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2013年11月10日 (日)

上野でハシゴ:「ターナー展」「興福寺仏頭展」

1022日 「ターナー展」(東京都美術館)、「国宝 興福寺仏頭展」(藝大美術館)
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月の感想がまだ書けていなくて、あんまり日が経ってしまったので、ごくごく簡単に2つを一気にいきます。
13111001turner 「ターナー展」は、風景画が好きな人にとっては必見の素晴らしい展覧会だと思うし(展覧会として、よく構成されている)、ターナーの絵の見事さはよくわかるけれど、見ていくうちに、人が描かれていない絵っていうのは私にとってちょっとつまらくなくもない。と言いながら好きな絵はけっこうあったわけで…。
「レグルス」(敵国にまぶたを切られ、陽光に失明したレグルス将軍が見たであろう光)は光の描き方が印象的。「平和―水葬」(海難事故で亡くなり水葬された友人を追悼した作品)は黒色と光の対照に息を
呑み粛然とした気持ちになったし、ジェリコーのかの有名な「メデューズ号の筏」から着想を得ているという「海の惨事(別名「難破した女囚船アンピトリテ号、強風の中で見捨てられた女性と子どもたち」)は、たしかにあの構図になっていてそれだけで目についたし、「グリゾン州の雪崩」の前では最近実感させられている自然への畏怖を具象化された気がした。
絵画だけでなく、スケッチやターナー愛用の絵の具なんかもあって興味深い(当時は絵具は豚の膀胱に入れられていた。チューブはできたばかりで、黄色だったかだけがチューブに入っていた。ちなみに、黄色はターナーの黄色と言われるくらいターナーでは重要な色)。
またターナーは子供の頃から絵がうまくて、理髪店をやっていたおとうさんが店先に息子の描いた絵を並べて売っていたというエピソードが微笑ましく面白かった。
なんだ、けっこうターナー好きなんじゃない。

13111002butto 「仏頭展」はハシゴでかなりくたびれていたけれど、藝大の美術館は好きだし、展示もとってもよくて楽しかった。藝大の美術館でこんなに鑑賞客が多いのは初めて、っていうくらい人が入っていたのでびっくり。
まず、最初に「逗子入り木造弥勒菩薩半跏像」が出迎えてくれる。仏教徒じゃないけど、仏像には癒される。その逗子も展示されていたが、この中にこの像が入るのかなと何度も首をかしげた。
疲れていたので絵画・文字系はささっと流して、逸る気持ちで次へ向かう。
第二展示室で「板彫十二神将像」を見る。厚さ約3cm、高さ約1m、幅約40cmという檜の板に十二神将が彫られている。板彫りなのに立体感があって見事。
いよいよ第三展示室、仏頭の部屋へ。
おお、そこにはまず木造十二神将が仏頭を守るかのように立ち並んでいるではないか!! 展示室の広さ(こんなに広かったっけ?)、荘厳な空気、立像一体一体の迫力、そして12体揃った立像の圧倒感――わくわくする。頭の上に干支の動物をのせたそれぞれの神将は見得のようなポーズを取って躍動感あるのに、干支の動物が小さくて、これが羊?みたいなわからないのもあったけれど、なんかユーモラス。
十二神将の向こうにはお目当ての仏頭が!!
この仏頭はその大らかで優しい美しさ、包容力に溢れた顔立ちとは裏腹に数奇な運命をたどっているそうだ。そもそもは飛鳥の山田寺の「丈六像」(身長1尺6寸≒4.85mの像)として鋳造されたものであったが、当時再見中の興福寺では金堂(東金堂)はできたものの仏像制作がなかなか進まなかったため、山田寺からこの像を移したという経緯がある。移したというと聞こえはいいが、強奪したというのが本当らしい(ご本尊が奪ったものだったなんて、そんな、セコい…。でも山田寺にずっとあったら、現在まで残っていなかった可能性もある)。完成当時は金メッキが施されていて大変美しく、興福寺の金ぴかのお堂にぴったりだというわけ。
ところが、1411年に落雷による火事が起こり、ご本尊を救い出すことができず(東金堂はそれまでにも何度も火災に見舞われていたが、その都度、ご本尊は無事に運び出されて難を逃れていた)、仏像は頭だけになってしまった。その後、東金堂は再建され、新たな本尊がつくられたが、仏頭の行方はわからなくなり、そのまま忘れられた存在になっていった。その仏頭が再び人々の目に触れたのは1937年のことである。東金堂解体中に、本尊の台座の中に安置されているのが発見されたのである。どういう経緯で台座に納めらたのはまったくわからないそうだが、もしかしたら捨てられる運命にあったのをしのびなく思った人がそっと入れたのか、これまでのご本尊に感謝して納められたのか。いずれにしても、現代の我々がこの静謐な美しさを漂わせた仏頭を拝めるのは実にありがたいことである。
展示は360度全方向から仏頭を見ることができるようになっており(頭部だけで98.3cmとデカいです。何しろ丈六像の頭だから)、激しい火災によって大きく破損した傷跡はいたましいが、そうした運命の中を生きぬいた仏頭の穏やかなお顔は見る者の胸を打つ。
さらに、仏頭と十二神将が1か所に揃うのは600年ぶりのことだそうで、長い年月を経た主従の再会というのにも感動する。
仏頭の復元、当時の中金堂(現在、再建中)の姿が場内で上映されているVRで見ることができる。今年の3月に凸版の印刷博物館で見た、あのVRで、こちらは画面が小さい分、多少迫力に欠けるものの、往時の奈良へタイムスリップできて楽しい。

 

 

 

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