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2014年1月13日 (月)

初春歌舞伎座は「東慶寺」だけ

113日 初春大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
14011301kabukiza 仕事が終わらな~い、どころかメドさえついていない。歌舞伎見てる場合じゃない。今日の夜の部パスしようか。でもいくら一番安い席といっても4000円まるまる捨てる決心がつかない。じゃあ、九段目を取るか、東慶寺を取るか…九段目だと仕事を半端に切り上げなくてはならない。
思い切って九段目を捨てることにした(歌舞伎ファンとしてあるまじきことよねえ)。それに今月私の歌舞伎座観劇は夜だけなんだから、これ1本だけになってしまった。
で「東慶寺花だより」。けっこう面白かった。仕事で疲れた頭には重い「九段目」より楽しめたと思う。ただ、謎解き的な部分がもう一つかな。それと、多分最後の「あべこべ」に井上ひさしの毒が効いているのだろうが、それが効果的に活かされていなかったのが残念である。
染五郎さんはニンに合っていて、とぼけた知性がよかった。役名が中村信次郎っていうのが、私にはツボ。1文字違いだけど、錦之助になっていてよかった、なんてつまらぬことを思った。染五郎さんの机が面白い。木製なんだけど、立てて持ち手と足を出すと、ガラガラ引っ張るキャリーバッグに変身するのだ(そういえば、「芭蕉通夜舟」でも机が雪隠に変身していたっけ)。これにはウケた。染五郎さんがやると、ほんと可笑しいのだ。ただ、この人、柏屋の娘お美代(虎之介)に惚れられているのだが、本人がお美代をどう思っているのかがよくわからなかった。満更でもなさそうではあったけれど、自分が所帯をもつよりは他人の人生を聞き取り見取りするほうが面白い、そんな感じ。
彌十郎さんは大家的な役が合っているが、今回は「食えない」大家ではなく、ストレートに「話のわかるいい主人」を頼りがいのある彌十郎さんらしく演じていたのが原作通りだとしても(原作を読んでいないのでわからないけれど)、どことなく物足りなさを感じたのは、決して彌十郎さんのせいではなく、そういう大家を見過ぎた私に刷り込みがあったせいか。
東蔵さんの東慶寺住職(?)は真面目でもっともらしい中にコミカルな感じがあって、東蔵さんの意外な一面を見たようで面白かった。芝喜松さんはセリフや動きに力を入れるのではなく自然さがよかった。
男の駆け込み、翫雀さんはセコセコせわしない人間をやらせたらぴったり、時としてうるさく思うこともあるが、今回はおおいに芝居を盛り上げたのではないだろうか。結局怖い奥さんに手を引かれて帰る可笑しさ。ラジオで、視聴者が自分のバカ話をして、タレントが「合格~」とか「不合格~」とか決める番組があるが、それを思い出した。一生懸命訴えたのに「ふごうかく~」の惣右衛門の悲哀は、信次郎や柏屋主人には可笑しかっただろうが(結局惣右衛門は奥さんに惚れてるってことか)、私にはちょっと気の毒であった。
秀太郎さんが亭主にぞっこんながら尻に敷いて怖がられるつよ~い女房を生き生きと演じていた。秀太郎さん、すっごくきれいだった。「お・も・て・な・し」を強調するのではなくさりげなくセリフに取り込んでいたのが<技>だと思った(危うく気づかないところだった)。
松之助さん(堀切屋の隠居)は若い囲い女にめろめろのエロじじいで、最初は強気でエロエロ満々だったのに、染五郎さんに「おまえさんはもうじじいなんだよ」と言われたら(実際はもっとソフトな言い方だったけど、ご隠居にしてみれば、そう突き付けられたってことだろう)、途端に肩を落し、本当にじじむさく見えたのにはびっくりした。うまい!! ちょっと哀れに思えてしまった。
笑也さんは損な役回りだったかも。許嫁もいるのにエロじじいに囲われているのがイヤで駆け込んできた女なのだが、この女性にあまり人間としての魅力を感じなかった。孝太郎さんの、非の打ちどころのないイケメン夫(見てみたかったけれど、芝居には登場しない)と離縁するために駆け込んだ女の方がよほど魅力的だった。人物の描かれ方のせいかもしれない。孝太郎さん(おせん)の聞き取りは、染五郎・孝太郎・彌十郎の絡みのテンポがよく、面白かった。ここで一つ気になったのは、「国産」という言葉。これが江戸時代にあった言葉なのかどうかわからないが、以前「黄金鯱」で「誕生日」という言葉に違和感を覚えたのと同じように、そこだけが妙に耳についた。井上ひさしのことだからちゃんと調べて書いているとは思うけれど
虎之介クンのお美代が花が咲いたみたいに可愛らしかった。
一緒に名題昇進した女形の梅乃さんと千壽さんが、弥次喜多みたいな立役コンビで、出番も多くセリフも多かったのがとっても嬉しかった。梅乃さんは、東慶寺に駆け込んだ女たちの1人かなあと思って一生懸命双眼鏡で覗いたけれどわからず、まさか立役で出てくるとは思わなかった。橋吾さんも笑也さんの恋人という大役だったけれど、3つのエピソードのうちここが一番面白くなかったので、橋吾さんもちょっと損だったかも。もっともそう思うのは私だけか。でも、もう少し脚本を整理したら、もっと面白くなるのではないだろうか。
<上演時間>「九段目」93分(16301803)、幕間30分、「乗合船」30分(18331903)、幕間20分、「東慶寺」94分(19232057
終演時刻が遅く、途中で席を立つ人もちらほらいた。また、幕見はがらがらだった。



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コメント

お忙しい中の観劇とレポ、いつも頭が下がります
好きでないとなかなか続けられないことですよね
私も見習いたいです
さすがに井上ひさしファンらしい選択で思わず笑ってしまいました(失礼)
もともと小説の舞台化ですからいろいろ難しいところもあったと思います
私は幸雀さんと取り上げていらっしゃる芝喜松さんが良かったです
新作は再演されて「なんぼ」だと思っています
是非練り直しして再演されんことを祈っております
その意味で、平成新作歌舞伎の中では「道元の月」が今の時点では一番というのが私の評価です
でも「九段目」は圧倒的でしたよ(観られなかった方にこう言うコメントは申し訳ないですけど)
山城屋さんの台詞使いは流石でしたし、わたしは扇雀の小浪がよいのにびっくりしました

投稿: うかれ坊主 | 2014年1月14日 (火) 11時33分

うかれ坊主様
ありがとうございます。今週は仕事も観劇もピークで、二進も三進もいかず、といったところです。そのため2演目の浅草の感想が書けないでいますが、1演目の歌舞伎座だけは何とか早くというわけでアップしました。

同じ配役での九段目が今後見られるかどうかはわかりませんが、新作はもっと見られるかどうかわからないこともあり、「東慶寺」を選びました。ご指摘のように井上ファンというのも理由の1つです(^-^;

そうそう、幸雀さんのちょっとナマグサ気味の尼僧も面白かったですねえ。
今回は、ここにお名前を挙げなかった錦一さん、芝のぶさんをはじめ脇の役者さんの活躍が目立ったと思いました。

「道元の月」は私はまだ見ておりません。三津五郎さんの復帰公演でかかったらいいなと思います。

「九段目」は千穐楽までに仕事が終わったら幕見で見ようかなと思っていますが、どうなることやら。

投稿: SwingingFujisan | 2014年1月14日 (火) 20時42分

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