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2013年8月10日 (土)

見応えある地中海4000年の美術品たち:ルーヴル美術館展②

88日 ルーヴル美術館展「地中海四千年のものがたり」(東京都美術館)
①同様、館長のレクチャーを中心にしています。私の感想はSFとしてちょこっとだけまとめました。
2章「統合された地中海―ギリシア、カルタゴ、ローマ」

・アレキサンダー大王の支配により、ギリシア語を使う文化圏ができた。「プトレマイオス6世の指輪」はギリシア人でありながらエジプトを支配していたプトレマイオス6世の印章である。二重の王冠をかぶっている。ギリシア的な描き方の2つが展示されている(作品番号097098)。
・「ひげのある男の頭の形をしたペンダント」はフェニキアのガラス技術(SF : !!)によって作られた。アレキサンダーによる統一は東方、フェニキア人による統一は西方。フェニキア人によりアルファベットが発明され、地中海に普及した。
フェニキアとローマの間のポエニ戦争によりフェニキアが敗北。フェニキア文化があまり知られていないのは、ローマによる征服と破壊のためである。フェニキア文化はほとんど墓の埋葬品からしかわからない。この作品に描かれているのが誰かは不明。(SF : 小さな作品だが、とてもユニークで一見の価値あり!!
・「水槽の床モザイク(?)」(135)は、人が歩いた床のモザイクだから今回は当時と同様の形で展示したいと依頼した。(SF : もちろん、モザイクの上を歩けるわけではないが、上から見下ろす形で展示されている。半円形のモザイクはイルカと遊ぶキューピッドたちが描かれている。魚や魚貝、波のぎざぎざ線による海の表現が楽しい。色もきれい。床モザイクは他にも3点展示がある)
SF : タナグラ人形が4点:111114。ルーヴルDNPミュージアムラボ第2回がタナグラであったから、思わず駆け寄って見てしまった。第1章で書き忘れたが、エジプトの立像の場合、一般に男性は左足を前に出しており、女性の足は閉じているということを勉強したのもミュージアムラボだった。第1章で左足を前に出した男性立像を見て、それを思い出した。
SF : ルキッラの巨大な頭部(134)は必見。とにかくデカい!! こういうものを作らせたローマ皇帝(ルキッラは皇帝ルキウス・ウェルスの妻)の権力を実感するし、昔映画で見たローマ時代の巨大彫刻などをまさに目の前にした感があった。よく運んだなあとも感心した。
・ローマによる地中海の統一(ローマ帝国)は政治的な統一でもあり芸術的な統一でもあった。しかし地中海統一は7世紀しか続かない。
3章「中世の地中海―十字軍からレコンキスタへ(1090-1492年)」
・キリスト教的東方=ビザンチン、イスラムの地、キリスト教的西方=ラテン系国家の3つの領域が対立する中世。
・イスラムが北アフリカに勢力を伸ばしたのは10世紀半ば。緊張は1090年から始まる。十字軍である。
・ヨーロッパ人にとって1492年は中世の終わりである。1492年はスペインのイスラム国家グラナダ王国の崩壊とコロンブスのアメリカ発見の年。ヨーロッパ人にとって世界の歴史が変わった。
・「恋する男女が描かれた杯」(140)。ギリシア正教、イスラム教、キリスト教3つの文化圏の対立は交流ともなる。技法は中国、中央アジア起源で地中海に伝わった。描かれているテーマは西欧的(フランス人騎士とプリンセス)。つまり西洋のテーマと東洋の技術の融合である。(SF : この作品、去年の夏に盛岡・仙台・福島を巡回したルーヴル展にも出展されていたような…)
・「シビーユの十字架」(147)はセイウチの牙で作られている。エルサレムを一時的に支配していたフランスのアンジュー伯フルクの娘のもの。
・「キプロス王国の紋章の入った盆」(149)は、中世イスラムの特徴を持ちながらキプロスを支配したフランスのリュジニャン家の紋章。(SF : フランスが一時的にせよエルサレムやキプロスを支配していたとは、すっかり世界史を忘れている私。)
・「聖ジョスの骸布」(155)はフランスの聖人・ジョスの骸布の一部。常設されたことはなく、今回初めて海外に貸し出された。文字が書かれていることで、中央アジアでの様子が西洋にも知られるようになった。
・「聖使徒ペトロトパウロ」(166)は西方・東方キリスト教会の接近を示している。

4章「地中海の近代―ルネサンスから啓蒙主義の時代へ(1490-1750年)」
・トルコ人の支配する中、唯一ヴェネチアがトルコ外だった。そこで対立が起こる。ヴェネチアは戦艦を持っており版図を広げた。「カペッロの肖像」(169)のカペッロはヴェネチア艦隊提督である。
・トルコ人は西洋人を、西洋人はトルコ人を模倣(トルコ趣味)。「レヴェット氏とグラヴァーニ嬢」(177)に描かれたヨーロッパ人は2人ともトルコ風である。(SF :「煙草入れ」197はトルコ人の西洋趣味だそう)
・「クレオパトラの自殺」(215)。トルコ支配下にありヨーロッパ人は地中海に行けず、地中海のことを一番知らなかった時期だそう。ここの解説はうまくメモできなかったので省略。
SF : この章に、エウロペの略奪をテーマにした絵画や装飾品が何点かある)
5章「地中海紀行(1750-1850年)」
・アーティストたちの地中海への旅の時代。グランドツアーにより、旅行客向けの風景画などイタリアに特徴的な美術品(新古典主義)が生まれた。ローマを訪れる人の多くが骨董品を買った。
・「バルコニーにいるアルジェのユダヤ女性たち」(251)はシャセリオーのオリエンタル志向があらわれた作品。1830年、フランスはアルジェリアを征服した。北アフリカはヨーロッパが支配していた時代によく描かれた。北アフリカにユダヤ民族がいることにシャセリオーは惹かれていた。(SF : この絵、描かれているのは女性の後姿なんだけど、女性たちの様子がとても生き生きとしていていい)
SF : 今回最大の目玉は初めてルーヴルから外へ出された「ギャビーのディアナ」(219)。途中、見逃したかと心配になったら、第5章にあった。意外と人が少なく、たっぷり見られた。嬉しいことに背後に回ることができるため、全身くまなくその魅力に与ることができる。大理石なのに袖の奥まで流れるように彫られた襞が実に美しい。穏やかでありながら厳しさを感じさせる表情も気品があって素晴らしく美しい。
SF : 最後に展示されているコンスタンティノープルのパノラマ(273)は1818年ピエール・プレヴォによって描かれたものである。街を180度(?)見渡すように、何枚もの絵から1つの巨大なパノラマ図絵を作っていて、なかなか面白い。

地中海4000年のものがたりは、小さな日用品から巨大な彫像まで、ギリシア、エジプト、ローマ、あるいは東西の勢力が対立したり融合したりしながら、文化的には影響し合って、優れた作品がたくさん生み出されたことをわからせてくれて、非常に興味深かった。

 

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