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2013年12月15日 (日)

南座顔見世夜の部②

129日 當る午歳吉例顔見世興行夜の部(南座)
夜の部は「御浜御殿」の綱豊卿、「黒塚」の阿闍梨、「児雷也」の児雷也と、梅玉さん奮闘公演である。
「黒塚」
やはり印象的なのは中の巻、大きな三日月の光の下、一面の芒の原で老女が踊る場面だろう。童心に返った老女の清々しい気持、喜びが胸を衝く。このまま強力が転げるように駆けてくることがなかったら、老女は救われていたのだろうと思うと、痛ましい。
この場の踊りは相当な技量を必要とすることが、猿之助さんの足に注目して見ていたらよくわかった。軽やかなステップ(日本舞踊ではステップとは言わないだろうが、ロシアンバレーを取り入れたというから、そう言わせてもらおう)、全身のバネがきいた動きは腰がしっかり安定していなければならない。実に見事な踊りだった。ここはもっと見ていたくなる。
鬼女になってからの動きを見ても、猿之助さんの身体能力の高さに感服する。仏倒れには客席じゅうが「おお!!」と揺れたような気がした。
猿弥さん(強力)の身体能力もすごい。失礼ながらあの丸っこい体型で、きびきびとキレのある素早い動きである。持ち前のコミカルさが過剰にならず品よく笑いを呼んだ。
梅玉さんの阿闍梨は團十郎さんとは持ち味が違うが、品格があり、梅玉さんの良さが出ていたと思う。門之助・右近さんの山伏は行儀よく、全体に気持ちよく見られた。
「道行雪故郷 新口村」
新口村だから、あの「新口村」だと思っていたらそうではなく、それを清元の舞踊劇にしたものだそうだ。
幕が開くと、浅葱幕で舞台が隠されており、浅葱幕が振り落されると、雪景色の中に黒の衣裳の2人が着茣蓙にくるまっている。その歌舞伎的美しさに客席からは歓声が上がったが、私も思わず息をのんだ。
藤十郎さんの梅川には男の愛情に縋っている一途さがあり、翫雀さんの忠兵衛には女をいたわる愛情がある。忠兵衛の父親を遠くに見つけ、梅川が「私は嫁の梅川」と泣くのが哀れであった。遠目でも忠兵衛は父親と「鼻筋、目もと」(口元だったかな)が似ていると梅川が言うのも、会おうと思えば会える距離にいる父親に会わずにその場を去る2人の悲しい気持となって胸を打った。梅川自身も母親に会えずにいるのだ。愚かな2人とは思うが、親子の情の切なさと白黒の対照美が心に残る演目だった。
「児雷也」
30
分の上演時間でどこを切り取るのかと思ったら、「山中一ツ家の場」「山中術譲りの場」「藤橋だんまりの場」の3場であった。私が演舞場で見た「児雷也」には「一ツ家の場」はなく、児雷也と綱手の出会いも趣もまったく違うが、それはそれで面白かった。

児雷也の梅玉さんが若々しい。美しい娘越路(実ハ綱手)に迫るのが可笑しかった。越路は妖婦だそうで、筋書きには、道に迷って宿を求めた児雷也の身体を拭くのを手伝っている越路が突然桶に差した桜の枝を打ち付ける、と書いてあるが、そうだったかなあ。越路に迫って断られ、軽い立ち回りになって、だったような気がするけど、今となっては自信がない。笑也さんは透明感のある美しさなのであまり妖婦という印象ではなかった。ただ、ここでは妖術を使う女性という意味で妖婦と書かれているのかもしれない。2人は争ううちに互いの二の腕に牡丹の痣があることに気づき、越路は児雷也の許嫁・綱手であることがわかるというお話。
児雷也にガマの妖術を授ける仙素道人は猿弥さん。話し方がそれらしくて猿弥さんの芸の幅の広さにあらためて感心した。仙素道人はガマの妖術を伝授すると「試してみよ」と、その場で児雷也に術を使わせる。児雷也が呪文を切って九字を切ると、ガマが出てくるのだが、演舞場で見たのとはずいぶん違い、なんとも愛嬌のあるかわいいガマで、びっくり。
だんまりの前の大薩摩は文五郎改め三右衛門さん、三味線は栄津三郎さん。大薩摩は勇壮で好きだ。山賊夜叉五郎(松緑)、高砂勇美之助(愛之助)、児雷也の3人が探り合い、やがて児雷也はガマになり、綱手が加わり、ガマは下へ飛び降りる。明るくなるとガマを残して定式幕。ガマは幕外でスッポンへ。すると入れ替わりでスッポンから児雷也が表れる。児雷也は綱手が持っていた天紅の文をさっと広げて読みながら、2頭の蝶に導かれるかのように悠然と花道を立ち去る。ここは演舞場では夜叉五郎が大蛇丸に殺され、ガマ(児雷也)、大蛇(大蛇丸)、ナメクジ(綱手)の三すくみで見せていたが、今回のだんまりは夜叉五郎と高砂勇美之助が唐突に出てきて、しかも終わりが中途半端な感じでなんだかよくわからなかった。要するに、理屈などない、歌舞伎美を堪能すればいいということだろう。だんまりは好きだし、確かに絵面はきれいだったし、肩がこるものでなし、楽しく夜の部を見終わった。
<上演時間>「御浜御殿」90分(16151745)、幕間25分、「口上」10分(18101820)、幕間25分、「黒塚」75分(18452000)、幕間20分、「新口村」20分(20202040)、幕間15分、「児雷也」30分(20552125

 

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