、この小道具紹介はそれだけのことで、何に使われているという解説もなく、次の差し金の先の鼠を操る黒衣の説明のために出しただけのような感じで、中途半端。なくてもよかったのではないだろうか。
黒は歌舞伎では見えないということになっている。差し金はくろごちゃんもできるようにならなくちゃと萬太郎クン、「いつやるの。いまでしょ」はちょっとスベってたかな。くろごちゃんは見習いだからと躊躇い、本物の黒衣さんが鼠を巧みに操って見せた。
演目の説明。くろごちゃんがタイムマシンで1100年前の世界へ飛ぶ(葛の葉は1100年前のお話かぁと、数字を出されるとちょっと驚いた)。紙芝居ならぬスクリーン芝居で保名と葛の葉が夫婦になるまでの物語が紹介された。イラストがかわいいし、声もよかったし、面白かった。
最後は萬太郎クンが狐手でくろごちゃんを操り、スッポンへと消える。そして最初とは逆にスッポンから白狐が飛び出してきて、花道揚幕に消えた。
先月とはまったく違って、定石通りの解説ではあったが、初心者にはわかりやすいと思われる丁寧な語りで好感がもてた。
「葛の葉」
贔屓の役者さんが演じるのを見ると力が入るせいか、この役がとても難しいのだということがわかる。狐という異世界の生き物と人間の女性、この2つの間を行き来すること。母親の子に対する愛情と夫への情。狐の振りに関連したさまざまなケレン。そういうものを全部1つの役としてこなし、さらには葛の葉姫という似て非なる人間の姫を2役で演じるのは初役ゆえの難しさだっただろうか。
全体にあっさり系の持ち味なのでやや物足りなさはあるものの、泥だらけになって帰ってきた我が子に対する仕草は、この時はまだ別れがくるものとは知らないのであればこそ普段からの愛情が切ないほどにつよく伝わってきて、その後の展開を思うとすでに哀れさが心の中に催してくる。そして奥座敷での「ああ恥ずかしや、浅ましや」の嘆きには心揺さぶられた。藤十郎さんや芝雀さんがどうだったか覚えていないが、時蔵さんの葛の葉は、夫への思いよりも子供への思いが強いように見えた。
葛の葉姫は正直、ちょっときびしいものがあるかなあと思ったのは、時蔵さんの大らかさがこの姫の困惑には合わないような気がしたから。しかし早替わりは技術の点だけでなく、違う人物を演じるという点でも鮮やかで、その大らかさが葛の葉では気にならず、ただただ寂しげな風情が胸を打った。また、曲書きも見事で(あれって、文字の並びに決まりがあるわけではないみたい)、とくに筆を口に加えて書いた「葛の葉」の文字はとても好き。

「道行」は初めて見た、と思う(これまでの記憶にない)。宗之助・萬太郎との立ち回りなど、明るくて楽しかった。こういうアクティブな女形は演じるほうも楽しいんじゃないかな。
葛の葉があっさり系の時蔵さんなら保名もあっさり系の秀調さん。秀調さんは好きな役者さんの1人だが、全体にセリフに力がなかったせいか、葛の葉が2人いることに対する驚き、葛の葉恋しの思いが強く感じられなかったのが残念。
葛の葉姫の父・信田庄司の家橘さんと母・柵の右之助さんがとてもよかった。家橘さんには家族を思うあたたかさと武士としての気骨が自然に滲み出ていたし、右之助さんも位の高い人の奥方らしい品格の中に母親らしさが感じられた。

13070902mist 多分もう無理とは思うが、学生中心の平日にもう一度見たいな(こんなに暑くなければ気力でスケジュールをカバーするんだけど:ミストが涼しげではあったが、それでも暑い)。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」25分(14301455)、幕間20分、「葛の葉」70分(15151625

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2013年7月 7日 (日)

12月国立劇場は忠臣蔵でも見たことのないものばかり

今日、国立劇場に行ったら、12月のチラシが出ていた。
演目は忠臣蔵絡みのものだが、どれも見たことのないものばかりで楽しみ。
「主税と右衛門七」
「弥作の鎌腹」
「忠臣蔵形容画合」
出演は吉右衛門ほか。
詳細は→ココ
「弥作の鎌腹」は秀山十種の内で、今年の秀山祭はいつになるのだろうと思っていたが、12月がそれにあたるのだろうか(チラシには秀山祭とは謳っていない)。

ところで、今日は8月歌舞伎座発売日だったのに、すっかり忘れ、国立劇場に着いてからはっと思い出した。携帯で取ろうかと思ったが、空席が十分ありそうだったので、帰宅してから取った。歌舞伎座の発売日忘れるなんて、最近やっぱりやる気がdownしてるのかな。しかも8月は諸事情あって、第3部のみ、それも前半。後半いくつか入っているものの、趣向の華は取れなかったし、ちょっと寂しい夏になりそう。

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2013年7月 6日 (土)

シネマ歌舞伎クラシックで初見「二人椀久」「年増」

72日 シネマ歌舞伎クラシック「二人椀久」「年増」(東劇)
13070601cinemakabuki 「二人椀久」は平成99月、「年増」は昭和594月、ともに歌舞伎座での上演である。
当時の撮影素材をデジタル化したものであるから、通常のシネマ歌舞伎に比べて画質等劣るのは当然であるが、長唄の音量が大きくてびっくりした。そのおかげで、歌詞が比較的よくわかり、踊り手の動きの意味がわかって面白かった。
舞台中央からセリ上がってくる雀右衛門さんがあまりに美しく息を呑んだ。雀右衛門さんは、私が歌舞伎を見出した頃にはもうセリフもほとんど入らず落胆させられることが多かったが、それでも「野崎村」お染や「河庄」小春の風情の見事さは今でも覚えている。
しかし椀久の松山では、私は雀右衛門さんの体つきにやや男性を感じてしまった。とくに後姿を見せたときに、男性が女性を演じているという印象をもった。だからといって、雀右衛門さんの松山が悪いとは思わず、むしろそこを納得しつつ見た松山太夫は美しく、情が感じられた。
上演記録を見ると、富十郎・雀右衛門の「二人椀久」は、この平成99月の後、1012月南座、126月博多座、同年9月歌舞伎座で終わっており(富十郎さんは183月に菊之助さんを相手に踊っている)、2人の全盛期と言えるのかどうかはわからない。それでも、いつもたいてい寝てしまうこの演目を面白く見ることができた。
「年増」は芝翫さん。むか~し、歌舞伎を見ていた頃、女形のトップは歌右衛門さんだったが、子ども(と言ってもそんな幼くはない)であった私には美しいよりは怖い感じがして、若い芝翫さん(当時は福助)がきれいに見えたものであった。昭和59年の芝翫さんはその印象を甦らせてくれた。セリフが少し入るので、もうこの世にいない芝翫さんのあのやわらかい声が聞けて、とても懐かしかった。
椀久もだが、とくにこの年増を見ると、日本舞踊は激しく身体を使うものだということが改めてよくわかる。
<上映時間>「二人椀久」34分、「年増」22

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2013年7月 5日 (金)

七月花形歌舞伎初日昼の部

74日 七月花形歌舞伎初日昼の部(歌舞伎座)
13070501syoniti やっぱり全体にこの3カ月に比べ人が少ないのは当然といえば当然、やむをえないといえばやむをえないか。おかげで、開演前、幕間の移動が楽。めでたい焼きも時間を気にせず購入できた。
「加賀見山再岩藤」
見たい見たいと思っていた「再岩藤」、初日なりのテンポだったとは思うが、とくに間延びしているとも感じられず、面白かったのは初見だからということだけでもあるまい。ただ、外題からも「骨寄せの岩藤」という通称からも岩藤中心の話かと思っていたが、そういうわけでもなかった(歌舞伎ではよくあることだけど)。もちろん、骨寄せの場面、岩藤の「ふわふわ」宙乗り、尾上二代に亘る岩藤からの草履打ちは見どころには違いない。しかし私にとって最大の見どころは、四幕目「又助内切腹の場」であった。
松緑さんの又助は、松緑さんらしい真っ直ぐさで、いつも気になるセリフもさほど目立たず、私は非常に好感を持った。その真っ直ぐさ故に悪人にだまされて善人側の奥方を殺してしまう悲劇。主人のためお家のため、悪の元を倒そうと暗がりに潜む又助には、時としてお父さんの辰之助さんの雰囲気が漂ったのにはびっくりした。松緑さん、ずいぶんスリムになったが(登場した途端、あれっ、顔が相当シャープになったねと思った)、それが大きいかもしれない。
又助が自分の過ちを知り、自刃するこの幕はちょっと六段目に似ている。愛する人のために100両を作ろうと自ら身売りする又助の妹おつゆ、主君に喜んでもらえると信じていたのに人非人と罵られてしまう又助。おかる勘平が重なった。又助の自刃は盲目の弟・志賀市が弾く琴の音色の中で進行する。その哀れさ。腹に刀を突き立て苦しむ又助、兄の悲劇を知らないまま兄に聞いてもらおうと無心に琴を弾く志賀市、身売りした100両で愛する人の薬を手に入れ息せききって戻ってきたおつゆ。3人の兄妹弟の情と哀れさに、思わず泣けた。
泣けたのは、一つには玉太郎クンの大活躍があったからかもしれない。なんと、あの玉ちゃんが琴を弾き、唄うのだ!! 10歳の子どもが歌舞伎座という大舞台で、琴の腕前を披露する。初日だからさぞや緊張したと思うが、御簾中の義太夫三味線と合わせてきちんと演奏し、しっかりきれいな声で歌い、その成長ぶりに私は大いに感銘を受け、そのことでもなんか泣けてしまったのである。いや、しかしいつまでもそういう目で見ては玉太郎クンに失礼というものだろう。玉太郎クンは、先月「土蜘」の太刀持ちもとてもよかったし、これからも大いに期待しよう。

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2013年7月 4日 (木)

やっぱりダメだったのに(涙)

夏、いや1年で最大の楽しみである「趣向の華」。
今年はこれまでの日本橋劇場から内幸町ホールへと場所を変えたため、キャパが半分以下に減ってしまった。
それだけでもチケット争奪戦の厳しさが簡単に予想されたが、チケットは電話のみで発売日がなんと今日7月4日10時半から。
歌舞伎座初日を観劇する私にとってかなり絶望的な状況であった。
そして今朝、歌舞伎座に早めに到着して10時30分を待つ。繋がるまでの秒数を考えて携帯でかけてみたけれど、いきなりぶぶっと携帯が震えて切れた。以後、それの繰り返し。7~8分経った頃にやっとNTTの混みあってますアナウンスにたどり着いたのがいいところで、こちらは開演時刻も迫っているし、とりあえず諦める。
その後も幕間のたびにかけてみるけれど、ぶぶっで終わり。
自宅に戻るまで100回くらい(もっとかも)かけただろうか(ストーカーかっ)。
mobilephoneじゃだめでtelephoneならいいのかと自宅からもトライしたけど、ずっと話し中。
やっと気がついてHP見たら「完売しました」って書いてあった。そりゃあ、定員188のホールで3回しかない公演、あっという間に完売したんだろうな。
最近、何やるにも強い気持ちがなくなっているのが敗因の一つかもしれない。
チケット取れなかったことにものすごぉ~~くがっくりきている一方で、なんか平気で諦めている自分がいるのが悲しい
weep

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2013年7月 2日 (火)

ラブ歌舞伎座52:あと2日

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ラブ歌舞伎座ではありますが、まずはこんな風景を。
これ、ちょっとわかりにくいでしょうが、なんと、万年橋東から。演舞場に通いながら、万年橋の向こう側(東側)へ行くことはほとんどなかったし、行っても気づかなかったと思う。たまたま信号待ちで目に入ってビックリ!!

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昼。
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夜。

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2013年7月 1日 (月)

蝶の道行

と言っては可哀想かしら。
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