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2014年2月 5日 (水)

「三千両初春駒曳」千穐楽×音羽屋の色々興味深い話と国立劇場舞台裏(「風に吹かれて」から)

127日 「三千両初春駒曳」千穐楽(国立劇場大劇場)
今回は久々の最前列で観劇。舞台に近いのはやっぱり嬉しい。
前回書いたことはなるべく省いて、今回は24日放送のテレビ番組「関口宏の風に吹かれて」(テーマソングがあの「Blowin’ in the wind」だったのが懐かしい)の内容と合わせてのレポです。
序幕、右近クンが姫を支えるしっかりとした侍女・玉泉女の心をよく表現しているなと印象的だった。
亀三郎さんは近くで見たら、相当悪役っぽい。言動にもワルさが満ちている。でも愛敬もあってまさに歌舞伎の悪役としていいなあと思った。
菊之助さんの照菊皇女が采女を追って舟で日本へ渡る場面は、前回観劇時は菊ちゃんはただ舟の上で凛と立っていただけだったような記憶があるが(ちょっと違和感を覚えた記憶)、今回は腰を落したり立ちあがったり、揺れる波に合わせた動きを取っていた。
三幕目に飛んで、松緑さんの初登場に貫録があり、最期(実は死んでいなかったのだけど)も堂々として素敵だった。
娘を守る父親の彦三郎さんの姿にわが父が重なり(私もずいぶん父に守ってもらったから…)、父親としてのカッコよさに惚れ惚れした。
釣天井が落ちた時、埃が立ち、黒御簾の中で手で埃をぱさぱさとよけているのが見えた。狭い黒御簾の中で、さぞ大変なことだろう。
この釣天井は、裏で左右3人ずつ、6人がロープを引いて落しているそうだ。落す合図は鳴物の音。人力で動かしているのは、菊五郎さんによると「機械は怖い」から。「壊れたらどうにもならない」って。確かに。床には切穴があって、押しつぶされる役者さんは天井が落ち切る前にそこへ逃げるんだそうだ。ちなみに、セリや盆のコントロールは国立劇場では舞台が見えない部屋で、トランシーバーの指示に基づいてボタンを押して動かしている。モニターはあるがトランシーバーの声のほうが正確なんだそうで、動かしているのは1人だけ。舞台を見ないで操作しているなんて知らなかった。そういうことも含めて、とくに新作や何十年ぶりという芝居では、全員の呼吸が揃ってテンポがよくなるのに少し時間がかかるのかもしれない。実際、このお芝居も前回見た時に比べてずっとテンポがよくなっていた。
馬切りの場の橘太郎さん(えへ、今度は間違いなく太郎さんです)、近くで見たら眉毛が長くて繋がっていた。小さなことだが、双眼鏡じゃわからなかった。ここではブレイクダンスが拍手を呼んだが、披露していたのは音蔵さん(研修発表会で鳶頭を演じて一躍花丸、要チェック役者になった、あの音蔵さん)だそうだ。ダンスを昔かじっていたことを立師の先輩が知っていて、面白いからやってみろと言われたんですって。
音羽屋といえば立ち回りも楽しみの一つだが、「風に吹かれて」では音三郎・音之助・音二郎・音一郎・音蔵(一郎より三郎が先輩なのね)の若手5人がインタビューを受けていて、関口さんが「歌舞伎は年配の(とくに女性)客が多い。若い人も入れていかないと」言うと、音之助さんが自分たちは立ち回りもやってお客様に湧いてもらう、そういうことも若い人を呼ぶことにつながるのではないかというようなことを発言していた。普段名題下さんの話はあまり聞けないから、大変興味深く聞いたのだが、関口さんが彼らに「脇を固めることに徹するのか」と問うと、音之助さんが「メインをやりたいかどうかは人それぞれ。脇にもいい役があるし」と言い、音二郎さんが「脇には味がある。脇が支えて行く」と脇の矜持を示した。それに対し音一郎さんは自分はメインをやりたい、だから勉強会があればやると、まさに「人それぞれ」の考えを表した。この前の弁天小僧、音一郎さんにとても合っていたし、自信にもなったんじゃないかな(研修会の稽古風景も紹介されていた)。
このやりとりは、菊五郎さんの「華のある役者とうまい役者は違う」「華のある役者は23人いればいい、そしてヘタでもいい。しかし脇はうまくなくてはいけない。彼らにはうまい役者になってほしい」という話を関口さんがぶつけて始まったのだが、私も歌舞伎は脇次第と思っているところがあるので、誇りをもって脇を固めていただきたいと心の中でエールを送った。菊五郎さんは、菊之助さんの時代に彼らがしっかり脇として使えることを期待かつ予測しているようであった。ちなみに、おとなしい音三郎さんはずっと旦那(菊五郎さん)に憧れていてこの世界に入ったそう。

菊之助さんは演じ分けの一つとして、役に合わせて声を変えていた。立役の与四郎では、千両箱2つをけっこう軽々運んでいた。3つでもそんなに重そうじゃなかったし。菊五郎さんが菊之助さんに教えないというのは以前に聞いたことがあるが、ミニ菊五郎になるのがイヤだからなんだそうだ。自分が教えるとミニ菊五郎になる、そうでなくても似てくるんだ、って。
菊五郎さんの楽屋暖簾は演目に相応しく馬の絵が描かれていた。そして七世芝翫・十七世羽左衛門・三世左團次・二世松緑・七世梅幸・三世多賀之丞と名優が揃って台本を持ちNHKのマイクの前に立っている写真が楽屋には置かれてある。戦後、劇場が焼けてしまったために、ラジオで歌舞伎のセリフ劇をやって糊口をしのいだ時の写真だそうだ。今は自由になったが我儘を言わずにやらなくてはいけない、と苦しい時代の写真をいつも置いて、いましめにしているということだ。綺羅星のごとく先輩方が出演してもちっとも客が入らないこともある、子の代孫の代まで歌舞伎が隆盛なようにと望む気持ちは歌舞伎ファンとしても同様だ。
菊五郎さんの話で面白かったのは、子役時代は大人に化粧してもらうのだが、つばをつけて顔を塗られるのがいやでいやで、早く自分でできるようになりたかったということ。本当に「いや」って表情するんだもの。何十年経ってもそういうことって覚えているんだなと、幼い菊五郎さんを想像して微笑ましく思った。
それから床山さんの部屋が立役用と女形用で分かれているのはなぜか。菊五郎さんも床山さんも誰も知らないというのも面白い。
お風呂は初めて見た。子供は泳いじゃうと言っていたが、確かにそれくらいの大きさはありそうだ。
色々な裏舞台紹介番組はあるが、今回はなかなか見られない部分も見せてもらったし、菊五郎さんの色々な面白い話も聞けて、お芝居を思い出しながら楽しく見た。でも一番大事な話は最後に語った「若い時の基礎が大事、基礎さえしっかりしておけば、上が倒れてもまたできる」ということだろう。それはどんな世界においても言えることであり、私ももう遅いかもしれないけれど、あらためて肝に銘じておくべきだと反省したのであった。
以上、お芝居の感想よりも番組のことが多くなってしまった。
それにしても、終演後に菊五郎さんが着ていたセーターの模様って!!(べろっと舌を出したドクロが真ん中にデン)


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コメント

こんばんは!「風に吹かれて」大変楽しく拝見しました。関口宏さんと七代目さんはお友だちということで、非常にリラックスムードでしたよね。研修会のお稽古風景や若手のインタビューもあり、よくある密着番組とは、かなり違っていて良かったです(ノ´∀`*)

投稿: aki | 2014年2月 5日 (水) 23時25分

aki様
こんばんは。コメントありがとうございます。
ね、ほんと楽しかったですね。お友達がお相手ということで菊五郎さんのお話がめちゃくちゃ面白かったです。楽屋にも生活感(?)があって、密着を含む色々な取材番組とは一味もふた味も違いましたね。

投稿: SwingingFujisan | 2014年2月 5日 (水) 23時49分

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