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2014年6月12日 (木)

作家・平野啓一郎が構成する美術展:「非日常からの呼び声」

610日 「ジャック・カロ リアリズムと奇想の劇場」&「非日常からの呼び声」(国立西洋美術館)
次は「非日常からの呼び声」。
これは非常に珍しい形式の展覧会であった。サブタイトルに「平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品」とあるように、作家・平野啓一郎氏(読んだことない)をゲスト・キュレーターとして作品選びから解説までを任せた展覧会である。1作品ごとに平野氏の解説というか作品に感じたことが書いてあって、通常の美術展とは違う面白さがあった。
140612hirano 「Ⅰ 幻視」では最初の作品にインパクトがあった。マックス・クリンガー《行為(〈手袋〉より)》、この展覧会のポスターになっている版画(エッチング)である(←)。斜めになっている人たちはよく見るとスケートをしているのである。24.7×18.9cmと版がそんなに大きくないから、遠目で見るとそれはわからない。手前の男性は手袋を拾おうとしている。この作品は10点連作の1葉で、この後の展開は思いもかけないものなんだそうである。でも、それは展示されていないの。なんでぇ~? どうなるのか気になって眠れないじゃないの。
私が気に入ったのは、エドヴァルド・ムンク《雪の中の労働者たち》。「叫び」のムンクとはずいぶん趣の異なる力強さがこちらに迫ってくるのがいい。その一方で、どこかに「叫び」の要素も入っているように見えなくもない。ノルウェーは1905年に独立国家になり、この作品はその5年後に描かれている。「国民国家建設の担い手としての労働者階級に対するムンクの信頼」が現れているそうだ。
「Ⅱ 妄想」の作品には主に悪魔とか魔女とかが描かれている。そういう妄想は恐らくキリスト教に根付いたものであろうと思う。2枚の《聖アントニウスの誘惑》、1つはルカス・クラーナハ(父)の木版画(1506年)、もう1つはダフィット・テニールス(子)の油彩(制作年はわからないが画家は16101690)。テーマは同じながら趣が全く異なるのが面白い。
「Ⅲ 死」は「Ⅳ エロティシズム」とともに画家たちの最大の関心の的ではなかっただろうか。そしてステファーノ・デッラ・ベッラ《子どもを運ぶ死》(エッチング)にみられるように、当時(制作年は1648年頃)死は日常的な出来事でありながら、愛しい人を失う悲しみはいつの時代も変わらないのだと思った。パルミジャニーノ(15031540)作《キリスト埋葬》(エッチング、ドライポイント)とウジェーヌ・ドラクロワ作《墓に運ばれるキリスト》(油彩、1859年)も同様のテーマであるが、前者には深い悲しみの中にも不思議と落ち着きや安らぎのようなものが漂っている。逆に後者には深い穴の中に運ばれるキリストの姿に現実的な慌しさが感じられた。
エロティシズムにもギュスターヴ・モロー《牢獄のサロメ》(油彩、187376年頃)、ティツィアーノ・ヴェチェッリオと工房《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》(油彩、156070年頃)と2人のサロメが選ばれている。牢獄のサロメは憂いているようでもあり、ヨハネの首を刎ねさせたことを悔いているようでもある。もう1人のサロメは丸々と太っていて、サロメと言えばモローだった私には、こんなサロメもいたのかとびっくりである。表情は私には幼くも見え、おそるおそる首を見ているようだけれど、その表情から何が窺えるのか、よくわからなかった。
「Ⅴ 彼方への眼差し」はまさに信仰の作品群である。オノレ・ドーミエ《マグダラのマリア》(油彩、184950年頃)は流れるようなタッチで、強烈な祈りを捧げる女の迫力がすごい。
「Ⅵ 非日常の宿り」ではヴィルヘルム・ハンマースホイ《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》(油彩、1910年)が目を引いた。これまでに何作品も見てきたオランダ室内絵画である。いや、画家はデンマーク人なので正確には違うが、明らかにオランダ室内絵画を意識している。こういう絵、私好きなのかもしれない。
全部で32作品、11つについて感想を述べたいところだが、そうもいかず、気になった作品のみについて触れた。
たっぷりの見応えだったカロとこの展覧会、さらに常設展まで見られて観覧料金はなんと一般600円という安さ。なんで?と思ったら、カロも非日常も西洋美術館の所蔵品だそうで、納得。実はこのあと、科学博物館に寄りたかったのだが、常設展の展示数のあまりの多さに疲れ切って(松方コレクション恐るべし‼)、また科博のほうは1500円なので断念(ケチ!)。仕事上、見ておきたかったんだけどな。

明日は5時起き(5時じゃ遅いか? 3時から開会式も見るか…)なので、今夜はおやすみなさ~い。

 

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