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2013年8月 6日 (火)

納涼歌舞伎第三部

85日 八月納涼歌舞伎第三部(歌舞伎座)
「狐狸狐狸ばなし」「棒しばり」という演目は20089月初めて赤坂に歌舞伎がお目見えした時と同じである。…。
「狐狸狐狸ばなし」
今でも手拭を頭に巻いて登場した勘三郎さんの顔が思い浮かぶ。扇雀さんが同じ格好で登場した時には一瞬女性に見え、勘三郎さんの面影と錯綜してちょっと混乱した。しかし伊之助は上方の女形役者であったわけだから、女性に見えても不思議はないのだろう。そういえば扇雀さんは赤坂では伊之助女房のおきわを演じたのであった。おきわも面白かったが、扇雀さんのやわらかな雰囲気は伊之助にぴったりだし、いやらしいしつこさは勘三郎さん以上(勘三郎さんは可愛い男に見えた)で面白かった。
おきわは今回は七之助さん。花のようにきれいで純情な娘のような顔をしながら、考えていることはどす黒い。その落差が私はかなり気に入って、扇雀・伊之助がしつこいこともあり、ずっとおきわを応援してしまった。最後まで自分の恋を貫くために(と言ったら聞こえはいいが、そんなきれいな感じじゃなくてもっとドロドロ。でも、ある意味、おきわの純情なのかもね、と七之助さんを見ていて初めてそう思った)、周囲を欺いてまでの生き方はなかなかあっぱれではないか。ただ、おきわにはもうちょっと生活のだらしなさが見えてもいいのかもしれない。
赤坂で段治郎さん(現・月之助)が演じた破戒坊主・重善は今回は橋之助さん。段治郎さんはきれいでさわやかだったという印象があるが、橋之助さんはいかにも、な感じで、おきわも牛娘もなぜそこまで入れ込むのか。どっちつかずの煮え切らなさ(と言うより、女を秤にかけている?)が女を惹きつけるのかもしれない。体も大きく態度もデカいくせに案外小心者の怖がりというギャップが面白い。
勘九郎さんの又市は顔も動き・仕草・セリフも役は違えどお父さんにそっくり。この物語のキーマンとしての存在感はもう一歩かもしれない。
亀蔵さんの牛娘はとにかく奇怪で、さんざん笑わせてもらった一方で、ちょっと悲しいものを覚えた。あんなに重善を好きなのに、好きだからこその妙なクセなんだろうに、そのせいで嫌がられるんだもの(伊之助のしつこさに通じるか)。
秀逸だったのが寺男・甚平の山左衛門さん。主役を邪魔せずに独特の存在感を示す。空気といい味といい、最近の山左衛門さんは充実している。
福造の巳之助クンも若いながら芝居の空気をこわすことなく頑張っていた。
しょっぱな、芝のぶちゃんが長屋の荒っぽいおかみさんを演じていたのが珍しかった。
全体にテンポもよく、ひとの欲と色が絡み合い巻き起こす狐と狸の化かし合いはとても面白かった。

「棒しばり」
たまたまこの日、「徹子の部屋」に三津五郎さんが出ていて、私は途中から見たのだが、勘三郎さんとの「棒しばり」について、「20代の頃から2人で何回もやった。若い頃は祖父(だったかな)に、棒しばりはふんわりと踊るものだ、お前たちみたいにバタバタしていてはダメだと言われた」、「40代になってやっとそういう踊り方ができるようになった時、2人で握手をした」、「新しい歌舞伎座でも2人で踊るつもりでいた」というような話を聞いたばかり。三津五郎さんがうっすら涙を浮かべていて、私も思わず涙ぐんだのであった。
そのせいでもあるまいが、三津五郎さんが時々勘三郎さんに重なって見えた。不思議なことに「狐狸狐狸」でお父さんそっくりと見えた勘九郎さんの太郎冠者にはまったく勘三郎さんの面影は感じなかった。それは太郎と次郎の違いだからというわけでもないと思う(私は2人の「棒しばり」を1回しか見ていない)。「棒しばり」にかける三津五郎さんの気持ちの強さが勘三郎さんに通じたのではないだろうか。
三津五郎さん、珍しくセリフを噛んだが(歌舞伎役者ってセリフ噛まないよなあと何となく思っている時だったのでちょっとびっくり)、棒にしばられている手の動きは自由自在(縛られる時、後見の八大さんが左右交互に目を配り、縛られ具合をしっかりチェックしていた)。行儀のよい舞でありながらふんわりと酒飲みの楽しさを表現する踊りはさすがである。ずっと目が離せないほど惹きつけられた。
七之助さんとコンビで何回も踊っているであろう勘九郎さんは三津五郎さんと一緒だと必死でついていっている感じがした。勘九郎さんも踊りはとても上手だが、まだばたばたの段階なのかもしれない。玉・菊の「二人道成寺」みたいに、ベテランが若手と組んで、その踊りの精神を伝えていくのは興味深い。
13080601hashigo なお、今月は橋吾さんが名題披露をしている。あらためて、おめでとうございます。
<上演時間>「狐狸狐狸ばなし」102分(18202002)、休憩30分、「棒しばり」37分(20322109

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

これはお話したかもしれませんが、勘三郎と三津五郎の「棒しばり」の思い出では、いまは無くなってしまった、中座に遠征して「事件」を目撃したことが挙げられます(1992年7月)
まだ勘九郎と八十助と名乗っていた時代です
二人の棒しばりは東京ではそれまで歌舞伎座と浅草で観ていましたが大阪では初めてでした
事件は、所作事の途中に起きました
なんと肝心の棒が真っ二つに折れてしまったのです
でも、何事もなかったように後見が、素早く正面下から予備の棒を取り出して、いささかの停滞もなく演じ続けられました
なにがあっても動じない舞台人の凄さをその時感じました
その後、二人の棒しばりは1998年と2004年も拝見していますが、まさか04年が最後になるとは思いもよりませんでしたね
勘三郎と三津五郎の名跡としては棒しばりが実現しなっかた事がとても悲しいです・・・
若い世代の所演を観ていても、思い出すのは二人の演技で、「勘三津爺」と言われそうですが、これは鉄板でした
なんとかこの八月の最後の方で帰国して、観たいと思っております

投稿: うかれ坊主 | 2013年8月 6日 (火) 23時36分

うかれ坊主様
こんばんは。
中座の「事件」のお話は初めて伺いました。棒が折れる!とはビックリですが、実は先日の日生劇場でも菊之助さんの棒が折れたそうなんです。そういうことがあるのですねえ。菊之助さんもやはり慌てることなく踊り続けられたそうです。折れても動じないのは、普段から万が一のことも考えて稽古しているのでしょうか。舞台はナマものですから何があっても不思議はないし、精神的にも鍛えているのでしょうね。
しかし、本当に「勘三郎」と「三津五郎」でふんわりした「棒しばり」を見たかったですね。
納涼歌舞伎は24日千穐楽ですから、間に合うようにご帰国されますように。

投稿: SwingingFujisan | 2013年8月 7日 (水) 00時35分

そうでした24日が楽でした
仕事の調整をして劇場に行かれるのが
結局、24日だけになりました
25日でも大丈夫と思っていましたので
助かりました、ご連絡有難うございます
三津五郎さんの新三と「棒しばり」は観ておきたかったので第2部と第3部を2等席でおさえました
第1部も両花道でしたら良かったのですが・・・
前の日におそらく「酒盛り」がありそうなので、第1部は体調を考えて「回避」です
七之助の鏡獅子を観られないのも心残りですけど・・・

ところで、今でも「一幕見」はそう簡単には観られないのでしょうね
ましてや土曜の楽では・・・
久々の歌舞伎座でようすのわからないので、状況教えて頂ければ幸いです

投稿: うかれ坊主 | 2013年8月 8日 (木) 10時34分

うかれ坊主様
お役に立ててよかったです。八月最後のほうでご帰国予定とコメントに書かれていらっしゃったのでひょっとして間に合わないのでは?と心配になったのは私も第二部の幕見をいつにしようと日程を調べていて意外と早い千穐楽に気が付いたからでした。
幕見の様子はごめんなさい、よくわからないのです。でも評判のいい演目だと当然混むでしょうね。ましてや土曜日の楽ですし。第一部の幕見は早く並べば大丈夫だと思いますが、前日酒盛りではきついですね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年8月 8日 (木) 18時56分

暑いですね。私のところは、雷のいなずまだけで雨が降らず、あまり涼しくなりません。
ところで、歌舞伎座、今月は前半観劇でした。私の良いものは、まず、大和屋の「棒しばり」、何と良いのでしょう、です。大和屋の踊りを見るのは正しく「今でしょ」。暫く前の舞踊の名手といえば、天王寺屋でしたが、年を取ると、チョット・・・ということが多かったことを思い出します。
次に、良いものは、やはり大和屋の髪結新三、当代の新三と言われる音羽屋、最近はそうでもないのですが、どうしても女形の香りが残って黙阿弥の世話物の主役に少し違和感があります。今回の大和屋、逆に音羽屋や十八代目のような色気が薄いものの、男性的で、二代目松緑(残念ながら新三はテレビだけですが)を彷彿とさせました。永代橋が、ともかく教科書的な良さでした。
そして、勘九郎の「鏡獅子」、襲名の時よりも、前シテが大分よくなっています。ギクシャクした硬さが少し取れてきた気がします。後シテ、元気溌剌、跳躍の高さが海老蔵と比べてどうかなと本筋と違うようなことを考えてしまいました。

投稿: レオン・パパ | 2013年8月11日 (日) 16時17分

レオン・パパ様
こんばんは。本当に暑かったですね。雷鳴に期待しましたが、うちのほうもぽつっと落ちただけで終わってしまいました。がっかり。

今月の歌舞伎座は第一部から全部ご覧になったのですね。「棒しばり」はよかったですね。踊りのよくわからない私でもその良さに惹きつけられました。
三津五郎さんの新三は見てもいないのに、その男性的な粋さが目の前に見えるような気がします。何とか幕見で、と考えております。
「鏡獅子」は無理かも。見るとしたら幕見の新三の前にこちらも幕見でというところでしょうが、勘九郎さんのは次の機会に譲ることにします。何しろ今はあまり暑くて、家からあまり出たくない…。だらだらだらだら、こんなことではいけませんね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年8月11日 (日) 21時41分

酷暑お見舞い申し上げます。
棒しばりの「事件」のことで反応してしまいました。
7日に三津五郎さんが、開いた扇キャッチで受け取れなかったのです。
客席からは、ガンバレ的な手拍子が少しありましたが、落ちた扇はそのままで後見・八大さんが代わりの扇を縛られた右手に持たせてから、落ちた扇を回収。
あの三津五郎さんでも、こういう事があるのだと驚きました。

投稿: とこ | 2013年8月14日 (水) 22時07分

とこ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
名手・三津五郎さんにしてそういうことがあるとは、あの扇キャッチを百発百中というのはなかなかないことなのかもしれませんね。お芝居はまさにナマものだなあと思いました。でも、そういう失敗があっても三津五郎さんの踊りの質が決して損なわれるものではないと信じております。八大さんとのコンビネーションが目に浮かんでちょっと胸にしみるものがありました。

毎日暑いですね。とこ様もご自愛くださいませね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年8月14日 (水) 23時28分

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