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2014年6月16日 (月)

6月歌舞伎鑑賞教室

613日 歌舞伎鑑賞教室(国立劇場大劇場)
歌舞伎鑑賞教室は気楽に見られるのでありがたい。
「歌舞伎のみかた」
いつものように、まず場内全体を真っ暗にして高校生たちのお喋りを止め(きゃ~という声は上がるけどね)、それから解説の主役がどこかに登場するというパターン。今回、虎之助クンはセンター右通路3列目あたりに浮かび上がった。
定式幕が開くと本舞台へ移動し、「歌舞伎というとどんなイメージをお持ちですか? ではご覧いただきましょう」で、舞台中央でネズミを踏みつけた荒獅子男之助がセリ上がる。「床下」の場面が一通り演じられ(ネズミのトンボに「おお」の歓声がちょっとだけ上がった)、スッポンへと消えたネズミのかわりに弾正として虎之助クンが再登場し、男之助の衣裳、鉄扇、隈取、ツケなどを説明する。
ツケに合わせた男之助の見得を見せたあと、「今のは難易度の高い見得。みなさんで低いのをやりましょう」と、全員で首を「の」の字に回すよう虎ちゃんの指導が入る。ツケのタイミングをはかって虎ちゃん、「ここから一緒にやって!」と合図するのが可愛い。
男之助が引っこむと(男之助は橋吾さん。カッコよかった)、虎ちゃんはネズミを探しに再びスッポンへ。場内暗くなり、ドロドロでお岩さんの衣裳を羽織り、目の上に腫れをつけた虎ちゃんが現れる。それだけのことなんだけど、高校生の注意を引くには十分だった。
次は町人同士のケンカ。中村福太郎・扇一朗さんによる髪結新三と弥太五郎源七の立ち回りである。ここで先ほどの荒事とこの世話物を簡単に対比させた説明があり、黒御簾の中も見せてくれた。
そして女形。お初尾上の敵を討つ場面である。お初=芝のぶ、岩藤=芝喜松という豪華な配役に大感激。実に見応えあった。生き残った芝のぶさんだけが舞台に残り、虎ちゃんの説明で女形の作り方が実演された。ここでも「みなさんで一緒にやってみましょう」が可愛い。肩甲骨を下げて寄せて、なんてそうそう簡単にできるものではなく、女形の役者さんは本当に大変だなあとあらためて思った。化粧の簡単な説明もあり、「今日の芝居でも皺を描きます」。
短い時間でコンパクトに歌舞伎の基本を次々と実演によって教えていくので、浅く広くではあるが、高校生にもわかりやすかったと思う。
実演はいずれの場面もわずか数分ではありながら、実力ある脇の役者さんがしっかり見せており、こういうところから歌舞伎の面白さが高校生たちに伝わっていくのではないだろうか。
歌舞伎の基本が終わると、1枚の写真が舞台中央におりてきた。「誰だかわかりますか?」の質問に1人の女生徒が「森鴎外」と答えた。「正解です。みなさん、ザッケローニとか答える」んですって。しょうがないねえ。
作品説明の中で、「橋之助さん演じる伊織、扇雀演じるるん、扇雀は私の実の父です」と虎ちゃんが言うと、場内がちょっとどよめいた。
歌舞伎は誰もが気軽に楽しめるエンタテインメントであると締めくくった虎ちゃん、人差し指を立てて「みなさん」と言う様子が、なんかさかなクンが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねてる姿に重なって、楽しくて可愛いかった。

「ぢいさんばあさん」
鑑賞教室で選ばれる演目には上演時間、高校生でも興味のもてる内容、言葉などの難易度等、さまざまな制約があるだろうから、「ぢいさんばあさん」はわかりやすくていいのかもしれない…。
るんと弟・久右衛門は親子共演だから、実際親子に見えるんじゃないかと危惧したけれど、扇雀さんが若々しくて、一応姉弟には見えた。
橋之助さんの伊織はかなり現代的に見えた。セリフの言い方が早口だったせいもあろうが、下嶋を斬った後の焦り、泣く姿も現代的に見えて、あまり深みが感じられなかった。さらに、橋之助さんには毎回感じることだが、今回もやはり声が耳障りであった。とくに前半の若い時代はどうしてあんなにかんかん頭に響くのかなあと思った。年をとってからは声はあまり気にならなくなったが、やはり現代的な印象は否めなかった。
扇雀さんのるんはしっとりして、黒田家に長年仕えた落ち着きと品格があってよかった。階段をあがりづらそうにするのは、南座顔見世の時の方が自然で、今回はわずかなんだけどやり過ぎな感じがした。
全体にあまり深い感動はなかったものの、伊織とるんが初めて互いを認め合った瞬間はとてもよくて、泣けた。
若夫婦(児太郎・国生)の妻役・児太郎クンには精進の跡がみられた。丁寧、行儀のいい演技で、セリフも悪くなく好感がもてたが、国生クンとのバランスで年上女房のように見えてしまった。それにしても児太郎クンは身長があるから、相当膝を折っており、今は若いからいいかもしれないけど、先々は大丈夫かなあと心配になった。遠くから見ると、姿が福助さんに似てるなあと思った。
亀三郎さんの下嶋甚右衛門は、屈折した寂しい人間なんだろうなあ。評判もよく友達も多い伊織を羨ましく思っている、自分が嫌われていることはよくわかっている、だから金を貸した自分が酒席に呼ばれないことによけい腹立たしさが募る。酒癖の悪さも手伝って、そういう不満が爆発した、悲しい人間に見えた。下嶋の言い分にも理があり(亀三郎さんは口跡がいいから、納得しちゃうのだ)、いささか同情しないでもない。
この日は外国人の観客もけっこういたが、高校生、外国人、それぞれどんな感想をもったのか、知りたいものだ。
<上演時間>「歌舞伎のみかた」30分(14301500)、幕間25分、「ぢいさんばあさん」80分(15251645

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歌舞伎ミーハー観劇記」カテゴリの記事

コメント

こんにちは
舞台に展覧会にワールドカップと本当にお忙しそうですね
この20年間の鑑賞教室の演目を調べてみました(閑人ですね)
44演目あって、一番多いのが「吃又」で4回、ついで「四の切」で3回でした
あと「俊寛」「野崎村」「矢口渡」「葛の葉」「引窓」の義太夫狂言と「毛抜」「鳴神」の十八蕃物が2回でした
併せて21回ですからほぼ半分がリピート作品となります
大物を上演しにくかったり、真冬の作品をもってこれないとか制約はあると思いますが、もう少しレパートリーを増やして欲しいですね
「ぢいさんばあさん」はまたかと思いましたがこの20年では初めてでした(また、この20年では「勧進帳」が意外やゼロでした)
初心者だから分かりやすいものということは不要だと思います
この20年で上演されていない「熊谷陣屋」「すし屋」「忠臣蔵七段目」「玉手御前」「先代萩御殿・床下」「実盛物語」などドラマチックな演目を中堅若手中心でも良いと思いますから、沢山組み入れて欲しいです!!

投稿: うかれ坊主 | 2014年6月17日 (火) 17時18分

鑑賞教室の演目統計、ありがとうございます。実は、私も自分が見始めた平成17年6月(第66回)からの演目をざっと調べていたのです。「吃又」はありませんでしたから、少なくとも10年近くは上演されていないということですね。「四の切」3回ということは、全部平成17年以降の上演になります。
確かにリピート上演が多いですね。毎回対象とする高校生は違うわけだから、それでもいいのかもしれませんが、やっぱりちょっと違うものをやってほしいなあと思います。重厚な物語は高校生にはとっつきにくいと主催者側は考えているのでしょう。役者さんも、もっと花形とか出てもいように思いますが(松緑さん、愛之助さんは複数回出ています)。
一番楽しかったのは「華果西遊記」です。

ワールドカップは観戦予定外の試合もつい見てしまいます。
今朝のアメリカ×ガーナ戦はめちゃくちゃ面白かったです!!

投稿: SwingingFujisan | 2014年6月17日 (火) 19時41分

「吃又」(って公には書かなくなりましたね)はご指摘のように2004(H16)1998(H10)1996(H8)のいずれも7月公演でした

「高校生のための歌舞伎鑑賞教室」と言っていたときに学校につれていかれたのが私の「初歌舞伎」でした(染五郎<現幸四郎>の「俊寛」でした)歳がばれちゃいますね

最近では梅枝の「藤娘」が印象的でした
そう言えば、「寺子屋」もこの20年かかっていませんでした

愉しみの多いのは人生を豊かにしてくれるものですが、お体の方もお大事になさってくださいね

投稿: うかれ坊主 | 2014年6月18日 (水) 09時58分

うかれ坊主様
お心づかい、ありがとうございます。

現・幸四郎さんの「俊寛」が最初でしたか。そういえば、「俊寛」は2年前に橋之助さんがやっていますが、その2回だけなんですね。「俊寛」は物語としてもわかりやすいし、何と言っても舞台美術(浪布)が素晴らしいので、時々上演されてもいいかなと思います。
「藤娘」よかったですねえ。振り返ると、年に2回なのにけっこうたくさん見ているなあと驚いたのと、歌舞伎鑑賞教室で見たお芝居はちゃんと記憶に残っているのが意外でした(私は忘れっぽいから)。
幸四郎さんが染五郎当時出ていたのなら、今の染五郎さんにも出てほしいなあと思いました。

うかれ坊主様も一時帰国の際にハードスケジュールでご観劇のようですので、お身体にはくれぐれもお気をつけてください。

投稿: SwingingFujisan | 2014年6月18日 (水) 11時24分

こんばんは。
色々と本当にありがとうございました。
「ぢいさんばあさん」の原作、教えていただいたので青空文庫で読んでみました。
これは宇野信夫が豪いですねぇ。
高校生がどう思うか、気になります。

初歌舞伎が鑑賞教室の「吃又」(團十郎;当時海老蔵)で、なんてかわいらしい♪と思ったものの、高そうとかいろいろ思って歌舞伎座に行くまですごくブランクがあった私でした。

投稿: urasimaru | 2014年6月22日 (日) 23時48分

urasimaru様
こんばんは。こちらこそ、ありがとうございました。

あの原作からこういう戯曲を書いた宇野信夫の想像力、創造力は素晴らしいですね。
人の心の琴線はいつの時代も変わらないと思いたいです。

團十郎さんが吃又で鑑賞教室に出ていらしたなんて、見たかったですわ~。海老蔵さんも出ないかなあ。
urasimaru様のように、鑑賞教室で興味を持っても、すぐには歌舞伎座へ足を運ばない高校生は大勢いるかもしれませんね。せっかくの関心をそのまま歌舞伎から逸らさないようにしてあげたいものですが、そういう人は一時的に離れていても将来きっと歌舞伎座常連になるんだろうと期待します。それをurasimaru様が実証していらっしゃいますものねhappy01

投稿: SwingingFujisan | 2014年6月23日 (月) 00時06分

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