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2013年12月 1日 (日)

やっと①:11月歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」

1113日 顔見世大歌舞伎昼の部(歌舞伎座)
とうとう11月中に感想が書けなかった。やっと先がみえてきたので、少しずつ書きます。
開演前、定式幕があいて、緞帳がおりてきたから「仮名手本なのに?」とびっくり。そうしたらいつもは食事時間の幕間にある緞帳紹介が始まったのであった。一通り紹介が終わると再び定式幕となった。さよなら公演の時もそうだったっけ? 覚えてない。
「大序」
人形による出演者の紹介は楽しい。いちいち拍手しちゃうとせっかくの名前にかぶっちゃうので、私は今回は拍手はなるべく控えるようにした。二度呼ばれたのは菊五郎、梅玉、吉右衛門の3人だったかな。
ユーモラスな人形が客を和ませて引っこんだ後のとざいと~ざ~いの声は何度聞いてもやはり胸が高鳴る。浄瑠璃に合わせて11人が息を吹き込まれるかのような動きも好きだ。いよいよ始まるんだなと思う。
一気に顔世登場に飛ぶが、顔世が呼ばれることになった時、花道のほうに反応を見せたのは師直(左團次)だけだった。そして顔世が出てくると、左團次さんの表情が緩む。左團次さんの師直には全体に小狡さのようなものが感じられて、それはそれで師直の嫌味ったらしさなのだが、もう少し艶っぽさがあったらよかったのと、意外とねちっこさが薄いような気がした。
芝雀さんの顔世は控えめで、言い寄られた時の色気、危うさがとてもよかった。もちろん顔世自身にそんな気はさらさらないのだけれど、変なことしたら舌を噛み切って死にますわよ的な強さではなく、強気に迫れば落ちるんじゃないかという危うさ、それが師直をなおさら燃え上がらせるのだろう。
梅玉さんの桃井若狭之助は正義感が強くて、こういう輩は許せん、な感じがよく出ていた。師直にさんざんいじめられている時直義が戻ってこなかったら絶対に若狭之助がやっていたのに、と運を感じた。それでもまだ翌日やってやるぞと息巻いていたのに、加古川本蔵の働きで怒りのもっていきどころがなくなり、若狭之助本人はさぞカリカリ納得がいかないだろうが、お家断絶の危機を免れたのである。判官のやったことを知って後にどう思っただろう。
菊五郎さんの判官は若々しく、おっとりやわらか鷹揚で、四人四様、この場だけで人物がうまく紹介されているものだとあらためて感心する。
「三段目」
「進物の場は」松之助さん(鷺坂伴内)の味とうまさで楽しめた。「刃傷の場」は
途中で眠くなって(昼の部は無理して出かけてるから、絶対眠くなる)、「フナざむらい」のところは見逃した。
判官のしでかしたことはそれこそ大事件ではあるけれど、あのおっとりした判官がこれほど怒りに駆られるのだ。加古川本蔵に止められた悔しさは察するにあまりある。
「四段目」
淡々とそして粛々とその後の始末を受け入れる判官だけに、より心の奥底の無念さを感じた。判官と力弥が目と目で語り合う場面には深い悲しみと特別な親密さ・信頼感が漂う。客席に背を向けて感情を表現する梅枝クンが見事だった。左團次さんは二役目の石堂のほうが私は好きだ。判官の遺体の背中に上意書を載せようとしてうまくいかず、結局滑り落ちてしまった。
吉右衛門さんの大星は静かに駆けつける。それだけに、道中どんな気持ちだったろうかとその心に思いを馳せる。史実に近い「元禄忠臣蔵」とドラマチックな「仮名手本忠臣蔵」、時々どちらがいいだろうと思うが、切腹の場はどちらも胸が締め付けられるようになる。比較するのは間違っているだろう。
この後、浅野家の家老としての立場と一家臣としての立場の狭間で、すべての重圧がその肩にのしかかった大星の孤独な戦いを思うと、胸が痛む。足利へ攻め入ろうと逸る家臣たちに対する「恨むべきは足利殿ではない」との渾身の説得には胸が震える。城を明け渡し、悲しみが堰を切って押し寄せ、九寸五分についた判官の血を口にして主君の無念を自分の無念として心に刻む大星の涙には私も涙をこぼさないではいられない。塩冶家の提灯の重化を取り、火袋(胴体)だけにしてそれを縮め胸にしまう。ここの場面は、とてもつらいけれど、好きだ。栄津三郎さんの送り三重で花道を引っこむ吉右衛門さんに、人物の気持ちは全然ちがうけれど、熊谷が重なった。
「道行」
定式幕はいつもとは逆に下手から上手へと開いた。浅葱幕が振り落されると、さっきまでの重苦しさと打って変わった美しい背景に客席が湧いた。
勘平にとってはつらい道行なのに、おかるにはうきうきした感じがある。主君の大事に逢引をしていたことの重大さをわかっているのかいないのか、沈み込む勘平の気持ちを引き立てようとしてそうしているのかもしれないが…。
時さまの大らかさがそういうおかるに合っているように思った。
そういえば時蔵×梅玉は久しぶりに見たかも?
<上演時間>「大序」55分(11001155)、幕間5分、「三段目」43分(12001243)、幕間30分、「四段目」87分(13131440)、幕間20分、「道行」40分(15001540

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コメント

3段目で進物場から喧嘩場に舞台が回って、大道具さんが丸めた「ゴザ」を放り投げる時と同時にいつも拍手してしまいます
(最初の内はきれいに決まったあとで拍手していましたが、最近は気が短くなった所為か、フライングして拍手をしております)
裏方に拍手するのは本来はいけないのかもしれませんが、こんな時でないとできないので個人的には楽しみにしています(まさに「うかれ坊主」であります)
お芝居に関係ないコメントで失礼しました

ご存知と思いますが、進物場の伴内は、今回の緑屋さんのように右の足を出したのを合図にする演じ方と、咳払い「エヘン、バッサリ」の2通りありますね
どちらも楽しいのですが、私はエヘンの方がどちらかと言うと好きです

投稿: うかれ坊主 | 2013年12月 7日 (土) 21時21分

うかれ坊主様
いやあ、ここはやっぱり拍手でしょう。大道具さんにしても見せ場ではないでしょうか。こういう楽しみ方も歌舞伎ならではですよね。

そうそう、伴内、今月はどうだったかしら。松之助さんの「足」の合図は覚えているのに、この日はすっごく眠くて漫然と見ていたから、はっきりした記憶がありません…。ダメですねえ(「えへん」だったかなあ)。

投稿: SwingingFujisan | 2013年12月 7日 (土) 22時32分

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