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2014年3月21日 (金)

「車引」「切られお富」

315日 「車引」「處女翫浮名横櫛」(国立劇場大劇場)
いい加減、感想を書かないと…。
そうそう、最初に筋書きを買って、1月公演の写真を見ようと思ったら、ない!! 落丁? で、聞くとやっぱり入っていないんだそう。がっかりして、これからもずっと入らないのかどうかは聞きそびれた。国立は舞台写真も販売しないし、楽しみの1つがなくなっちゃったじゃないの。
「車引」
萬太郎クンの梅王丸がびっくりするほどよかった。小柄で童顔なのに、それを全然感じさせず、体が大きく見えたのは、拵えのせいばかりではあるまい。動きも大きく、何より声がよく、今後荒事役者としても十分イケるんじゃないかと思った。
隼人クンは、ずっと見てきているので少しずつ進歩しているのを感じるし、丁寧に演じてはいるが、立ち方とか基本のやわらかさがまだまだかなあ。
松王丸の錦之助さんは顔がふっくらして五月人形みたい。形もきれいだったがニンではないかもしれない。それといかんせん、梅王・桜丸とのバランスも悪い。期待は大きかったんだけどな。
秀調さんの時平はニンでなく、大きさも不気味さもない。好きな役者さんだけに、残念な使われ方である。
金棒引の仁三郎さんが、いかにも権勢を笠に着た先触れでよかった。この金棒引にそういう権勢を感じたのは初めてかも。杉王丸の國矢さんもうまい。
「切られお富」
前に福助さんで見た時、ひどく後味が悪く、イヤな演目だと思ったので、今回は時さまじゃなかったら見なかったかも。なのに、ところがところが、今回見たら、色々物足りない部分はあるのにとても面白くて、リピートしたくなったほど。
まず、時蔵・錦之助の恋人どうしの間に漂う空気が薄い。これが時蔵×菊五郎だったら、互いに安心しきった濃密な空気が流れるし、時蔵×仁左衛門だったら、ちょっと危ういエロスを感じさせるところだろう。しかし実の兄弟でありながら共演する機会があまりなく、また恋人どうしという役柄はなく(私が見るようになってからはなかったように記憶している)、そのせいだろうか、肝心の2人の間があっさりしているのが残念である。錦之助さんが恋い焦がれ、時さまが無視する「十二夜」のほうが、2人が直接会う場面がなくても2人に漂う空気はもっとはっきりと、濃かったような気がする。今回、とくに錦之助さんにお富への愛情の濃さを感じなかったが、それは与三郎がお家の重宝探索に重点を置いていたからだろうか。
濃密なのはむしろ、お富と安の間で、お富にしてみればくされ縁、しょうがなくて一緒にいる相手はそれでも生活を共にしてきたという狎れのようなものがあって、意外とこのカップル、悪くないかもなんて思った。
お富がなぶり斬られる場面は、前の印象よりあっさりしていて、覚悟していたほどいやではなかった。時さまの悪婆は下品にならないから好きだ。すさみを感じさせる生活ぶりにも言葉づかいの荒っぽさにも時さま特有の大らかさが感じられ、歌舞伎としての上品さを貶めていない。安を殺す「狐ケ崎の場」では、その大らかさが影をひそめ、くらく険な表情になったのにはびっくりした。お富という女の一面を見たようで面白いと思った。
安の彌十郎さんは、どちらかというと人の良さ、というかお富に惚れている気持ちのほうが強く出てしまっていたかもしれない。お富が与三郎への愛のために強請り、殺人を犯したなら、安はお富への愛のためにお富を切り刻まさせた(もちろん、そんなことになるとは安も考えてはいなかっただろうが)ことになる。お富をだまして金をせしめるのは報われない愛の悲しさだろうか。そう思うと、さほどワルさを感じなかった。それだけに、殺されてちょっと可哀想に思ってしまった。ただ、お富の愛は自己犠牲、安の愛は独占欲、こういう結末になるのは物語上当然なのかも。
ところで、お富はなぜ捕り手に囲まれるの? 安を殺害したから? お芝居では殺害直後に囲まれた感じだったからちょっと混乱したけど、物語の時間としては経過していたのかな?
とてもよかったのが橘三郎さん(今度は太郎さんと間違えてない)。やや小粒感はあるものの、大店のダンナらしい鷹揚さから本性を表す「赤間妾宅」の場はその豹変ぶり、残忍さがよかったし、お富と安に強請られて泥棒であることが女房にバレると「定めて愛想が尽きたろうな」なんてセリフは、この男、案外にと女房に惚れていて純情なところがあるのかもね、と思ったり。この夫にしてこの妻あり、女房滝は慎ましそうに見えて、実はふてぶてしい神経の持ち主で、ダンナの正体がわかったところでビクともしない。出番は短いながら吉弥さんが光っていた。ところで、吉弥さん、少し痩せた?
萬太郎・隼人の若手2人はこの役をやるには若すぎる。勉強という意味で出したのかもしれないが、芝居を考えたら、國矢さんとか、もっと向いている脇の役者がいると思う。
脇では京蔵さん、玉之助さん、両女形の巧さが印象に残った。
私にとっては開演12時はありがたく、上演時間も程よいし、やっぱりこれ、もう一度見ておきたいなあ。
<上演時間>「車引」30分(12001230)、幕間35分、「切られお富」序幕35分(13051340)、幕間15分、二幕目75分(13551510

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

出演陣を見て、「きっと2度見たくなるに違いない」そう思い初日をとりました。下手だったため(国立は2等Aがお気に入りです)吉弥さんが遠くて不満だったのこともあり、終演後に早速上手のチケットを買って帰りました(笑)。

『車引』の萬太郎くん、私もすっごくよかったと思います。たしかに声がすっばらしく、小柄なはずなのに大きく見えましたもの。次のお役も楽しみになりました♪

玉之助さん贔屓の私はこのためだけでも2度見てよかったと思っています。とってもかわいらしいお女郎さんでした。吉弥さんはもう素敵すぎて。「かっけぇ!」と心の中で快哉をあげておりました。

時さまの立ち回りも堪能して満足♪のからつぎでした。

投稿: からつぎ | 2014年3月22日 (土) 23時11分

からつぎ様
こんばんは。コメントありがとうございます。
いいな、いいな、2度ご覧になったって!!

玉之助さん、おっとりとかわいらしくて私も大好きです。何とも言えないいい味ですわ~。
吉弥さん、ほんと「かっけぇ」でしたね。吉弥さんはその役の心をきちんとつかんで表現しているので、強く印象に残ります。

萬太郎クン、謙虚に、かつ自信をもって次のお役にも挑んでいただきたいと思っています。

からつぎ様のコメントを拝読して、やっぱりもう一度見たいという気持ちがムクムクと湧いてきました。頑張って仕事にメドつけないとdash
 

投稿: SwingingFujisan | 2014年3月22日 (土) 23時35分

(送信できなかったみたいなので再送します)
25日に観て参りました
残念ながらサイン会はハズレでした
それと車引と切られお富の1幕目の開幕直後にとんでもないことがあって・・・(長く歌舞伎を観てますが初めてのことでした)
2度目のときには劇場の方に注意されていたようで、それ以降はなかったですが・・・(その方、帰っちゃたかも)
ちょっと残念でした
同じ日の昼は演舞場が3階中央の2列目(戻り)があったので観ました
こちらも照明の部屋から話声やらラジオの声(女性の声)?まで聞こえてきて、気が散ってしまい少し残念でした

27日の演舞場の方は、歌舞伎座の俳優祭の模擬店には参加できるようですね
案内が出てました

投稿: うかれ坊主 | 2014年3月26日 (水) 00時17分

うかれ坊主様
コメント再送とのこと、すみません。私自身も0時前から管理画面がうまく機能しなかったので、何か障害があったのかもしれません(障害情報は出ていなかったのですが)。
とんでもないこととは、何があったのでしょう。気になります。客席の問題のようですが、役者さんへの影響はなかったのでしょうか。
サイン会が抽選っていうのはちょっともったいないですよね。時間的な制限もあるのでしょうが、希望者全員にできればいいのに、と思いました。
演舞場もご覧になったのとこと、さすがに演劇好きのうかれ坊主様でいらっしゃいますね。
照明の部屋でそんな音がしていたのですか。花道の鳥屋は案外声や音がするもので、確かに気が散ります(宙乗り小屋からは、役者さんが急いでワイヤーをはずすような音が聞こえたりしますが、こちらはクライマックスの後なのであまり気にならない)。ラジオの声まで聞こえるとは、ちょっとマズいですよね。
27日の演舞場出演者の模擬店は、演舞場でやるのではないでしょうか。演舞場のお客さんは若い女性が多いようですから、ひときわ盛り上がるでしょうね。

投稿: SwingingFujisan | 2014年3月26日 (水) 01時46分

役者さんは多少のことがあってもなにごともないように演じておられたと思います
演舞場の模擬店は私の勘違いでしたね
ごめんなさい
そんなことがあったら良いなという先入観でミスリードしてしまいました
きょうは歌舞伎座の楽を昼夜で満喫しました
特に勧進帳が良かったです!!!
舞台写真入りのプログラムが売り切れしていて
後日郵送のサービスをやってましたよ
はじめてみたような気がします
送料はかかりますが頼みました

投稿: うかれ坊主 | 2014年3月26日 (水) 22時21分

うかれ坊主様
演舞場を第二会場とするのは面白い発想ですね。より多くの方が楽しめる場としてはいいですよね。

勧進帳、よかったですね!! 私の勧進帳ベスト2の1つです(後ほど簡単な感想アップします)。
写真入りの筋書きは売り切れでしたか!! でも後日郵送してくれるとのこと、よかったですね。以前に2度売り切れのことがあって諦めたのですが、増刷のサービスがあってもいいのにと思っていました。浅草かどこだったか、亀治郎さんの舞台写真が売り切れで(プログラムではなく、写真です)、焼き増しサービスがあったことを思い出しました。演舞場も千穐楽は売り切れかな。

国立の件、私もそんな経験はありません。役者さんはさすがですね。

投稿: SwingingFujisan | 2014年3月26日 (水) 23時13分

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