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2014年6月27日 (金)

ほぼ1日歌舞伎満喫:巡業中央コース千穐楽

627日 松竹大歌舞伎巡業中央コース千穐楽昼の部・夜の部(川口リリア)
千穐楽が川口なんだからと2回公演を両方とも見る、と張り切って、チケット発売日に1時間とまではいかなかったけれど、30分以上は並んで買ったチケット。こんなに並んだの初めて。でも昼の部、希望の席は取れた。夜の部は待っている間に友人がWeb松竹で押さえてくれて、全体のど真ん中だけどどうする?っていうのをど真ん中はやだなあと思いつつ、まだ並んでる最中でこの行列では取れるかどうか不安だったからお願いした。結果として2回とも並んでも取れたんだけど、まあ、たまにはど真ん中もいいか、のその席が大正解。舞台からの距離はあったものの、とてもよく見えて、真ん中だからセリフも聞きやすい。昼の部はなんちゃって花道近くで、これはこれで狙ったのだから満足。
越谷で一度見ているので、感想として重なる部分は省略します。
「太閤三番叟」
右近さんが首の故障で休演、急遽右近さんの役(太閤秀吉=三番叟)を笑三郎さんが、笑三郎さんの役(淀の方=千歳)を笑野さんが代わっての上演である。
休演というのは残酷なもので、もちろん右近さんは心配だし右近さんの踊りを見られないのはとても残念である反面、笑野さんファンの私としてはこの抜擢は秘かに楽しみなのであった。
そしてその期待を裏切らない笑野さんの淀の方。とにかく美しかったし、踊りも華やか、しっとり、なめらかでうっとり。笑三郎さんともども急な代役なのに、笑也さんと笑野さんの動きはぴったり合っていて、さすがの澤瀉屋だと思った。笑野さんの鬘は、昨日の鎌倉からご自分の頭に合わせたものになったそうで、それまでは笑三郎さんのものに手を加えていたとのこと。そういうことも含めて本当に大変だっただろうなと察する。
笑也さん(北政所=翁)が踊っている間、笑野さんは座って、左腕を斜め前にやや下げた状態でじっとしている。淀の方は鈴ののった三宝(?)を持っている間もじっと動かないし、秀吉に鈴を渡すとき音を立てないし、なかなか大変な役だと思った。前回見た時は眠くて、そういうところ、全然見ていなかった。
笑也さんは能面みたいでちょっと怖くも見えたが、北政所の貫録があって圧倒された。
笑三郎さんが右近さんの代役って、とちょっと思わないでもなかったが(猿弥さんならわかるんだけど)、とても素敵だった。なんちゃって花道から登場した途端、「かっこいい!!」とときめいてしまったくらい。袖を回す時に袖が顔にかからないようちょっと顔を逸らすのが気になったが、女形のときにはあんなにしっとりと優しい笑三郎さんが力強く、本当にステキだった。所作ダテの最後のほうで、笑三郎さんが扇を落した。するとすかさず後見がスペアの扇を持ってきてさりげなく手渡した。一連の動きがとてもスムーズだったのでそういうものかとも思ったほど。笑三郎さんは、とくに鈴をもってからがよかった。
「口上」
越谷と同じ内容は省略します。
音響のせいか、とくに秀太郎さんの声がほとんど聞き取れず、仲のよい澤瀉屋の襲名披露巡業に竹三郎さんと一緒に参加できて嬉しかった、くらいしかわからなかったのが残念。越谷でも聞き取れなかったので、私の耳が悪いのかも。秀太郎さんの長い巡業経験(60年とか)の中でこのような大入りは初めてだそう。確かに私の短い巡業経験でもこんな大入りは初めて。
竹三郎さんは昼も夜も声を詰まらせながらの口上で、カメちゃん愛に溢れていた。夜の部では、千穐楽を無事に迎えて感無量のあまり「申し上げることを忘れてしまいました」。竹三郎さんは6年前のカメちゃんの巡業千穐楽でも涙涙の口上で、そういう純粋さが好き。
笑三郎さんは夜の部で「先輩の右近さんには及ばないが、一生懸命つとめた」。
猿之助さんは右近さんの休演に触れ、「それほど巡業というのは過酷なものである。役者もだが、裏で働くスタッフは夜を徹して移動に尽力しているが拍手を受けることもない。そういう陰の力があっての公演である」。ここで客席から大きな拍手。「今日で最後だと思うと寂しいが、今日で会えなくなるわけではない。それにしても地方で歌舞伎を待っていてくれる人がこれだけたくさんいる。歌舞伎座は黙っていても幕があくが、地方は出かけて行かなければ開かない。呼ばれればどこへでも行く」。「猿之助チームは9月も巡業(竹三郎さんと秀太郎さんは出演しない。秀太郎さんとは襲名興行8カ月一緒だった)」。「歌舞伎を守っていきたいという気持ちでやっている」。
中車さんはまだ歌舞伎発声ではないものの、口上の声に違和感はまったくなかった。

「一本刀土俵入」
中車さんが格段によくなっていた。今回初めて見た方がどう思われるかわからないが、越谷で「??」だった私には中車さんが相当進化したように感じられた。やっぱり巡業は役者さんにとっても大きな成果をもたらすものだ。泣けたもの、今回は。肉襦袢をつけていない姿も2度目3度目のせいか、初見の時ほど違和感はなかった。
昼の部では「お・は・かさ」のセリフでやっぱり笑いがきた。夜の部では笑いのような、「ああ、そういうことか」というどよめきのような。
昼の部では駒形茂兵衛の名乗りあたりのやりとりで中車さんのセリフの速度がちょっと早いなと思っていたら(ここはまだ空腹だから)、夜の部では昼の部よりゆっくりしていた。
お蔦の「取的さん、おまえさんもおっかさんが恋しいんだねえ」、茂兵衛の「わし、こんな女の人に初めて会った」のセリフに泣いた。
二階のお蔦には全身に寂しさがまとわりつき、とくにお蔦が背中を見せるとこちらがたまらなくなるような寂寥感が漂うが、お蔦は寂しさと折り合いながら生きている感じがした(この時、お蔦は子どもを子守に預けて働いている)。一方店の外にいる茂兵衛は孤独と戦っている。だからお蔦に優しくされて泣くのだと思った。上と下で交わされる会話には2人の孤独が絡み合い、お蔦は酔った勢いもあって気まぐれに親切にしたんだろう。
股旅になった中車さん、越谷ではイマイチだったが、今回はかっこよかった。手順にも慣れ、声もきちんと出ていてメリハリがあった。越谷では正直、この人は中車じゃなく香川照之だ(つまり、映像の人だ)と思った。でも今回は舞台の人になっていた。それでも、とくに月乃助さんたちに辰三郎と間違えられる場面は、ちょっと違いを感じた。あとはいかに歌舞伎の空気を自然にまとうかだ。それには出来るだけ歌舞伎の舞台に出ることだろう。幸い、7月にも大きな役を演じるし、9月にはまた巡業が待っている。ますますの精進に期待したい。
前回ピンとこなかった、「思い出した」のきっかけとなる突っ張りは、今回は自然に受け入れられた。やっぱり一度見ているからなのかなあ。夜の部では、「思い出した」に至るカメちゃんの溜めが昼の部より長かったように思う。
茂兵衛に川に落されたいわしの北(笑三)が土手に上がってきて「あいつ、絶対許さない。土下座しても倍返しだ」とやる場面は、夜の部では「最後だから10倍返しだ」になっていた。そして散々強がったくせに、茂兵衛の姿を見た途端、自分が土下座。まだまだ半沢モノは大ウケだ。
我孫子屋酌婦は、段之・喜昇・千壽・りき弥の面々で、りき弥さんがすっごい美形だって今回発見。

夜の部は門之助さんご贔屓の方なのか、さかんに「瀧乃屋」と女性の声がかかっていたのを嬉しく聞いた(私もかけたいけど、勇気なし)。親子3人の逃避行にはいつも場違いに「Climb every mountain」の歌が脳に流れる。
午後
1時から915分まで、昼夜に2時間近い間はあったものの、ほぼ1日歌舞伎満喫。しかも今日は全然寝なかったよ(深夜ドイツ×アメリカを、早朝アルジェリア×ロシアを夢現に見ていたわりにはね)。
チーム澤瀉屋の皆さんに感謝感謝です。過酷な巡業の日々、本当にお疲れ様でした。

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コメント

おはようございます

千穐楽の公演の感想読ませていただきました。
「一本刀土俵入」は中車さんの茂兵衛はよくなってましたか。
やはり役者さんは場数を踏むことが大事ですね。
お芝居がどう進化したか観たかったのですが、仕事でしたからどうしようもありませんでした(涙)
8月末からの巡業西コースもまたまた初日の板橋のみ観劇予定です。
ただしこちらは2本とも安心して拝見できる演目ですね。
その前に今月は中車さんは歌舞伎座。大きな役が続きます。
是非とも頑張っていただきたいです。
私は昼の部のみの観劇予定ですが・・・
猿之助さんは笑也さんとの舞踊公演ですね。
こちらは来週の浅草を拝見いたします。

投稿: はま | 2014年7月 1日 (火) 08時13分

はま様
おはようございます。コメントありがとうございます。
お仕事あっての観劇ですから、今回は残念でしたが、7月歌舞伎座、9月巡業で、中車さんの成長をご確認いただけますよう(はま様のダメ出しが出たらどうしよう…)。
中車さんは1カ月の巡業の成果が出ていたと思いました。ほぼ毎日舞台に出続け、それも巡業ですから歌舞伎の空気が濃い旅の中で、少しずつ歌舞伎役者として成長したのでしょうね。発声がもっと歌舞伎調になるといいのですが、だいぶ違和感はなくなったような気がします。7月歌舞伎座はさぞ緊張するでしょうが、思いっきり海老蔵さんにぶつかっていってほしいです(正直、こちらがドキドキしています)。

巡業西コース、私も板橋狙いだったのですが、その日は母の施設の納涼祭と重なり断念。別の日を取りました。

猿之助さんの舞踊公演は、諸事情で残念ながら見る予定がなくて…。

投稿: SwingingFujisan | 2014年7月 1日 (火) 10時33分

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