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2013年9月 3日 (火)

こんな美術展が見たかった:「若冲が来てくれました」②

829日 「若冲が来てくれました」(福島県立美術館)
130903jakutyu 続き。
展示のカテゴリー分けも以下のようにユニークで楽しい。
1
 ようこそプライスワールドへ
1)目がものをいう
図録によれば、「今にも喋り出しそうなキャラクターがたくさん」、「『目は口ほどにものをいう』のとおりで、思わずセリフの吹き出しを添えたくなります」という作品、目力が印象的な作品等々、ユーモラスな作品が並べられている。「<かんざん>さんと<じっとく>さん」(原題「寒山拾得図」)は私の好きな曽我蕭白の作品で蕭白らしさがみられる。
2)数がものをいう
文字通り、たくさんのモチーフが一つの画面に描かれている。「<おたふく>がいっぱい」(「百福図」:雅熈)では、3人のおたふくさんを探そうというクイズつき。
「三十六人のうたの名人」(「三十六歌仙図屏風」:酒井抱一)には35人しか描かれていない。それなのに三十六人とは? 「1人はとても高貴なお方」(斎宮女御)なので奥の几帳の陰にいるのである。
前期のみの展示「<おしゃかさま>がお亡くなりになりました」(「仏涅槃図」:中路定季)は見逃したのが残念。
「よりそうツル」(「群鶴図」:若冲)は何羽いるのか、この頭は、この脚はどのツルのものなのか。見ていて楽しい。
3)○と△
異なる2つのものを対比させた作品を集めている。「雪の夜の白いウサギと黒いカラス」(「雪中松に兎・梅に鴉図屏風」:葛蛇玉)は雪の夜のしんとした空間が目の前に広がる、ちょっとぞくっとくるほどに惹かれる作品であった。「白いゾウと黒いウシ」(「白象黒牛図屏風」:長沢芦雪)はまさに○と△。象は丸く描かれ、牛は三角をなしている。そして白い象の背中には黒いカラスが2羽、黒い牛の前には小さな白い犬が。象はかなりの年配らしくおだやか、牛は若く精悍、カラスは元気そう、犬はだらんとしている。すべてが対照的で面白い。
2
 はる・なつ・あき・ふゆ
四季の植物、生き物が描かれた作品たち。「貝と梅の実」(「貝図」:鈴木其一)は、貝の蓋の毛まで丁寧に描きこまれている。
3
 プライス動物園
トラが5点。虎の絵と言えば「吃又」だが、ここに集められた虎たちは、画家たちが実際に見たことのない動物を描いているので、どこか猫っぽい。トラ皮やトラの頭蓋骨などを手に入れた画家もいて、たしかに毛並などはかなりリアルなのだが、顔が猫っぽいのだ(とくに目)。
蕭白の「野をかけまわるウマたち」(「野馬図屏風」)は、やっぱり蕭白らしいタッチでリズミックで好き。「身をおどらせるコイ」(「鯉魚図」:椿椿山)もよい作品だと思った。
4
 美人大好き
いわゆる美人画。「筆をとめて思案する美人」(「二美人図」:勝川春章)は、赤色で縁取られた遊女の手紙が印象的。「ラブレターを読む美人」(「文読む美人図」:初代歌川豊国)には、ふとフェルメールを思い出した。「雪の中をあるく美人」(「雪中美人図」:磯田湖龍斎)は清々しく美しい。
5
 お話きかせて
源氏物語をはじめとする物語、ストーリー性のある絵画が展示されている。作品のそばに場面の解説があるのだが、見比べるにはちょっと距離があるかなあというのが唯一不満。もっとも、これをほどよく並べるのは相当難しいかも。でも、解説を見て読んで作品を見ると、話がよくわかって面白い。

6 若冲の広場
いよいよ若冲16作品の集められたコーナーである。プライスさんが最初に買い求めたのが「ブドウの木」(「葡萄図」)。まだ若冲ではなく落款は「景和」である。葡萄の葉や枝が重なっていなくて、細い隙間が作ってあるのが見事。「『まんぷくじ』のながめ」は、若冲にしては珍しい風景画で、他の作品にもみられる筋目描きの手法が用いられている。「飛び跳ねたコイ」(「鯉魚図」)は鯉の頭から身体3分の1くらいまでしか描かれていないが、躍動感が素晴らしい。「伏見でつくられたお人形」(「伏見人形図」)には和んだ。
7
 生命のパラダイス
作品は「花も木も動物もみんな生きている」(「鳥獣花木図屏風」)。1cm四方のマス目が片側43,000個、両側86,000個。これ色で埋めた大作品である。白い象と鳳凰を中心に、トラやラクダ、サル、ウマ等々、さまざまな動物がのどかに暮らしている感じ。
マス目に色を付けるというのは、西陣織の下絵の手法だそうで、これに倣ったという説が有力らしい。また、縁の絵柄がペルシア絨毯の絵柄に似ていて、これは祇園祭ではペルシア絨毯が飾られていたことの影響ではないかとも言われているらしい。どちらも若冲が京都で活動していたことを思えば頷ける説である。
この作品の色づかいは若冲とは思えないようなポップな感じで、まさにパラダイス感いっぱいである。そして鮮やかな色がきれいに残っている。だからこそ江戸時代にこんな絵を描いた若冲という人の奥深さに感動する。
どの作品も状態がとてもよくて、プライスさんが大事に大事に保存していたことがわかる。こんなにたくさんの作品をよくぞ貸してくださったと感謝の気持ちでいっぱいになった。被災地の人たちの心がどれだけ和むことであろう。私もそのおすそ分けをいただいた。本当に見てよかった!!

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コメント

私は、盛岡で見ました。いやぁ~素晴らしかったです。駅からタクシーに乗ったら「お客さん、どちらから?」と運転手さん。なんでも「盛岡もかつてない混雑で、自分が運んだ最も遠くからのお客さんが福岡の人。前期、後期の入れ替えも含めて全部見たいーと盛岡に3泊した」そうです。ホント、見応えのある素晴らしい若冲展でした。好きなだけ見られましたしね、東京だと人の頭ばかりでこうはいきませんよね。

投稿: るな | 2013年9月 3日 (火) 09時03分

SwingingFujisan様 こんにちは!

「若冲が来てくれました」ご覧になったのですね!
私は仙台市博物館に行きました♪
私は有名な特別展がある時だけ出かける、所謂ミーハーでして…
アートの良し悪し?の判断はできませんが(^_^;)
この「若冲が来てくれました」は見応えがあって堪能しました☆
プライスさんのご厚意でしょうか。
このような美術展としては破格の料金で、展示数が多かったと思います。

もう震災時のことは思い出さないようにしています。
それでも、心がヒリヒリしながら考えてみると、
娯楽が心の支えだったような気がします。
我慢したり頑張ったりの先に必要なのは、私には笑えること楽しいことだったのかな、と。
…浦井君ファンになったのも、ちょうどこの時です(笑)
ゲキ×シネで観た薔薇サムのシャルル王子に気持ちが救われて、今の私があると思います(笑)

話がズレてしまいました(^_^;)
もう一度見たいです♪
福島県立美術館はとても素敵なロケーションの中にありますね☆
会期中行けるかしら…(*^_^*)

投稿: オレンジスイート | 2013年9月 3日 (火) 10時48分

すごく楽しそうな、おとぎの国のような展覧会ですね!
テレビで若冲のスペシャルを見た時に、鳥獣花木図屏風の話もあったのですが、ぜひ一度生で見てみたいなと思っています。

投稿: ささ | 2013年9月 3日 (火) 16時55分

るな様
コメントありがとうございます。
福岡の方、すごいですね。そういえば、何年か前、博多座に歌舞伎を見に行ったとき、大宰府に足をのばしたら九州国立博物館で若冲展をやっていたので立ち寄ったのが私が若冲に興味をもった最初でした。
今回の展覧会は点数もほどよく、若冲のほかにもいい絵がたくさんあって、おっしゃるように、混んでいるとは言っても東京のように人の頭の後ろから見るようなこともなく、好きなだけ楽しめました。
でも福岡の方のように、入替分も見たかったですわ~。
昨年のルーヴル展は仙台で見たので、盛岡だけまだ行っていないんです。前期に行けばよかったなあと今さらながら残念な思いでいます。

投稿: SwingingFujisan | 2013年9月 3日 (火) 17時33分

オレンジスイート様
コメントありがとうございます。
オレンジスイート様もご覧になられましたのね(仙台でもやっていたので、ご覧になったかしらと思っていました)。若冲は宮城県美術館じゃなくて仙台市博物館でやっていたのですね。私が去年ルーヴル展を見たのは宮城県美術館のほうでした。宮城県美術館もとても素敵な、空気の気持ちよいところでしたっけ。
観覧料はご指摘のとおり、プライスさんのご厚意でしょうね、チケット売り場でびっくりしました。

私などには想像もつかないおつらいことが色々あったでしょうし、今でも傷口はふさがっていないのだとお察ししますが、そうですよ、笑って楽しむことが大切なんだと私も思います。オレンジスイート様の何十分の一しか怖い思いをしていない私でも、1カ月くらい経って、普段なら歯牙にもかけないテレビのくだらない番組の笑いがどんなに救いになったことか。
オレンジスイート様のお心を慰め、力になったのは浦井クンだったのですね!! 浦井クンファンの1人として本当に嬉しい。
浦井クンに歌舞伎、そして美術展、上質な娯楽が人間にとって大切だということが実感できますね。若冲をもう一度ご覧になれる機会があったらいいですね。私ももう一度見たい。

投稿: SwingingFujisan | 2013年9月 3日 (火) 18時00分

ささ様
コメントありがとうございます。
こういう展示の方法は通常はかなり難しいようです(題名を変えるなんて、まず無理だろうと想像はつきますが、これが今回のポイントだったと思います)が、条件が揃えばできるんですね。
若冲のスペシャルは去年でしたか、NHKがかなり力を入れていましたね。私もざっと見て(お恥ずかしいながら全部ちゃんと見る気力がなくて、早送りで興味深いところだけ通常速度で見ました)、その筆の細かさに感心したものです。
「鳥獣花木図」は気の遠くなるような作業ですよね。あの時代にあのような発想で描ける若冲ってすごい。色鮮やかで素晴らしい作品でした。
ささ様のところから福島は遠いし、なかなか機会はないかと存じますが、東京からは新幹線で1時間半程度ですから…。9月23日までやっています。

投稿: SwingingFujisan | 2013年9月 3日 (火) 18時14分

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