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2014年1月24日 (金)

浅草歌舞伎第一部本編

111日 浅草歌舞伎第一部(浅草公会堂)
先般、お年玉ご挨拶だけアップした浅草歌舞伎、やっと本編に入れるけれど、時間も経っちゃったし、簡単にということになりそう。
「義賢最期」
この演目はたしか海老蔵さんで最初に見て衝撃を受け、海老蔵以外にこの役は考えられないなんてコーフンしたものだが(当時は、海老ちゃんの汗浴びる席にこだわっていたなあ、もう遥か昔のことみたい)、愛之助・義賢を見ると(愛之助さんでは2度目。仁左様のを見たことがあるような気がしていたけれど、実際は見ていないらしい)、愛之助さんがうまい!! と拍手喝采したくなる。若手の中で義太夫物をやらせたら一番ではないだろうか。姿形もしっくりくるし、とくにセリフの言い方が好きである。うまく表現できないけど、言い回しに独特な丁寧さと感情が込められていると思う。セリフと同時に、それを発する表情にも丁寧に感情が込められていて、とにかく義賢の気持ちがひしひしと伝わってくるのである。
全体にとてもよかったのだが、唯一、兄・義朝の髑髏の場面が物足りなかった。怒りのエスカレートがやや不足しているようで、その後の展開につながりへの弱さを感じてしまった。けっこう肝心の場面であるだけに残念。
襖倒れ、仏倒れの大技は3階最後列から見ていても迫力たっぷり。わくわくどきどきした。襖は上手側の1人が支えるだけになり「イヤっ」と気合を入れるとラブリンが「んっ」と合図をして倒れた。とてもきれいだった。
満身創痍の義賢が水を求める場面はいつも心が痛む。「思い残すことはないが腹の我が子にただ一目。こればっかりは」にはいつも泣ける。
梅丸クンの待宵姫の愛らしいこと。でもちょっと幼すぎるような気がした。とくに折平の亀鶴さんとのバランスで見ると幼さが目立つ。はじめのうちは、落ち着いた低めの声が顔に似合わず、何となくこちらの居心地が悪かったが、折平の前ではちょっと声が高くなったのが面白かった。義母・葵御前を敬いいたわる表情、小万が現れたことによる憂いの表情はよく待宵姫の気持ちが出ていたと思う。小万に対する嫉妬を折平にぶつけるのは可愛らしいのだが、やっぱり亀鶴さんとのバランスがしっくりこない。
亀鶴さんは折平のニンではあると思うが、待宵姫との絡みではそういう意味で残念であった。
壱太郎クンは声がキンキンしないのがよかった。小万は夫が待宵姫といい仲になっていることは知っているのかしら。7年も探して、やっと見つけたのに、ちょっとかわいそう。それに、傷ついた義賢の許に小万が駆け付けた時、これからの小万の命を張った忠義を思ってうるっとした。通しでの壱太郎・小万を見たい。
橘太郎さん――橘三郎さんの間違いです。ごめんなさい!!――のじいさん、子役ちゃんとともに非常に和んだ。
申し次の侍の左字郎さんの声が素晴らしくいい!! 聞いていて気持ちがいい。
矢走兵内の欣也さんは巧まずしてコミカルな味が出ており、また兵内の武士としての一面もきちんと持っていてよかった。
吉弥さんが舞台をぐっと締めていた。安心して見ていられる役者さんというのはどんなに貴重な存在であることか。

「上州土産百両首」
亀治郎の会で見た時も大いに感動したが、今回も感動した。このお話は、正太郎と牙次郎の友情に強く思い入れするけれど、みぐるみ三次の存在が大きいからこそ、2人の友情と悲劇がくっきりと浮き彫りになるのだろう。そういう意味で三次の亀鶴さんはただの悪人ではない、奥にある複雑な心情を見事に表していたと思う。三次のそういう心に寄り添う人間が1人でもいたらなあ…。
巳之助クンの牙次郎は頭が弱いのではなく、ただトロいのだということがわかる。生き馬の目を抜くような江戸の社会で、ああいう子が生きるのは確かに大変だろう。時がもっとゆっくり流れるような社会なら、牙次郎も普通に生きていかれるのに。でも、きっと牙次郎のピュアな心持が周囲に、正太郎や岡っ引きの勘次といったあたたかく見守ってくれる人を作るんじゃないだろうか。巳之助クンは大柄ではないけれど猿之助さんよりは大きく、その大きな身体で猿之助さんの正太郎に甘える姿が可愛くて泣けた。三谷幸喜監督に見出された「何か」といい、昔抱いたこの子はどうなっちゃうんだろうという不安は杞憂に終わったみたいだ。
序幕、正太郎と再会した牙次郎の喜びは見ていて愛おしい。茶店で語り合う2人の前を子供が2人走り抜ける。その時、1人が転んだ。するともう1人が「大丈夫か」と優しく声をかける。2人が下手に去る時、客席から拍手が湧いた。この場面は偶然だったのだろうか、演技だったのだろうか(亀治郎の会の時のことは忘れた)。正太郎と牙次郎の子供時代を髣髴させるようで胸がきゅんとなった。
やがて正太郎と牙次郎は客席におりて通路を歩く。巳之助クンが「亀が猿になって2年ぶりに浅草に戻ってきた」と言うと亀ちゃんが挨拶し、続いて巳之助クンも牙次郎の声でなく巳之助の声で挨拶した。そのギャップに客席、大笑い。
与一役は亀治郎の会では歌舞伎役者ではない渡辺哲さんが演じていて、私はあまり感心しなかったのだが、男女蔵さんの与一を見ると渡辺さんの与一には大きさがあったなあと思う。年輪だろうか、男女蔵さんはまだ若い。ただ、そうだとしても男女蔵さんの与一にもまたこの人の生き方が感じられて好感はもったのであった。
門之助さんの勘次が、役者の大きさを感じさせた。少ない出番で存在感をしっかり見せる貴重な役者さんだ。最後ぽろぽろ泣いたのは、正太郎と牙次郎の間に通うものを大事にしてくれた勘次の存在があったからでもあったと思う。
序幕、玉之助さんが出ていたのが嬉しかった。欣也さんは嫌味な頑固じじい、こんな人絶対いそうだという感じが面白かった。こういう人たちが生き生きと描かれていないと、また生き生きと演じられていないとせっかくのいい芝居もその世界に入りにくくなる。もちろん、このお芝居はすぐ世界に入り込めた。
<上演時間>
「お年玉ご挨拶」
5分(11001105)、「義賢最期」80分(11051225)、幕間25分、「上州土産百両首」125分(12501455

 

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コメント

おはようございます!
(先日、私のほうに頂いたコメント、お返事が遅くなって大変失礼しました…!)
私は浅草の第1部は時間がとれなくて行かれないので、SwingingFujisan様のレポを楽しみにしておりました。母がひとりで観てきて、大変コーフンして感想を語っていたのですが、SwingingFujisan様のレポからも同じ、熱い思いが伝わってまいりまして、やっぱり観たかったなぁ、と後悔しております。(でも、やっぱり仕事あっての観劇なので…。)
母が、愛之助丈は「義賢」を「自分のものにしてらっしゃる」と言っていましたが、SwingingFujisan様も、感動されたんですね~。今回は、立廻りはもちろん、そこに至る前半の部分が充実していたようですね。
(あと、「じいさん」は橘三郎丈、でしょうか? お気持ち、分かります(^^;)!)

投稿: はなみずき | 2014年1月25日 (土) 07時20分

はなみずき様
おはようございます。コメントありがとうございます。
お返事のことはどうぞどうぞお気になさらずに。お芝居にしてもそうですが、おっしゃるように「仕事あっての」ですもの。私も今月はだいぶ色々なものを見逃して残念な思いの中におります。
でも、お母様がご覧になれてよかったわぁ。ご意見、まったく同感です。愛之助さん、まさに義賢その人でした。
はい、「じいさん」(失礼bearing)は橘三郎さんです。ご指摘ありがとうございます!! 又間違えちゃった。二度目ですwobbly 自分では三郎と入れているつもりなので、最初何のことかと…。まったくお恥ずかしい(これも、予備軍ということかも)。橘三郎さん、本当にごめんなさい。次回からは橘と打ったら一呼吸置くようにします。
又何かお気づきになられることがありましたら、ご指摘くださいませね。

投稿: SwingingFujisan | 2014年1月25日 (土) 09時52分

子供、私の時も転んでました^^
二人の幼いころみたいでグッときましたねー。(子役ちゃんもうまかったし)

投稿: urasimaru | 2014年1月25日 (土) 19時52分

urasimaru様
情報ありがとうございます。演技だったんですね。でも演技とは思えない自然な転び方でしたし、年上の子のいたわり方もとても自然でした。ほとんど一瞬に近い演技であれだけのものをこちらの心に伝えるって、大したものですね!!

投稿: SwingingFujisan | 2014年1月25日 (土) 23時00分

わたしは第一部を1/4に拝見したのですが
この日、開幕前のロビーで寿猿さんがご贔屓の方に囲まれて談笑されていました
かつて段猿さんが歌舞伎座の1階西側のお土産コーナーでやはりご贔屓の方(後援会の方だと思います)に囲まれて談笑されているお姿を時々拝見した者に取りまして、今回の寿猿さんのお姿拝見は一門と後援会の良き伝統を見た思いが致しました
そう言えば段猿さんが舞台に立つと「大番頭!」という大向こうがかかりましたっけ
今、「大番頭!」という掛け声がかからないのは少し寂しいですね・・・

投稿: うかれ坊主 | 2014年1月27日 (月) 09時20分

うかれ坊主様
役者さんがご贔屓の方とロビーなどで談笑されるのはなかなか難しいことかなあと思いますが、澤瀉屋のあたたかい空気を感じますね。
寿猿さんも澤瀉屋の最長老として貴重な存在ですからお身体にお気をつけて長く舞台でご活躍していただきたいですね。今のところ、とてもお元気そうなので安心していますが。

そういえば私も浅草で竹三郎さんがご贔屓の方とお話されているのを見たことがあります(この時はお相手は1人でしたが)。

段猿さんという役者さんは存じませんでした。「大番頭!」 聞いてみたいです。

投稿: SwingingFujisan | 2014年1月27日 (月) 18時43分

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