« やっと④:11月歌舞伎座夜の部「仮名手本忠臣蔵」 | トップページ | 史上初 »

2013年12月 8日 (日)

明治座11月花形歌舞伎千穐楽夜の部

1125日 十一月花形歌舞伎千穐楽夜の部(明治座)
11月、これで終わりじゃないのだぁ。
「毛抜」
笑三郎さん、久しぶりに見た、ような。ずいぶん高いなあと思った声はとてもきれい。巻絹役として非常に安定していた。
松也クンは秦民部。春猿さんが弟の秀太郎だし、八剣玄蕃が猿弥さんとなると、年齢的には玄蕃の息子数馬(弘太郎)と同等でかなり若い民部である。落ち着いた立居振舞で若さをカバーしようという努力は見えたが、やっぱり若い。でもとてもカッコよかった。春猿さん、弘太郎さんとも真摯な争いがよい。猿弥さんの悪役はさすがの貫録で、大きさを見せ、とにかくうまい。笑也さんの春風に騒動のもととなった申し訳なさが見え、門之助さんの春道がやはり芸の大きさで舞台を締めた。新悟クン(錦の前)は美形とは言えないが、おっとりした上品さ、行儀の良さがよくて、声もきれいだし、毎度言うようだが私は好きだ。
さて、粂寺弾正の獅童さんだが、堂々たるやんちゃぶり、愛嬌、色気、華、どれをとってもニンだと思うし、その通りよかったのだけど、セリフがひどく気になった。発声とか節回しとか團十郎さんそのまんまといった感じなのである。あれは團十郎さんだからいいんじゃないだろうか。獅童さんは獅童さんなりのセリフまわしにしてもいいのではないか。また獅童さんは声がハスキーなので張り上げた声があまりきれいじゃないと思った。でも、客席は大いに笑っていたし、拍手も大きかった。もちろん、私も面白いとは思ったのよ。今後もこの役は獅童さんの当たり役になってほしいと強く願っている。
「連獅子」
澤瀉屋の「連獅子」は初めて見た(と思う)。
全体的な印象は、2人の舞にキレとともにやわらかさがあったということ。とくに弘太郎さんの仔獅子はきびきびした動きとやわらかさ、さらには幼さのようなものがうまく噛みあい、いずれも仔獅子の特徴を表していて感銘を受けた。若さと上品な躍動感に溢れていた歌昇クンの仔獅子とは一味もふた味も違うような気がしたが、どちらがいい悪いじゃなくて、どっちもよくてどっちも好き。
狂言師右近・左近として登場した右近さんと弘太郎さんが互いに向き合った時の対称性がとてもきれいだった。互いにすっと足を出すところがとくにきれいで見惚れた。右近さんは父親というよりはお兄さんみたいな感じだったろうか。兄が弟を鍛える、心配する、弟は兄を慕い、必死に谷を駆けあがる、感動的な場面だった。
澤瀉屋の「連獅子」では他のと違って二畳台が3つ出てきて、左右2つの台の上にもう1つ台を置き、オリンピックの表彰台みたいな感じになる。牡丹の花は左右の台の後ろ端に1本ずつ。下手側が白で上手側が赤であった。
親獅子は向かって左の段から真ん中の台へ移り、それに呼応して仔獅子も花道で動く。親が真ん中の台に落ち着いたのを見ると、仔獅子は後ろ向きに花道を引っこみ(ここも、いつも見る「連獅子」とは違う)、すぐに再登場する。振付もずいぶん違うような気がした。毛振りは右近さんが中央の台で、弘太郎さんは花道から本舞台へ移動しながら振る、そして右近さんが台から下りて、2人で舞台を回りながら振る。動きにしても回数にしても、やり過ぎないといった感じなのだが、それでもその勇壮さが劣ることはまったくなく、見終わって非常に満足したのであった。
宗論は猿三郎さんと猿四郎さん。この2人の踊りは珍しいんじゃないだろうか。コミカル度はかなり高かったが、行儀がいいから品を落すことなく、十分楽しませてもらった。

「権三と助十」
江戸の空気が一番感じられたのは松也クンだが、全体に江戸長屋の荒っぽくも人情深い空気は出ていたと思う。ただ、千穐楽だからかどうかわからないが、楽屋落ちとアドリブが多くて、ちょっとやり過ぎ感があった。たとえば、「フライングゲット」。最初は松也クン(助十)と喧嘩した笑也さん(権三の女房おかん)、松也クンが井戸替えのために上手に引っこむと「とんだフライングゲットだね」の捨て台詞。この時は気が付いて笑う人は少なかったが、その後何度か「フライイングゲット」を連発し、「しつこいな」と松也クン、半ギレしていた。
笑也さんはなんだか忘れたけど、何かをきっかけに「にょろにょろ」と身体をくねらす動きを繰り返して大ウケ。透明感のある笑也さん、長屋のおかみにしてはきれいすぎるからか、色々おかしな行動をしていた。
ここでも悪役・勘太郎の猿弥さん、不気味な登場だったのに、長屋のみんなに縛られたあげく、松也・獅童・弘太郎の3人に脱がされ、「ふんじばるのはわかるが、なんで脱がすんだ」と叫んでいた。ここは千穐楽バージョンなんだろうか。猿弥さんの体型をからくような場面もあって、すっかり笑いの場面になってしまった。
ハプニングが1つあった。勘太郎が猿回し(門松)の猿を殺した時、猿の足が取れちゃって、笑也・獅童・松也が大笑い、客席も爆笑。足ネタでしばらく笑いがおさまらず、あげくに猿弥さんに話しかけられた獅童さんが「足だけはご勘弁を」とアドリブで返したからまたまた客席爆笑。そんなこんなで、ここは芝居がちょっとこわれた。
松也クンは脚がしっかりしていてきれいだった。
獅童さんもよかったけれど、一心太助のほうが好もしいと思った。と言うより、アドリブやハプニングが暴走して芝居がところどころちょっと逸れたりしたから、全般にそっちに注意がいってしまい芝居そのものが薄まったような気がして、獅童・権三の良さが見えなくなったのかもしれない。
弘太郎さん(助十弟・助八)はちょっと乱暴過ぎかなと思ったが、その分、本当は兄思いな面が強調されたと言えようか。
ここの猿回しと言えば私にとっては秀調さんで、門松さんの猿回しはその秀調さんを髣髴させるものがあった。
笑三郎さんの彦三郎は若々しくて、右近さんに合わせてか、腰をかなりかがめていた。唯一真面目な役で、理不尽な裁きへの怒り、父の獄死を嘆く哀れさがよかった。
智恵と飄々とし老獪さ――右近さんの大家が絶妙にうまかった。そういえば、一心太助の時も右近さんは巧みな老け役ぶりを見せたのであったっけ。「一心太助」、あの配役でもう一度見たいなあ。
幕がしまってから拍手が34分(それとも5分?)、もう場内放送も入っているのに鳴りやまず、ついに定式幕が再び開いた。笑也・右近・獅童・松也の4人が舞台に立って、お辞儀した。弘太郎さんがいてもよかったのに。
<上演時間>「毛抜」70分(16151725)、幕間30分、「連獅子」55分(17551850)、幕間30分、「権三と助十」85分(19202045

|

« やっと④:11月歌舞伎座夜の部「仮名手本忠臣蔵」 | トップページ | 史上初 »

歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« やっと④:11月歌舞伎座夜の部「仮名手本忠臣蔵」 | トップページ | 史上初 »