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2014年6月12日 (木)

現実社会の反映と奇想:ジャック・カロ展

610日 「ジャック・カロ リアリズムと奇想の劇場」&「非日常からの呼び声」(国立西洋美術館)
140611callot 15
日までの会期で又駆け込み。
まずは「ジャック・カロ」から。
カロって西洋美術史を代表する版画家の1人なんだそうなのに、全然知らなかった。1592年ロレーヌ公国生まれ、1635年没というから17年初頭に活躍した版画家。1608年頃イタリアへ行き、ローマ、フィレンツェで修業を重ねたのち、メディチ家に仕え、1621年帰郷してロレーヌ公や周辺諸国のお偉いさんたちからも作品を依頼されたようである。
展示されている作品は大半が小さいもので(縦横どちらかが400~500mmもあると大きいほう)、ルーペで見ている人もいた。出口に「ルーペ返却ボックス」があったので気がついたのだが、ルーペは貸し出していたんだ。でも、かなりすいていたおかげで、作品に顔をつけんばかりにして見ることができた。
展示はカロの足跡をたどるように、「Ⅰ ローマ、そしてフィレンツェへ」、「Ⅱ メディチ家の版画家」と続いたあと、「Ⅲ アウトサイダーたち」でカロが自ら目を向けた人々を集め、「Ⅳ ロレーヌの宮廷」で再びカロの足跡を追い、「Ⅴ 宗教」、「Ⅵ 戦争」、「Ⅶ 風景」ではテーマ別に作品がまとめられている。年代とテーマの両方からの作品紹介、そして作品展示の順番とリストの作品番号順のほぼ一致、という点で、歩きやすく見やすかった(展覧会って、どうしてリストの作品番号順に展示してくれないのかなあ)。
初期の作品はほとんどがエングレーヴィングで、その細かく正確な技術に感心する。馬の動きとか戦闘場面とか躍動感があるのが素晴らしい。1614年くらいからはエッチングが主となる。専門的になるので説明できないが、そのエッチングの技法にもカロの工夫が加えられているらしい。そして時にエッチングにエングレーヴィングを組み合わせているのがとても効果的に見える。
会場にはエングレーヴィングとエッチングの技法が紹介されており、それを知ることによって、カロの版画をさらに興味深く鑑賞することができる。その技術は、芸術家でもあり職人でもあるような…。
カロの作品にはメッセージ性は少ないようだ。たとえばアウトサイダーたちでは、異形の人たちや物乞いなど、当時忌避や排除の対象であった人たちを描いているが、それは当時の人々(アウトサイダーに対して社会の中にいた人々)の好奇の目を掬い取ったものであるそうなのだ。また戦争にしても、反戦思想によるものではなく、その「作品から窺われるのは戦争が今日よりもはるかに身近であった17世紀当時、戦乱が生む苦難を厭いつつも、それ自体は避けられないものとして受け入れていた人々の心性ではないだろうか」(図録より)ということらしい。
風景の版画は少ないが、なかなかダイナミックであった。
カロの作品は大半が小さいと前述したが、最も大きいのは「ブレダの攻略」(1628年)で1230×1405mm6枚の紙に刷られたエッチングを貼り合わせたものである。題材はオランダ独立戦争(80年戦争)におけるブレダ包囲戦。地図に主な出来事が異時同図で描かれているのが面白い。一種の記録版画と言えようか。カロの社会を見る目とか歴史を考えながら見ると、当時の社会が反映されており、その中でたしかに「奇想」と思えるような印象のものが多々あり、なかなか興味深かった。
この後、同時開催の「非日常からの呼び声」へと足を運んだが、その感想は明日。

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