« 深くて面白い子供のための「ジュリアス・シーザー」 | トップページ | 心底楽しめた澤瀉屋の巡業①:「毛抜」 »

2013年7月19日 (金)

2度見たって面白くて感動:「再岩藤」再見

718日 七月花形歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
初日に見た昼の部の再見。けっこう記憶が薄れている部分があって、あらためて記憶力の後退を認識しました。以下、初日の感想と重なるかもしれないが、発端から大詰まで順に気づいた点を箇条書きで。
・菊之助さんのお柳の方は初日にはあまり悪女っぽさを感じなかったが、今回はワルい面が垣間見えた。当主・多賀大領(染五郎)に色気たっぷりに甘えながら、ちょっと顔をそむけた時にはイヤな顔をする。これは愛する夫(悪人望月弾正・愛之助)がいるのに夫のために自分を犠牲にして耐えてきたつらいおつとめも、大領を殺す計画によってもうじきしなくてすむ、という大詰のお柳の嬉しいセリフの伏線となっている。
・又助(松緑)がだまされたためにお柳の方と間違って奥方・梅の方(壱太郎)を殺害した後、川に飛び込む。すると川辺の風景が変わるので又助が泳いでどこかの岸に上がったとわかるのだが、又助自身が泳ぐ場面はなく、初日はなぜか、同じ岸に上がったような印象を受けた。今回は泳いだのだということがはっきりわかった。
・壱太郎クン、顔が小さい!!
・染五郎さんの安田帯刀がいい。多賀大領がニンかもしれないが、私は安田帯刀に大きさと思慮深さを感じて好きだ。
・岩藤の骨が捨てられている寂しい場所で寺の住職と近所の人が立話をする場面。住職さえ気味悪がってその場をさっさと逃げ出そうとする。それがいかにもその辺のちょっと俗っぽい住職といった感じで面白い。高僧ならそんな態度は取るまいに。
・尾上の菊之助さんが花道から登場するとどよめきが。お柳の方はさほどきれいに思わなかったが、尾上はとても美しく、多くの客が息を飲んだんだと思う。ただ、この時の尾上はまだお初であるような感じを受けた。
・初日は月命日だと聞いたように思ったが、この日が初代尾上と岩藤の祥月命日であった(よくよく考えれば、いや考えなくても祥月命日なのは当然だよね)。
・骨寄せのテンポは初日よりよくなっていたと思う。客席、人魂が浮かび上がったら笑いが起きた。
・愛之助・菊之助・染五郎・松也・松江・亀寿のだんまりでは、お約束通り朝日の弥陀が手から手へと渡るが、大事なものは懐にしまっておきましょうね、と言いたくなる(それを言ったら、だんまりじゃなくなっちゃうか)。
・岩藤のふわふわ、手に持った傘だけが吊られているように見えた。松緑さんの身体はどうなっていたの? 宙乗りの移動距離はビックリするほど少しだった。初日は悠然と舞台中央あたりから上手へたっぷり移動したと思っていたのに、今回はあっという間。この時の岩藤はとても愛敬があって、あんまり悪人扱いされるのが気の毒みたいだった。
・右近クンの花園姫に一度「おもだかや」と声がかかったような。で、一瞬空気が凍りついたような気がした。右近違いだから(聞き違いだったらお許しを)。引っこむ時にはちゃんと「おとわや」の声がかかってほっとした。右近クン、可憐だった。
・盲目ゆえにいじめられる志賀市(玉太郎)、その悔しさが痛いほど伝わってきて、涙が出た。いじめられた弟をいたわる兄・又助の愛情にも泣かされた。
2人が帰宅すると、おつゆ(梅枝)は兄の足は洗ってあげるが弟はそのまま家にあげる。でも、弟はいじめっ子にゲタを取られて足が泥だらけのはずなんだけどな…これは初日にもちょっと疑問に思った。
・玉太郎クンが初日よりさらに進化していて、いじらしさに泣ける。目の見えない志賀市が腕を前に出して探り歩きすると客席が笑うのが納得いかない。
・玉太郎クンは目を瞑ったまま琴を弾いているのだろうか。だとしたら素晴らしい。でも目を開いていたとしても素晴らしい。

・大詰に至るまでに何度か客席の不可解な笑いがあったが、大詰でもいくつか。まず、お柳の方が大領に斬られ、求女(松也)がその刀を拭いた懐紙をぱっと奥へ投げた時。次に求女がお柳の方の首を落し、大領の前に持ってきた時(これは、他の芝居でもそうだが、多分首を切ってから白布に包んで持ってくるタイミングが早すぎるからなんだと、私は解釈している)。さらに、大領が弾正に「せめてもの情け」とお柳の方の首を見せてやった時。そして縄にかかるよりはと自害する弾正に大領が「潔い心に免じ汝の妻を手にかけし同じ刀で」と介錯してやる時。ここは初日でも笑いが起きたから、そんなに可笑しい場面かと訝る私のほうがおかしいのかも。

2
度見ても面白かったし、感動が薄れることもなかった。大御所俳優が全力投球した3カ月間のこけら落しの後を受けた花形も全力投球していることがわかる。いい芝居はいい芝居なのだ。

|

« 深くて面白い子供のための「ジュリアス・シーザー」 | トップページ | 心底楽しめた澤瀉屋の巡業①:「毛抜」 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

Fujisan様
こんにちは。昨日、歌舞伎座昼の部見てきました。今回の「再岩藤」音羽屋版なので、おもだか屋版の「花見」(前の猿之助が早替わりであてた最初の出し物で「新薄雪」のパロディー)がなくあっさりした出来栄えで私にはややものたらなかったのですが・・・。ただ、今回の収穫はまぎれもなく、松緑の顔が引き締まり、童顔から脱したことです。心なしかお父さんに似てきた気がしました。せりふのいつもの癖もやや改善されてきた気がします。
 夜の部、月初めに見ましたが、「四谷怪談」、伊右衛門、どれだけ、妙なセリフ回し、おかしな演技が散見されても、やはり海老蔵のものでしょう。海老蔵、菊之助であれば、かなり色合いが違ったものになると思いました。「夢の場」昔、歌右衛門が美しい姿を見せたいために、必ず出しましたが、それほど出す価値があるのかは疑問です。むしろ今回の座組みなら、「三角屋敷」を出してほしかったですね。

投稿: レオン・パパ | 2013年7月21日 (日) 13時31分

レオン・パパ様
こんにちは。コメントありがとうございます。ここのところ、過ごしやすくて助かりますね。
「再岩藤」は、やはり澤瀉屋版をご覧になった方には物足りないのでしょうね。私は逆に初見なので、十分満足しました。とくに第四幕がとてもよかったので。
松緑さんは絶対お父さんに似ていないとこれまで思っていたのに、お父さんの空気が感じられるようになりました。顔が引き締まっただけでこう変わるものなのですね。
「四谷怪談」は海老蔵・菊之助で見てみたいですねえ。私が見た海老蔵・伊右衛門の時はお岩さんは勘太郎さんでしたから。でも染五郎さんの酷薄な残忍さというのも悪くなかったような気がしました。
三角屋敷はぜひ出してほしかった!! 私も強くそう思います。「夢の場」はぴんときませんでした。確かに美しさを見せたいがための場面だろうとは察しましたが…。ただ、私にとっては、普段見ることのない場面を見たという意味で、貴重な機会ではありました。

投稿: SwingingFujisan | 2013年7月21日 (日) 17時12分

今晩は。追加で一言。今月は、演舞場の「香華」も見ましたが、緩い演劇ですが、ピーターが山田五十鈴をよく写して結構でした。高橋恵子も役柄に良く合っていました。
 家内も今回はいっしょで、早く終演になったので、歌舞伎座裏の格安との「パリの・・・」で夕食、簡単に食べるつもりがワインがすすみそこそこの値段になりました。出てきたところで、菊之助の出まちに遭遇。酔った勢いで、家内に「音羽屋やっぱりきれいだね」といった声がご本人に聞こえたらしく、にっこり笑ってもらいました。その翌日、夫人のおめでたの報にびっくりしました。歌舞伎ファンとしては、男のお子さんだったら良いですが・・・。

投稿: レオン・パパ | 2013年7月21日 (日) 19時48分

レオン・パパ様
「香華」はまったく視野に入れていませんでした。ピーターが頑張っているのですね。

食事って、食事そのものは安くてもお酒でけっこういきますよね。でも奥様との素敵なソワレになってよかったですね。おまけに菊之助さんとのそんな出会いもあったなんて、羨ましい限りです。
お子さん、男の子だといいなと私も思いますが、富司純子さんがご自分もプレッシャーだったとおっしゃっていましたし、あまりプレッシャーをかけないようにして差し上げましょう。歌舞伎のおうちは大変ですね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年7月21日 (日) 21時55分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 深くて面白い子供のための「ジュリアス・シーザー」 | トップページ | 心底楽しめた澤瀉屋の巡業①:「毛抜」 »