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2013年12月 7日 (土)

やっと④:11月歌舞伎座夜の部「仮名手本忠臣蔵」

1122日 顔見世大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
本当は23日を狙っていたのに貸切で1日前に観劇(金曜日の夜は帰りの電車が混むからなるべく避けているんだけど)。以下、記憶の範囲で。
「五段目六段目」
判官の切腹、勘平の切腹、そして仮名手本ではやらないけれど仇討が終わった後には四十七士の切腹と、切腹から意識を離すことができない忠臣蔵。切腹というのはなんと壮絶な死であるかと、今さらながら恐ろしくなる。当時の武士にとってだって切腹は恐ろしかろう(元禄では、たしか内蔵之助が主税に動揺せずにしっかり腹を切れ、と諭す場面があったような…)、痛かろう。あるいはそういう教育を受けていれば少なくとも恐怖はないのだろうか。最後、介錯を受けずに自ら首に刃を当てるのも恐ろしい。なんか、今回は妙にそんなことを考えてしまった。
菊五郎さんの勘平は動きがなめらかで、型が美しい。型の美しさの中に細かい心理が描きこまれていて、勘平の悲劇の世界へと引きずり込まれた。印象的だったのは財布に目をやる場面。ここから勘平が激しい動揺と後悔の波に翻弄されるのであるが、その心の動きが痛いほど感じられた。
時様のおかるには「道行」と違い、ちょっと陰気すぎるかなと思うくらい翳りがあった。しかしやはり菊五郎×時蔵のカップルには落ち着いた安心感がある。いつもながら勘平の「ずいぶんまめで」には泣かされる。
千崎は権十郎さんのイメージが強いが、又五郎さんの千崎も明快で大変好もしく、左團次さんの不破との対照がなかなかよかった。
おかやの東蔵さんがうまいと思った。まず生活感があるのがいい。雨漏りするから婿に直してと頼むところなんか、もちろん設定として生活感があるのだとしても、自然ににじみ出てくるものが感じられた。そうして頼りにし、一方で討ち入りに加われるよう娘を売ってまで大事にしてきた婿なのに、という恨み・怒りが菊五郎さんの勘平の美しく細やかな描写とともにぐいぐい悲劇の沼の底へと引っ張り込んでいく。1人ぼっちになってしまうおかやが哀れであった。

「七段目」
とても面白かった。とくに梅玉さんが、高貴な義経役の第一人者でありながら、こんな身分の低い小者の役もよかった。けっして愛嬌があるほうではない梅玉さんは平右衛門役としてはちょっと異色だと思ったが、仇討に加わりたい心情、妹おかるに対する情愛がとてもよく伝わってきたし、芝雀さんとのやりとりもメリハリがあってよく、こんなに面白く見られたのは梅玉さんの平右衛門に負うところが大きいのではないかなと思った。
おかるはのほほんとしているように見えるが、どんな状況に置かれても勘平一筋という心がそうさせるのだろうか。私はここのおかるは芝雀さんがニンとしても細やかな感情表現としてもベストだと思っているのだけれど、福助さんも襲名を前にして意欲的な舞台を見せていただろうに休演は残念である。
吉右衛門さんの由良之助は大きさ、腹芸のうまさ、すべてがよかった。泥酔していると見せかけて、力弥が来た時に鋭いまなざしになるところなんてぞくっとした。また、斧九太夫に勧められた蛸を平然を装って口にし、最後にその怒りを爆発させる場面では、城明け渡しの場で九寸五分に残された判官の血を口にする由良之助の心情が重なり、胸が震えるほどの共感を覚えた。
「十一段目」
突然襲われた高家の混乱、なかなかターゲットが見つからない四十七士の焦りが短い時間ながらよく描かれている。一番の楽しみは錦之助さん(小林平八郎)と歌昇クン(竹森喜多八)の一騎打ちで、若くキレのある歌昇クンを相手に大奮闘の54歳錦之助さんに拍手。
七段目も含めて力弥の鷹之資クン、真摯につとめていて好感がもてた。
<上演時間>「五段目・六段目」105分(16301815)、幕間30分、「七段目」95分(18452020)、幕間10分、「十一段目」18分(20302048

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

今回の六段目は、お才と源六がすでに板付きで始まりますか、おかるが髪を整える場面などが省略されています
この場などありますと、おかるの色気をみせる良い場面なのですが、時間の関係で出ないことが多いですよね
それでも、しっとりとしていて、にじみ出るような女形の美というものが時蔵さんにはあったように思います

東京式の勘平は、お才の話を上の空で聞いているところが気になります
縞の財布に気が付くのを印象付ける為なのでしょうが・・・
あそこはお才が父与市兵衛にお金を渡した経緯を勘平に説明している大事な場面なのに、聞くというよりは母・おかると与市兵衛の帰りの心配をしているわけですから・・・気の短い源六のような人だったら怒っちゃうところでしょう(よく出来たものでこの時の源六はふてくされて反対の方を向いていますのでその様子に気付きません)

あと、不破(原文では原郷右衛門)が半金の50両をおかやに供養の為に渡してしますのも、本文通りでないので賛成できません
渡したい気持もわからないこともないですけどね

投稿: うかれ坊主 | 2013年12月 8日 (日) 10時20分

うかれ坊主様
そういえば、おかるが髪を整える場面、見たことがあるような気がします(なにしろ、すぐに忘れちゃうものですから)。時蔵さんのおかるは悲しげで寂しそうでしたが、おっしゃるようににじみ出るような女形の美がありましたね。
勘平が上の空なのはお金ができて上機嫌だからなんだろうなと思いますが、私もいつも気になっています。
50両についても、本文は存じませんが、私もせっかくの勘平一家の気持ちを思うならそのまま受け取ってあげればいいのに、といつも思います。そうしたら、100両受け取って、供養の金子は不破が懐から出して与えるというのもあるんですね。私がこれまで見た中にもそういうバージョンがあったかどうか覚えていませんが、平成14年、勘平・勘九郎(当時)、不破・我當、千崎・橋之助、おかや・吉弥による上演がそうでした(ユーチューブで見ました)。

おかるという名前は本当によく考えられているなあと思いました。物語もよくできていますよね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年12月 8日 (日) 17時32分

そうですそうです
勘平が徒党の一味に加わって連判に名を記した以上(また勘平はこの世に留まって、一緒に討入りすることになっているわけですし)、百両は(与市兵衛親子の気持ちも汲んで)持ち帰るべきですし、その代わりに供養代として心づけを別に手渡すのが一番良いですよね
わたしもこの演じ方を観たことがあります

腹を切るという意味では九段目の本蔵の死もあって、
判官・勘平・本蔵三者三様の切腹が見所になるということになります

この三人、三段目で(ほぼ)同じ場所にいるわけですね
特に、本蔵は判官をうしろから抱き止めるわけですし、勘平は裏門にいるわけですから・・・

投稿: うかれ坊主 | 2013年12月 9日 (月) 11時21分

うかれ坊主様
多分六段目を最初に見た時から引っかかっていたことですが、私だけじゃなかったんだと思えてちょっとつかえが楽になったような気がします。
本蔵も切腹すること、忘れておりました。仮名手本は本当に切腹の物語だなあと思いました。3人の関係、物語も作者の巧さですね。

投稿: SwingingFujisan | 2013年12月 9日 (月) 23時03分

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