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2014年5月26日 (月)

染五郎大奮闘+脇が盛り立てる「伊達の十役」

526日 五月花形歌舞伎千穐楽夜の部(明治座)
前回昼の部と間違えて取ってしまった夜の部のチケットを泣く泣く捨て、やっと今日千穐楽、「伊達の十役」を見てきた。
こういう芝居の千穐楽って、ちょっといやらしい期待をもつよね、カーテンコールという。その期待は裏切られなかった。山中鹿之助(種之助)、渡辺民部之助(亀鶴)、渡辺外記左衛門(錦吾)、細川勝元(染五郎)、川上右門(猿四郎)、勝元の小姓が並んで「今月はこれぎり~」で定式幕がしまる。拍手は鳴りやまない。やがて定式幕が開けられる。舞台手前中央に染五郎さんが1人で正座している。染五郎さんは猿翁風に両腕を順番に広げ、お辞儀をする。そして今度は立って、舞台中央、花道両側、そしてまた舞台に戻って、猿翁風挨拶(両腕を広げたあと、胸で手を交差させてお辞儀)をした。猿翁=三代目猿之助へのオマージュだろうと思ったら胸が熱くなった。

口上ではわかりやすいように、染五郎さんが演じる10役を悪人側3人と善人側6人に分けて(もう1人はその中心にいる足利頼兼)紹介していたが、3人の悪人に倍の6人が苦しめられるんかあと思ってしまった。
染五郎さんの十役のうち、赤松は出番が少なかったので特に感想なし。
弾正はちょっと線が細い。でもところどころ骨太に感じることもあって、そういう時の弾正はとってもいい。悠々の空中闊歩は比較的近い席で見られたので満足。その前の弾正ネズミ、回転の時の膝の軸がまったくズレなくて見事だった。
道哲は凄みをきかせているつもりでも、どちらかというと染五郎さん本来の優しさとか愛嬌が勝ってしまうような感じだった。本人も愛敬で押し通すようなところもなくはなかったんじゃないかしら。楽しそうに演じていたもの。
ところで4幕目2場「問註所門前の場」でハプニングがあった。道哲が鎌を振り上げて民部と対峙している時、鎌の刃と柄が分解してしまったのだ。客席のざわめきにも動じず2人は芝居を続ける。道哲は見得を決めると客席に背を向けて刃を拾い、柄にはめ込んで、再び落ちることのないよう刃の根元を握りしめていた。客席からはちょっと笑い。道哲が早替りの与右衛門に殺されて、小屋の向こうに倒れる込むと、与右衛門は道哲に駆け寄り鎌を取り上げる。刃が落ちないか確かめるように23度振っていたのが客席にウケた(鎌はスペアだろう。23度振っていたのは染五郎さんのアドリブだと思うよ)。
頼兼は染五郎さんのニンだ。殿さまらしい大らかな大きさがある。おっとりと上品で悪人にだまされて女にはまるようなダメなところもぴったり。こういう染五郎さんはとても素敵。
与右衛門もニン。色々葛藤はあれど(妻の姉、妻を殺さざるを得なかった。さらには自らの命を犠牲にする運命にあった)、海老蔵さんに比べて明るい葛藤というか、陰にこもった暗さがない。どちらがいいというのではなく、どちらの与右衛門も魅力的だと思う。
勝元はどうしても仁左様の爽やかインテリジェンス、痛快能弁が頭に残っていて消せない。でも、この役も染五郎さんのニンだろう。山名をやり込めた時は仁左様ほどの爽快感がなかったが、直訴状のところは、大いに爽快・痛快だった。拍手しているうちにもう与右衛門に替わっていた(早替り、ほんとに早い!!)。
最後、上機嫌の勝元が謡をうたって、瀕死の外記に「つづけ、つづけ」と無理やりうたわせるのだが、いつもあの勝元がなんで?と納得いかない。「めでたいのう」って…。伊達家のためにはめでたいからいいんだけど。
男之助は大熱演だったけれど、ちょっと無理がある感じ。

高尾と累は、海老蔵さんがかなり苦しかったのに比べ、顔も楚々としてきれいだし似合っていた。ただ、女形になると身体が大きいなあと思ってしまう。それと声に難があるのが惜しい。
政岡は逆に身体の大きさが立派さとして活きていて、よかった。一番よかったのは、千松が殺される場面で、心は張り裂けそう、すぐにでも千松のところへ駆け寄りたいのに、必死で耐えて平然としているように見せる。その様子に胸打たれた。そういえば、三幕目の奥殿が始まってしばらくの間、1階席だか2階席だかがやけにざわざわと喋り声でうるさくて気になった。
他の出演者の中では、吉之助さん(大江鬼貫)がイチオシ。声に深みがあって(あんな素敵な声だったっけ)、大きな大きな悪役だった。2度目の登場(山名館奥書院)も堂々として素晴らしかった。
亀鶴さんの民部は役の心を摑んでうまい。民部の気持ちがこちらにきちんと伝わってくる。
錦吾さんはやっぱり実直がニンだ。だから外記はぴったりでよかった。外記って、深手を負いながら弾正と対等に立ち回るのだからなかなか強いではないか。
桂三さんの山名は意外に合っていた。桂三さんというと、ちょっとクセのある役のイメージが私には強いが、正統派の悪人もよい(山名が正統派の悪人かどうかわからないけど)。
種之助クンは子どもっぽさが抜けて立派な若侍になっていた。
秀太郎さんの栄御前がさすがのうまさ。格の高さは他を圧するし(そのくせ、お間抜けで…)、セリフの緩急メリハリがたまらない。
歌六さんの八汐は初役? 本家先代萩では見たことがあるような気もするけれど、記憶違いかしら。若手の中にに登場すると、秀太郎さんともどもやはり大きさの違いを実感する。
奥殿の子役が可愛くて、とくに千松と鶴千代のやせ我慢自慢では双方に客席から大きな拍手が送られた。千松の子(榎本陸クンか?)は実際に細くて、立ち上がれずよろよろとすると哀れさが増して、それだけで泣けてしまった。政岡に気づかれた曲者が天井からおりてくると、千松がか細い腕を鶴千代の前に出して守っていたのがいじらしかった。子役ちゃんたち、本当に可愛くて上手だったんだけど、せっかく染五郎奮闘公演なんだから、金太郎×團子で見たかったなとも思った(2人とも大きすぎる?)。
ひさしぶりに見た「伊達の十役」、染五郎さんの大奮闘を脇の役者さんが盛り立て、とても楽しかった。皆さん、お疲れ様でした!!
<上演時間>「口上・発端・序幕・二幕目」100分(16001740)、幕間30分、「三幕目」63分(18101913)、幕間30分、「四幕目」63分(19432046
実際は5分ほど早く終わったような。

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コメント

わ〜い!
歌舞伎座・夜に引き続き、その勢いでコメントします。
この「十役」も全く同じ感想だったので!
仁左さまのくだりまで、同感です。

海老蔵さんの十役、染さんの十役、
それぞれニンのお役と、そうでないお役とがあって、
面白いですよね。
私的には、ず〜と昔に見た猿之助丈(現・猿翁丈)のが
すべてハマっていて最高でした(ある意味、作者ですから当然ですが)。

これは、当代の猿之助さんもいつかやられるのでしょうか。
その場合も、やっぱり厳しいお役がありそう(笑)。
でも、3人が競ってくださるのも良さそうです。

投稿: いちご | 2014年5月28日 (水) 20時00分

いちご様
こちらにもコメントありがとうございます。
又々同じ感想だったなんて、ほんと、嬉しいです!!(仁左様の細川、もう一度見たいですわ)

三代目猿之助さんの十役をご覧になっていらっしゃるとは、なんと羨ましい。私が歌舞伎を見始めた頃にはすでに舞台から遠ざかっていらっしゃって…。
作者とはいえ、十役すべてハマっていたというのはすごいことですね。ぜひ当代のも見たいものです(きっと、いつかやってくれると期待しています)。おっしゃるように厳しい役もありそうですが、染五郎・猿之助・海老蔵、三者三様の十役が見られたら幸せhappy01

投稿: SwingingFujisan | 2014年5月28日 (水) 21時06分

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