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2013年7月21日 (日)

心底楽しめた澤瀉屋の巡業①:「毛抜」

721日 松竹大歌舞伎巡業東コース(北とぴあ)
ほぼ満席と思われる大盛況の北とぴあ。そしてその満席の会場大盛り上がりで、楽しかったぁと満足して帰れる猿之助襲名披露公演であった。
定式幕の下手側に祝い幕をぎゅっと結ばれて出番を待っているのが巡業らしい。
「毛抜」
幕開き、悪人側・八剣数馬(弘太郎)と善人側・秦秀太郎(春猿)の果し合い。2人のアツさがリアルで、こんなに迫真ある争いはこれまで何回も見てきた「毛抜」の中で一番かも。いや、この場面だけではない。澤瀉屋の「毛抜」はどの登場人物もその人物を生き生きとリアルに生きられていて、わかりやすく非常に面白い。
中で、欣弥さんの八剣玄蕃はモーレツにインパクトあった。大きな声、激しい口調、使者(粂寺弾正)に取り入ろうとする下心、自分で取り仕切ろうとする強引さ、その存在感たるや、これもこれまでで一番だ。最後まで見て、この玄蕃あってこそ、弾正のヒーローぶりが際立つのだと思った。
猿弥さんの小野春道は見慣れぬ役で違和感を禁じ得なかった。大きさは十分あるのだが、いかんせんちょっと若いかなあ。
笑也さんの春風は難しい役だと思うが、おっとりした若さと毅然とした部分がみられた。
猿三郎さんは困惑と冷静の秦民部という感じだが(困惑は猿三郎さんが、じゃなくて、秦民部にとって困惑する出来事が次々起こる)、声が爽やかなのが民部らしくていい。
喜昇さん(腰元若菜)はお家のため、姫のためという心が見えた。
笑野さんの錦の前はとても上品。ただのお姫様ではなく姫も人間であるという心が伝わって好感がもてた。久々に見た笑野さんはやっぱりステキだ。澤瀉屋の中で重要な存在になってきているのが感じられて嬉しい。
右近さんの弾正は大らかでイヤみのないユーモラスな明るさがぴったり。秀太郎や巻絹にちょっかいを出すのも(明るいセクハラ)、大きな毛抜でヒゲを抜くのも客席の笑いを誘って楽しい。それでいて、ちゃんと磁石のトリックに気が付く鋭さ、ニセ万兵衛をやりこめる機転のよさ、八剣玄蕃を仕留める厳しさ、そうした弾正の人となりが自然に出ていた。
春猿さんの秀太郎、笑三郎さんの巻絹には、ともに古風さと現代的な空気を感じた。
ニセ万兵衛の猿四郎さんのワルぶりもいい。大きな声で強請りをかける態度は本当にワルそう。こんな男の妹と春風が恋仲だったのかとか、こんな男が弾正が地獄の閻魔さまに書いた手紙を読めるのかとか、疑問に思うが、この男は万兵衛ではなく、玄蕃の手下。弾正にやり込められて目を白黒させて慌てる様子がおかしい。
このニセ万兵衛、実は石原瀬平が弾正に殺された時の玄蕃の怒りは凄まじかった。悪事がバレそうになったときのじりじりした表情が印象的。
そしてついに玄蕃も弾正の手にかかる。この時、弾正が槍で玄蕃の首を落し、欣弥さんはよろよろと上手へ引っこみ、落ちた首が舞台に残るのだが、その瞬間、客席は大笑い。この笑いは私にもわかる。
弾正の引っこみは下手のなんちゃって花道から舞台に戻り、必要な距離を確保してあらためて引っこみに入る。楽しんだ観客の大きな拍手に送られて気持ちよさそうに引っこむ右近・弾正はステキだった。

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