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2014年5月25日 (日)

團菊祭五月大歌舞伎夜の部

524日 團菊祭五月大歌舞伎夜の部(歌舞伎座)
今日は歌舞伎も相撲も千穐楽。傳左衛門さん、今日も国技館にいらっしゃいました(横綱白鵬の後ろでバッチリ写っていました)。で、夜のNHKスポプラで横綱インタビューを見た後すぐEテレにしたら、海老ちゃんの鏡獅子の鳴物として傳左衛門さんがいらしたので、思わずにっこり(今月は菊ちゃんの鏡獅子なのだ、傳左衛門さんは夜の部お休みだったけど)。
さて、本題へ。
「矢の根」
市松模様の障子が上がって五郎の姿が見えた時、なんて立派!!と思った。松緑さんは、最初声が出しづらそうで、とくに高い声(裏声も)がよく出なくて心配したが、だんだん落ち着いていった。大らかで歌舞伎絵を見ているみたいで楽しかった。
昼寝は後見のみどりさんが肩で頭を、手で背中を支えて、支える方も支えられる方もきつそうだなと思った。太い襷は後見の辰緑さんとみどりさんが2人で締める。みどりさんが背中担当で、腕に力がぐっと籠められるのが見えた。仕上がりのメドが立った頃、みどりさんが三味線に向かって合図をしていた。
田之助さんが若々しくて、さすがの存在感であった。
橘太郎さんの前転ジャンプ、かっこいい。見られて幸せ~。
この演目を最初にみたのが国立劇場の男女蔵さん(H21年)、2度目が演舞場の三津五郎さん(H24年)、そして今回が3回目と、意外に見ている回数が少ない。
「極付幡随長兵衛」
後味が悪くて好きになれない演目だが、今回見て、理不尽な武士に対する長兵衛の生き様が江戸の庶民にとって長兵衛をヒーローにしたんだなということがやっとわかってきたような気がした。
チンピラはつまみ出しても、武士には勝てない舞台番。そんな身分差をまず見せつけておいて、そういうものに臆することなく理不尽は理不尽として武士を圧倒する度胸が実にかっこいい。舞台に上がった海老蔵さんに大きさを感じた。團十郎さんに教わった最後の役だそうだが、團十郎さんの大らかな大きさとは違う大きさだ。海老蔵長兵衛は野生的な暗さを持っていて、その暗さが圧倒的な力、かっこよさになっている。感情を表す目がオーラを発しているのは去年の浅草でもそうだった。芝居小屋で水野と対峙した時から、もう自分の運命を知っていたような気がする。というか、常にそういう覚悟を胸に秘めて一家を守っていたのではないだろうか。「360日、血の涙のこともしばしば」だという生き様は海老蔵さんにぴったりだ。この幡随ならもう一度見てもいいかもと思わされたほど。
それに比べて、水野の側の遺恨が納得できないのは、そもそも理不尽だからなのか、当時の身分差が現代人の自分にはピンとこないからなのか、これまでの旗本奴と町奴の対立がここでは描かれていないからなのか。どっちにしても、水野のやり方は汚い。殺すには惜しい男だと評価して、最後は手を合わせて見せても、菊五郎さんクラスの役者でないと務まらない役だということがよくわかる。
海老蔵長兵衛に対して時蔵お時(ややこしい)の年齢差を心配したが、違和感なかったのは、海老蔵さんの大きさによるところ大かも。でも、死を覚悟した夫を送り出す悲しみにじっと耐えて身なりを整えてあげる献身的な時さまの姿も年齢差を感じさせない一因だったであろう。着替えの数分間はセリフもほとんどなく、客席もし~んとして海老蔵さんの覚悟に同化しているような感じだった。
子役がとても上手で可愛くて、子分同士の喧嘩を仲裁して見得を切ると、大きな拍手が送られた。死に赴く父親に「早く帰っておくれよ」と縋りつく場面では海老ちゃんの目も光っていたようだった。

子分の中では右近クンが目の鋭さがよく、体格もしっかりしていて、カッコよかった。右近クンは地道な努力で一歩一歩確実に進歩している。
松緑さんの唐犬権兵衛が頼りがいのある弟分の雰囲気でよかった。
水野家の使いの保昌武者之助の松太郎さんが実直そうで人柄よさそうでとてもよかった。でも、その武者之助も水野の意を受けて長兵衛を殺そうとする企みを実行するのである。そのギャップもまたよかった。
「春興鏡獅子」
たいてい前半のどこかで少し寝てしまうのに、今回は寝なかった。ふっくらと優しい菊之助さんのなめらかな踊りに見入った。
獅子は菊之助さんらしい柔らかさと勇壮さが入りまじり、見応えあった。
後見の右近クンを見ていると、やがて右近クン自身が弥生となる日がくるんだろうなと期待できる。私は右近クンはどちらかというと立役のほうが合うように思うが、7月の亀姫で女形としてもぐんと成長するのではなかろうか。
胡蝶の蔦之助(左字郎改め)・國矢さんは愛らしかった。男っぽい國矢さんが意外にも可愛くてびっくりした。胡蝶の踊りって相当体力使いそう。
<上演時間>「矢の根」25分(16301655)、幕間25分、「幡随長兵衛」90分(17201850)、幕間35分、「鏡獅子」57分(19252022

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コメント

こんにちは。
ブログはずーっと拝読していますが、
今回、初めてコメントさせていただきます。
海老蔵さんの幡随院長兵衛、
私が感じていたことを、ここまで的確に言葉で表現してくださって、
思わず「そう、そう!」とコメントしたくなりました。

浅草のときから、また少し進化していたと思います。
今の、36歳の海老蔵さんが演じる長兵衛が、とても好きです。
でも、これから回を重ねていくうちに、
円熟して、尖りや陰りが削れて、包容力もたっぷりの長兵衛になっていくんだなあと、
それも、とっても楽しみにしているんです。

投稿: いちご | 2014年5月26日 (月) 11時06分

いちご様
はじめまして。コメントありがとうございます。また、いつもお読みくださっているとのこと、ありがとうございます。

海老蔵さんの長兵衛、同じようにお感じになられた方がいらっしゃって、とても嬉しいです。確かに浅草から進化して、ぐっと大きさが増したような気がしました。
おっしゃるように、これからもきっと海老蔵さんの当たり役になって、包容力がたっぷりになっていくんでしょうね。でも、私としては円熟してもあの鋭さはどこかに残しておいてほしいなという気もしています。いずれにしても、今後の海老蔵・長兵衛が楽しみですね!!

投稿: SwingingFujisan | 2014年5月26日 (月) 11時37分

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